TS魔法少女リュネール・エトワール! ~星月の魔法少女は気の赴くままに行動する~

月夜るな

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最終章『妖精世界』

Act.20:約束の日

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 翌日。
 今日は知っての通り、二人とブラックリリーを会わせる日となっている。ただ、ブラックリリーの体調が優れず、危ないと思ったらララが連絡してくれるようになってる。その時は、わたしが二人に説明する感じだ。

 今の所、連絡はないので予定通りかな。

「……」

 鏡を見ながら慣れた手つきで、髪の毛を梳いていく。ほんのりと昨日のシャンプーの香りがする。こうやって髪の毛を梳くのも、シャンプーするのもかなり慣れてきたなと思いつつ。

 昨日は、一度家に帰りお粥を作って香菜の家に持って行った。丁度良い感じにその時、香菜は目を覚ましていいたので、作ってきたお粥を食べてもらった。

 ただのお粥であって、別にこれと言った特別な事はしてないが、美味しいと言ってくれたのはちょっと嬉しかったかもしれない。

 お粥を食べた後に、ララが言ってた通り彼女の方から色々と話してくれた。
 まず、身体が弱いという事。これは生まれつきで、今もまだ同じという事。ただ、良い方向には進んでいるらしくて、それを聞いて少し安心した。

 小学生の時は、今よりももっと酷かったらしくほとんど教室に居ない状態だったらしい。中学校はほんの少しはマシになったけど、それでもやっぱり保健室に居る事の方が多かった。
 そして何とか中学校は卒業したけど、この調子で高校に進学しても単位不足になるかもしれない、そんな訳で断念してしまったみたい。
 それでも一応、勉強はしていたし、高校についても調べていたみたい。だから部屋にはそう言った過去問題集とか、パンフレットとかがあったという訳だ。

 香菜は今年の誕生日が来れば17歳になるが、まだ来てないので16歳、そう自分からわたしに話していた。わたしが聞いた訳じゃないよ!

 ……ブラックリリーも色々あるんだなって思った。
 結構驚いた事があったけど、取り合えず彼女については少し分かったと思う。

「何だかな」

 ホワイトリリーやブルーサファイアにも何かあるんだろうか。
 まあ、あの子たちは自分の意思で選んで、魔法省にも所属している訳だけど……内側なんて言う物は誰にもあまり見せたくないものだろう。
 それはともかくとしても、仮に二人にも何かあるのであれば……出来る限りは支えてあげたいとは思ってるし相談もしてくれも良い。

「偽善者かな?」

 偽善者、なのかもしれない。
 と言っても、わたしはやらない偽善よりやる偽善って思ってるけど。

「ん。まだ時間ある」

 予定時刻まではまだまだあるので、その間に何をするべきか。
 これと言ってやる事はないかな? 因みにラビについては、家に居る時は基本的には本来の姿で居るみたいなので、部屋は空いてる部屋を使ってもらってる。

 真白の部屋でも良かったのだが勝手に使うのはあれだし、今のラビの事を文章て伝えるのはちょっと難しいので、真白に教えるのは次帰ってきた時かな。

 と言っても、2月の初め頃だからもう結構すぐなんだけど。

 それにしても、ここ最近のこの地域は平和である。前の状態に戻ったというべきか……魔物の出現数が目に見えて少ない。
 数日間、出現しなかった時もあったし……出現したとしても、以前より大幅に弱くなってC以下の魔物がほとんどだ。更に数も少ないから、わたしが行く事なく終わってしまう。

 一応、ラビが感知してくれるんだけどすぐに魔法少女の反応もあって、あっさり倒されてしまうようだ。

 脅威度Sの魔物を二体倒したその影響なのかな? 魔物については謎が多いから何とも言えないが……とにかく数が減っているのは確かだ。

「平和なのは良いけど……」

 異常事態もあったし、脅威度Sの魔物の事もあったし……休めるのは良い事だと思うけど、この状態が結構怖かったりする。
 唐突にまた大量出現したら……と考えるとね。勿論、わたしも油断してないつもりだし魔法省もあんな事があった後なので、未だに警戒を続けているけど。
 嵐の前の静けさって言うやつだ。今思えば、魔物の大量出現が起きた前も、減少傾向が続いていたしそれに似ているから要警戒かな?

 わたしは、そんな事を思いながら時間近くまで何をするかを考えるのだった。



□□□



「今日、ですね」

 誰も居ない自分の部屋で、私は一つ呟きます。
 何が今日なのかと言えば、噂のリュネール・エトワールと共に行動していた黒い魔法少女の子と会う日なのです。リュネール・エトワールもとい、司さんにお願いしてその子の都合を聞いてもらってました。
 もし会えないのであれば、その時は仕方ないという事で何処かでまたチャンスがないか待機して居ようと思いましたが、その必要はなくなりました。

 司さんからのCONNECTでのメッセージ。
 今度の土曜日の15時頃、黒い魔法少女も大丈夫という返答が来ました。集合場所については、私の方で茜さんに話して、屋上を使わせてもらえるようになりました。

 屋上にした理由ですが、その黒い魔法少女も野良だからです。
 魔法省の中ではちょっと目立ちますし、以前の魔法少女たちが襲撃された事件の時に、捕まえた(正確にはリュネール・エトワールが捕まえた)男性の証言に出てきた黒い魔法少女の容姿に似ていると言われてます。
 リュネール・エトワールと行動していた黒い魔法少女が怪しい目で見られてしまうのはちょっと可哀そうというのもありましたし、リュネール・エトワールの友達という事もあったからです。

 と言っても、彼女が疑われているのは間違いないです。
 ただリュネール・エトワールと一緒に居たという事と、一緒に魔物を倒してくれていた事、そして反転世界に連れていかれた私たちの事を助けるために茜さんたちと協力してくれていた事などもあって、魔法省は強気に出られないというのもありますし、証拠というかまだ確証もない状態です。

 もし別の子であったら、その子に多大な迷惑をかけてしまうでしょう。魔法省とて、冤罪というのは警察と同じでやってはいけません。
 リュネール・エトワールが向こう側に付いたと考えると可笑しくないのですが……彼女がそんな敵と組むでしょうか? 私としてはあまり考えられません。

 何か事情がある可能性もありますが……そもそも、リュネール・エトワールの事もまだそこまで知らないのも事実です。変身前の姿は見ましたが……。

「はあ」

 それは別として、やっぱり野良同士だと良く会えるんでしょうかね?
 私ももっとリュネール・エトワール……司さんと話したいし、また出かけたいです。ちょっとだけ黒い魔法少女というか野良に嫉妬してしまいますね。

「……」

 まずは今度会う時に、黒い魔法少女と話さないといけません。
 リュネール・エトワールの事が好きなのかどうか……もし好きなのであれば、新たなライバルです。違うのであればそれはそれで良いのですが、何かこう、前者なような気がしてならないです。何故でしょうかね?

 そう思うと気が気でならないですね。
 うーん……やっぱりこっちからもっとアタックしなくていけませんね。こんな引っ込み思案じゃ、いつまで経っても変わりません。

「よし……」

 私は自分の手で頬を軽く叩きます。
 何となくではありますが、蒼ちゃんもこれから行動を開始しそうな気がするので、私も覚悟を決めましょう。例え断られたとしても、私は司さんが好きなのですから。

「その前に黒い魔法少女ですね」

 仮にその子も好きなら、恐らく何気なくアタックしそうな気はします。
 まだ黒い魔法少女の子がどんな子なのか、分かりませんが……リュネール・エトワールが友達と言っていたので、それなりに関係は強そうです。

 私しか居ない部屋で一人、考えに耽ます。 
 どうしたら、もっと司さんと一緒に居られるか。私は魔法省に所属してますが、彼女は野良。まずそこの違いもあるでしょうね。
 後はリアル都合というのもそうですね。平日は学校がありますし……休みの日は特に何もなければ暇ではありますが、魔物が出てきたりとかすると行くしかないです。

 とはいえ、魔物が出現した際は、全員に連絡が行きますが一番近い子が向かうのは基本となってます。魔物の脅威度にもよりますけど。
 それで戦力不足であれば、近い順に向かう感じです。

 やっぱり、休みの日に司さんに連絡するのが一番でしょう。
 一緒に居る分には、別に私が魔法少女だって言うのは分かってるのですから、魔物が出ても変身が普通にできます。まあ、周りの目は気にしないといけませんけどね。

「やっぱりこっちからアプローチしないと駄目ですね」

 司さんもメッセージなら、いつ送ってきても良いと言ってましたし、緊急時は電話しても良いとも言ってました。

 後手では駄目ですね。

 頑張れ、私。
 私は心の中で自分を応援した所で、約束の時間まで何をするかを考えるのでした。


 
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