74 / 126
71.モンペの狂気に飲まれかかったので正気度を一時的に著しく失いました
しおりを挟む
「ルーク。本当に本当に無事でよかった」
そう僕を抱きしめて泣いている人は、僕の父親ではなく、僕のことを2歳8か月程度の幼児と認識しているベルダンディ公爵である。まぁ、彼の中で僕は2歳8か月だからそんな小さな子供が誘拐されたら死ぬほど心配だよねとは思う。思うけどかれこれ1時間くらいホールドされているのでそろそろ離して欲しい。
「ウィル、そろそろルークを離してあげようよ。最初から死んだ魚みたいな目をしていたけど、今や腐敗した魚くらい目がイッてるからさ」
僕ぐらい適当なパパ上がめずらしく止めに入る。それくらいベルダンディ公爵の行動が常軌を逸していたのだ。
「ルーク。ああ、ケガがなくって本当によかった。ルークに何かあったらウィルおとうちゃまは生きて行けないからね」
そう言って、なおも、しがみつき続けるベルダンディ公爵の狂気に僕の正気度が順調に減少している。狂気に飲まれて限界が近い僕はブツブツと呟く。
「シテ…コロシテ…」
「ウィリアム兄さん、ルークをいい加減に離してください」
正気を失いかけた僕を叔父様が、ベルダンディ公爵の腕の中から奪還してくれた。とりあえず助かった。危なくベルダンディ公爵に飲まれてしまうところだった。
僕らが王城にいるのは数日前に起こった、僕の誘拐事件ならびに暗殺者の叔父様殺人未遂事件ならびに兄上の邪眼覚醒、もとい目が赤くなった件についての諸々の話や報告をしに来たからだ。
現在、王城の謁見の間に僕、叔父様、兄上、ジャック、ベルダンディ公爵、パパ上が居る状態だ。
本来なら、僕の件は身分的に報告はいらないはずなのだが、先ほどのようなモンペの人が納得しないのでやむおえず報告をしに来ていた。
「つまり、ルークを攫ったのは事前に報告があった元影の男で、その男によりマクスが殺されかけて、レイズ殿下の大切な目が片方赤くなってしまったと。さらには犯人の男は失踪して行方しれずということだな」
「概ね正しいです。ただ、ウィリアム兄さん。僕は死にかけたのではなく死にました。レイズのおかげで残機は減っていませんが死んでいます」
「命を残機というのはやめろと何回言えばわかる、マクス。お前は昔から無茶をしすぎる。それに感化されて王太子であるレイズ殿下までそのようなことをされるとは……」
そう言って、ベルダンディ公爵が兄上を見ている。ベルダンディ公爵は兄上のことは僕みたいな異常な可愛がり方はしていない。ただ、パパ上の兄上も息子であるので少なからず正常な範囲で心配しているし、王太子になった兄上に何かあるというのは国として困るので釘を刺しているのだろう。
「私は、願いはしたが自ら叔父様のようにこの事態を招いたのではありません。それに……、私は別に目の色が変わっただけで失明など問題は起きていない。ごく稀に赤い目の方で何か変なものが見えたりするがそれ以外の問題は全くありません」
(兄上、それは問題しかないのでは?)
今の兄上の外観は青と赤の美しいオッドアイズの瞳をしていて、しかも赤い瞳が邪気眼を覚醒して見えざるものが視える上に、外見がとんでもない艶のある麗人とかいう、元からかすんでいた主人公の僕がさらにかすんで消失しそうなスペック持ちになってしまった。
「レイズが見えているのは、この世ならざるものだな。僕にも見えるから間違いない」
そして、僕を腕の中にしまっている叔父様があっさりと恐ろしいことをいう。
(えっ、叔父様も邪気眼なの?)
「いや、ルーク。おじたんのは千里眼というらしい。ちなみにこの世ならざるもの以外にも現在、過去、未来などを……」
「それ以上、言ってはいけない」
薄々感づいてはいたけれどやはり叔父様は神格だと思う。でもたとえ神格でも今回の件で、僕の大切な人には変わりないとわかった。だからあまり深く考えてはいけない。先ほども狂気に触れて正気度が減ったのにさらに減らすとまた一時的に発狂しかねない。
「しかし、例の暗殺者を取り逃したのはまずいね。マクスを殺せる手練れなんて。一応あの後も捜索しているけれどいまだに行方不明なんだよね」
パパ上がため息をついた。真面目なパパ上は死ぬほど貴重なんで、前世のスマホがあれば軽率に写真撮りたいレベルだけれど今はないから仕方ない。
「それについて……陛下に宰相殿にご報告がございます」
そう僕を抱きしめて泣いている人は、僕の父親ではなく、僕のことを2歳8か月程度の幼児と認識しているベルダンディ公爵である。まぁ、彼の中で僕は2歳8か月だからそんな小さな子供が誘拐されたら死ぬほど心配だよねとは思う。思うけどかれこれ1時間くらいホールドされているのでそろそろ離して欲しい。
「ウィル、そろそろルークを離してあげようよ。最初から死んだ魚みたいな目をしていたけど、今や腐敗した魚くらい目がイッてるからさ」
僕ぐらい適当なパパ上がめずらしく止めに入る。それくらいベルダンディ公爵の行動が常軌を逸していたのだ。
「ルーク。ああ、ケガがなくって本当によかった。ルークに何かあったらウィルおとうちゃまは生きて行けないからね」
そう言って、なおも、しがみつき続けるベルダンディ公爵の狂気に僕の正気度が順調に減少している。狂気に飲まれて限界が近い僕はブツブツと呟く。
「シテ…コロシテ…」
「ウィリアム兄さん、ルークをいい加減に離してください」
正気を失いかけた僕を叔父様が、ベルダンディ公爵の腕の中から奪還してくれた。とりあえず助かった。危なくベルダンディ公爵に飲まれてしまうところだった。
僕らが王城にいるのは数日前に起こった、僕の誘拐事件ならびに暗殺者の叔父様殺人未遂事件ならびに兄上の邪眼覚醒、もとい目が赤くなった件についての諸々の話や報告をしに来たからだ。
現在、王城の謁見の間に僕、叔父様、兄上、ジャック、ベルダンディ公爵、パパ上が居る状態だ。
本来なら、僕の件は身分的に報告はいらないはずなのだが、先ほどのようなモンペの人が納得しないのでやむおえず報告をしに来ていた。
「つまり、ルークを攫ったのは事前に報告があった元影の男で、その男によりマクスが殺されかけて、レイズ殿下の大切な目が片方赤くなってしまったと。さらには犯人の男は失踪して行方しれずということだな」
「概ね正しいです。ただ、ウィリアム兄さん。僕は死にかけたのではなく死にました。レイズのおかげで残機は減っていませんが死んでいます」
「命を残機というのはやめろと何回言えばわかる、マクス。お前は昔から無茶をしすぎる。それに感化されて王太子であるレイズ殿下までそのようなことをされるとは……」
そう言って、ベルダンディ公爵が兄上を見ている。ベルダンディ公爵は兄上のことは僕みたいな異常な可愛がり方はしていない。ただ、パパ上の兄上も息子であるので少なからず正常な範囲で心配しているし、王太子になった兄上に何かあるというのは国として困るので釘を刺しているのだろう。
「私は、願いはしたが自ら叔父様のようにこの事態を招いたのではありません。それに……、私は別に目の色が変わっただけで失明など問題は起きていない。ごく稀に赤い目の方で何か変なものが見えたりするがそれ以外の問題は全くありません」
(兄上、それは問題しかないのでは?)
今の兄上の外観は青と赤の美しいオッドアイズの瞳をしていて、しかも赤い瞳が邪気眼を覚醒して見えざるものが視える上に、外見がとんでもない艶のある麗人とかいう、元からかすんでいた主人公の僕がさらにかすんで消失しそうなスペック持ちになってしまった。
「レイズが見えているのは、この世ならざるものだな。僕にも見えるから間違いない」
そして、僕を腕の中にしまっている叔父様があっさりと恐ろしいことをいう。
(えっ、叔父様も邪気眼なの?)
「いや、ルーク。おじたんのは千里眼というらしい。ちなみにこの世ならざるもの以外にも現在、過去、未来などを……」
「それ以上、言ってはいけない」
薄々感づいてはいたけれどやはり叔父様は神格だと思う。でもたとえ神格でも今回の件で、僕の大切な人には変わりないとわかった。だからあまり深く考えてはいけない。先ほども狂気に触れて正気度が減ったのにさらに減らすとまた一時的に発狂しかねない。
「しかし、例の暗殺者を取り逃したのはまずいね。マクスを殺せる手練れなんて。一応あの後も捜索しているけれどいまだに行方不明なんだよね」
パパ上がため息をついた。真面目なパパ上は死ぬほど貴重なんで、前世のスマホがあれば軽率に写真撮りたいレベルだけれど今はないから仕方ない。
「それについて……陛下に宰相殿にご報告がございます」
15
あなたにおすすめの小説
魔王の息子を育てることになった俺の話
お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。
「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」
現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません?
魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL
BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。
BL大賞エントリー中です。
義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。
※(2025/4/20)第一章終わりました。少しお休みして、プロットが出来上がりましたらまた再開しますね。お付き合い頂き、本当にありがとうございました!
えちち話(セルフ二次創作)も反応ありがとうございます。少しお休みするのもあるので、このまま読めるようにしておきますね。
※♡、ブクマ、エールありがとうございます!すごく嬉しいです!
※表紙作りました!絵は描いた。ロゴをスコシプラス様に作って頂きました。可愛すぎてにこにこです♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
悪役令嬢の兄でしたが、追放後は参謀として騎士たちに囲まれています。- 第1巻 - 婚約破棄と一族追放
大の字だい
BL
王国にその名を轟かせる名門・ブラックウッド公爵家。
嫡男レイモンドは比類なき才知と冷徹な眼差しを持つ若き天才であった。
だが妹リディアナが王太子の許嫁でありながら、王太子が心奪われたのは庶民の少女リーシャ・グレイヴェル。
嫉妬と憎悪が社交界を揺るがす愚行へと繋がり、王宮での婚約破棄、王の御前での一族追放へと至る。
混乱の只中、妹を庇おうとするレイモンドの前に立ちはだかったのは、王国騎士団副団長にしてリーシャの異母兄、ヴィンセント・グレイヴェル。
琥珀の瞳に嗜虐を宿した彼は言う――
「この才を捨てるは惜しい。ゆえに、我が手で飼い馴らそう」
知略と支配欲を秘めた騎士と、没落した宰相家の天才青年。
耽美と背徳の物語が、冷たい鎖と熱い口づけの中で幕を開ける。
婚約破棄を提案したら優しかった婚約者に手篭めにされました
多崎リクト
BL
ケイは物心着く前からユキと婚約していたが、優しくて綺麗で人気者のユキと平凡な自分では釣り合わないのではないかとずっと考えていた。
ついに婚約破棄を申し出たところ、ユキに手篭めにされてしまう。
ケイはまだ、ユキがどれだけ自分に執着しているのか知らなかった。
攻め
ユキ(23)
会社員。綺麗で性格も良くて完璧だと崇められていた人。ファンクラブも存在するらしい。
受け
ケイ(18)
高校生。平凡でユキと自分は釣り合わないとずっと気にしていた。ユキのことが大好き。
pixiv、ムーンライトノベルズにも掲載中
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる