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58.水たまり製造機という謎の言葉の意味を知る(レイズ(兄上)視点)
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「馬車だと時間が掛かるね」
「これでも早馬なのでだいぶ早いのですがね」
王都を出た時間から考えても、かなりの速度でここまで来ている。しかし叔父上からするとそれでは遅いらしい。辺境地から、王城までテレポートで普段、往復している人だからそう感じるのだろう。
ちなみにこの世界においてテレポートは高難易度魔法であり、そう簡単に乱発も長距離移動もできるものではないという事実を付け加えておく。
(だからこその高速馬車だからな)
先ほどまで特に取り乱した様子のなかった叔父上が、少し焦っている感じがする。まさか、ルークに何か危機が迫っているとでもいうのだろうか?
「叔父上、まさかルークに何か起こっているのですか?」
「ああ、そうだ。ジャックがもう少し早く到達する予定でいたのだけれど、相手は相当の手練れらしいね。このままだとルークの……」
「命が危ないですか??ああ、だめだ、ルークに何かあれば私は……」
何も今できないのは分かっていたが、ルークに何かがあれば当然、私は生きて行けない。体が震える。
(どうにかルークを救わなければ。この間は逆の立場だったのに、滑稽だな)
自身の行いに対して嘲笑する。
「いや、命は問題ないが、膀胱が危ない」
「はっ?」
なんだろう「ちょっと何言ってるかわからない」という気持ちになる。
(膀胱って、ルークが犯人にそういう目に遭わされているのか。だとしてたらそれは殺す必要が出てくる)
「ルークが破廉恥な目に遭わされているのですか??許せない……」
思わずとても低い声が出たが、気にしてはいけない。そんな私に叔父上がとても真剣な顔をした。その顔の美しさは戦場の天使と謳われただけあると感心してしまう。しかし、その天使の顔をした存在はとんでもないことを口にする。
「破廉恥な目にはあっていないが、ルークが大切にしている人間としての尊厳が減るらしい。具体的には手足を縛られて、今尿意を我慢して床を這いずり回っていて、このままでは水たまり製造機になりそうなようだ。可哀そうに汚れた床を転げまわっている。後で帰ったら綺麗にしてあげないと。さらにこのまま我慢しつづけると膀胱炎になりそうだと嘆いているよ」
「……はっ?」
現在2度目の「ちょっと何言ってるかわからない」状態が起こっている。
(そもそも水たまり製造機とはなんのことだ?全くよく分からない)
「ああ、水たまり製造機とは、つまりお漏らしをしてしまう状態のルーク的な比喩だよ。なかなか面白い表現で僕も密かに気に入っている」
「あ、あの私は今思ったことを口にしておりましたか?」
心で思っただけで口にした覚えがないのだが。すると叔父上は悪戯が見つかった子供のように無邪気に笑う。その美しい笑顔を殴りたいと思ったが、そうした場合、私が確実に負けるので我慢する。
「それより、ルークの膀胱を守るためにも、今すぐにルークの元まで行きたいと考えている。それにあたりふたつほど問題がある」
問題はふたつと言わずものすごい数あると思うが、それをここでいうのは無駄だなとあきらめる。
「ひとつは、現在走行中の馬車に居るということだ。いきなり今テレポートして失踪したら行者が後ほど困ってしまうだろう。ふたつめは、テレポートは一応できそうだけれど、いつものように酔い止めとかそういうのを施せないからレイズが割としんどい感じになるかもしれない」
「……あの、テレポートは難しいのではなかったのですか?」
いくつかの大前提が崩れる問題点に眉根を寄せながら聞くと、叔父上はとても涼しい顔をして、
「ああ。詳細な位置特定できたのでひとつ魔法を解除すればいけそうだ。行者についてはなんとかならなくはないが、レイズ、君は幼い頃から割と乗り物酔いがあったかと思うがその点問題ないかい?」
と恐ろしいことを簡単に言った。当然現在も馬車にいるので薬を服用しているので問題ない。むしろそんなことこの人が覚えていたことにびっくりした。
「酔い止めなら薬を飲んでいるので問題ないかと」
「そうか……ならば、テレポートを行おう、ルークの膀胱を守るためにも必要なことだ」
「あの、叔父上、ひとつ確認があるのですが……」
とても大切なことが問題に入っていなかったので、ここで確認しようと思う。
「なんだい?」
「例の館は中にいるものが望まないと中に入れないと聞いています。僕はルークにも当然中にいる誰にも入れてもらえないと思うのですが……」
そう聞くと叔父上が今日一番良い笑顔をした。
「それなら問題ない。こうすればいい」
「これでも早馬なのでだいぶ早いのですがね」
王都を出た時間から考えても、かなりの速度でここまで来ている。しかし叔父上からするとそれでは遅いらしい。辺境地から、王城までテレポートで普段、往復している人だからそう感じるのだろう。
ちなみにこの世界においてテレポートは高難易度魔法であり、そう簡単に乱発も長距離移動もできるものではないという事実を付け加えておく。
(だからこその高速馬車だからな)
先ほどまで特に取り乱した様子のなかった叔父上が、少し焦っている感じがする。まさか、ルークに何か危機が迫っているとでもいうのだろうか?
「叔父上、まさかルークに何か起こっているのですか?」
「ああ、そうだ。ジャックがもう少し早く到達する予定でいたのだけれど、相手は相当の手練れらしいね。このままだとルークの……」
「命が危ないですか??ああ、だめだ、ルークに何かあれば私は……」
何も今できないのは分かっていたが、ルークに何かがあれば当然、私は生きて行けない。体が震える。
(どうにかルークを救わなければ。この間は逆の立場だったのに、滑稽だな)
自身の行いに対して嘲笑する。
「いや、命は問題ないが、膀胱が危ない」
「はっ?」
なんだろう「ちょっと何言ってるかわからない」という気持ちになる。
(膀胱って、ルークが犯人にそういう目に遭わされているのか。だとしてたらそれは殺す必要が出てくる)
「ルークが破廉恥な目に遭わされているのですか??許せない……」
思わずとても低い声が出たが、気にしてはいけない。そんな私に叔父上がとても真剣な顔をした。その顔の美しさは戦場の天使と謳われただけあると感心してしまう。しかし、その天使の顔をした存在はとんでもないことを口にする。
「破廉恥な目にはあっていないが、ルークが大切にしている人間としての尊厳が減るらしい。具体的には手足を縛られて、今尿意を我慢して床を這いずり回っていて、このままでは水たまり製造機になりそうなようだ。可哀そうに汚れた床を転げまわっている。後で帰ったら綺麗にしてあげないと。さらにこのまま我慢しつづけると膀胱炎になりそうだと嘆いているよ」
「……はっ?」
現在2度目の「ちょっと何言ってるかわからない」状態が起こっている。
(そもそも水たまり製造機とはなんのことだ?全くよく分からない)
「ああ、水たまり製造機とは、つまりお漏らしをしてしまう状態のルーク的な比喩だよ。なかなか面白い表現で僕も密かに気に入っている」
「あ、あの私は今思ったことを口にしておりましたか?」
心で思っただけで口にした覚えがないのだが。すると叔父上は悪戯が見つかった子供のように無邪気に笑う。その美しい笑顔を殴りたいと思ったが、そうした場合、私が確実に負けるので我慢する。
「それより、ルークの膀胱を守るためにも、今すぐにルークの元まで行きたいと考えている。それにあたりふたつほど問題がある」
問題はふたつと言わずものすごい数あると思うが、それをここでいうのは無駄だなとあきらめる。
「ひとつは、現在走行中の馬車に居るということだ。いきなり今テレポートして失踪したら行者が後ほど困ってしまうだろう。ふたつめは、テレポートは一応できそうだけれど、いつものように酔い止めとかそういうのを施せないからレイズが割としんどい感じになるかもしれない」
「……あの、テレポートは難しいのではなかったのですか?」
いくつかの大前提が崩れる問題点に眉根を寄せながら聞くと、叔父上はとても涼しい顔をして、
「ああ。詳細な位置特定できたのでひとつ魔法を解除すればいけそうだ。行者についてはなんとかならなくはないが、レイズ、君は幼い頃から割と乗り物酔いがあったかと思うがその点問題ないかい?」
と恐ろしいことを簡単に言った。当然現在も馬車にいるので薬を服用しているので問題ない。むしろそんなことこの人が覚えていたことにびっくりした。
「酔い止めなら薬を飲んでいるので問題ないかと」
「そうか……ならば、テレポートを行おう、ルークの膀胱を守るためにも必要なことだ」
「あの、叔父上、ひとつ確認があるのですが……」
とても大切なことが問題に入っていなかったので、ここで確認しようと思う。
「なんだい?」
「例の館は中にいるものが望まないと中に入れないと聞いています。僕はルークにも当然中にいる誰にも入れてもらえないと思うのですが……」
そう聞くと叔父上が今日一番良い笑顔をした。
「それなら問題ない。こうすればいい」
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