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第二章『魔法少女を襲撃する者』
Act.12:ホワイトリリーとリュネール・エトワール①
しおりを挟む「この姿では初めましてですよね! 私、白百合雪菜って言います」
「ん。……司」
「司さんって言うんですね」
さて、今の俺は何をしているのかと言えば、ホワイトリリーこと白百合雪菜と会っていた。もうお気付きだろうか? 魔法少女としてではなく、本当の姿で、だ。
俺の場合はこの姿も偽物なのだが、本当の姿を見せる訳にもいかないから仕方がない。ハーフモードで、前に着ていた黒いパーカースタイルである。
この姿でホワイトリリーと会うのはこれが初めてなので、問題ないだろう。
「あまり変わってないんですね」
「うん。そういう事」
蒼にも言われた気がする。喋り方とか、統一してるからそりゃあそうか。それにこの姿もぶっちゃけ変身と同じ様なものだしな。
何故こうなったのか……それは簡単で、雪菜に蒼と会ったという事を話した為だ。ただ抱き寄せたり、蒼が泣いた事については伏せてある。
それを言ったら雪菜は『ずるいです!』と抗議の声をあげたのである。後そのまま流れるようにこうやって会う事になってしまった。
別に嫌という訳ではない。ただ本当の姿がばれると言う事を恐れていると言えば良いか……はあ、ぼろが出ないように気をつけねば。
そんな訳で今俺たちは某有名なショッピングモールに来てるらしい。何故ここなのか……まあ確かに色々あるけどな。
「やっぱ迷惑でしたか?」
そんなこんな考えてると、不安そうにこちらを見る雪菜。別に迷惑とは思ってない。これは俺の問題だしな……本来の姿っていうのが一番の問題だ。
「ん。別に迷惑とは思ってない。何処行くの?」
「あ……特に決めてませんでした」
「え」
「す、すみません! 近い所で出掛けられるのはここくらいしか思い浮かびませんでしたし、司さんと出掛けられるって事が嬉しかったので……」
お、おう。
まさかの無計画。まあ、ショッピングモールで計画って言っても特に無いよな。でも、せめて行きたい所くらいはリストアップしようぜ……。
「適当に回ろう。……何処が良い?」
「えっとえっと……」
時刻は10時半。土日という事もあってお客の数はかなり多い。県内で一番広いって言うくらいだし、当然といえば当然か。しかも県庁所在地である水戸にあるし、前も言った通り増設されたから本当デカイよなここ。
「あ、あそことかどうでしょうか!」
そう言って指を向けた先にあるのはゲームセンターだった。雪菜、ゲーセンに興味があるのかな? いやまあ、俺も好きだけどよ。
「ん。行こう」
「はい!」
そんな訳で俺と雪菜はゲームセンターへ足を運ぶのだった。
「ふふ」
「ん? どうかした?」
私は今日は本当にわくわくしています。ついつい、嬉しくて笑いが出てしました。……少し恥ずかしいですね。
「いえ! 何でも無いですよ」
何故そんな嬉しいのかと言えば、やっぱり隣りにいるこの子ですね。彼女の名前は司さんと言うみたいです。苗字までは教えてくれませんでしたが、名前が分かっただけでも良しとします。
そして皆さん、驚いて下さい。この子こそ、この地域では有名な野良の魔法少女である、リュネール・エトワールの正体だったりします。
そして私の好きな人でもあります。
同性なのに、可笑しいかもしれませんが、好きなものは好きになってしまったのだから仕方が有りません。でも好きなんですけど、未だに告白とかは出来てません。
振られるのが怖いというのもありますが、やっぱり同性だからでしょうか。
それは今は置いとくとしましょう。いつか、告白できたら良いなって思います。
そんなリュネール・エトワールこと、司さんと今居るのは水戸市にある某有名なショッピングモールの中です。どうしてこんな所にいるのか? それは私が誘ったからです。
だって、司さん、ブルーサファイア……いえ蒼ちゃんとリアルで会ったらしいじゃないですか! 仲良さそうに会話してたのを見てちょっともやっとしました。
いえ、もやっとというのもありますが、やっぱり素直に羨ましいというのが強いですね。それにですよ? 蒼ちゃん、司さんのこと話そうとすると顔を赤くするんです。
……もしかして、蒼ちゃんも司さんが好きなのでしょうか?
いえいえそれはない……とは言えませんね。会った時に何をしていたかまでは流石に教えてくれませんでした。でも、蒼ちゃんと司さんの接点ってあまり無かった気がします。
でも、最初にリュネール・エトワールと出会ったのは蒼ちゃんだと聞いてます。そそくさとその場から居なくなってしまったらしいですが。
その時点では特に、蒼ちゃんは何もなかった気がします。やっぱり、出掛けてたという時に何かあったのでしょうか?
いえ、私がどうこういう資格はありませんね。妹の冬菜の言う通り、恋とは突然落ちるものです。それがたとえ、同性であっても恋は恋なのです。
ですが! 私も司さんが好きなので負けていられません! そんな訳で私は半ば強引にこうして出掛けているのですが、後々考えると、これは大分迷惑な行為ですね。
そんな不安もあり、ついつい司さんに聞いてしまいました。でも、司さんは別に気にしてないという感じで返してくれました。私的の見え方では、本当にそう言ってくれてるのだと思えました。
そんな事考えてると、私はゲームセンターのあるクレーンゲームの前に止まっていました。中を覗くと、そこには可愛らしい兎のぬいぐるみがありました。
色は三種類はありますね。キュートな目もまたかわいいです。
それを見て私は素直に欲しいと思いました。でもこういうのって結構難しいんでしたよね? 1プレイ100円で6プレイ500円となってました。
「どうかしたの? ……欲しい?」
「い、いえ! た、ただ可愛いなと思いまして」
すぐ隣りにいた司さんにそう言われ慌ててしまいました。と言うか、近いですね! ……別に悪い気はしません。もっと近付いてくれても良いのですよ?
「なるほど」
「え?」
私の言葉を聞いた司さんはズボンのポケットからおもむろにお財布を取り出しました。黒い、シンプルな感じの財布ですね。あと星と月の絵もあるみたいです。
よくよく見たら司さんの着ている黒いパーカーにも小さく星と月が描かれてますね。その下までは流石に見えませんが……ズボンは特に何もない普通なものでした。
もしかして司さんは星とかが好きなのでしょうか? 魔法少女の時も衣装とかは殆ど月とか星関係が描かれてましたし。
司さんがお財布から取り出したのは500円玉でした。それをクレーンゲームのコイン投入口へ入れます。すると、6という数字が赤く表示されました。
二つのボタンを使い、司さんは一番取り出し口に近い位置にある白色の兎さんの所でクレーンを止めました。正面以外にも、横からも見たりして位置を把握してるみたいです。
そして二つ目のボタンを押し終えた所で、クレーンがゆっくりと降りていきます。二つのアームが兎さんを掴み、そして持ち上げました。
しかし、途中で落ちてしまいました。結構良い感じになってたと思うのですが、駄目だったのでしょうか。
「ん。こういうのは何回かしないとアームが弱い」
「そうなんですか?」
何でも一定回数プレイしないとアームが弱い感じらしいです。良く分かりませんが……。
残り回数が1になり、最後となります。司さんも思った以上に集中していて、話しかけにくかったですね。同じように白い兎さんを狙っています。
「取れた」
凄いです。今度はちゃんと兎さんが取れ、素直に私は感心してしまいます。
「はい」
「え?」
そんな取れた白い兎さんのぬいぐるみを司さんは私へ、差し出してきます。
「欲しかったんでしょ?」
「そ、それは……で、でも良いのですか?」
「うん」
そう言ってあまり表情を見せない顔が笑います。
「っ!?」
ドキッとしました。
リュネール・エトワールはあまり表情は見せません。それは元の姿でも同じでしたが、それでも全く無いという訳ではないのです。
今見せた笑顔……あれは流石に反則だと思うですよ!
「ありがとうございます……」
「うん」
流石に受け取らないという選択はできませんね。それに欲しいと思っていたのも事実ですし……私は司さんにお礼を言ってから受け取るのでした。
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