幼馴染を忘れられなくて童貞34年極めたらリア充になれた話

味噌村 幸太郎

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最終話

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「おはよう、ヒロくん♪」
 眠たそうにしながらも微笑むあすか。
 服を着る音で起こしたようだ。

「ごめん、起こした?」
「ううん、もうすぐ学校いかないとだし」
 そっか、あすかは高校生だったんだな。


 俺はまた1人で篭るのか……イヤだ、さびしいな。

「寂しいって思ってるでしょ?」
 起き上がってキスをする。
「口臭くない?」
「俺の臭いしかしない、あすかに出したザーメン」
「もう!」
 バシッと叩かれ、「今、朝ごはん作るから」とすぐにずっと来ていたセーラー服の袖に腕を通し、髪をくくってキッチンに向かう。

「ごめんね…お母さんに何も言ってなかったね。学校に行く前に謝らないと」
 作り置きしていたものか、鍋に火をつける。中は見なくてもわかる。味噌汁のいい香りがする。
 冷蔵庫から卵を3個取り出し、割ってボウルの中を箸でかき混ぜる。

「ヒロくん甘口が好きだよね?」
「うん♪」
 キッチンに立つあすかを後ろから抱きしめ、髪の毛を匂う。

「もう臭いよ! ホテルでしかお風呂入ってないんだもん」
 肩で嫌がるあすかを無視してずっと匂いを楽しむ。
「あすかと離れたくない…」
 箸の動きが止まる。

「私も…」
 ボウルをシンクの上に置き、俺の腕を掴む。
「ねぇ、朝ごはん食べたらお母さんに謝って一緒に高校行こう」
「え!? 俺が?」
 あすかの目は輝いている。

「面接に行こうよ! あの弁当屋のおじちゃん、顔見知りだし、私が行った方がハードルさがるかもよ?」
 正直、昨日見せられたチラシを見てずっと怖かった。
 だがあすかといけるならいけそうな気がする!
「だといいけど。じゃあスーツにするかな?」
「え? スーツ? やりすぎじゃない?」

「そんなことないだろ? 俺はもう34歳だぜ? 逆にジャージで行くのも失礼だよ。親父の葬式の時に買ってもらったスーツでいくわ! でも、あすかいいのか? 学校中で噂になるかも知れないぞ?」
 あすかはぎゅーっと俺を強く抱きしめた。

「噂になっていい! 噂になった方がヒロくん盗られないもん!」
「俺みたいなやつを他のJKが? こんなデブオヤジ興味ないよ」
 俺がそう言うと、眉間にしわを寄せる。
「私もリアルJKなんですけど?」
 睨むあすかに焦る。

「ごめんごめん!」
「ヒロくんだって、確かに今は太っているけど、忙しい弁当屋さんで働いたらやせちゃうよ! それにヒロくん、痩せてる時は芸能人みたいにかっこよかったもん!」
 そう思ってもらえると光栄です。

「わたしのもんだもん!」と言いたいばかりに、俺の胸に顔を埋める。
 ていうか、忙しいということは繁盛しているのか、キツそうだな…。
「でも、弁当屋で働いたらさ。太っちゃいそうだな、脂もんばっかだろ?」
「私が毎日、ヒロくんの弁当作る! それとも食べてくれないの?」
 そういうと上目遣いで俺を見つめる。「そんなわけないだろ?」とキスを交わす。
 だが、味噌汁がふきだしたので中断してしまう。

   ※
  

「お母さん、すみません! 私がヒロくんを呼び止めてしまったので」
「いいんよ! でもご両親は?」
「うちの親はほとんど2人とも出張が多くて、だからヒロくんが来てくれて別れが惜しくなってしまって…」

「うちはいいとよ! でも今度からはお泊りは禁止たい? ご両親には内緒にしとくけん。まあ私も昔死んだ父さんと似たようなことしてたからね」
「は、はい! 必ず守ります」
「広! あんたは早よ用意せんね!?」

 俺は着慣れないスーツに手こずっていた。
「ふふ、ヒロくん。こっち来て♪」
 パシャッとスマホで一枚撮られてしまった。
「ネクタイ曲がってるよ」
 顔上げて、ネクタイを調整するあすか。まるで新婚夫婦みたいだ。
 それを見て少し後ろから母がすすり泣きしていた。
「バカ息子が。こんな立派なお嬢さんをね」
「母さん、まだ結婚したわけじゃないよ」
「あらごめんね、あすかちゃん」
「いえ、私はそう思ってもらった方が嬉しいですよw」
「本当、広にはもったいない!」
 うるさし、母。
 

「んじゃ、行ってくるわ、母さん!」
「いってきます、お母さん」
 手を繋ぎ、走って駅まで向かった。
 2人とも慌てているのに、なぜか笑いが止まらなかった。
 今の俺なら何でもできそうな気がする。
 この子が、あすかが俺の隣りにいてくれる限り。


「あすか」
「なぁに、ヒロくん?」
「ありがとう、あすか」
「私もありがとう」
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みんなの感想(1件)

スパークノークス

おもしろい!
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2021.11.10 味噌村 幸太郎

ありがとうございます(*´ω`*)

解除

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