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最終話
しおりを挟む「おはよう、ヒロくん♪」
眠たそうにしながらも微笑むあすか。
服を着る音で起こしたようだ。
「ごめん、起こした?」
「ううん、もうすぐ学校いかないとだし」
そっか、あすかは高校生だったんだな。
俺はまた1人で篭るのか……イヤだ、さびしいな。
「寂しいって思ってるでしょ?」
起き上がってキスをする。
「口臭くない?」
「俺の臭いしかしない、あすかに出したザーメン」
「もう!」
バシッと叩かれ、「今、朝ごはん作るから」とすぐにずっと来ていたセーラー服の袖に腕を通し、髪をくくってキッチンに向かう。
「ごめんね…お母さんに何も言ってなかったね。学校に行く前に謝らないと」
作り置きしていたものか、鍋に火をつける。中は見なくてもわかる。味噌汁のいい香りがする。
冷蔵庫から卵を3個取り出し、割ってボウルの中を箸でかき混ぜる。
「ヒロくん甘口が好きだよね?」
「うん♪」
キッチンに立つあすかを後ろから抱きしめ、髪の毛を匂う。
「もう臭いよ! ホテルでしかお風呂入ってないんだもん」
肩で嫌がるあすかを無視してずっと匂いを楽しむ。
「あすかと離れたくない…」
箸の動きが止まる。
「私も…」
ボウルをシンクの上に置き、俺の腕を掴む。
「ねぇ、朝ごはん食べたらお母さんに謝って一緒に高校行こう」
「え!? 俺が?」
あすかの目は輝いている。
「面接に行こうよ! あの弁当屋のおじちゃん、顔見知りだし、私が行った方がハードルさがるかもよ?」
正直、昨日見せられたチラシを見てずっと怖かった。
だがあすかといけるならいけそうな気がする!
「だといいけど。じゃあスーツにするかな?」
「え? スーツ? やりすぎじゃない?」
「そんなことないだろ? 俺はもう34歳だぜ? 逆にジャージで行くのも失礼だよ。親父の葬式の時に買ってもらったスーツでいくわ! でも、あすかいいのか? 学校中で噂になるかも知れないぞ?」
あすかはぎゅーっと俺を強く抱きしめた。
「噂になっていい! 噂になった方がヒロくん盗られないもん!」
「俺みたいなやつを他のJKが? こんなデブオヤジ興味ないよ」
俺がそう言うと、眉間にしわを寄せる。
「私もリアルJKなんですけど?」
睨むあすかに焦る。
「ごめんごめん!」
「ヒロくんだって、確かに今は太っているけど、忙しい弁当屋さんで働いたらやせちゃうよ! それにヒロくん、痩せてる時は芸能人みたいにかっこよかったもん!」
そう思ってもらえると光栄です。
「わたしのもんだもん!」と言いたいばかりに、俺の胸に顔を埋める。
ていうか、忙しいということは繁盛しているのか、キツそうだな…。
「でも、弁当屋で働いたらさ。太っちゃいそうだな、脂もんばっかだろ?」
「私が毎日、ヒロくんの弁当作る! それとも食べてくれないの?」
そういうと上目遣いで俺を見つめる。「そんなわけないだろ?」とキスを交わす。
だが、味噌汁がふきだしたので中断してしまう。
※
「お母さん、すみません! 私がヒロくんを呼び止めてしまったので」
「いいんよ! でもご両親は?」
「うちの親はほとんど2人とも出張が多くて、だからヒロくんが来てくれて別れが惜しくなってしまって…」
「うちはいいとよ! でも今度からはお泊りは禁止たい? ご両親には内緒にしとくけん。まあ私も昔死んだ父さんと似たようなことしてたからね」
「は、はい! 必ず守ります」
「広! あんたは早よ用意せんね!?」
俺は着慣れないスーツに手こずっていた。
「ふふ、ヒロくん。こっち来て♪」
パシャッとスマホで一枚撮られてしまった。
「ネクタイ曲がってるよ」
顔上げて、ネクタイを調整するあすか。まるで新婚夫婦みたいだ。
それを見て少し後ろから母がすすり泣きしていた。
「バカ息子が。こんな立派なお嬢さんをね」
「母さん、まだ結婚したわけじゃないよ」
「あらごめんね、あすかちゃん」
「いえ、私はそう思ってもらった方が嬉しいですよw」
「本当、広にはもったいない!」
うるさし、母。
「んじゃ、行ってくるわ、母さん!」
「いってきます、お母さん」
手を繋ぎ、走って駅まで向かった。
2人とも慌てているのに、なぜか笑いが止まらなかった。
今の俺なら何でもできそうな気がする。
この子が、あすかが俺の隣りにいてくれる限り。
「あすか」
「なぁに、ヒロくん?」
「ありがとう、あすか」
「私もありがとう」
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