TS魔法少女リュネール・エトワール! ~星月の魔法少女は気の赴くままに行動する~

月夜るな

文字の大きさ
19 / 137
第二章『魔法少女を襲撃する者』

Act.08:ラビとエーテルウェポン②

しおりを挟む

「エーテルウェポンっていうのは、妖精世界にあった魔力の武器の事よ」
「魔力の……武器?」

 魔力の武器……魔力が武器?

「そう。見た目は普通の武器、だけどそれには魔力が流れてる。更に自身の魔力を使うことで剣なら切れ味……武器の攻撃性能等を底上げできる、要はゲームとかで言う特殊武器みたいなものよ」

 魔力が流れている武器、か。ゲームでの例えで何となくは分かる。特殊効果の付いた武器とかそういう類の物ということだろう。

「そして何より……魔力解放エーテルバーストが使えるのよ」
魔力解放エーテルバースト……?」
「ええ。名前の通り、纏っている魔力を解放して――何て言えば良いかしら。そうね、奥義を放つような感じよ。その力は武器によって千差万別」
「なるほど」

 ラビの説明をまとめるとこんな感じだ。
 まず、エーテルウェポンと言うのは魔力を持つ武器の事で、普通に使ってもそれなりには強い。見た目はファンタジーとかでよく見るような、剣やら杖やらみたいな物だ。
 で、自身の魔力を武器に流す事によって武器の性能を一時的に向上させる事が可能な武器のようだ。

 そして奥義。
 名前で察する通り、武器の持つスキルを放つことが出来る。武器の纏っている魔力を全部消費し、一撃必殺なスキルを撃つ。
 使用後はしばらくの間何も使えない状態となる。まあCTクールタイムみたいな物だ。
 因みに自身の魔力を流した状態で使うと、更なる威力向上が見込める。ただし、本来の武器の魔力を更に増加させた状態……キャパオーバーで放つため、CTも長くなるそうだ。

「そのエーテルウェポンがどうしたの?」
「エーテルウェポンは特殊な武器よ。……実体を持たない刃の武器だって有る」
「!」

 実体がない武器。
 短剣の刃がその実体のない物ならば、魔力装甲を無視できる。実体がないから体に刺さっても特に何の影響もない。

「……その武器、結構危険?」

 実体がない。
 それはまだ良いが、仮にだ……誰かを刺した状態で何かしらすると、刃が実体化するとしよう。魔力装甲は意味を成さずに殺せてしまうのではないだろうか。

「うーん、それは流石に大丈夫だと思うわ。実体がないから魔力装甲が何の意味をも成さないだけで、実体化したら弾かれるはずよ、装甲に」
「そっか」

 ラビを見た感じでは大丈夫そう?

「まあそれで話を戻すわね。その武器が魔力を吸収するのに特化したエーテルウェポンなら、可能性はある。装甲を無視して体内の魔力のみを吸収する事が出来てもおかしくはないわ」
「……」
「それともう一つ。あなたが持っているそのステッキもエーテルウェポンの一種よ」
「そうなの!?」

 自分の持っているステッキを思わず見る。
 魔法少女が持つのはお約束なステッキ……普通ではないとは思ったけど、確かに魔石とか保管できてたしな。

「その中に魔石を保管できているのが証拠よ」
「この収納は武器スキルみたいな物?」
「そういう事。後は魔法少女の魔力の補助等を担ってくれてるのよ。ステッキ無しで一度魔法使ったこと有るわよね? どうだった?」

 それは少し前の事だ。
 ステッキがなくても魔法少女の状態なら魔法を使えるのか? というふとした疑問から試したことだ。
 結果的には使えた。使えたのだが、ちょっと魔力の消費とかが大きかった気がする。あとはステッキがある時よりもコントロールが難しかった印象がある。

「魔力消費が大きい。コントロール少し難しい」
「そういう事。そういった物を調整補助してくれてるのがステッキなのよ」
「なるほど……」

 何らかの補助機能か何かがステッキにはあるのだろう、とは何回か思ったことはある。
 ステッキよ、お前はかなり大事な事とかをしてくれていたのか……ついついステッキを撫でてしまう。何か点滅したようだ。何処となく、嬉しそうな感じがした。

「それでエーテルウェポンなんだけど、魔法少女ならまだしも、そんな男たちが持ってるなんておかしいわ。妖精世界の武器なのよ?」
「……妖精世界と言えば他の魔法少女にはラビみたいな妖精がいる?」
「それは……」

 そう言えば他の魔法少女たちにはラビみたいな存在が居るのかなと思っていたのだが、何となく居なさそうなんだよな、ホワイトリリーもそうだし、ブルーサファイアもだ。
 今まで気にしてなかったが、ちょっと気になってしまった。後、妖精世界と言う場所も。ちらほら言ってたけど、詳しい事は聞いてなかった。というより、無理に聞くつもりは無かった。

「……そうね、隠すのは良くないわ」
「? ……ラビが言いたくないなら無理して言わないで良い」

 ラビは俺を魔法少女にしても、戦いとかを強制はしてこないし、俺の意思を尊重してくれる。普通に生活もできてるし、ラビレーダーも役に立っている。
 まだ二ヶ月あまりしか経過してないが、相棒と言っても良いと思ってる。だから言いたくないことは別に言わなくて良い。いつか教えてくれたらそれは嬉しいが。

「いえ、話すわ。……まず、他の魔法少女に妖精が居るのかって話ね。率直に言うと居ないわ」
「居ない?」
「ええ。居ないわよ。むしろ、この世界の何処にも妖精は居ない。私しか居ないわ」
「それってどういう……」
「そのままの意味よ。妖精と呼ばれる存在は私のみしか居ないわ」

 そういうラビの表情は悲しそうだった。こんな顔をするラビは初めてかも知れないな。

「何か、あった?」

 まあ俺でも流石に分かる。ラビの身に何かが起きたという事くらいは。ラビを両手に持ち上げ、目の前に持ってくる。
 傍から見れば女の子が兎のぬいぐるみを抱いているような可愛らしい状態だと思う。

「私が居た世界――妖精世界フェリークはもう無いのよ」
「もう、無い……?」

 それってつまり、妖精世界は滅んだという事だろうか? 一体何で……それじゃあ、ラビは?

「ええ。滅んだ……正確には滅ぼした、かな」
「滅ぼした? 誰が……まさか、妖精?」
「正解よ」
「! どうして」
「簡単よ。技術の発展には犠牲は付き物……犠牲ってレベルじゃないけどね。私たちの住んでいた妖精世界は魔法という力が普及していたっていうのは前に話したわよね?」

 その言葉に俺は頷く。魔法がある世界で、魔石と呼ばれる物を主なエネルギーとして使っていたという事は聞いている。

「魔法は生活する上で、もう切っても切れない関係となってたわ。魔石というエネルギーも要は魔力だし」
「わたしたちの世界で言う科学?」
「ええ。科学の発展にも犠牲はあったでしょう?」
「うん」
「何か結果を得るには、犠牲になるものもある。それが技術の発展の宿命」

 この世界だって今じゃ、本当に便利になっているが、この状態になるまでにいくつもの犠牲を払ってきたはずだ。それは魔法でも同じ事が言えるのだろう。

 しかし、世界を滅ぼすって一体何が起きた? そんなやばい何かを研究とかしていたのだろうか。
 街一つが滅んだとか、一部の場所が滅んだとか、そういうのであればまだ? 考えられなくもない。いやまあ、これでも十分やばいんだけどさ。
 この世界にもあったよな。放射線が溢れ出てしまい、一部地域が長い間閉鎖されて居たという事件が……。

「世界を滅ぼすって一体何を……」
「そうね、そういう反応になるわよね。……でもあれは今の世の中を更に良い物にしようとした結果なのよ。そこに悪意はなく、本当にただ純粋な世の中を良くしたいという気持ちで行われていたわ」

 悪意はない。
 つまり、世界が滅んだ原因は本当に世の中を良くしたいと思ってた上での研究で起きた不幸な事故。とは言え、世界を滅ぼすって規模が違う。

「私たちが行っていた研究……それは――」

 ――


 ラビはただそう静かに言うのだった。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。 異世界パルメディアは、大魔法文明時代。 だが、その時代は崩壊寸前だった。 なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。 マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。 追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。 ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。 世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。 無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。 化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。 そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。 当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。 ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる

家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。 召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。 多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。 しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。 何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。

処理中です...