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26:愛する弟の真実を知り発狂するピヨちゃん

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「ここは??」

「ああ、違うところへ飛んじゃったね、てかここは。ふふふ」

何故か嬉しそうなヨグ様。どうやらはじめての瞬間移動魔術は失敗してしまったようだ。そして、ここは……。

「どこだろう……分かるのは」

「ここがエッチなお店ということだけだね、ようするにアダルトショップだね」

存在は知っていたが、なんせ性的欲求がなかったに等しい僕は一度も踏み入れたことのないタイプの店だった。

そこかしこに並ぶ、アレな道具に如何わしい魔法記録媒体(AV)がならぶ店内。さらに魔法記録媒体の映像がながされて嬌声の響いている店内には裸で微笑む女性の絵姿などがところ狭しとならび正直あまり長居をしたくはない。

(よりにもよって何故ここなんだ??)

しかし、ヨグ様はとても慣れた様子で聞いてもいないのに「アレは〇〇に使用するものだね」「あっ、あのコスプレ良いね、巣籠用に買おうかな、スケスケナース服。スケスケナースティラノたんに治療されたいな」とかなんか終始浮かれている。とりあえず、それを無視して出口へ向かう。

すると、「ショタ」というあまり見慣れない文字のコーナーから聞き覚えのある声がした。

「ああ、ショタものの新作出てる。この子兄上に似てるな。はぁはぁ。「はじめてのおつかい~お兄ちゃん、濃厚ミルク下さい」くうう。たまらない、兄上に濃厚ミルクを注いであげたいな、妄想滾るな、うん。これは買わないと!!」

思わずカーテン越しに見えたそこに、見覚えのある身内がいた。具体的には弟が……。弟もお年頃だからそういう物に興味をもつのは仕方ない。ここは兄として見なかったフリをしよう。ショタとか兄上とかなんか聞いてはいけないこと言っていた気がするけど僕は全てなかったことにした。

それが兄弟としてできる最大限の優しさだと思う。そっと兄心で店を出ようとした時だった……。

「あれ、兄上のにおいがする??嘘、こんな汚らわしい場所に俺の尊いひよこエンジェルの兄上がいるわけない、でもこの瑞々しいかおりは兄上のものだ、えっと、このお店R18指定だからそもそも兄上がこの店の中に入れるわけないけど……」

(弟が今信じがたい発言をした気がするけれど、気のせいだ。まるで変態王であるヨグ様みたいなこと言った気がするけど僕の弟はそんなこと言わない、絶対に言わない)

「ティラノたん、これが現実だよ」

心を読んだような発言とともに、ヨグ様がその綺麗な顔を最大限に利用したような美しい微笑みを浮かべるが、僕はそれを無視した。大体この場で浮かべる表情ではない。

「君の可愛い弟は、僕と同じ側の人間。つまりHENTAI☆だよ」

「違います、僕の弟は、僕の弟は良い子で……こんなに汚らわしい変態じゃない」

正直自分のことは何を言われてもあまり傷つかないが、弟のことは別だ。僕にとって母上亡き今、弟はこの世界で唯一の家族なのだ。その弟が目の前の世界が生まれた日からの変態と同じような人種なんて、そんなこと認める訳にはいかない。気付いたら涙があふれていた。

「尊い、お嫁さんの貴重な涙が尊い。僕が拭って……」

「あの、貴方達は……」

言い争いをしていたからか、いつの間にか背後に弟が立っていた。だめだ、今一番会いたくない。というか今会ったら僕の大切な弟の色々が崩れ去る。

「いや、えっと……」

「夫婦の価値観の相違について話していただけだよ。気にしないで」

嫌な価値観の相違だなと思いながら、弟とうっかり目が合ってしまった。しかし、弟はいつも僕に向けているような優しい眼差しではなく冷え切った目をしている。その事実がまた僕には辛かった。

そんな僕の様子に気付かないまま、弟は話し出した。

「そうですか、あの、つかぬ事をお聞きするのですが、このお店でとても美しく可愛い尊いショタっ子、もといプラチナブロンドの髪につぶらな瞳の10歳代くらいの本当にこの世の至宝ともいえるようなひよこっぽい少年をみませんでしたか??」

「見てませんね」

間髪入れずに完全なるつくった笑顔で答えた。

(僕は認めない、弟はきっと違う子どもを探しているだけ。そう僕とは関係ない)

しかし、弟は眉をひそめたまま僕を凝視している。そしてとんでもない発言をした。

「けれど、貴方達、いや、特に貴方から僕の最愛の兄上のにおいがするんです。でも兄上は至高のショタっ子だしそもそも貴方のようにとうが立ってないんです。兄上は永遠のショタっ子本当にこの世で最も美しいのは大体12歳くらいまでなんですが、兄上は19歳でも12歳以下にしか見えない素晴らしい存在なんです、合法ショタお兄ちゃんなんです。なので貴方達がもしかして兄上を攫って……」

「嘘だ。僕の……嘘だ……」

虚ろな瞳で思わず、受け入れがたい現実に震える僕。

(嫌だ、僕の弟はそんなこと言わない、言わないんだ!!)

静かに涙が止まらなくなった僕を、優しくヨグ様が抱き寄せた。

「可哀そうに。受け入れがたい現実だね。まさか君の最愛の可愛い弟がこんな僕でも引くレベルの変態だなんてね。可哀そうな

ヨグ様の発言を聞いた瞬間、弟の顔色が変わる。そして、いきなり発狂した。

「嘘だ!!なんで??ではピヨちゃんはピヨちゃんのままで本当に最後の最後までティラノたんにはならないんだよ!?えっ、なんでもうティラノたんなの??嘘でしょう??可愛いピヨちゃんを返してください。俺の尊い永年ショタ兄上を……」

今、聞き捨てならない発言が聞こえた気がした。それは待ちわびた人物であることを表す言葉だ。

「原作小説ってまさか……」

「ああ、やっぱり、君がだよね」
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