7 / 23
第二章 「索敵」
2-2
しおりを挟む
腹から血を流し、腸を垂らしている傷ついた仲間を担ぎ、少年は夜の街のビルを次から次へと人間離れした脚力と瞬発力でカエルのようにジャンプしていく。
あるビルに着地すると少年は仲間をその屋上にあった古ぼけた小屋まで連れていき、小屋の中にあった埃まみれの毛布の上に寝かせた。
「撒いたか? いや、奴にはすぐバレるはずだ……」
「うう……卓真。あんただけでも逃げな」
傷ついた仲間は四十代ぐらいの中年の女で依然、腹部からの出血は続いている。
「喋っちゃダメだ、綾香。お前だけ置いていくなんてできないよ」
そう言う少年は十代半ばといった感じで二人は親子ぐらいの年齢差があったが親子には見えない会話をしていた。
「よし、これで……」
卓真は小屋の中にあった工具箱からホッチキスを取り出した。
「少し痛むかもしれないけど我慢してくれよ」
「ああ、も、もう痛みなんてもんはとっくの昔に通り過ぎているよ……」
卓真は綾香にボロ布を噛ませ、麻酔もなしで応急処置を始めようとした。
「じゃあ、いくよ」
卓真は綾香の上着を破り、スカートを脱がせて、腹からはみ出てくる生暖かい腸を無理矢理、押し込んでホッチキスで開いた傷を塞ぐ。
もう傷どころのものではないが、なにもしないで出血多量で死なせるよりはマシだろうとホッチキスを打ち続けた。
やっとのことでどうにか出血を抑えることができた。
だが、このままだと破傷風で高熱を発し、やがて死んでしまう。
一刻も早く病院に連れて行かなければならない。
「これで一応、終わったけど早く病院にいかなきゃ……」
汗だくの綾香は卓真の顔を見て微笑んだ。
「卓真、私のことはもういいから早く逃げな。ここに二人でいたって仕方ないだろう。さあ、行くんだよ」
「あ、綾香……僕をそんな奴だと思っているの? 僕にはできないよ……仲間を見捨てるんなんて!」
卓真は泣きながら綾香に抱きついた。綾香が彼を行かせようとするが卓真は決して離れない。
「仕方ない奴だね……」
綾香がため息をつくとビルに人の気配を感じた。足音が聞こえてくる。その足音はこっちに近づいて来ているようだ。
「卓真! いつまで甘えている気だい! もう追手は来ているんだよ! 早く逃げな。そして、哲二の所に行くんだよ。あいつなら、なんとかしてくれるよ!」
「だ、だけど、綾香。お前が死んじゃうじゃないか! やっぱり、そんなの嫌だ!」
せっぱつまった卓真は思わず小屋を飛び出した。
ビルの屋上には一人の男が満月の妖しい光りを浴びていた。
「お、お前なんか僕だけで!」
「ほう、いい度胸だ。試し斬りさせてもらうぜ。もっとも、ついさっき試したけどな」
卓真が対峙した男は右手に赤い小さな短剣を持ってニヤニヤと笑っている。
「許さないぞ! いくらマザーの追手でも、たかが、FXシリーズじゃないか。冬の蝉の保護システムである僕がお前になんか負けるわけがない!」
「言ってくれるじゃねぇか。だがよ。俺もバカじゃねぇのよ。この剣もだいぶ使えてきたしな」
男は卓真に剣を向けた。
「……ま、まさか! それはSSS‐003……」
「そう。通称、〝赤の剣〟!」
男はいきなり斬りかかって来た。すかさず、卓真も避ける。
攻撃は単純すぎて、予想がつく。これならいけると卓真は反撃体勢に移った。
反撃を繰り出した卓真の技は回し蹴り、突っ込んで来た相手にはうってつけの技だ。
卓真の蹴りはとても十代の少年とは思えないキックボクサーのような重みのある蹴りだった。
蹴りを受けた男は少しよろめいた。
「ちっ! 今のはキツかったな、保護システムさんよ。だが、この剣の秘密を知らねぇよな?」
男は白い歯を剥き出しにして不気味な笑みを浮かべている。
「これはよ……万能型の剣とでも言うのか。いくつもの機能を搭載した、それは大変便利な武器なんだよ」
男が剣を夜空に向かって掲げると、刀身に古代文字がいくつも並んで浮かび上がり、赤く光る。
そして、驚いたことに剣は男の身の丈を超えるほどの巨大な六角形の柱へと変身を遂げた。
その巨大な鉄柱はドリルのように回転し始めた。
「まあ、お前はこれぐらいでいいだろうぜ」
男は再度、攻撃を繰り出してきた。
剣が重いせいか、卓真の反応が早すぎるせいか、男の攻撃が単純すぎるせいか、卓真は余裕で避けられた。
卓真に体勢を整える時間を与えずに、再度、攻撃を繰り返した。
剣を真横に振り払うが、卓真が体を後ろに反ったために、またもや失敗に終わった。
三度も自分に攻撃を避けられるとは見かけ倒しかと卓真は思った。
卓真の気が緩んだ瞬間、男の目は先ほどまでとは違う目つきに変貌していた。
狼のように獲物を正確にとらえ、今から牙を剥こうといった殺気漂うものであった。
素早く剣を持ち直す、左手だけ握り手を持ち、右手は柄頭を掴む。
その状態で一気に卓真の胸めがけて突く。
男の今までの失態は演技でもあり、フェイントでもあったのだ。
これには卓真も驚いた。
胸に突っ込んでくるドリルのような剣を間一髪で避けられた。
だが、心臓を突かれるという危機を回避しただけであって、完全にその攻撃を避けられたわけではなかった。
剣が卓真の右肩に食い込む。剣の勢いは卓真の体内に入ったぐらいで止まりはしない。
卓真の体内で激しく暴れだす。すると、大量の血液と肉片が辺りに飛び散る。
剣は骨まで達し、卓真の右腕は今にも体から引きちぎれそうな状態に陥った。
男は剣の回転を止めて、剣についた血を振り払った。
「油断は禁物だぜ。保護システムさんよ。あいにくだが俺はこの剣を手に入れるまで臆病だったんだ。なんせ、FXシリーズですからね。いつも、フェイントかましちゃうんだよ。その癖が今でも残っちまってな。どんな奴でも警戒しちゃうわけ。もっとも、こんなのは戦いの基本だろ? まあ、こんなこと言っても、どのみち、お前は死ぬけどな」
「くっ! こんな所で……」
卓真は悔しそうに歯を食いしばった。歯茎から血が滲む。
「卓真! ここは私にまかせな!」
突然、背後から声が聞こえた。振り返ると青ざめた綾香がよろめきながらも、こっちに近づいて来る。
「あ、綾香!」
「ほう、お前、まだ生きていたのか?」
「当たり前だよ! あんたみたいな落ちこぼれに殺されるかよ!」
綾香は今にも倒れそうな青ざめた顔で男を睨みつける。
「そんな言い方はよしてくれよ。俺達、FXシリーズの評判が悪くなっちまうぜ」
「やかましい! FX‐0987、ハイ・エンド。FXシリーズの評判なんてとっくの昔に悪くなっちまってるよ!」
綾香が瞑想を始めるかのように静かに目を閉じ、気を体内に集める。
すると、次第に綾香の体が黄金色に染まっていく。
光り輝く綾香は目を開くと一瞬にしてハイ・エンドのいる場所まで距離をつめて、彼の腰に両手を回し、身動きができないように持ち上げた。その力は中年女性とは思えない、いや、重傷を負った人間とは思えない力で、プロレスラーのような怪力の持ち主であった。
「な、なにしやがる! ババァ!」
うろたえるハイ・エンドを無視して綾香は卓真に最後の別れを告げた。
「卓真……。蝉によろしくな……」
死を覚悟した彼女は微笑み、10階以上もあるビルからハイ・エンドと共に落ちて行った。
卓真にはその光景がさながら蛹から蝶へと羽ばたいていく美しいものに見えただろう。
落下していく中、中年の女は独り言のように呟いた。
「言っとくけど、私はババァじゃないよ。嫌々、この姿で生きていただけさ……」
彼女の笑顔には清々しいものがあった。
あるビルに着地すると少年は仲間をその屋上にあった古ぼけた小屋まで連れていき、小屋の中にあった埃まみれの毛布の上に寝かせた。
「撒いたか? いや、奴にはすぐバレるはずだ……」
「うう……卓真。あんただけでも逃げな」
傷ついた仲間は四十代ぐらいの中年の女で依然、腹部からの出血は続いている。
「喋っちゃダメだ、綾香。お前だけ置いていくなんてできないよ」
そう言う少年は十代半ばといった感じで二人は親子ぐらいの年齢差があったが親子には見えない会話をしていた。
「よし、これで……」
卓真は小屋の中にあった工具箱からホッチキスを取り出した。
「少し痛むかもしれないけど我慢してくれよ」
「ああ、も、もう痛みなんてもんはとっくの昔に通り過ぎているよ……」
卓真は綾香にボロ布を噛ませ、麻酔もなしで応急処置を始めようとした。
「じゃあ、いくよ」
卓真は綾香の上着を破り、スカートを脱がせて、腹からはみ出てくる生暖かい腸を無理矢理、押し込んでホッチキスで開いた傷を塞ぐ。
もう傷どころのものではないが、なにもしないで出血多量で死なせるよりはマシだろうとホッチキスを打ち続けた。
やっとのことでどうにか出血を抑えることができた。
だが、このままだと破傷風で高熱を発し、やがて死んでしまう。
一刻も早く病院に連れて行かなければならない。
「これで一応、終わったけど早く病院にいかなきゃ……」
汗だくの綾香は卓真の顔を見て微笑んだ。
「卓真、私のことはもういいから早く逃げな。ここに二人でいたって仕方ないだろう。さあ、行くんだよ」
「あ、綾香……僕をそんな奴だと思っているの? 僕にはできないよ……仲間を見捨てるんなんて!」
卓真は泣きながら綾香に抱きついた。綾香が彼を行かせようとするが卓真は決して離れない。
「仕方ない奴だね……」
綾香がため息をつくとビルに人の気配を感じた。足音が聞こえてくる。その足音はこっちに近づいて来ているようだ。
「卓真! いつまで甘えている気だい! もう追手は来ているんだよ! 早く逃げな。そして、哲二の所に行くんだよ。あいつなら、なんとかしてくれるよ!」
「だ、だけど、綾香。お前が死んじゃうじゃないか! やっぱり、そんなの嫌だ!」
せっぱつまった卓真は思わず小屋を飛び出した。
ビルの屋上には一人の男が満月の妖しい光りを浴びていた。
「お、お前なんか僕だけで!」
「ほう、いい度胸だ。試し斬りさせてもらうぜ。もっとも、ついさっき試したけどな」
卓真が対峙した男は右手に赤い小さな短剣を持ってニヤニヤと笑っている。
「許さないぞ! いくらマザーの追手でも、たかが、FXシリーズじゃないか。冬の蝉の保護システムである僕がお前になんか負けるわけがない!」
「言ってくれるじゃねぇか。だがよ。俺もバカじゃねぇのよ。この剣もだいぶ使えてきたしな」
男は卓真に剣を向けた。
「……ま、まさか! それはSSS‐003……」
「そう。通称、〝赤の剣〟!」
男はいきなり斬りかかって来た。すかさず、卓真も避ける。
攻撃は単純すぎて、予想がつく。これならいけると卓真は反撃体勢に移った。
反撃を繰り出した卓真の技は回し蹴り、突っ込んで来た相手にはうってつけの技だ。
卓真の蹴りはとても十代の少年とは思えないキックボクサーのような重みのある蹴りだった。
蹴りを受けた男は少しよろめいた。
「ちっ! 今のはキツかったな、保護システムさんよ。だが、この剣の秘密を知らねぇよな?」
男は白い歯を剥き出しにして不気味な笑みを浮かべている。
「これはよ……万能型の剣とでも言うのか。いくつもの機能を搭載した、それは大変便利な武器なんだよ」
男が剣を夜空に向かって掲げると、刀身に古代文字がいくつも並んで浮かび上がり、赤く光る。
そして、驚いたことに剣は男の身の丈を超えるほどの巨大な六角形の柱へと変身を遂げた。
その巨大な鉄柱はドリルのように回転し始めた。
「まあ、お前はこれぐらいでいいだろうぜ」
男は再度、攻撃を繰り出してきた。
剣が重いせいか、卓真の反応が早すぎるせいか、男の攻撃が単純すぎるせいか、卓真は余裕で避けられた。
卓真に体勢を整える時間を与えずに、再度、攻撃を繰り返した。
剣を真横に振り払うが、卓真が体を後ろに反ったために、またもや失敗に終わった。
三度も自分に攻撃を避けられるとは見かけ倒しかと卓真は思った。
卓真の気が緩んだ瞬間、男の目は先ほどまでとは違う目つきに変貌していた。
狼のように獲物を正確にとらえ、今から牙を剥こうといった殺気漂うものであった。
素早く剣を持ち直す、左手だけ握り手を持ち、右手は柄頭を掴む。
その状態で一気に卓真の胸めがけて突く。
男の今までの失態は演技でもあり、フェイントでもあったのだ。
これには卓真も驚いた。
胸に突っ込んでくるドリルのような剣を間一髪で避けられた。
だが、心臓を突かれるという危機を回避しただけであって、完全にその攻撃を避けられたわけではなかった。
剣が卓真の右肩に食い込む。剣の勢いは卓真の体内に入ったぐらいで止まりはしない。
卓真の体内で激しく暴れだす。すると、大量の血液と肉片が辺りに飛び散る。
剣は骨まで達し、卓真の右腕は今にも体から引きちぎれそうな状態に陥った。
男は剣の回転を止めて、剣についた血を振り払った。
「油断は禁物だぜ。保護システムさんよ。あいにくだが俺はこの剣を手に入れるまで臆病だったんだ。なんせ、FXシリーズですからね。いつも、フェイントかましちゃうんだよ。その癖が今でも残っちまってな。どんな奴でも警戒しちゃうわけ。もっとも、こんなのは戦いの基本だろ? まあ、こんなこと言っても、どのみち、お前は死ぬけどな」
「くっ! こんな所で……」
卓真は悔しそうに歯を食いしばった。歯茎から血が滲む。
「卓真! ここは私にまかせな!」
突然、背後から声が聞こえた。振り返ると青ざめた綾香がよろめきながらも、こっちに近づいて来る。
「あ、綾香!」
「ほう、お前、まだ生きていたのか?」
「当たり前だよ! あんたみたいな落ちこぼれに殺されるかよ!」
綾香は今にも倒れそうな青ざめた顔で男を睨みつける。
「そんな言い方はよしてくれよ。俺達、FXシリーズの評判が悪くなっちまうぜ」
「やかましい! FX‐0987、ハイ・エンド。FXシリーズの評判なんてとっくの昔に悪くなっちまってるよ!」
綾香が瞑想を始めるかのように静かに目を閉じ、気を体内に集める。
すると、次第に綾香の体が黄金色に染まっていく。
光り輝く綾香は目を開くと一瞬にしてハイ・エンドのいる場所まで距離をつめて、彼の腰に両手を回し、身動きができないように持ち上げた。その力は中年女性とは思えない、いや、重傷を負った人間とは思えない力で、プロレスラーのような怪力の持ち主であった。
「な、なにしやがる! ババァ!」
うろたえるハイ・エンドを無視して綾香は卓真に最後の別れを告げた。
「卓真……。蝉によろしくな……」
死を覚悟した彼女は微笑み、10階以上もあるビルからハイ・エンドと共に落ちて行った。
卓真にはその光景がさながら蛹から蝶へと羽ばたいていく美しいものに見えただろう。
落下していく中、中年の女は独り言のように呟いた。
「言っとくけど、私はババァじゃないよ。嫌々、この姿で生きていただけさ……」
彼女の笑顔には清々しいものがあった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。
猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。
復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。
やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、
勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。
過去の恋、未来の恋、そして政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。
魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に行動する勇者パーティは、
四人の魔将との邂逅、そして試練を迎え――。
輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私が、
魔王討伐の旅路の中で、“本当の自分”を見つけていく――。
そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。
※「小説家になろう」にも掲載。(異世界転生・恋愛12位)
※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
転生したら『塔』の主になった。ポイントでガチャ回してフロア増やしたら、いつの間にか世界最強のダンジョンになってた
季未
ファンタジー
【書き溜めがなくなるまで高頻度更新!♡٩( 'ω' )و】
気がつくとダンジョンコア(石)になっていた。
手持ちの資源はわずか。迫りくる野生の魔物やコアを狙う冒険者たち。 頼れるのは怪しげな「魔物ガチャ」だけ!?
傷ついた少女・リナを保護したことをきっかけにダンジョンは急速に進化を始める。
罠を張り巡らせた塔を建築し、資源を集め、強力な魔物をガチャで召喚!
人間と魔族、どこの勢力にも属さない独立した「最強のダンジョン」が今、産声を上げる!
神スキル【絶対育成】で追放令嬢を餌付けしたら国ができた
黒崎隼人
ファンタジー
過労死した植物研究者が転生したのは、貧しい開拓村の少年アランだった。彼に与えられたのは、あらゆる植物を意のままに操る神スキル【絶対育成】だった。
そんな彼の元に、ある日、王都から追放されてきた「悪役令嬢」セラフィーナがやってくる。
「私があなたの知識となり、盾となりましょう。その代わり、この村を豊かにする力を貸してください」
前世の知識とチートスキルを持つ少年と、気高く理知的な元公爵令嬢。
二人が手を取り合った時、飢えた辺境の村は、やがて世界が羨む豊かで平和な楽園へと姿を変えていく。
辺境から始まる、農業革命ファンタジー&国家創成譚が、ここに開幕する。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―
ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」
前世、15歳で人生を終えたぼく。
目が覚めたら異世界の、5歳の王子様!
けど、人質として大国に送られた危ない身分。
そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。
「ぼく、このお話知ってる!!」
生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!?
このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!!
「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」
生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。
とにかく周りに気を使いまくって!
王子様たちは全力尊重!
侍女さんたちには迷惑かけない!
ひたすら頑張れ、ぼく!
――猶予は後10年。
原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない!
お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。
それでも、ぼくは諦めない。
だって、絶対の絶対に死にたくないからっ!
原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。
健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。
どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。
(全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる