TS魔法少女リュネール・エトワール! ~星月の魔法少女は気の赴くままに行動する~

月夜るな

文字の大きさ
23 / 137
第二章『魔法少女を襲撃する者』

Act.12:ホワイトリリーとリュネール・エトワール①

しおりを挟む

「この姿では初めましてですよね! 私、白百合雪菜って言います」
「ん。……司」
「司さんって言うんですね」

 さて、今の俺は何をしているのかと言えば、ホワイトリリーこと白百合雪菜と会っていた。もうお気付きだろうか? 魔法少女としてではなく、本当の姿で、だ。
 俺の場合はこの姿も偽物なのだが、本当の姿を見せる訳にもいかないから仕方がない。ハーフモードで、前に着ていた黒いパーカースタイルである。
 この姿でホワイトリリーと会うのはこれが初めてなので、問題ないだろう。

「あまり変わってないんですね」
「うん。そういう事」

 蒼にも言われた気がする。喋り方とか、統一してるからそりゃあそうか。それにこの姿もぶっちゃけ変身と同じ様なものだしな。

 何故こうなったのか……それは簡単で、雪菜に蒼と会ったという事を話した為だ。ただ抱き寄せたり、蒼が泣いた事については伏せてある。
 それを言ったら雪菜は『ずるいです!』と抗議の声をあげたのである。後そのまま流れるようにこうやって会う事になってしまった。

 別に嫌という訳ではない。ただ本当の姿がばれると言う事を恐れていると言えば良いか……はあ、ぼろが出ないように気をつけねば。

 そんな訳で今俺たちは某有名なショッピングモールに来てるらしい。何故ここなのか……まあ確かに色々あるけどな。

「やっぱ迷惑でしたか?」

 そんなこんな考えてると、不安そうにこちらを見る雪菜。別に迷惑とは思ってない。これは俺の問題だしな……本来の姿っていうのが一番の問題だ。

「ん。別に迷惑とは思ってない。何処行くの?」
「あ……特に決めてませんでした」
「え」
「す、すみません! 近い所で出掛けられるのはここくらいしか思い浮かびませんでしたし、司さんと出掛けられるって事が嬉しかったので……」

 お、おう。
 まさかの無計画。まあ、ショッピングモールで計画って言っても特に無いよな。でも、せめて行きたい所くらいはリストアップしようぜ……。

「適当に回ろう。……何処が良い?」
「えっとえっと……」

 時刻は10時半。土日という事もあってお客の数はかなり多い。県内で一番広いって言うくらいだし、当然といえば当然か。しかも県庁所在地である水戸にあるし、前も言った通り増設されたから本当デカイよなここ。

「あ、あそことかどうでしょうか!」

 そう言って指を向けた先にあるのはゲームセンターだった。雪菜、ゲーセンに興味があるのかな? いやまあ、俺も好きだけどよ。

「ん。行こう」
「はい!」

 そんな訳で俺と雪菜はゲームセンターへ足を運ぶのだった。





「ふふ」
「ん? どうかした?」

 私は今日は本当にわくわくしています。ついつい、嬉しくて笑いが出てしました。……少し恥ずかしいですね。

「いえ! 何でも無いですよ」

 何故そんな嬉しいのかと言えば、やっぱり隣りにいるこの子ですね。彼女の名前は司さんと言うみたいです。苗字までは教えてくれませんでしたが、名前が分かっただけでも良しとします。
 そして皆さん、驚いて下さい。この子こそ、この地域では有名な野良の魔法少女である、リュネール・エトワールの正体だったりします。

 そして私の好きな人でもあります。
 同性なのに、可笑しいかもしれませんが、好きなものは好きになってしまったのだから仕方が有りません。でも好きなんですけど、未だに告白とかは出来てません。

 振られるのが怖いというのもありますが、やっぱり同性だからでしょうか。

 それは今は置いとくとしましょう。いつか、告白できたら良いなって思います。

 そんなリュネール・エトワールこと、司さんと今居るのは水戸市にある某有名なショッピングモールの中です。どうしてこんな所にいるのか? それは私が誘ったからです。

 だって、司さん、ブルーサファイア……いえ蒼ちゃんとリアルで会ったらしいじゃないですか! 仲良さそうに会話してたのを見てちょっともやっとしました。
 いえ、もやっとというのもありますが、やっぱり素直に羨ましいというのが強いですね。それにですよ? 蒼ちゃん、司さんのこと話そうとすると顔を赤くするんです。

 ……もしかして、蒼ちゃんも司さんが好きなのでしょうか?

 いえいえそれはない……とは言えませんね。会った時に何をしていたかまでは流石に教えてくれませんでした。でも、蒼ちゃんと司さんの接点ってあまり無かった気がします。

 でも、最初にリュネール・エトワールと出会ったのは蒼ちゃんだと聞いてます。そそくさとその場から居なくなってしまったらしいですが。
 その時点では特に、蒼ちゃんは何もなかった気がします。やっぱり、出掛けてたという時に何かあったのでしょうか?

 いえ、私がどうこういう資格はありませんね。妹の冬菜の言う通り、恋とは突然落ちるものです。それがたとえ、同性であっても恋は恋なのです。

 ですが! 私も司さんが好きなので負けていられません! そんな訳で私は半ば強引にこうして出掛けているのですが、後々考えると、これは大分迷惑な行為ですね。

 そんな不安もあり、ついつい司さんに聞いてしまいました。でも、司さんは別に気にしてないという感じで返してくれました。私的の見え方では、本当にそう言ってくれてるのだと思えました。

 そんな事考えてると、私はゲームセンターのあるクレーンゲームの前に止まっていました。中を覗くと、そこには可愛らしい兎のぬいぐるみがありました。
 色は三種類はありますね。キュートな目もまたかわいいです。

 それを見て私は素直に欲しいと思いました。でもこういうのって結構難しいんでしたよね? 1プレイ100円で6プレイ500円となってました。

「どうかしたの? ……欲しい?」
「い、いえ! た、ただ可愛いなと思いまして」

 すぐ隣りにいた司さんにそう言われ慌ててしまいました。と言うか、近いですね! ……別に悪い気はしません。もっと近付いてくれても良いのですよ?

「なるほど」
「え?」

 私の言葉を聞いた司さんはズボンのポケットからおもむろにお財布を取り出しました。黒い、シンプルな感じの財布ですね。あと星と月の絵もあるみたいです。
 よくよく見たら司さんの着ている黒いパーカーにも小さく星と月が描かれてますね。その下までは流石に見えませんが……ズボンは特に何もない普通なものでした。

 もしかして司さんは星とかが好きなのでしょうか? 魔法少女の時も衣装とかは殆ど月とか星関係が描かれてましたし。

 司さんがお財布から取り出したのは500円玉でした。それをクレーンゲームのコイン投入口へ入れます。すると、6という数字が赤く表示されました。

 二つのボタンを使い、司さんは一番取り出し口に近い位置にある白色の兎さんの所でクレーンを止めました。正面以外にも、横からも見たりして位置を把握してるみたいです。

 そして二つ目のボタンを押し終えた所で、クレーンがゆっくりと降りていきます。二つのアームが兎さんを掴み、そして持ち上げました。
 しかし、途中で落ちてしまいました。結構良い感じになってたと思うのですが、駄目だったのでしょうか。

「ん。こういうのは何回かしないとアームが弱い」
「そうなんですか?」

 何でも一定回数プレイしないとアームが弱い感じらしいです。良く分かりませんが……。

 残り回数が1になり、最後となります。司さんも思った以上に集中していて、話しかけにくかったですね。同じように白い兎さんを狙っています。

「取れた」

 凄いです。今度はちゃんと兎さんが取れ、素直に私は感心してしまいます。

「はい」
「え?」

 そんな取れた白い兎さんのぬいぐるみを司さんは私へ、差し出してきます。

「欲しかったんでしょ?」
「そ、それは……で、でも良いのですか?」
「うん」

 そう言ってあまり表情を見せない顔が笑います。

「っ!?」

 ドキッとしました。
 リュネール・エトワールはあまり表情は見せません。それは元の姿でも同じでしたが、それでも全く無いという訳ではないのです。
 今見せた笑顔……あれは流石に反則だと思うですよ!

「ありがとうございます……」
「うん」

 流石に受け取らないという選択はできませんね。それに欲しいと思っていたのも事実ですし……私は司さんにお礼を言ってから受け取るのでした。



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。 異世界パルメディアは、大魔法文明時代。 だが、その時代は崩壊寸前だった。 なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。 マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。 追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。 ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。 世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。 無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。 化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。 そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。 当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。 ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる

家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。 召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。 多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。 しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。 何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。

処理中です...