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第三章『真白襲来!?』
Act.09:とある日の前日②
しおりを挟む「ただいま」
「あ、お兄、お帰り!」
ざっと3時間くらい経過した所で、俺は家に戻ってくる。今は一人ではなく、真白が帰ってきているので、俺の言葉に返ってくる声がある。
「何かあった?」
「ん。あったと言えばあったような」
「ぷ、なにそれ」
あったのは、魔法少女の二人……ブルーサファイアとホワイトリリーと会って何やかんやあったくらいだろうか。
「それにしても……やっぱりその姿だと妹みたい!」
「まだ言う」
「だって、本当にそっくりじゃない?」
まあ、それは認める。ハーフモードでは黒髪だけど、完全状態だと銀髪だしな。髪の長さも同じくらいだろうか。違う点はやっぱり瞳の色くらいか?
いや、変身状態の髪って青のグラデーションみたいなのがかかってるんだよな。普通ではありえないカラーだし、そこも違うか。
「まあ、そうだけど」
「でしょ! そう言えば今日はイブだけど、お兄は恋人とか居ないの? 居たら妬けるけど」
「妬けるって……居ると思う? わたし今ニート」
「ぷ!」
「何」
「いや、その姿でニートって言うと可笑しくて」
真白のやつ……でも確かに15歳位の女の子が自分ニートとか言ったらそれは可笑しいな。
「確かにそうだけど……」
しかし、いきなり恋人ね。
居ない……のだが、俺と言うかリュネール・エトワールに対しては好きな人が居る。さっきも上げたブルーサファイアとホワイトリリーだ。
「ふふ、ごめん。それで、お兄、明日は何時頃にで出す予定なの?」
「ん。午後かな」
「午後かー、了解! 楽しみにしてるね!」
「ん。でもただのドライブ、だよ?」
「私はお兄と居られればそれで良いんだよ」
この妹、ブラコン過ぎる。
それを言ったら俺もシスコンだから、どっちもどっちか。もう認めるよ、妹は可愛いし守ってあげたくなるくらいだ。伊達にずっと一緒に居た訳じゃないしな。
これじゃあ、お互い様だなー。
「わたしより、真白はどうなの?」
「え? 私?」
「ん。好きな人とか出来た?」
俺の事を好きだって言うのは知ってるが、血が繋がってるから叶わないものだ。俺ではなく、大学とかで他に好きな人とか出来たりしたのだろうか?
「告白なら2回位されたけど……」
「流石」
大学でも、真白は告白されたらしい。大学って事はその人たちも、絵とかが上手い人なのかな?
「うん。二人共、優しい人だったよ。片方は先輩で、もう片方は同学年だね。絵とかも上手かった。私はアニメ調なイラストを描くけど、二人は如何にも芸術? な感じの絵を描く凄い人だった」
「へえ」
流石はそういう関係の大学だなと思う。やっぱり、凄い人は居るもんだな……真白も凄いと思うけどな。俺としては、絵を描く人って女性が多いイメージだったんだけど、男性も居るのか。
あ、でも良く考えたら世の中、男性のイラストレーターだってたくさんいる。これは俺の偏見だったな。
「でも、好きにはなれなかったかな……やっぱり」
「真白……」
「お兄、その姿でそんな顔しないで……可愛いけど、何か罪悪感がある」
「こら」
「ごめんね。でも大丈夫……」
「それなら良いけど……」
真白、やっぱりまだ引き摺ってしまって居るのだろうか。
好きになる……俺は未だにその気持が分からない。俺は誰かを好きになった事がない……だからどんな気持ちなのか、それは分からない。
昔、何度か告白されたことがあった。俺みたいさえない男を好きになる物好きが居るんだな、とその時は思っていた。断る時も出来る限り優しくしていた。
改めて思ったが、確かに俺は……いや、やめておこう。
「お兄はやっぱり……」
「ん?」
「んーん、何でも無い。そうだ! お兄、今日の夕飯は私が作るよ! 何か材料ってあるの?」
「また唐突な……」
「良いじゃない。私が料理できる事くらい知ってるでしょ。まあ、お兄もそうだけどね」
「ん」
真白は頭が良いに加えて、家事の才能も併せ持ってる。運動神経は人並み(真白談)らしいが、それでも十分反則な才能を持ってると思う。それもあるのだから、そりゃあ、人気でるよな。
そう言えば、お弁当忘れたときとか持ってきてくれた時があったな……あの時はクラスの連中にも羨ましがられてたな。
そんな訳で真白は容姿も良く、家事才能もあり、頭も良い……何だこのチート級な才能は、と思う。そんな真白が俺の事を好きになった理由は何だったんだろうな……。
「材料……多分無い」
「ええー!」
確か昨日の分でもう色々と切れてた気がする。今日は外食にでもしようかと考えていたしな……因みに昨日は俺が作っていた。真白も久しぶりにお兄の料理が食べれたって喜んでくれたのはちょっと嬉しかったな。
「買いに行こう! 今すぐに!」
「え?」
「ほらほら、お兄! 行くよー! あ、その姿でね!」
「え、ちょ……」
何やかんやされるがまま、俺は真白に連れ去られたのだった……リュネール・エトワールの姿のままで。
□□□
「そーれ! スペースカッター」
魔法のキーワードを唱えると、目の前に居た巨体の魔物は空間ごと真っ二つに斬れる。空間ごと斬ってしまうため、どんなに守りが堅くても意味がない。
「うっわ。相変わらずえぐいね、君」
「この魔法の力をくれたのはララじゃないの」
右肩に載っている黒い兎のぬいぐるみ……ララに言われて、私はそう返す。魔法少女にしたのはララだし、この力の元凶もララじゃないの?
「いや、確かに魔法少女にしたのはボクだけどさ……使える魔法自体はその人の素質によって変わるからね?」
「ふーん」
「空間を操るとか……」
「でも、私魔力自体はそこまで多くないんでしょ。何となく自分でも分かってる」
「うん。君の魔力は人並み以下、と言っても過言じゃないよ。でもその魔力量で空間を操れているんだから大したものだよ」
そうなのだ。
私は空間を操るという強力な魔法が使えるのだけど、私自身の魔力量が普通の魔法少女と比べて低い。だからそうホイホイ連発も出来ないから、戦い方にも工夫が必要なのだ。
現に、今使った空間ごと斬る魔法だって今ので半分くらい使った気がする。だから私はあまり魔物とは戦ってない。弱い魔物を倒しては魔石を集めてる程度だ。
因みに転移魔法は何故かそこまで消費しない。というより、距離によって変わるから一概には言えないけどね。近い街間程度なら普通に移動できるくらいね。
「魔石のお陰でもあるけれどね」
魔石は魔力を保有している宝石だ。だからその魔力を使って魔法の補助にする事も可能だ。魔力を回復させる手段としても使えるわね。と言うより、魔力を回復する手段はそれしか無いと思う。
「結局魔力集めは微妙ね。ごめんね、ララ」
私も少し反省している。他の誰かに頼むなんて卑怯過ぎるし、一般人を巻き込むなんて以ての外だった。今更許してほしいとは言わないけれど……出来れば許してほしいな、なんてね。
「大丈夫さ。元よりかなり時間がかかるのは既に分かってた事だしね。それに今すぐって言うわけでもないから」
「そっか。……うん、私もっと頑張るわね」
「ああ……でも、無理はしないで欲しい。君は強力な魔法が使えるけど、魔力は少ないし、元の体も……」
「分かってるわ。そこはもう自分の事だし」
元……まあ、変身前の姿のことよね。私って生まれつき身体が弱いから、しょっちゅう熱とか出したり風邪引いたりして、お父さんにもお母さんにも迷惑かけてたな。
「それでも、そこそこは溜まってるじゃない?」
「そうだね……」
ステッキとは別にもう一つ、ララが持っている魔法の道具にはキラキラ光ってる何かが入っていて、メーターのようなものがちょっと上がってるのをみて、そう言う。
このキラキラしているのは魔力で、私が地道にコツコツ集めていた物でもある。残念ながら男に渡していた短剣は、失ってしまったのであの魔力を期待することは出来ない。
「ねえ。ララはさ、あの星月の魔法少女についてどう思う?」
「どう思う、か。うーん……特に何もないかな、妖精みたいな力を感じるのは気になるけど」
野良で無支援に活動している魔法少女。私も危うく捕まりかけたが、彼女は別に私を責めようとは思ってなかったみたいだった。
一体何で野良で?
まあ、そう思うのは私だけじゃないと思う。とは言え、自分も野良みたいなものだけれどね。
「正直に言ったらさ、協力してくれると思う?」
「それは……分からない。でも何となくではあるけど、協力してくれそうではあるね。ただ向こうについている妖精がどうかは分からないけど」
「そっか」
彼女の魔力を借りられれば結構集まるんじゃないかなって思ったんだけど、向こうの事を私は全く知らないし、いきなりそういうのは駄目よね。
「何悩んでるんだい。君のやりたい方法でやるのが良いよ。ボクは何も言わないから……あでも、前みたいなやつは勘弁ね」
「分かってるわよ!」
そんな他愛の無い会話をしながら、時間は過ぎていくのだった。
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