【第1部終了】断罪されて廃嫡された元王子に転生した僕は救国の英雄の叔父に監禁されえげつない目にあうようです

ひよこ麺

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66.重なり合うふたつの矛盾(ジャック視点)

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「ルーク殿下!!」

そう叫んだが、発狂して飛び出した殿下には届いていなかったようだ。殿下の後をすぐさま黒猫が追いかけていった。

(そう言えば、あの猫は一体……)

その様子を見て男は、笑う。それはもう幸せそうに。

「ははは、あの部屋に放置しなくってもこんなに簡単に殿下の心を俺と同じにできた。壊れた殿下は大丈夫、ずっと幸せに暮らせるから、ずっと……」

何を言っているのか分からない。しかし何故か男と被るように先ほどの女性が見える。

(壊れてしまえば、何もわからなくなる。そうしたらやっと幸せになれる)

「違う。壊れたって、現実から逃げるだけで幸せにはなれない。逃げることは必要なこともあるが、逃げ続けることは立ち向かうよりもずっと地獄だ」

逃げることで救われることは確かにある。けれど、こいつの逃げるはただ心を失くすことでしかない。それは一時的な幸福と引き換えに多くのモノを失う劇薬にすぎない。

「俺も、殿下も幸せになれる。そう、もういいんだ、全部が俺と同じになればみんな幸せだ」

(いつも誰かの幸せを見ていた。妬ましかった。だから誰とも会わないようになった、それなのに私は幸せになれなかった)

「……幸せになりたいならなろう。遅くない、だから……」

手を差し伸べる、けれど壊れた男には俺の姿は見えていない。もちろんそれに重なって見える女性にも。彼らはただ、自分だけを見ている。

返り血にまみれている男の顔は狂喜に満ちているのに、何故だろう、俺にはずっと泣き叫んでいるように見える。重なって見える女性も無表情に微動だにしないが、やはり声も立てず泣いているように見えた。

「こっちに手を出してくれ、そうしないと、結局何も、なにひとつ変わらないって。みんなが壊れても誰とも寄り添うことができなければ、その心はひとりぼっちだって……」

確かにこの男は沢山の人を殺した。ガルシア公爵様も殺したことをその返り血が証明している。けれどまずは罪を償うにしてもこちら側に戻ってもらわないといけない。

「ははははは。これでルーク殿下は俺のものだ。後は邪魔者を全て殺せばいい、そうだよ、そうだよな」

(全て消えればいい。それで終わりのはず。それなのに……)

ケタケタと笑う男の姿と泣きはじめた女性の姿が重なる。同じ体にあるふたつの魂と意識。神と名乗る声はかの人の名前を見つけろと言った。

「名前……くそっ、殿下から聞きそびれてしまった」

多分、かの人の名前はあの庭に咲く薄紅の花と同じ。ただ、それが分からない。それが分からないからこちらの呼びかけに答えることがない。

「サクラ」

そう呼びかけてみた。あの花はサクラというらしいことは分かっていた。けれど、それが名前ではないことも知っている。ただ、何か変化がないかと思ったのだ。

すると、男がこちらを不思議そうに見ている。

「どうしてお前が、俺が夢で見た花の名前を知っているんだ?」

狂った男の顔に困惑が浮かんだ。目的はまだ果たせないがもしかしたら、少しは時間が稼げるかもしれない。その間になんとか名前を見つけなければ。

「この館の庭に咲いている、殿下に聞いた」

「殿下。ああ。殿下は唯一夢の花のことを知っていた。俺の唯一の愛おしい人。そう、愛おしいはずなんだそれなのに……」

返り血が床にぼたりぼたりと垂れている。凝固し始めている部分もあるが、生々しい赤の色彩の中で笑っていた男の顔が無に変わる。

(あの物語を読んでいる時は主人公になれた。けれど、私はヒーローのマクシミリアンよりもジャックが好きだった。ジャックが……)

「俺が君は好きなのか?」

無の表情を浮かべた男の顔を真正面から見据えた。何の感情もなかった昏い瞳が困惑に見開く。

「違う、俺はルーク殿下を……」

(そうよ、私はジャックを……)

「(好き)」

ふたつの声が重なる。

「ああ、だからお前を殺さないといけない」

(だから貴方は殺せない)

そして、それの言葉がふたつに分かれる。その瞬間に神の意図を理解した。

(神は、彼らを分離させたいのだ。イレギュラーなのは彼の中に彼女が、別世界の者がいることで手出しができない。そのために、俺は彼女を彼女に戻すためにその名前を見つける必要があるんだ)

そう考えて、俺はあることを思いついた。

(分からないなら、
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