悪役令嬢は地下牢でただこの世界の終わりを願っていたのに変態魔術師と人生をやり直しすることになってしまった

ひよこ麺

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03:人間クリスマスツリーの気持ち

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「つまり、あの日ね……」

私には確かにその記憶があった。全ての地獄が始まった日、アレクサンドル殿下との顔合わせの日。

その日の記憶ははっきりしている。

オレンジ色のドレスを着た私は、アレクサンドル殿下と顔合わせをした。

あの時の私を見た彼の微妙な表情が忘れられない。

明らかに好かれていないといことがわかった。その上で無難にエスコートされたが、とても冷たく、夢見る少女の心は永久氷土と化した。

つまり、最低な出会いだった。

以降も何度か顔を会わせる機会はあったが、彼は一切、私と目も合わせず会話も上の空だった。

正直、ドM魔術師よりアレクサンドル殿下はイケメンで断罪されそうな顔をしていないがあんなに渋い顔をされ続けたら百年の恋も冷めるレベルだろう。ドM以外があの状態で恋に落ちる気がしない。実際全く恋してないし、あの時間軸によりなんなら会いたくもない。

そのため、全くもって彼と心を通わせた記憶がないが、皇子様は学生時代に親しくしてくれていた商家の娘さん曰く、「とても模範的な皇子様でよっぽどのことがなければ自身の感情は殺せるタイプ」らしい。そこから推測するに真面目系の皇子様だろう。

それでも微妙な顔したってことは相当に嫌われていたということだ。

私は全く知らなかった。好かれていない、相性の問題程度の認識をしていた。

(今更ながら恐ろしいわ。けれど誰がそんなことをしたのだろう……)

犯人を考えた際に一番に浮かぶのはエリザベスだ。

実際彼女がアレクサンドル殿下に見初められたのだからそう考えるのは妥当だ。

しかし、エリザベスは正直確かにあまり性格のよくない、というかクレクレ系のクソ従姉妹だった記憶はあるが、頭が良いタイプではなかったし、隣国の子爵家の娘である彼女は、私よりも権力を現段階で持ち合わせていない。

だとすると彼女を犯人とするのは弱い気がする。

「このままだと、間違いなく皇子様に嫌われてしまうね。番うんぬんの前にまた地獄の階段のぼるマイ・クイーンになってしまう」

「なんとかしてこのまま精神異常を装って、明日の予定をキャンセルできれば……」

「ははは、皇族との約束を反故になんてできないでしょう。例え狂っていても鎮静剤打たれて連れていかれる未来が見えるね。君の両親はとても優しいけれどそこは一般的な貴族だからね」

この国は皇族は竜神の子孫であり、敬われる存在である。だから絶対皇帝制と言われるほどに皇帝が全てにおいて強い権力を持つ国だ。

悲しいかな、リアムの言う通り逆らうことは地獄以前に別の地獄に堕ちるエンディングになるだろう。

「どうすればよいの……嫌悪剤を打ち消すものがあれば良いのだけれど……」

そうすれば嫌われはしないだろう。そう思って言った言葉にリアムがポンと手を叩いた。

「それだ!!うん、流石マイ・クイーン頭が良いね。僕に任せておくれ」

私はこの兄(仮)であるドM魔術師にこの件を委ねたことを死ぬほど後悔することになった。

*******************************************

「この状態で会うとか死にたい」

「いやいや、良いよ。流石マイ・プリンセス、僕の妹はいるよ」

勘の良い方ならお気づきだろう。

私は今物理的に光っている。キラキラしている。無駄に光っている兄(仮)リアムくらいに光っている。つまり例のキラキラ光る魔法をかけられたのだ。

リアム曰く「このキラキラ光る魔法は魅惑の効果があるよ。ちなみにこの魔法は本来この世界にはないものだから罪に問われる日も永遠にないから安心してね。それにこの魔法の効果でも薬を割と長く摂取していたせいであくまで打ち消しだけだから素で皇子に会う感じになるけど、確実に前回よりマシなはずだよ!!」とのこと。

さらに……。

「エマ、そのオレンジ色のドレスはやめてくれないか??僕の可愛いマイ・プリンセスにはこちらの深緑色のドレスの方がよく似合うはずだ」

そう言って、既に着ることが決まっていたドレスを当日に変更された。そう、今緑色のドレスでキラキラしているのである。完全に電飾の撒かれたクリスマスツリーのような姿である。

そして、追い打ちをかけるようにリアムはどこからともなくあるイヤリングを取り出した。それはまん丸で大きな球体のシトリンのイヤリングで完全にクリスマスツリーを飾るタイプのオーナメントだ。

「僕の美しい妹にはこのイヤリングが良く似合うだろう」

間違いない、私はどんどん人間クリスマスツリーにされている。そろそろ兄(仮)をどつこうかと考えた時だった。

リアムが私にイヤリングをつけようとした瞬間、それは起きた。リアムの手からそのイヤリングを奪った者が居たのだ。まるで何かに操られるようにその女、私に仕えているエマ以外のもうひとりのメイドがリアムに襲い掛かったのは……。

その異様な事態に驚き声も出せない私とは違い、リアムがにんまりと笑った。瞬間だった。時が止まったのは……。

突っ込みたいことがたくさんあるが、時間が止まって動けないメイドをリアムは縛っている。

小声で「僕がマイ・クイーンに縛られたいのに、ああ憂鬱」など言っていたが聞こえない、聞こえない。

「これどういうこと??」

縛り終わったリアムに聞けば、殴りたい笑顔を浮かべながら答える。

「ああ、このイヤリングは特別なものなんだよ。マイ・クイーン前回の時間軸で見覚えないかな??」

そのツリーのオーナメントぐらいのクソデカい球体のシトリンを見つめて考える。

(こんな趣味の悪いアクセサリー見たら覚えていそうだけれど……)

しばらく考えてフッとある記憶が蘇った。

それは、私が、アレクサンドル殿下に離宮に追いやられた日「……ベアトリーチェ、私の番はお前ではなく、お前が連れてきた美しいエリザベスだ」と言われた最悪な日に、私の横でエリザベスが付けていたクソでかイヤリングだった。

びっくりするほど、私は記憶力が良いのかもしれないと内心で自画自賛する。内心なので誰にも聞こえないが。

「エリザベスがしていたわ、そう離宮に閉じ込められた日に……」

「やっぱり。だとしたらエリザベスって女は確実に君が地獄に堕ちた原因を作った一味だな。このイヤリングは「竜の瞳」と呼ばれる竜帝に嫁ぐ女性のみが身に着けることを許されるものなんだよ。それを君ではなく彼女がしていたということは……」

「えっ、こんなクソダサいイヤリングが??」

思わず本音を漏らすと、リアムも真面目に頷いた。

「そうだよ。僕の美意識的にも受け入れがたいけれどこのクソダサいイヤリングこそがそうだよ。そしてこれは本来君の元へ届くべきものだった。実際、今日君宛てに神殿から送られてきたのだからね」
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