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最終章『妖精世界』

Act.22:約束の時間②

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 さて、一通り三人が満足するまで撫でてあげたことでようやく解放された。ブルーサファイアもホワイトリリーもブラックリリーも、何だっていうんだ。結構疲れた。

 両手使ってやったものだから、今あまり力が入らないくらい疲れているようだ。

「お互い頑張りましょうね」
「え、ええ」
「誰が勝っても恨みっこなしですからね!」

 そしてそんな原因である三人はというと、少し離れた場所でお互い楽しそうに会話している様子。どうやら打ち解けたというか、仲良くなったみたいで良かった……のか?

「複雑」
「(そうねえ、あの子たち本来は敵対関係なのに)」
「ん」

 ブラックリリーは件の魔法少女襲撃事件の犯人だし、二人は魔法省所属の魔法少女。知らないのだから仕方がないとはいえ、こう見るとやっぱり複雑。
 仮にバレてしまった場合、どうなってしまうのか不安もあった。わたしとの関係はあまり壊したくはないが、でもそれよりも折角仲良くなった三人が敵対するのは、心苦しい物がある。

 会わせない方が、正解だっただのろうか?

 今更何考えても後の祭り。わたしとしては、仲良いまま居て欲しいな……三人の関係が壊れないように祈るばかりである。
 それはちょっと高望みだろうか?

「三人の未来に幸あれ」

 なんてね。
 何言ってるんだろう、と自分に突っ込み空を見上げる。

「あ、月」

 そう言えば、月って昼間も見えるんだったか。
 昼間はただ光らないってだけで、月自体は良く見ると見つかったりするものだ。当たり前な事だけど、そんな月に感心する。

 でも、青空に見える月は何処か孤独。太陽はあるけど、月と一緒に輝く星は昼間では見れない。

「……孤独、か」

 両親が居ないわたしは孤独なのか? いや、唯一の家族である真白が居るからまだそうは言えないが、真白が誰かと結婚してしまえば、そっちに行ってしまうだろう。

「何、ぼうっとしているのよ」
「痛い」

 そんな事考えていると、おでこに痛みが走る。それと一緒にブラックリリーの声がしたので、まだ痛みのある場所を手で抑えながら目を向けると、いつの間にかすぐ側に来ていたブラックリリーが呆れた顔をしていた。

「今のリュネール・エトワール、何だか何処か辛そうな顔をしていました」
「何かあったのですか?」
「別に……」

 孤独について考えていた、というのは何か恥ずかしいので誤魔化す。しかし、三人は納得いかないといった顔をしていた。というか、いつの間に二人も近寄っていたんだ……。

「リュネール・エトワールにも事情があるのは分かります。ですが、何かあるのであれば相談してほしいです。力になれなくても……話し相手くらいにはなりますよ?」
「そうね。愚痴でも聞くわよ。色々とお世話になったし」
「私たちはリュネール・エトワールに助けれてばかりですから、こういう時くらいは頼りないかもしれませんが……少し頼って欲しい、かな」
「……」

 静かにわたしを見る三人。
 伝わっている……伝わってるさ。彼女たちが本心からわたしを心配してくれている事。少し予想外な言葉たちにわたしはちょっと気圧されてしまう。

 そんな顔していたのか?
 いまいち、自分の顔は分からないものである。鏡とかがあるなら別だが。

 ……相談、か。
 特に相談する事はないけど……というかそんな辛い事あったっけ? 真白が結婚して居なくなってしまうのは確かに寂しいけど、家族として将来を応援するつもり。
 いやまあ、真白にそんな相手が出来たらだけど……何度か告白はされているようだけど、どれも断ってるようだし。

 まだ、わたしの事が好きでいるのだろうか。ああ、居るんだろうな……今の姿になっても真白から感じる気持ちは、変わってなかったし。
 そう、ホワイトリリーやブルーサファイアのように……ブラックリリーはどうかは分からない。でも、何か友達になってからは今までに見せなかったような顔とかをするようになった気がする。

 ……気の所為ではなければ。

「ありがとう。その時はよろしく」
「「はい!」」
「ええ」

 今の所は特に、そういった事はないのでお礼だけしておく。
 でも、何故だかわからないけど、こう言われると何処か暖かく感じる。これが仲間っていう事なのだろうか? いや、仲間はどうなんだろう? 友達か?
 わたしは野良で、ホワイトリリーとブルーサファイアは魔法省。ブラックリリーは野良だが、魔法省とは一応敵対関係と言った感じだろう。

 なんだろうね、このメンバー……。

 わたしはどっちにも付いてない中立なつもりだが……三人はどう思ってるんだろうか? まあ、わたしは自由気ままに気の赴くままに行動するのが割りに合ってるから、こういう立場が一番かな?

 でも、わたしにはラビが居るので、第三勢力? 妖精とつながっている魔法少女……いや、それはブラックリリーにも言える事だ。彼女にだってララという妖精が居る訳だし。

「そっちはだいぶ仲良くなったね」
「はい! 色々話しました。負けてられませんね」
「? 何かで競うの?」

 ホワイトリリーのその言葉に首を傾げる。
 負けてられないって、何かの競争でもしているのだろうか。

「まあ、ある意味では競ってますね」
「ブルーサファイアも?」

 わたしの疑問に答えたのはホワイトリリーではなく、ブルーサファイアだった。つまり、ブルーサファイアも何かで競っているという事だろうか?

「?」

 じっと、三人してわたしを見てくるので再び首を傾げる。

「わたしの顔に何か付いてる?」
「「「はあ」」」
「??」

 え、何? 何で三人してわたしを見てため息してるの? 何かしたっけ? ……記憶を探ってみるが、思い当たる節はない。では何故ため息をつかれたのか。

「(鈍感ねえ)」
「(ええ?)」

 何だか良く分からないが、ラビにも呆れられたのは分かった。解せぬ。

「まあ良いです。……えっと、リュネール・エトワール」
「? これは?」
「後で見て下さい」

 こそっと一枚の紙を渡してきたホワイトリリー。
 ブルーサファイアとブラックリリーは特に気付いてない様子だが、取り敢えず受け取っておく。後で見て欲しいとの事だったのでステッキの中に収納しておく。

「それで、話は終わったようだけど……」
「はい。今回はありがとうございます。ブラックリリーも」
「良いわよ。自分で来ただけなのだし」

 ブラックリリーは来ないという選択肢もあった訳だしね。それでも来てくれたので、二人には良かったと思う。ただわたしとしては、あまり知られるのあれなのではと思ったんだけど……。

 まあ、ブラックリリーが会うという選択肢を選んだのだから、わたしが止めるというのも変だろう。結果的には、仲良く? なったっぽいので、良かったと言えば良かったかな。

 でも、さっきも言ったと思うが、彼女たちが本当の事を知ったらどうなってしまうのかという懸念がある。ブラックリリーは魔法省と敵対しているし……。
 敵対というか、探されているいはずだし。

 バレなければ問題ないかもしれないが、もしもという可能性がある。

「ん」
「また何か考えてますね? 大丈夫ですか?」
「ホワイトリリー……」

 考え事ばっかじゃどうしようもないか……考えている時の顔、わかりやすいかな? でも、わたしって結構無表情と言うかそういうように見えているって言われてるけど。

「どうして分かったっていう顔してますね。これでも結構見ているんですよ。まあ、リュネール・エトワールは何というか……無表情なのが多いので分かりにくいと言えば分かりにくいのですが」
「やっぱり無表情?」
「はい。……時々見せる笑顔は反則ですが」
「?」
「何でもないですよ」
「そう?」

 何か最後に言ってたような気がするけど……。

「本当に悩んでないのなら良いけれど」
「ブラックリリー……」
「ですね。悩みとか聞くくらいなら出来ますよ?」
「ブルーサファイアも……」

 さっきもそうだったけど、何故こうも暖かく感じるのだろうか? 分からないけど……心配してくれているのが嬉しくも感じる。わたしはこう言われるのを望んでいた?

 分からない……。




 でも、この場所は……居心地が良い。






『後書き』
Twitterによるアンケの結果ですが、以下のとおりです。
1位:リュネール・エトワール
2位:ブラックリリー
3位:ホワイトリリー
4位:ブルーサファイア


投票ありがとうございました!
https://twitter.com/Lunar_eclipse75/status/1429114541674168325?s=20

何か番外編とか閑話とか書こうかなあ……。
いつもお読み頂きありがとうございます!
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