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最終章『妖精世界』
Act.21:約束の時間①
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「少し時間より早いけど……」
早く着くのは別に悪い事ではない。
まあでも、早すぎるって言うのも問題だけど。今回は20分前に着いてしまった。当然、屋上にはまだ誰も居ない。いつもよりも早く着いちゃったな。
「んっ」
吹く風が、わたしの髪や帽子、服を大きく揺らす。
屋上に設置されている魔法省の物であろうアンテナも少し揺れていた。思ったより強い風だったが、ふと思い出す。……そういえば、今日はちょっと風が強いとニュースで言ってたな。他にもここは屋上だからっていうのもあるのかな。
空を見上げれば、僅かに雲はあるものの晴れといった天気だ。若干雲の移動する速度も速い気がする。今日は各地で晴れの日が多いらしいけど、気温は上がらないとの事。
道路を走る車の音や、作業をしているような音が風を伝ってわたしの耳に届く。
「今日も平和、か」
平和なのは良い事だ。
だけど、魔物という脅威が居る以上、気は抜けないだろう。屋上から見下ろした魔法省には、休日ではあるものの多くの車が駐車場に止まっている。
全てが職員の車とは言わないが、大半はそうだろう。後は社有車も多分数台は置いてあるはず。魔法省の場合は、社有車っていう表現で良いのか分からないが。
あれからブラックリリーというか、ララからの連絡はなし。つまり、予定通り来れるという事だろう。体調は心配だが、ララが止めてないと考えると、無理に来るとかはないよね?
もし、ララのストップをスルーして無理に来るのであれば、わたしが家に帰すしかないかもしれない。
「早いですね」
「ん?」
後ろから声が聞こえたので振り返ると、そこには声の主である、ホワイトリリーが立っていた。わたしが振り返ったのを見ると、そのままゆっくりとわたしのすぐ隣までやってくる。
「そっちも大分早い」
「そうですか? あーでも、確かに15分前に来るの早かったかもですね」
時計がないので、体感では10分くらい経過したかと思ってたが、まだ5分しか経過してなかったようだ。というか、ホワイトリリーの事だからブルーサファイアと一緒に来るかと思ってたが……。
「今のままでは駄目だと気付いたのです」
「?」
「こちらからアプローチするべきだと」
「ええと?」
ホワイトリリーの様子がいつもと違うような気がする。気のせい?
「リュネール・エトワール」
「近い」
「承知の上で近づいてます」
何だ? 今日は妙にアグレッシブというか、何でそんなグイグイとわたしに近づてきてるの? 隣だったのがもうすぐ目の前という所まで来ていた。
「素直言います! もっと私に構ってください!」
「んぇ?」
「それは野良と魔法省所属では、違うでしょうけど、それでも私はもっとリュネール・エトワールと居たいですし、出掛けたいとも思ってます」
お、おう……。
「他の人が来たようなのでここまでにしますね。ふふ、でも私は諦めませんから」
「ん……」
それだけ言ってホワイトリリーは少し離れる。
それと同時に、向こうからはブルーサファイアがやって来るのが見えた。
「あれ? 集合時間って15時ですよね?」
「ん」
「ホワイトリリーもリュネール・エトワールも早くないですか……」
「私は思ったより早く着いてしましました。でも、リュネール・エトワールは私よりも前に居ましたよ」
「そ、そうなんですか?」
そう言ってわたしを見るブルーサファイア。
うん。20分も早く着いてしまったのは事実である。これを早すぎるか普通か、遅いかと取るのは人それぞれかな。流石に遅いはないと思うが……。
「ん。早めに出てきたら20分早く着いた」
「そうなんですね。あ、でも……リュネール・エトワールはこの辺ではないんでしたっけ? それなら納得ですけど」
「ん。それは想像に任せる」
遠いと思えば遠いだろうし、近いと思えば近いと思う。
いやでも、普通に見たら日立市と水戸市では結構距離があるか? まあ、それはさておき、彼女たちに家バレは流石に避けたいのでそこは誤魔化しておく。
まあ、家をばらしてもリアルの姿を実際知ってるので問題ないと思うが、それが魔法省内に広がるのはちょっと遠慮したい。
今のわたしと茜の関係性が不明なので、それもある。
「三人揃って早すぎじゃないかしら」
「あ、ブラックリリー」
「待たせてしまったわね」
そんな会話の中、ブラックリリー声が聞こえ、二人が一斉に彼女を見る。わたしはいつも通りの対応をする。
「体調は大丈夫なの?」
「お陰様でね……」
「それなら良かった」
「それよりも、あの二人こちらをじっと見てきてるんだけれど」
ブラックリリーが見ている方向にわたしも目を向けると、ホワイトリリーとブラックリリーじとーっと言った感じにわたしたち二人を見てきていた。
「いえ、仲が良さそうだなと思いまして」
「ですね。それから体調がどうこうって、もしかしか何処か具合が悪いんですか?」
「ええまあ、ちょっとね」
「それなのに来てくれたんですか?」
「今は何ともないから大丈夫よ」
「それなら良いですが……」
取り合えず、これで全員揃ったかな。
ホワイトリリー、ブルーサファイア、ブラックリリー、そしてわたし。さっきまで静かだった屋上が、一気に賑やかになった。
「また会えました」
「ん」
そんな中、ブラックリリーとの会話を終えたのかブルーサファイアがやってくる。ホワイトリリーとブラックリリーはまだ何かをお話し中の様だ。時々こちらをチラチラ見て来ているが。
「この前はありがとうございました」
そう言ってぺこりと頭を下げる。
「何の事?」
「人が悪いですね。それをわざわざ言わせますか」
「え?」
「ふふ、冗談です。反転世界で飛ばされていたわたしを助けてくれた事、あの魔物を倒してくれた事……全部ですよ」
「間に合ってなかったけどね」
「それでも、回復の魔法はかけてくれたじゃないですか」
「ん。でもそれを言うならあの時、魔法少女たちを一ヶ所に集めてくれてありがとう。あれ、ブルーサファイアとホワイトリリーがやってくれたんだよね?」
そう。
反転世界崩壊時、急いで皆を集めようと思ったけど既に誰かが一ヶ所に集めてくれていたのだ。そんな事を咄嗟に出来るのは、あの時捕まらずにまだ戦っていた一部の魔法少女くらいだろう。
触手を破壊して自由になったとはいえ、あの状態で捕まっていた子たちが動けたとは思えない。魔力を奪われていて弱っていたはずだし。
まあ、動けた子も居たかもしれないけど。あと、戦っていた魔法少女はホワイトリリーとブルーサファイア以外にも居たので、わたしの憶測なのだが。
「正確にはホワイトリリーですけどね。皆にホワイトリリーが指示を出していました。何故一ヶ所に集めようとしていたのかは分かりませんが……結果としては正解でしたね」
「そっか、ホワイトリリーが……」
ちらっとブラックリリーと話しているホワイトリリーに目を向ける。視線に気づいた彼女は、こちらに軽く笑って見せた。
「でも、ブルーサファイアもありがとう」
「いえ」
あの時一ヶ所に集めてくれていなかったら、既にわたしたちはこの場には居なかったかもしれない。反転世界の崩壊に巻き込まれてしまうと、どうなるか分からない。ラビもそう言ってた。
永遠に何もない虚無の空間に取り残されるか、崩壊と同時に消えてしまうのか……はたまた、歪が発生すればもしかしたら何処かに出られるかもしれない。
怖。
いや、真面目に良かった、本当に。わたしだけならともかく、魔法少女たち全員がそうなってしまったらと考えるとぶるっと肩を震わせる。
命にかかわることは別に魔物との戦いだけではないな。
「あの?」
「ん?」
「何で撫でてるんですか? べ、別に嫌という訳ではないですけど」
「あ、ごめん」
丁度良い高さの位置にあったからつい撫でてしまっていた。
慌てて手を離すと、ブルーサファイアは何処か物足りなさそうな顔を見せる。もっと撫でて欲しいとか?
「ぁ……」
一度離した手を再びブルーサファイアの頭に戻し、優しく撫でると気持ち良さそうに目を細めるブルーサファイア。くそう、可愛いな……って何言ってんだ。
ホワイトリリーにも言える事だけど、何というか小動物みたいな感じだな……いやそんな事言ったら二人に失礼だけど。
「って、私たちが話している間に何してるんですか!」
「あ、ホワイトリリー」
「こ、これは……」
「ずるいですよ! 私も撫でてください!」
そう言って頭をこちらに差し出してくる。今日のホワイトリリーが何かやっぱりいつもより、アクティブ過ぎないか?
助けを求めてブラックリリーを見るが、何故か彼女もこちらを何かして欲しそうにもじもじしながらこちらを見ていた。え? もしかして君もなの?
「えぇ……」
味方が居ない。そうだ、ラビは……。
「(モテモテね。私も後で混ぜてもらおうかしら)」
「……」
味方は何処ですか。
早く着くのは別に悪い事ではない。
まあでも、早すぎるって言うのも問題だけど。今回は20分前に着いてしまった。当然、屋上にはまだ誰も居ない。いつもよりも早く着いちゃったな。
「んっ」
吹く風が、わたしの髪や帽子、服を大きく揺らす。
屋上に設置されている魔法省の物であろうアンテナも少し揺れていた。思ったより強い風だったが、ふと思い出す。……そういえば、今日はちょっと風が強いとニュースで言ってたな。他にもここは屋上だからっていうのもあるのかな。
空を見上げれば、僅かに雲はあるものの晴れといった天気だ。若干雲の移動する速度も速い気がする。今日は各地で晴れの日が多いらしいけど、気温は上がらないとの事。
道路を走る車の音や、作業をしているような音が風を伝ってわたしの耳に届く。
「今日も平和、か」
平和なのは良い事だ。
だけど、魔物という脅威が居る以上、気は抜けないだろう。屋上から見下ろした魔法省には、休日ではあるものの多くの車が駐車場に止まっている。
全てが職員の車とは言わないが、大半はそうだろう。後は社有車も多分数台は置いてあるはず。魔法省の場合は、社有車っていう表現で良いのか分からないが。
あれからブラックリリーというか、ララからの連絡はなし。つまり、予定通り来れるという事だろう。体調は心配だが、ララが止めてないと考えると、無理に来るとかはないよね?
もし、ララのストップをスルーして無理に来るのであれば、わたしが家に帰すしかないかもしれない。
「早いですね」
「ん?」
後ろから声が聞こえたので振り返ると、そこには声の主である、ホワイトリリーが立っていた。わたしが振り返ったのを見ると、そのままゆっくりとわたしのすぐ隣までやってくる。
「そっちも大分早い」
「そうですか? あーでも、確かに15分前に来るの早かったかもですね」
時計がないので、体感では10分くらい経過したかと思ってたが、まだ5分しか経過してなかったようだ。というか、ホワイトリリーの事だからブルーサファイアと一緒に来るかと思ってたが……。
「今のままでは駄目だと気付いたのです」
「?」
「こちらからアプローチするべきだと」
「ええと?」
ホワイトリリーの様子がいつもと違うような気がする。気のせい?
「リュネール・エトワール」
「近い」
「承知の上で近づいてます」
何だ? 今日は妙にアグレッシブというか、何でそんなグイグイとわたしに近づてきてるの? 隣だったのがもうすぐ目の前という所まで来ていた。
「素直言います! もっと私に構ってください!」
「んぇ?」
「それは野良と魔法省所属では、違うでしょうけど、それでも私はもっとリュネール・エトワールと居たいですし、出掛けたいとも思ってます」
お、おう……。
「他の人が来たようなのでここまでにしますね。ふふ、でも私は諦めませんから」
「ん……」
それだけ言ってホワイトリリーは少し離れる。
それと同時に、向こうからはブルーサファイアがやって来るのが見えた。
「あれ? 集合時間って15時ですよね?」
「ん」
「ホワイトリリーもリュネール・エトワールも早くないですか……」
「私は思ったより早く着いてしましました。でも、リュネール・エトワールは私よりも前に居ましたよ」
「そ、そうなんですか?」
そう言ってわたしを見るブルーサファイア。
うん。20分も早く着いてしまったのは事実である。これを早すぎるか普通か、遅いかと取るのは人それぞれかな。流石に遅いはないと思うが……。
「ん。早めに出てきたら20分早く着いた」
「そうなんですね。あ、でも……リュネール・エトワールはこの辺ではないんでしたっけ? それなら納得ですけど」
「ん。それは想像に任せる」
遠いと思えば遠いだろうし、近いと思えば近いと思う。
いやでも、普通に見たら日立市と水戸市では結構距離があるか? まあ、それはさておき、彼女たちに家バレは流石に避けたいのでそこは誤魔化しておく。
まあ、家をばらしてもリアルの姿を実際知ってるので問題ないと思うが、それが魔法省内に広がるのはちょっと遠慮したい。
今のわたしと茜の関係性が不明なので、それもある。
「三人揃って早すぎじゃないかしら」
「あ、ブラックリリー」
「待たせてしまったわね」
そんな会話の中、ブラックリリー声が聞こえ、二人が一斉に彼女を見る。わたしはいつも通りの対応をする。
「体調は大丈夫なの?」
「お陰様でね……」
「それなら良かった」
「それよりも、あの二人こちらをじっと見てきてるんだけれど」
ブラックリリーが見ている方向にわたしも目を向けると、ホワイトリリーとブラックリリーじとーっと言った感じにわたしたち二人を見てきていた。
「いえ、仲が良さそうだなと思いまして」
「ですね。それから体調がどうこうって、もしかしか何処か具合が悪いんですか?」
「ええまあ、ちょっとね」
「それなのに来てくれたんですか?」
「今は何ともないから大丈夫よ」
「それなら良いですが……」
取り合えず、これで全員揃ったかな。
ホワイトリリー、ブルーサファイア、ブラックリリー、そしてわたし。さっきまで静かだった屋上が、一気に賑やかになった。
「また会えました」
「ん」
そんな中、ブラックリリーとの会話を終えたのかブルーサファイアがやってくる。ホワイトリリーとブラックリリーはまだ何かをお話し中の様だ。時々こちらをチラチラ見て来ているが。
「この前はありがとうございました」
そう言ってぺこりと頭を下げる。
「何の事?」
「人が悪いですね。それをわざわざ言わせますか」
「え?」
「ふふ、冗談です。反転世界で飛ばされていたわたしを助けてくれた事、あの魔物を倒してくれた事……全部ですよ」
「間に合ってなかったけどね」
「それでも、回復の魔法はかけてくれたじゃないですか」
「ん。でもそれを言うならあの時、魔法少女たちを一ヶ所に集めてくれてありがとう。あれ、ブルーサファイアとホワイトリリーがやってくれたんだよね?」
そう。
反転世界崩壊時、急いで皆を集めようと思ったけど既に誰かが一ヶ所に集めてくれていたのだ。そんな事を咄嗟に出来るのは、あの時捕まらずにまだ戦っていた一部の魔法少女くらいだろう。
触手を破壊して自由になったとはいえ、あの状態で捕まっていた子たちが動けたとは思えない。魔力を奪われていて弱っていたはずだし。
まあ、動けた子も居たかもしれないけど。あと、戦っていた魔法少女はホワイトリリーとブルーサファイア以外にも居たので、わたしの憶測なのだが。
「正確にはホワイトリリーですけどね。皆にホワイトリリーが指示を出していました。何故一ヶ所に集めようとしていたのかは分かりませんが……結果としては正解でしたね」
「そっか、ホワイトリリーが……」
ちらっとブラックリリーと話しているホワイトリリーに目を向ける。視線に気づいた彼女は、こちらに軽く笑って見せた。
「でも、ブルーサファイアもありがとう」
「いえ」
あの時一ヶ所に集めてくれていなかったら、既にわたしたちはこの場には居なかったかもしれない。反転世界の崩壊に巻き込まれてしまうと、どうなるか分からない。ラビもそう言ってた。
永遠に何もない虚無の空間に取り残されるか、崩壊と同時に消えてしまうのか……はたまた、歪が発生すればもしかしたら何処かに出られるかもしれない。
怖。
いや、真面目に良かった、本当に。わたしだけならともかく、魔法少女たち全員がそうなってしまったらと考えるとぶるっと肩を震わせる。
命にかかわることは別に魔物との戦いだけではないな。
「あの?」
「ん?」
「何で撫でてるんですか? べ、別に嫌という訳ではないですけど」
「あ、ごめん」
丁度良い高さの位置にあったからつい撫でてしまっていた。
慌てて手を離すと、ブルーサファイアは何処か物足りなさそうな顔を見せる。もっと撫でて欲しいとか?
「ぁ……」
一度離した手を再びブルーサファイアの頭に戻し、優しく撫でると気持ち良さそうに目を細めるブルーサファイア。くそう、可愛いな……って何言ってんだ。
ホワイトリリーにも言える事だけど、何というか小動物みたいな感じだな……いやそんな事言ったら二人に失礼だけど。
「って、私たちが話している間に何してるんですか!」
「あ、ホワイトリリー」
「こ、これは……」
「ずるいですよ! 私も撫でてください!」
そう言って頭をこちらに差し出してくる。今日のホワイトリリーが何かやっぱりいつもより、アクティブ過ぎないか?
助けを求めてブラックリリーを見るが、何故か彼女もこちらを何かして欲しそうにもじもじしながらこちらを見ていた。え? もしかして君もなの?
「えぇ……」
味方が居ない。そうだ、ラビは……。
「(モテモテね。私も後で混ぜてもらおうかしら)」
「……」
味方は何処ですか。
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