TS魔法少女リュネール・エトワール! ~星月の魔法少女は気の赴くままに行動する~

月夜るな

文字の大きさ
5 / 137
第一章『爆誕?! イレギュラーなTS魔法少女!』

Act.05:青い魔法少女

しおりを挟む
「失礼しました。これは貴女が?」

 そう問いかけてくるのは、青いドレスのような衣装を着た子だった。どうみても魔法少女です、ありがとうございました。

「ん」

 まさか初実戦で別の魔法少女に会ってしまうとは……というかこの子見た事あるぞ。確かこの地域の担当をしてる魔法少女だったよな?

「そうですか……。私は魔法省所属の魔法少女、ブルーサファイアです。あなたの所属と担当をお聞きしても?」
「所属してない。だから担当も無い」

 そうだそうだ。ブルーサファイアって名前だった。
 魔法少女の名前って良く分からん。花だったり色だったり、物だったりするし。大抵は魔法少女本人が決めるものって言うのは聞いてるが、数が多かったら名前のネタが切れそうだな。

「なるほど、野良ですか。……取り合えず、ご同行願えますか?」
「断る」
「ええ……」

 さっきまでの大人っぽさはどこ行ったし。

「わたしは帰る」
「あ、ちょっと!!」

 いやね? 同行した先で変身解除してくれって言われたら困る。あの状態なら大丈夫だが……どうせ同行先って魔法省だろ。
 という訳で、その場からせっせと立ち去る。姿を見えなくする魔法をも使って念入りにするのだ。



「あー行っちゃった……」

 もう姿が見えなくなってしまった野良の魔法少女を見て呟く。ここ数か月、魔物の出現が確認されてなかった地域に脅威度Aの魔物が出現した時は驚いた。

 他の地域では良く出現するのに、今回に限ってはこの地域で、それもあって出動が遅れてしまった。
 正確には他の地域の支援をしていたからなのだが……。

「ブルーサファイア! 魔物は何処だ?!」
「遅れてごめん!!」

 そんな事を考えてると、他の二人が追いついてくる。急ぎ過ぎた……とはいえ、もう魔物は居なくなってたのだが。

「あれ。何もいない?」
「もう倒されましたよ」
「ええ?! ブルーサファイアが倒したの?」
「いやいや、それは無いでしょ」

 今回現れたのは脅威度Aの魔物だ。Bクラスの私が一人で敵うような相手じゃない。
 本来ならAクラスの魔法少女が来るべきなのだが、やはり都合とタイミングが合わず、何とか間に合いそうな私たちが出向いてきた。
 私たちの役割は、応援の魔法少女が駆け付けるまでの時間稼ぎ、足止めと言った所だった。そして危ないときはすぐ逃げろ、と言われてる。

「それじゃあ、誰が……」
「知らない魔法少女だったよ。所属を聞いたらしてないって」
「つまり、野良の魔法少女がやったってことか」
「うん。野良の魔法少女は何人かは顔を知ってるけど、さっきの子は知らないかな」

 きれいな銀髪をしていて、いかにも魔女っ娘って感じのスタイルの魔法少女だった。とんがり帽子が特徴だった。

「新しく誕生した、とか?」
「分からないわ。でも、同行を願ってみたけど綺麗にお断りされたよ」

 別に同行させる必要は無いのだが、野良の魔法少女も出来れば連れてきて欲しいっていう話だから言ってみただけだ。
 別に魔法少女は魔法省に所属するって言う決まりはないから、強制はできない。けど、野良の魔法少女も魔法少女……保護したいって言う考えなのだろうと思う。

 それにあの子は野良でありながら魔物と戦ってた訳だし。
 野良の魔法少女が魔物と戦う事例は無くはない……けど、国からの支援も何もない上に命がかかってる。普通なら戦わないか、魔法省に所属するんだけど……。

「うーん……取り合えず、報告しないとね」
「だな」
「うん」

 あ、あの魔法少女の名前聞いてなかった。まあ、教えてくれそうな雰囲気は無かったけど……。

 とにかく私たちは魔物が倒されたという事を報告する為、魔法省に戻るのだった。


-------


「初討伐お疲れ様」

 家に戻ると、ラビが労りの言葉をくれる。
 変身を解除し、元の姿に戻れば俺は意識をわたしから俺へと切り替える。

「何かあっけなかったが……」
「まあ、あなたが規格外なだけよ」
「規格外って……」
「多分だけど、実力と言うか強さだけならリュネール・エトワールは最低でもSクラス以上ね」
「まじか……」

 何でも脅威度Aの魔物をあんなあっさりと単体で倒すのは、現役Aクラスでも難しいとの事。
 前にも言った通り、脅威度Aの魔物は普通はAクラスの魔法少女が二人以上で取り掛かる魔物だ。Aと言っても個体差もあるが。

「それにしても、あの時に駆け付けてた青い魔法少女は、Bクラスくらいかしらね」
「分かるのか」
「ええ。何となく、だけどね。あと結構後ろの方にもう二人ほど居たかしら」
「居たのか……ってことは、Bクラスの魔法少女三人が駆け付けたってことか。でも、脅威度Aの魔物だろ?」
「恐らく応援の魔法少女が来るまでの一時的な対応ね」
「なるほど」

 それにしても、やっぱり対応が遅れてるな。
 もし俺が行ってなかったらどうなってたことやら……初実戦だけど、相手は脅威度Aとかいう結構高いやつだったのはびびったが。

「あれ、何してるのかしら?」
「ん? 良くあるPCのMMORPGだよ。これが結構面白くてな……まあ、だからといってそこまで課金はしてないが」

 少しはしているけどな。主にアバターに。

「ゲーム内では女の子使ってるのね」
「こういうゲームって、女性アバターの方が種類があって良いんだよ。それに操作するなら可愛いキャラが良いだろ」

 画面に映るのはこのゲームで俺が使っているアバターだ。プレイヤーネームはルナ……まあ、在り来りな名前だと思うが。
 サービス開始日からやってたから同じ名前は使えません、という事はなく問題なく使えた訳だ。

「あら、このキャラ……何処と無くリュネール・エトワールに似てるわね」
「ん? あーそう言えばそうだな。完全に俺の趣味で作ったアバターだが」

 改めてゲーム内のルナを見ると確かにリュネール・エトワールに似てる。流石にグラーデションのかかった髪ではないけど、銀髪のロングの金色の瞳。
 今着せてるアバターも魔女っ娘風で、色は違うけどリュネール・エトワールの衣装に似たデザインだ。

「もしかしてこれがリュネール・エトワールの容姿を作ったのかも知れないわね。ほら、自分の理想の姿に変身するって言ったじゃない?」
「そう言えばそんな事言ってたな」
「これがあなたの理想の姿なのかしら」
「どうだろうなー別にイケメンになりたいとは思ってないけど」 

 良い年したおっさんの理想の姿が少女っていうのも結構アウトな気もする。あくまでこのアバターは趣味で作ったものだしな。結構良く出来たとは思ってる。

「さて、日課も終わりっと。じゃあ今日も魔法の練習をするかな」
「良い心がけね」
「まあ、見ての通りニート生活満喫してるからな……時間ならいっぱいある」

 仕事もせずに、好きな事が出来るのがニートの良い所だ。世間体では悪いイメージが強いみたいだが、本当にそうだろうか?
 ぶっちゃけ働く必要はあるのか? 働かないとお金がなく、何も食べれないし買えないが、お金があるならどうだ?

 今じゃ、Youtuberだとか、Vtuberだとか、仕事しなくても稼げるのはある。いや、正確には面白い動画を投稿するという仕事なんだろうけど、好きな事やって稼げるって良いよな。
 他には投資とかで稼ぐやつは稼ぐ。ニートだろうが、お金があるなら別に働く意味は無いと俺は思う。

 全く、ニートの何が悪いんだって。
 いやまあ、働かずに家族の乞食になってるってんなら話は別だが、自分で生活できているなら文句を言われる筋合いはないと思うぞ。

 まあ、そんな理屈が通らないのがこの世の中だが。

「じゃあ、行くか。――ラ・リュヌ・エ・レトワル!」
『SYSTEM CALL "CHANGE" KEYWORD,OK――LA LUNE ET L'ETOILE――』


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。 異世界パルメディアは、大魔法文明時代。 だが、その時代は崩壊寸前だった。 なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。 マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。 追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。 ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。 世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。 無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。 化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。 そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。 当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。 ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる

家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。 召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。 多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。 しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。 何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。

処理中です...