幼馴染を忘れられなくて童貞34年極めたらリア充になれた話

味噌村 幸太郎

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第13話

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「あのオヤジ! 最後の一言が余計だろうが……」
 別れ際「兄さんも童貞早く捨てろよ」とか言いやがるもんだから、家族で爆笑しやがった。
 しばらく店のいいネタになるのだろうか。


「まあまあいいじゃないか」
 代行タクシーの中、愚痴を言う。
「お客さん。風俗でも行きますか?」
 タクシーの運転手にまで言われる始末。
「いや、いいですよ。最初に言ったマンションに向かってください」
「そうですか? 私も風俗がやめられなくてね~ 今年で還暦なのに」

 男ってこんなに風俗行くものなんですか?
 ということは死んだうちの父も、ヘビーユーザーだったのでしょうか?


「いいことじゃないですか? 僕はやっぱりアナルプレイが……」
 イッチーの性癖に運転手が食いつく。
「お客さんもアナルですか!? いや、私もアナル大好きでね! 家内が嫌がるもんだから、風俗でやってみたらそりゃもう!」
「僕もですよ! 嫁さんが妊娠してからつわりがひどくて、ずっと出来なかったから、ちょっと通いだしたらそりゃもう!」
 さっきの感動の話はどこいったよ。


「もうアナルはいいよ。イッチー」
「ええ! いいとこだったのに!?」
 お前はどんだけアナルが好きなんだよ。

「どこがいいんだよ、どこが!? 台無しだよ」
「お客さん、今度、私がいい店を紹介しますから一緒にいきましょう」
 お前も黙れ。
「ですね!」
 ですね、じゃないだろ。
 もうどうにでもなれ。
 しばらくすると車は高層マンションの前で止まった。


「うわぁ……いいとこ住んでんな」
 30階建てのタワーマンション。
 登るのがちょっと怖い。高所恐怖症ではないんだけど。
「まあアニメ化も決まったしね」
 さらっと金持ち臭を出すな!


 オートロックの玄関を通り、最上階だと言うのにエレベーターはとても短い時間で着いた。
「はやっ!」
 カーペットが引かれた廊下は、まるでホテルのようで、そこをまっすぐ歩くとイッチーの家はあった。
「さあ入って、子供が寝てるかもしれないから、静かにね」
 静かにねって……今、夜中だぜ?
 玄関に入って靴を脱ぐと、廊下の向こうにある居間のドアは閉まってはいたが、明かりがついていた。
「あれ? 起きているのかな?」


 扉を開けるとソファで20代後半ぐらいの女が、恥ずかしげもなく乳を放り出して、赤ん坊にくわえさせていた。
 嫁さんはショートカットで、眉毛は太め、目はイッチーほどではないが細め、鼻は小さくて丸い。唇は小さいがふっくらしている。
 顔を見る限りでは優しそうな奥さんだ。
 体格はけっこうムッチリしている。
 そんなに美人ではないが、一発ヤるだけならお願いしてもいい。
 って俺は何を考えているんだ。


 嫁さんは、寝ている赤ん坊と同じく、うつらうつらしていた。
 赤ん坊がいるからだと思うのだけど、乳がグラドルなみにデカい!
 俺も吸ったり揉みまくりたいしたいな……。
 って、人様の嫁さんでまた俺は。

「あ、海人くん。おかえりさない……」
 寝ぼけているのか、目が完全に開いてないのか、俺の存在には気がついてない。
 だが、数秒後。

「イヤーー!」

 予想通りのリアクションだな。
 俺にビックリして、放り出していた乳を急いで隠したもんだから、赤ん坊の口から乳首が外れ、泣き出してしまった。
 というか、乳首ピンクだったな。うまそう♪

「驚くなよ。言ってただろ。友達のヒロちゃんだよ?」
 そりゃ無理ってもんだ。
 それにはお前は、友達とはいえ、嫁の乳を見られて嫌じゃないのかね?

「あ、こ、こんにちは……」
 ぎこちなく会釈をしてくれる。
 ひいとるがな。
「あ、こんちわっす。あの、いきなり来てスンマセン……」
 俺もあいさつが、ぎこちない。
「僕が悪いんだよ、ハハハ!」
 ハハハじゃねーよ、全く。


 顔を真っ赤にして泣きまくる赤ん坊を抱いて、急いで隣りの部屋に去っていった。
「とりあえず、ビールでいい?」
 冷蔵庫から見るからにキンキンに冷えたビール缶を2つ出す。
「まだ飲むのかよ?」
 と言いながら、俺もテイクアウトした手羽先をテーブルに広げた。


「いやー、悪いね。ヒロちゃん。子供がいると女性もあんなオープンになりやすいからね、ハハハ!」
「笑いごとじゃねーだろ! 先に言えよ」
 そして、また乾杯する。静かに昔話で盛り上がる。


 しばらく飲んでいると隣りの部屋からイッチーの奥さんが出てきた。
「あ、先ほどはすみませんでした」
 深く俺に頭をたれる。
「いやいや、こっちこそ、いきなり来て申し訳ないっす!」
「ハハハ!」
 笑いこっちゃねーだろ。


 奥さんの腕には、先ほど泣いていた赤ん坊が機嫌を直したのか、ニコニコ笑っている。
「お、泣き止んだか!? ヒロちゃん、せっかくだから抱っこしてくれよ」
 唐突なリクエストにとても困った。
 俺は妹に嫌がられて、未だに姪すら触ったことがない。
 というか、俺は子供自体を触ったことがないのでは?
 他人の子供をそんなにいやらしい目では……見てるか。

 まあロリコンっちゃロリコンの気はあるんだよね。正直、生理さえ始まってれば、いくつでもいいのだろうか?
 って、また脱線しちゃってた。 
 イッチーの子供は息子だからいいよな?


「俺なんかでいいの?」
「もちろんだよ! なぁ?」
 嫁に視線をやるイッチー。
「もちろんですよ。なんてったって、名前を頂いたんですから」
 は? はぁ!?


「名前を?」
 責任重大ですぞ。
「はい、広さんの字ではないですけど、博司ひろしって言います」
 悪いけど、どっちもどっち。
「おい……お前。こんなことまで隠してたのかよ?」
「え!? 言ってなかったの、海人くん!?」
 俺と奥さんが詰め寄って、笑ってごまかすイッチー。
「アハハ、なんか言いづらくて。ごめんね~」
 笑顔が妙にムカつく。
 こいつ、殴ろうかな。マジで。


「まあまあ、さあ、僕ん家の博司を抱っこしてやってよ!」
 イッチーは冷たい視線を無視して、奥さんから赤ん坊をとると、俺の腕へ優しく渡してくれた。
 暖かい。
 赤ん坊の体温って、こんなに熱いのもんなのか?
 病気じゃないのか?


「お、おーい。もう1人のヒロシくん?」
 俺がそう言うと俺の目を見て、大きな目でニッコリ笑った。
 か、かわいい! かわいいな、おい! 
 これ、欲しいぞ。すごく欲しい!

「どちらかというと、奥さん似? だよね」
「はい。よく言われます」
 苦笑いする嫁さん。

「僕に似なくて良かったよ。目が細くなるからね、アハハハ」
 一理あるというか、それは断固として阻止しなくては。奥さんの遺伝子が強くてよかったな、おまえ。

「でも、私は海人くんに似てた方がよかったよ」
「まあまあいいじゃない、ハハ」
 ノロケだしやがった。
 赤ん坊は思ったより重く感じる。肩がこって仕方ない。


「ごめん、もういいよ。ありがと」
 赤ん坊をイッチーに返す。
「え、もういいの?」
「うん、俺、正直初めて赤ちゃん抱っこしたし」
「そうなんだ……」
 夫婦して俺を悲しそうな目で見つめる。
 そんな目で、俺を見ないでくれるだろうか。
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