TS魔法少女リュネール・エトワール! ~星月の魔法少女は気の赴くままに行動する~

月夜るな

文字の大きさ
12 / 137
第二章『魔法少女を襲撃する者』

Act.01:不穏な噂①

しおりを挟む

「大分、気温が下がってきたわね」
「だな。そろそろ本格的に冬に入るしな」

 現在は11月。本格的に冬が始まる月だ。外に出ればもう、一瞬で分かるほど気温が低くなっていた。

 年末というものも近付いてくるこの季節。
 相変わらず、魔物はあっちこっちで出現しては世間を騒がせている。ただ幸いなのが、増加傾向だった魔物の数が停滞状態になった事だろう。
 このまま増えていくのかと思いきや、停滞状態となった。地域によっては少し数が減ったと言う所もあるらしい。

「魔物も微妙に落ち着いてるよな……」
「そうねえ……9月が異常だったのよ」

 俺が魔法少女となってから約二ヶ月。リュネール・エトワールとしても、かなり慣れてきたと思ってる。
 ハーフモードも慣れた物で、普通に出かけるくらいは出来る。ただ無口設定で有るため、人とはあまり会話してない。する相手も居ないしな……おいそこ、ボッチじゃないぞ。
 
「魔物にも冬眠があったりしてな」
「冬眠ね……一部の魔物はそうかも知れないわね」
「え、そうなのか?」
「魔物って、姿形は動物に近いから、それに似た習性があっても可笑しくはないわ」
「ほー……」

 そう言えば最近、ホワイトリリーと出会う事が増えた。出会う事自体はもう慣れたから良いのだが、時々彼女から熱い視線を感じる事があるんだよな……。
 何か顔が赤い時もあって、調子が悪いのかね? 魔法少女とは言え、変身しなければ普通の少女なのだ。そっちの身体で不調が出てしまえば、変身後にも影響が出してしまうだろうし、無理しないで欲しいな。

「そう言えばさ、最近魔法少女が襲われるっていう事件が結構あるみたいなんだが、何か分かるか?」
「魔法少女を襲う? 力の差があるのに?」
「詳しくは分からん。最近、ホワイトリリーから聞いた事なんだけどな」

 小耳に挟んだだけなのだが、最近魔法少女が襲撃されるという事件が何件か立て続けに起きているみたいなのだ。
 変身前なら分かるが、変身後の姿の少女を襲うというのはちょっと考えられない。魔力という装甲があるのに、無謀すぎる気がする。

「何か一般人に成りすまして、近付いてきた魔法少女を刺すそうだ」
「刺されるって……」
「何か良く分からないが、黒い短剣のようなものでこう、サクッと。で、刺された魔法少女はその場で力なく倒れるんだってよ。ただ命に別条はないみたい」

 実際刺された魔法少女も、次の日には回復していて普通に活動できているみたいなのだ。

「そんな倒れた魔法少女に犯人は特に何もせず、そのままその場から消えるみたい」
「なにそれ」
「さあ? でもホワイトリリーが言ってたから実際に起きてるみたいなんだよな」
「目的が分からないわね」
「本当にな」

 黒い短剣という物が謎すぎる。
 刺されると力を失って倒れる? 何か特殊な力がその短剣にはあるという事くらいしか予想できないな。

「でも何かしらね。その黒い短剣……嫌な予感がするわ」
「嫌な予感は当たりやすいんだよなあ……俺も見回りをちょっと強化するか」
「それが良いわね。でも、良いの? 魔法少女たちと会う確率が今まで以上に上がるわよ」
「そこは承知の上だ」

 魔物ではない、魔法少女を襲う存在。何が目的なんだか知らないが……女の子たちを傷つけて良い理由なんて無いしな。
 幸い、命に別条はないとは言え、力を失って倒れてしまうというのは凄い気になる。俺が刺された場合も同じ事が起きる可能性もあるしな。

 少し気を引き締めるとするか。

「と言っても、今すぐ何が出来るというわけじゃないがな」

 俺は魔法省には所属してないし、実際のところは不明。かと言って、ホワイトリリーが嘘付いてるようにも見えないから、起きたという事にしておく。

「実際その場を目撃しないと、何も分からないしね」

 ラビの言葉に同意する。
 しかし……やはりその黒い短剣は危険な臭いがプンプンするぞ。そしてそれを使ってた一般人に装ってた男もな。

「――ラ・リュヌ・エ・レトワル!」
『SYSTEM CALL "CHANGE" KEYWORD,OK――LA LUNE ET L'ETOILE――』

 ふわっと白い光に包まれ、意識は俺からわたしへと変わる。あくまで、表と言うか建前上だけど。

『SYSTEM CALL "CHANGE" SUCCESS!!――GO!』

「いきなり変身なんかしてどうしたのよ」
「ん。これから少し回る」
「またいきなりねー、良いわ、行きましょ」

 そう言ってラビは俺の肩に乗ってくる。この家に魔法少女が住んでると思われるのも面倒なので、姿を消してから窓から飛び出す。
 その後はすぐに解除する。何て言えば良いか、こうサァっと消えてスゥっと出現する感じ。
 実はこの姿を消す魔法、消してる間は魔力を消費するんだよな。あまり長時間は使ってられないのだ。
 なので、使い所は結構少なかったりする。まあ、咄嗟に姿を消せるから便利と言えば便利。魔力が無いと当然発動しないけどな。



□□□□□□□□□□



「確かここだったかな」
「何が?」
「襲撃があった場所」

 魔法少女が襲われたという場所。この一か所しか聞いてないが、他の場所もあるのかもしれない。
 人気ひとけがある場所から少し離れた川原。この近くで魔物が発生し、数名の魔法少女が駆け付けたが、一人が件の男を発見。
 一人の魔法少女が逃げ遅れたのだと思い、近づいたところで刺されたと言う事だ。その後、男は逃走、魔法少女が追いかけるが見失う。

「魔法少女の速さを撒けるとは思えないわよね」

 魔法少女は超人並みに強化された身体能力がある。勿論、それは走る速さも含まれるはずだ。それを撒けるとは、確かに思えない。

「転移、とか?」
「転移魔法……確かにそれなら見逃すのは納得だけど、でもそれだと男は魔法が使えるって事になるわよ」
「確かに」

 俺が実例ではあるが、その男は別に変身とかしてないようだ。なのに魔法が使える……と言うのは確かにちょっと考えにくいな。

「でも、魔法が使える存在がバックに居る可能性もあるわね。無いと思いたいけど」
「魔法少女が、敵?」
「分からないわよ。でもその可能性もあるって事」

 男が魔法を使うのがおかしいと思うなら、その男の後ろに魔法少女が居たらどうか。予め計画を立てて、その見失った場所に来たら魔法少女が転移させる。

 何度も言うが、魔法少女の力は強力だ。
 そして魔法省に所属する義務がない。所属しないなら基本は普通の日常に戻るが、中には悪意に使う魔法少女もいる、と言うか過去に少ないながら実例がある。

「ラビなら魔法少女の場所特定、出来ない?」
「無理ね。私の場合は自分から一定の範囲内に居る魔物や魔法少女が分かるってだけで、実際見ないとそれがどの魔法少女かまでは分からないわ。それに魔法少女の場合は変身して無いと感知できないし。まあ、近付けば何となくは分かるけどね」
「そっか」

 ラビレーダー(勝手に命名)では、一定範囲内の魔法少女がどの場所に居るかという事は分かるが、その魔法少女が誰なのかまでは分からないらしい。そして変身もしてないと感知も出来ない。
 魔物は常に魔力や瘴気を放出してるから感知しやすいそうだ。

 この地域には魔法少女が少なくとも30人は居る。しかしこの30と言う人数は魔法省に所属している魔法少女の人数となる。
 野良などを含めばもっと居るはずだ。そして今はあちこちで魔法少女は活動してるため、ラビレーダーでバックに居る魔法少女を感知するのはちょっと厳しいだろう。

 ……それに、まだ後ろに魔法少女が居るという事が確定してる訳じゃないしな。

「そんな私からお知らせよ。こっちに近づいてくる魔法少女が居るわよ」
「え?」
「もうすぐ視認できる範囲になるわね。どうする?」
「ん。逃げる……」
「あ、リュネール・エトワール!」
「……」

 時すでに遅し。
 声のした方を向けば、そこには魔法少女ホワイトリリーが笑顔でこちらに近付いて来ていたのだった。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。 異世界パルメディアは、大魔法文明時代。 だが、その時代は崩壊寸前だった。 なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。 マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。 追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。 ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。 世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。 無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。 化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。 そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。 当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。 ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる

家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。 召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。 多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。 しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。 何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。

処理中です...