【第1部終了】断罪されて廃嫡された元王子に転生した僕は救国の英雄の叔父に監禁されえげつない目にあうようです

ひよこ麺

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02.監禁ハード系BL世界とか冗談ですよね

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「……説明してください」

「するする、だからそんな怖い顔しないでよ。こんにちは、転生者さん。僕は神様です」

そこは広い空間だけれど特に何があるわけでもない場所だった。そして神様についても軽薄そうな声以外ない。もっというとその声の性別は男とも女ともつかないとにかく奇妙なものだった。

ただ、とにかく不快だったのですごく嫌な顔をしていた。

「……」

「怖い顔してるね。まぁそりゃそうか。君はBL小説って知ってる?」

僕の空気感等関係なく話し続ける強メンタルの神様はとんでもない爆弾発言をした。BLってボーイでラブの略じゃないよね、ビックでラブとかびっくりな革命とか、いや、びっくりな革命だとBRか……。

「姉が、好きで読んでました。後たまに無理やり感想を聞きたいとか言われて読まされましたが……正直好きかと言われたら好きではないですね」

「そっか。知っているなら話は早い。君はね、そのBL小説の「わがままな王子様は英雄様の虜」という作品の世界に転生したんだ。まぁしたんだっていうとつい最近感あるけどかれこれこの世界で19年生きているんだ」

「はっ?ええ?全くそんな記憶ないんですが」

「そうだね、今の今まで君って意識は消失してたからね。本来ならもう少し早く目覚めてこの世界の君の運命を変えるとかそういうこともできたんだけど、もう無理そうだね、残念」

全然残念そうではない残念にめちゃくちゃ腹が立つ。しかし今まで聞いていた話からしてこのままいくと僕は掘られるか掘るかすることになるということだ、掘るならワンチャン自分がそうならないよう避ければなんとかなるかもしれないが、掘られるとなるとそれを避けるのはかなり難しいかもしれない。なんせさっき彼シャツ状態で何も持ってないし、なんなら攻める側の人っぽいイケメンに捕獲されていたし……とりあえず神様に現状を確認しなければいけない。

「すごい不本意ですが、僕ってどんな人物なんですか?さっきのすごいイケメンで強そうな人は誰ですか?後なんならこの後どうなる予定ですか、その辺り神様なら責任もって教えてほしいです」

「まぁ、君もうルート入っているし記憶はこの後君に自然に入っては来るんだけど先に説明しちゃうか。君の名前はルーク・スピカ・プロキオン。この世界の舞台プロキオン王国の元王太子だよ」

「もと?」

「元。君はね、本来ならこの国の王太子として後々には王様になる予定だったんだけど、やらかしたんだよね。婚約者の公爵令嬢がいながら、沢山の女の子と浮名を流したあげく、その公爵令嬢を事実無根の罪で断罪しちゃったんだよ。その結果、逆に公爵令嬢から反撃されて、婚約破棄されて結果廃嫡されてしまったんだよ。よくあるざまぁの流れだね」

「うわぁ、最低男じゃないですか。ドくずじゃないですか。ってことは今の段階で僕は一般市民なんですか。うわぁ最初からクソじゃないですか。もっと夢のある転生がよかった」

どう考えてもいいことが今後なさそうな行いをしたらしいに深いため息が出る。こういう転生もののセオリーとしてそういう怖い未来を回避するのが定石ではないのかと思うんだけど。

「さらにこの物語のタイトル覚えてるかな?」

「「わがままな王子様は英雄様の虜」ですよね……まさか……」

「このプロキオン王国は中々呪われた王国でね。長年兄弟同士で血で血を洗う後継者争いがあるような国だったんだ。それに業を煮やして今より数代前の王様がある魔法を王家にかけさせたんだ。それが「兄弟姉妹が王位継承を争わなくなる祝福」だったんだけど、この魔法には問題があった。この魔法はね、みんな仲良しになるなんて甘い魔法じゃないんだ。この国を継ぐ王太子以外が王太子に対して愛着とか愛情に近い感情を頂くことでその地位を脅かさなくなるという魔法だった。その結果確かに兄弟同士の後継者争いはなくなったけど、王太子以外の王族はみんな王太子へ執着するという怖いことになってしまったんだ。しかもこの怖さはその王族が王太子より優れていれば優れているほどひどくなるという代物という業の深さがカンストした一品なんだよね」

「むちゃくちゃ恐ろしい呪いですね。ですが、あのそれとあのイケメンにどんな因縁があるんですか」

「あのイケメンはね、君の叔父であり、王弟でこの国と隣国で100年続いていた戦争に終止符をうった大英雄で騎士団長でもあるマクシミリアン・ルーナ・ガルシア公爵」

「設定がてんこもりですね」

「夢の塊だよ。そんな彼はそれこそ非の打ち所がない人なんだけどひとつだけ問題があるんだ」

「ひとつ以上問題ありませんか。まぁいいや。まさか、さっきの魔法がらみですか?」

「大当たり。彼はね今の話でわかるようにとっても優れている男なんだよ、君の父親である王よりもその息子で王太子だった君なんか比べものにならないくらいの優れた人物。だからこそその呪いがものすごく強く出てしまっている。まず、兄であり君の父である王をそれはもう崇拝レベルで愛していた。だけどその想いは叶わない。そんな時に君が生まれた。彼の愛する父に生き写しの可愛い甥っ子の君が、それはもう狂おしいほどいとおしくて溺愛した。他のことについては公平で寛大で人格者のマクシミリアンだけど君のこととなるとすべての優先順位がおかしくなるくらい君が大好きなんだよ。結果あんなにイケメンで素晴らしい地位も名誉もある、なんなら王様より人気だってある人なのに結婚はおろか婚約もしていないんだ。それでも君は王太子だったからその毒牙には今までかからなかったし、君ってすごく鈍感な子だったから叔父から向けられる熱を帯びた視線に気づいたりすることはなかった。けれど、だからおバカな君はやらかしたんだ。廃嫡なんて普通ならないからね。しかし廃嫡された君を喉から手が出るほどマクシミリアンは当然欲したし、君の父王もマクシミリアンに恩が売りたかった。完全に利害が一致したんだ。本来ならまぁ君はやりすぎたけど廃嫡で臣下降下辺りが妥当だったのに君は平民まで落とされたのはマクシミリアンのペットにするために仕組まれたんだよ」

「えええ、あ、でももう僕は王太子じゃないんですよ。そうしたらこの呪いも解けるのでは?」

「それが残念なことに君の代わりに王太子になれる人はひとりだけ、君の腹違いのお兄さんの第一王子なんだけどあくまであの呪いは後継者が複数いると発動するものなんだ。君は平民となり、他に王位を継ぐ者も一旦はいないから呪いはお兄さん相手には発動しない。それにお兄さんが誰かと結婚したとして子供が出来ればというのもなくはないけど、マクシミリアンがそうなるころにはもう王位から遠いから呪いは発動しないだろうし、まぁつまり君はかれの唯一無二の執着対象なんだよね」

あまりの恐ろしい展開に僕は完全に言葉を失った。そして、もうひとつその話を聞いていて僕は思い出したことがある。

僕の前世の姉は筋金入りの腐女子だった。彼女はそれはもうBLを好んで読んでいた。その中で僕が多分死ぬ手前くらいでものすごくはまっていたシリーズ、それがまさに「わがままな王子様は英雄様の虜」だった。このシリーズの売りはそのハードな性的描写ととにかく何でもできて格好良いマクシミリアンと顔はいいけどそれ以外ダメダメでわがままなルークがとにかく狂気的に溺愛されて、監禁凌辱されるというヤンデレなストーリーだったはず。つまり僕はこのダメ王子ルークに転生し、僕の意識の戻らぬ間にやらかしていよいよ恐ろしいマクシミリアンに売り飛ばされて逃げたところを捕まったということらしい。

確かそれ、この小説のほぼ冒頭のシーンだ。何故僕が知っているかと言えば姉に脅されて読まされたからであるが絶対役に立たないと思っていた知識がこんなとこで役立つなんて、本当に地獄でしかない。

「いやいや、それ困りますよ。僕は嫌です。なんとか逃げたいんですが方法とかないですか」

「無理かな。あ、物語の強制力ってのがあってね。逃げることはできるけど君はそのたびにマクシミリアンにつかまって酷いお仕置きという甘い世界に連れていかれることになる設定だからね、あ、ただ君にはチートスキルがひとつあるんだよ」

「えっ、それを早く行ってくださいよ!どんなスキルなんです?」

異世界転生のチートスキルというならば良いもののはずだとその時の僕は思ったわけですが……

「そのスキルの名前は「ヤンデレ職人」」

「はっ?なんですそれこわっ。えっヤンデレを意のままに操れるとかならケツは守られますが……」

「違う違う。君は君の知らぬ間にヤンデレを制作してしまうというなんかこう残念なスキルだよ。でも主人公には必要だよね」

どうやら僕は地獄に叩き落とされたらしいということを把握した。そして、この神も仏もない世界にとりあえず絶望した。
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