【第1部終了】断罪されて廃嫡された元王子に転生した僕は救国の英雄の叔父に監禁されえげつない目にあうようです

ひよこ麺

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71.モンペの狂気に飲まれかかったので正気度を一時的に著しく失いました

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「ルーク。本当に本当に無事でよかった」

そう僕を抱きしめて泣いている人は、僕の父親ではなく、僕のことを2歳8か月程度の幼児と認識しているベルダンディ公爵である。まぁ、彼の中で僕は2歳8か月だからそんな小さな子供が誘拐されたら死ぬほど心配だよねとは思う。思うけどかれこれ1時間くらいホールドされているのでそろそろ離して欲しい。

「ウィル、そろそろルークを離してあげようよ。最初から死んだ魚みたいな目をしていたけど、今や腐敗した魚くらい目がイッてるからさ」

僕ぐらい適当なパパ上がめずらしく止めに入る。それくらいベルダンディ公爵の行動が常軌を逸していたのだ。

「ルーク。ああ、ケガがなくって本当によかった。ルークに何かあったらウィルおとうちゃまは生きて行けないからね」

そう言って、なおも、しがみつき続けるベルダンディ公爵の狂気に僕の正気度が順調に減少している。狂気に飲まれて限界が近い僕はブツブツと呟く。

「シテ…コロシテ…」

「ウィリアム兄さん、ルークをいい加減に離してください」

正気を失いかけた僕を叔父様が、ベルダンディ公爵の腕の中から奪還してくれた。とりあえず助かった。危なくベルダンディ公爵おそろしいきょうきに飲まれてしまうところだった。

僕らが王城にいるのは数日前に起こった、僕の誘拐事件ならびに暗殺者の叔父様殺人未遂事件ならびに兄上の邪眼覚醒、もとい目が赤くなった件についての諸々の話や報告をしに来たからだ。

現在、王城の謁見の間に僕、叔父様、兄上、ジャック、ベルダンディ公爵、パパ上が居る状態だ。

本来なら、僕の件は身分的に報告はいらないはずなのだが、先ほどのようなモンペの人が納得しないのでやむおえず報告をしに来ていた。

「つまり、ルークを攫ったのは事前に報告があった元影の男で、その男によりマクスが殺されかけて、レイズ殿下の大切な目が片方赤くなってしまったと。さらには犯人の男は失踪して行方しれずということだな」

「概ね正しいです。ただ、ウィリアム兄さん。僕は死にかけたのではなく死にました。レイズのおかげで残機は減っていませんが死んでいます」

「命を残機というのはやめろと何回言えばわかる、マクス。お前は昔から無茶をしすぎる。それに感化されて王太子であるレイズ殿下までそのようなことをされるとは……」

そう言って、ベルダンディ公爵が兄上を見ている。ベルダンディ公爵は兄上のことは僕みたいな異常な可愛がり方はしていない。ただ、パパ上の兄上も息子であるので少なからず正常な範囲で心配しているし、王太子になった兄上に何かあるというのは国として困るので釘を刺しているのだろう。

「私は、願いはしたが自ら叔父様のようにこの事態を招いたのではありません。それに……、私は別に目の色が変わっただけで失明など問題は起きていない。ごく稀に赤い目の方でが見えたりするがそれ以外の問題は全くありません」

(兄上、それは問題しかないのでは?)

今の兄上の外観は青と赤の美しいオッドアイズの瞳をしていて、しかも赤い瞳が邪気眼を覚醒して見えざるものが視える上に、外見がとんでもない艶のある麗人とかいう、元からかすんでいた主人公の僕がさらにかすんで消失しそうなスペック持ちになってしまった。

「レイズが見えているのは、この世ならざるものだな。僕にも見えるから間違いない」

そして、僕を腕の中にしまっている叔父様があっさりと恐ろしいことをいう。

(えっ、叔父様も邪気眼なの?)

「いや、ルーク。おじたんのは千里眼というらしい。ちなみにこの世ならざるもの以外にも現在、過去、未来などを……」

「それ以上、言ってはいけない」

薄々感づいてはいたけれどやはり叔父様は神格だと思う。でもたとえ神格でも今回の件で、僕の大切な人には変わりないとわかった。だからあまり深く考えてはいけない。先ほども狂気に触れて正気度が減ったのにさらに減らすとまた一時的に発狂しかねない。

「しかし、例の暗殺者を取り逃したのはまずいね。マクスを殺せる手練れなんて。一応あの後も捜索しているけれどいまだに行方不明なんだよね」

パパ上がため息をついた。真面目なパパ上は死ぬほど貴重なんで、前世のスマホがあれば軽率に写真撮りたいレベルだけれど今はないから仕方ない。

「それについて……陛下に宰相殿にご報告がございます」
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