【第1部終了】断罪されて廃嫡された元王子に転生した僕は救国の英雄の叔父に監禁されえげつない目にあうようです

ひよこ麺

文字の大きさ
45 / 126

42.中二病でもガチエクスカリバーはやめてください!

しおりを挟む
王城へは叔父様のテレポートで一瞬でついた。本来なら半日はかかるそうだけど、チートである叔父様の匠の技にかかれば余裕で日帰りどころか5分で往復も可能らしい。

ここまでくるとBL本の攻めチート主人公というよりも、なろう小説のチート系ハーレム主人公とかにも叔父様はなれる素養をもっていると思う。すごくうらやましいし、僕もそっち系の主人公の能力持ちで転生したかった。

そこまで贅沢でなくっても、せめて人間としての尊厳に問題が出ないタイプの主人公が良かった。

ただ、チート系ハーレム主人公との大きな差は叔父様は、可愛い女の子達に全く興味がなく、僕にその惜しみない愛の全てを注いでいるというところだけど……。改めて考えると恥ずかしい。

僕がハーレム系ヒロイン何人分の役をひとりでやってるのか?だから変な属性過多なのかも……。だとしたら特殊性癖なチート系主人公に叔父様がなるからすごく嫌だな、いや、特殊性癖の部分は間違いじゃないかも。

「ルーク、僕の顔に何かついているかい?」

「いえ、ちょっと考え事をしてました」

ジーっと叔父様の顔をみながらあまりにくだらないこと考えていた。その気まずさから目を反らす。叔父様が勅命のことがあるから、とても心配そうにしているのでさらに申し訳ない。

「大丈夫だよ、ルーク」

「マクスおじたん……」

叔父様と手を繋ぎながら、見慣れた王城の中を歩く。叔父様からは謁見の間に行くらしいことを聞いている。謁見の間は防犯の関係かそこそこ奥まったところにある。

なので、しばらくは懐かしい王城の中を歩くことになる。今までここは僕の家でもあり、そして多くの黒歴史の舞台にもなった場所だ。

「懐かしいな、ルークこの傷を覚えているかな」

そう言って、叔父様が微笑ましいという風に指さした先にある、女神像の台座についた傷。それを見た瞬間僕は冷や汗をかいた。なんせその傷にまつわるエピソードはルーク君の忘れたい黒歴史ランキング上位のものだったから。

あれは14歳の時だった。僕はその当時自分のことを暗黒神アンゴルモアの生まれ変わりで、選ばれし暗黒の騎士ダークナイトであり、国の中枢の秘密組織暗黒第四機関ひみつそしきあんこくだいよんきかん(※そんな機関当然、実在しません)に所属していて、王太子というのは世を欺くための仮の姿であるという設定で生きていた。ちなみにマーティンとは同じような設定で盛り上がっていた中二フレンズだった。

周囲の生温い目を、「ふん、愚かな人間どもめ、いずれこの世界全ては暗黒の神であるぼくにより支配されるのだ」とかなんとか思って恰好付けていたし、何も出ないのに「凍てつく極寒の大地より我が召喚に応じたまえエターナルフォースブリザード!! 」などと王城の中庭で叫んだりして仲間のマーティンや僕のモンペ以外の多くの人をドン引きさせていた。

そんな最中に叔父様が、

「ルーク、もうすぐ誕生日だけれど、何かほしいものはあるかい?」

と聞かれた。あの当時は拗らせてるし反抗期だった。

「別にない。強いて欲しいものを上げるなら、この世界に生れ落ちる際に失くしてしまったぼくの半身である魔剣バルムンクだ」

「なるほど、剣がほしいのだね」

「違う、魔剣バルムンクが……」

「わかった、必ず準備しよう」

「えっ、あ、白金聖闘士マクスおじたん、ちょっと待って、今のは冗談で……行っちゃった」

ついつい訳のわからないお願いをしてしまったと反省したが、この後、大変な後悔をすることになってしまう。それから程なくして訪れた僕の誕生日、色々なプレゼントと共にそれは送られた。

「……白金聖闘士マクスおじたんこれは一体なんだ?」

僕はそれはもう体中ブルブル震えながら、それを指さした。それは白金プラチナに輝く剣でどうみてもとんでもないオーラを放っている。

具体的には岩とかに刺さっていて、それを引き抜けた者が真の勇者とか王とか言われるタイプの煌めきである。

「すまない。ルークが欲しがっていた魔剣はおじたんと相性が悪くてね。その代わりに岩に刺さっていた聖剣エクスカリバーを抜いてきたから受け取ってほしい」

ガチの聖剣でした。まさか聖剣も中二病の子供のために抜かれてプレゼントにされるなんて思っていなかっただろうし、こんな不本意な目にあっていて不憫すぎる。

「いや、白金聖闘士マクスおじたんこれは、暗黒の騎士ダークナイトぼくとは相性がわる……」

「ルーク、受け取ってくれ、僕の聖剣エクスカリバーを」

某有名なキャッチコピーみたいなフレーズを口にした叔父様から、光り輝く明らかに聖なるオーラを纏う本物の聖剣を鞘を抜いた状態で渡されて、そのガチの煌めきに正直チビりそうになったけど、一応反抗期だったので叔父様から勢いでそれを受け取った。受け取ってしまった。

「あっうぇええええ重い!!!!」

そのまま聖剣を持って後ろにひっくり返る。その結果後ろにあった女神像の台座に傷がついてしまった、そう例の傷である。

叔父様に抱き留められたおかげで僕は無傷ですんだが、伝説の聖剣がその影響で若干刃こぼれしたのを見て小心者の僕は恐れおののいて泣き叫び、15歳を迎えたその日以降は中二病設定の話を全くしなくなった。

そんな嫌な意味で大人の階段を全力疾走で登り切った過去の汚点を回想しているうちに、僕らはついに決戦の舞台である謁見の間にたどり着いていた。
しおりを挟む
感想 114

あなたにおすすめの小説

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

超絶美形な悪役として生まれ変わりました

みるきぃ
BL
転生したのは人気アニメの序盤で消える超絶美形の悪役でした。

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。   ※(2025/4/20)第一章終わりました。少しお休みして、プロットが出来上がりましたらまた再開しますね。お付き合い頂き、本当にありがとうございました! えちち話(セルフ二次創作)も反応ありがとうございます。少しお休みするのもあるので、このまま読めるようにしておきますね。   ※♡、ブクマ、エールありがとうございます!すごく嬉しいです! ※表紙作りました!絵は描いた。ロゴをスコシプラス様に作って頂きました。可愛すぎてにこにこです♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

悪役令嬢の兄でしたが、追放後は参謀として騎士たちに囲まれています。- 第1巻 - 婚約破棄と一族追放

大の字だい
BL
王国にその名を轟かせる名門・ブラックウッド公爵家。 嫡男レイモンドは比類なき才知と冷徹な眼差しを持つ若き天才であった。 だが妹リディアナが王太子の許嫁でありながら、王太子が心奪われたのは庶民の少女リーシャ・グレイヴェル。 嫉妬と憎悪が社交界を揺るがす愚行へと繋がり、王宮での婚約破棄、王の御前での一族追放へと至る。 混乱の只中、妹を庇おうとするレイモンドの前に立ちはだかったのは、王国騎士団副団長にしてリーシャの異母兄、ヴィンセント・グレイヴェル。 琥珀の瞳に嗜虐を宿した彼は言う―― 「この才を捨てるは惜しい。ゆえに、我が手で飼い馴らそう」 知略と支配欲を秘めた騎士と、没落した宰相家の天才青年。 耽美と背徳の物語が、冷たい鎖と熱い口づけの中で幕を開ける。

婚約破棄を提案したら優しかった婚約者に手篭めにされました

多崎リクト
BL
ケイは物心着く前からユキと婚約していたが、優しくて綺麗で人気者のユキと平凡な自分では釣り合わないのではないかとずっと考えていた。 ついに婚約破棄を申し出たところ、ユキに手篭めにされてしまう。 ケイはまだ、ユキがどれだけ自分に執着しているのか知らなかった。 攻め ユキ(23) 会社員。綺麗で性格も良くて完璧だと崇められていた人。ファンクラブも存在するらしい。 受け ケイ(18) 高校生。平凡でユキと自分は釣り合わないとずっと気にしていた。ユキのことが大好き。 pixiv、ムーンライトノベルズにも掲載中

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

処理中です...