TS魔法少女リュネール・エトワール! ~星月の魔法少女は気の赴くままに行動する~

月夜るな

文字の大きさ
111 / 137
最終章『妖精世界』

Act.25:白百合の●○

しおりを挟む

「あ、来てくれたんですね、嬉しいです」

 わたしの姿を確認するや否や、そう言ってにこっと笑顔を見せるホワイトリリー。不覚にもドキッとしてしまった。

「ん」
「まずはすみません。手紙なんかで呼び出してしまって」
「問題ない」

 何故手紙にしたのかは分からない。
 でも、手書きという手間をかけてるからこそ、それには特別な意味がある……まあ、ラビが言っていた事だけどね。

「少し出ませんか」

 ホワイトリリーは屋上から、遠くの空を見ながらわたしにそんな事を言ってくる。それに対し、わたしは静かに頷くと、彼女は魔法省の屋上から別の建物へと飛び移る。わたしもそれについていくように飛び移る。

 何回か飛び移ったりして、移動した所でホワイトリリーは移動を止める。

「ここなら大丈夫でしょう。……リリース変身解除
「え?」

 周りに誰も居ない事を確認したホワイトリリーは、おもむろに自身の変身を解き、ホワイトリリーではなく白百合雪菜という一人の少女となる。

「リュネール・エトワール……いえ、司さんに伝えたい事があります。差し支えなければ司さんも変身解除してくれませんか」

 真っすぐと、そして静かにわたしを見つめるホワイトリリー。

「ん。……リリース変身解除

 ふざけている雰囲気もなく、真面目な話だっていうのがひしひしと伝わってくる。まあ、ホワイトリリー……いや雪菜がふざけた事はわたしの記憶では一つもないけどね。
 わたしも、周りを確認して誰も見ていない事を確認してから変身を解除する。ただそこで一つ、忘れていた事がある。

「あれ? ……司さん、ですよね?」
「ん。見ての通り」

 そう、雪菜と会った時は黒髪黒目のハーフモードだ。今回ハーフモードではなく、変身を解除したので当然、銀髪碧眼になっている方の姿になる訳だ。

「でも、以前会った時は、黒髪黒目だった気がします。でも、リュネール・エトワールですし……えっと、あれ?」

 おっと、ちょっと雪菜が混乱してしまったようだ。

「落ち着いて。わたしはわたし。司……如月司。以前、雪菜に会った時はこの目立つ髪を隠す為に、髪は黒く染めていた」

 まあ、嘘である。
 ハーフモードになっても良いが、あれだと変身状態なので解除という魔法のキーワードを言う必要がない。そしてキーワードを言ってしまうと魔法が発動してしまう。
 目の前に雪菜が居る状態でハーフモードで居たら変に思われるだろう。だって、変身解除のキーワードを言わないのだから。それに、こっちの姿の方を認識してほしいなって思ってるし。

「そうなんですか?」
「ん。疑うならあの時の事を一つ。白い兎のぬいぐるみ、白を選んだ理由は白百合、ホワイトリリー……雪菜の、色」
「よ、良く覚えてますね……は、恥ずかしいですよ」
「信じた?」
「いえ、最初から疑っていなかったです。目の前で変身解除してますしね……ですが、以前の時と容姿がかなり違っていたので……」
「ん、ごめん」
「謝らないでください。でも、目立ちたくないから髪の毛を染めていたんですよね? 私に曝け出して良かったのですか?」
「ん。雪菜には本来の姿を見せたいと思って。それに友達だし」

 嘘で申し訳ないが、これが一番ありがちな理由なのでホワイトリリーに騙されてもらおう。
 というか、そもそも元男で、今はこうなりましたなんて言った所で信じられないだろうし、本当の事を知るのはわたしとラビ、真白だけで良い。

 ただ、ちょっと、友達という言葉を使うのは卑怯なかもしれないけど……ごめんよ。

「友達……そ、そうですよね。私たちは友達……」

 何か凄い申し訳ないと思う。でも……偽りの姿ではなく今の本来の姿を見せたいというのは本当だ。

「ん」
「それはそうとして、司さんの苗字は如月なんですね」
「うん」
「名前にも月が入ってるって凄いですね」
「そう?」

 まあ確かに。
 全てに通して月という名前が入ってる。リュネール・エトワールって言うのは自分でつけた名前ではあるけど……でも使える魔法は星と月に関係するもの。ここにも共通点がある。
 星は本名の方にはないけどね。

「それで、司さん」
「ん」

 改めて雪菜はわたしの事を見る。

「すーーはーー」

 自身の胸に手を当て、大きく深呼吸をする雪菜。

「司さん。私はあなたの事が前から好きです」
「!!」
「友達としての好きとかではなく、恋愛的に私は司さんが好きです」

 雪菜の告白。
 わたしは良く分からない、衝撃のようなものを感じた。面と向かっての好きという言葉……いざ、告白されるとこんな感じなのか。

「同性なのに、可笑しいですよね。でも、私は司さんが好きです!!」

 顔を赤くして、瞳をうるうるさせながらわたしの方を上目遣いの形で見てくる雪菜。その様子はとても可愛らしく、好きな人は好きな表情かもしれない。

 いや、そんな現実逃避な事を考えるのよそう。

「好きなんです……以前、助けてもらった時からずっと」
「雪菜……」

 ああ、それは知っている。
 正確にはわたし自身は最初は気付いてなかったけど、ラビが教えてくれた事によって知ったと言うべきか。

「好きです。私と、付き合ってくれませんか、司さん」

 さっきと変わらない表情で見てくるけど、それが決して嘘偽りではない雪菜の本当の、心からの告白であるのはわたしでも分かる。

「それとも、やっぱり同性は可笑しいでしょうか?」
「……そんな事はない」

 わたしは別に同性愛について否定するつもりもないし、する気もない。愛というのは人それぞれなのだ。例え好きになった相手が同性だからと言って軽蔑する事もない。

「本当、ですか?」
「ん。少なくともわたしは可笑しいとは思ってない」
「司さん……」
「だから、軽蔑なんてしない。安心して」
「はい」 

 わたしがそう言うと、笑顔になる雪菜。
 良かった。でも、まだ終わりではない。告白されたらきちんと返さないといけない……それは分かっている。だけど、どうしてもはっきりと言えないのだ。決めていたはずなのに……。

「えっと、わたしは……」

 何か返さないといけないと思い、口を開くが言葉が出てこない。

「お返事は今じゃなくて大丈夫です。でも、私は司さんの事、恋愛的な意味で好きです。これだけは本当の気持ちです」
「雪菜……」
「この気持ちはきっと変わらないです。それだけ司さんの事が好きですから。だからブラックリリーやブルーサファイアたちと一緒に居るのと見ると嫉妬してしまいます。私って嫌な女でしょうか」
「そんな事はない……」
「ふふっ。やっぱり司さんは優しいです。その優しい所も好きですよ」

 ……。
 雪菜の本当の気持ち。

 好きであるという事は知っていた。だから告白もされるかもしれないとも思っていたけど、それに対する答えは予め決めていたはず。
 なのに、今のわたしはどうだろうか?

 迷っている。言葉を出せずにいる……何故なのか分からない。分からない……。

「お返事については少し期待していますね、ふふ」
「ん……」

 今すぐはどうしてか、返事が出せない。
 雪菜がそんな事言うものだから、更に意識してしまう……これは慎重に返事をしなくてはいけない。まだ分からないけど、今は言葉が出せないでいるから。

 自分は、わたしは……どうしたいのか?
 司として、雪菜の事をどう思っているのか? 嫌い……ではないのは確かだ。それなら好きなのか? 好きかもしれないけど、その好きはどういう好きなのか。
 友達として好きなのか、雪菜のように恋愛的に好きなのか……そこはやっぱりまだ分からない。

 だけど、少なくともわたしは雪菜の事を嫌いとは思ってない。 

「一緒に、駅まで歩きませんか」

 この話題は一旦終わりと言わんばかりに、雪菜はそう言って手を差し出す。暗に手を繋がないかって言ってるのだろうか?
 ここから駅まではそこまで遠くはないから、駅まで歩く事自体には問題ないけど……。

「分かった」

 断る事もないだろうし、わたしはそれだけ言って彼女の手を掴むのだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。 異世界パルメディアは、大魔法文明時代。 だが、その時代は崩壊寸前だった。 なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。 マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。 追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。 ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。 世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。 無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。 化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。 そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。 当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。 ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる

家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。 召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。 多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。 しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。 何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。

処理中です...