111 / 126
番外編:グレゴリー編
05.狂気に理解がある人間でも耐えられない狂気を感じる男(グレゴリー(狂信者)編)
しおりを挟む
「この世界でその王はこう呼ばれて竜殺しの偉大なる王、ベーオウルフ。最古の物語に登場する人間の王。全ての源流にして原典。僕はかのお方に使える魔術師のひとりだった。グレッグもベーオウルフ王については知っているね?」
そう話しかけたリーンハルトの表情はとても懐かしむような、それでいて切ないというような表情だった。
「ああ、2回に渡り竜と渡り合った勇ましき人の王。最期は民を困らせた邪悪な竜と老いた身でありながら戦い、相打ちとなりながらも国を守り抜き、臣下や民に見送られて旅立った英雄だ」
僕からすれば、この話は耳にタコができるほど聞いた物語だ。僕のご先祖様のベルセルクもこの偉大な王の血を引いているらしく、それは多くの事柄の中でも重要だと丁寧に教え込まれた。
自身の家門に誇りを持つことは貴族として当然なので特に疑問には思っていなかったが、正直、偉大なる太陽たるルーク殿下への忠誠の気持ちよりは薄い。
「僕はかの王に仕えていたんだ。だから彼の真実を知っている、ベーオウルフ、僕がもっとも愛して敬愛したそのお方は「竜王様」の熱狂的な信者だった」
目を一度閉じたリーンハルトからはその王、ベーオウルフへ深い敬愛のようなものを感じるとの同時に理由は分からないが、ゾッとするような寒気も覚えた。
「僕は、人と妖精のハーフでね、あまり人間のことがわからなかったんだ。だから勉強もかねて人間の王に仕えてみたんだけど、その人ベーオウルフが最高に愉快な人で僕は初めて感情を知った。かの王は幼き日に竜の王、竜王に出会い、その美しさに惹かれてから竜王に再会するために勇士となり、竜が出そうな戦場を駆け抜けていくうちにいつの間にか、彼の真っ直ぐで純粋なパッションに惹かれた人々により人間の王になったんだ。簡単に言うと、推しを追い求め戦って戦い抜いた結果、なんか王になっていたらしい。ちなみにかの王は竜王様にしか興味がなかったから、不正もなく正しく国を治めた。まさに推しにより正しく導いた感じだね」
「しかし、かの王はそれだけ竜を愛していたのになぜ、竜を殺したんだ??推しコロなど完全なる悪だ」
「ああ、アレはかの竜王に頼まれたんだよ。自身の息子が邪悪な竜に堕ちて、どうしても殺せないから手を貸して欲しいと。推しに懇願されたことにより老いた体を無理に引きずり、最期の力を振り絞り戦って、目的を果たして、推しを想いながら激しく死んだんだよ。今思い出しても辛い。かの人を僕は愛していた、だから僕は竜王が憎かった。それでちょっと竜王にやらかして不老不死になり世界が終わる日まで生きねばならなくなったんだよね」
さらりとヤバいことを言った気がした。
「しかし、その王と僕に何の関係がある??一応我が家はかの王の血筋とは伝わっているが……」
「グレッグはかの王の魂を受け継ぎしものだからね。かの王は何度も生まれ変わり続けてる。前に話したけど、その美しい魂の持ち主に出会うたびに僕は恋をして愛してしまうんだ。例え別れが来るとしても。何度も何度も遠くに行ってしまうけどずっとずっと愛してるんだ」
そう語るリーンハルトの目は、完全なる狂気に染まっている。僕は、狂気に対しては割と寛容な方である。ベルセルクの血がそうさせるのか、僕の周りには何かに熱狂する人間が多かった。特に父方の家系の親戚は何かに対して激しい狂気を見せることが多い。
僕がルーク殿下に対してそうであるように、父上はルーカス陛下に対してずっと熱狂しているし、父上の弟である僕からみたら叔父にあたる伯爵はその妻に執着して、実はずっと監禁している。
ベルダンディの血を引く男性に多く出る遺伝で、何でも父の今は亡き妹、僕の叔母が嫁いだ少し離れた公国の僕からみたら従兄弟にあたる現大公も、ベルダンディの血の影響で実は悪魔に対して熱狂的な信仰をしているという話を聞いたことがある。
しかし、狂気を身近に感じて生きている僕でも恐ろしいと思うくらいにリーンハルトのその感情が恐ろしいと思った。それほどにこの男が抱く何かは常軌を逸だつしていた。
「だとして、僕がその王の魂を継いでいてもその王自体ではない。僕は竜王になど興味はない。太陽のような偉大な神のようなルーク殿下にしかそれこそ関心もない。ほら、これだけでも別人で……」
「ルーク殿下、つまりプロキオン王国の元王太子。ならば、プロキオン王国の建国神話は君も知っているだろう??」
「当たり前だ。プロキオン王国は元々別の王国だった。その王国には美しい姫君が居たが、その姫君を気に入らない妃によって竜の生贄にされてしまう。しかし竜が姫君に恋をして、姫君を生贄にした王族を倒して結ばれてその子のひとりが竜の血を捨て人間となりプロキオン王国の初代王となったとされている。そしてルーク殿下こそその正当なる後継者であり、真紅眼の黒……」
「はいはい、よくできました。ちなみにそのプロキオン王国建国に関わっている竜とは竜王、ベーオウルフ王が生涯追い求めた推しであり、プロキオン王国の王族は竜王の血をもっとも色濃く引いた王族だからね。イガルク帝国も竜王の子の血筋だけどどちらかというと姫君の方の血が濃いからあんまりグレッグの気に召さなかったのだと僕は思っているよ。そうじゃなきゃ、ルーク殿下でなく、ガルシア公爵を追っかけていただろうからね。本当に一途な魂だよ。あんな変態の何が良いのか分からない。僕なら、誰よりも君を幸せにできるのに……」
そう話しかけたリーンハルトの表情はとても懐かしむような、それでいて切ないというような表情だった。
「ああ、2回に渡り竜と渡り合った勇ましき人の王。最期は民を困らせた邪悪な竜と老いた身でありながら戦い、相打ちとなりながらも国を守り抜き、臣下や民に見送られて旅立った英雄だ」
僕からすれば、この話は耳にタコができるほど聞いた物語だ。僕のご先祖様のベルセルクもこの偉大な王の血を引いているらしく、それは多くの事柄の中でも重要だと丁寧に教え込まれた。
自身の家門に誇りを持つことは貴族として当然なので特に疑問には思っていなかったが、正直、偉大なる太陽たるルーク殿下への忠誠の気持ちよりは薄い。
「僕はかの王に仕えていたんだ。だから彼の真実を知っている、ベーオウルフ、僕がもっとも愛して敬愛したそのお方は「竜王様」の熱狂的な信者だった」
目を一度閉じたリーンハルトからはその王、ベーオウルフへ深い敬愛のようなものを感じるとの同時に理由は分からないが、ゾッとするような寒気も覚えた。
「僕は、人と妖精のハーフでね、あまり人間のことがわからなかったんだ。だから勉強もかねて人間の王に仕えてみたんだけど、その人ベーオウルフが最高に愉快な人で僕は初めて感情を知った。かの王は幼き日に竜の王、竜王に出会い、その美しさに惹かれてから竜王に再会するために勇士となり、竜が出そうな戦場を駆け抜けていくうちにいつの間にか、彼の真っ直ぐで純粋なパッションに惹かれた人々により人間の王になったんだ。簡単に言うと、推しを追い求め戦って戦い抜いた結果、なんか王になっていたらしい。ちなみにかの王は竜王様にしか興味がなかったから、不正もなく正しく国を治めた。まさに推しにより正しく導いた感じだね」
「しかし、かの王はそれだけ竜を愛していたのになぜ、竜を殺したんだ??推しコロなど完全なる悪だ」
「ああ、アレはかの竜王に頼まれたんだよ。自身の息子が邪悪な竜に堕ちて、どうしても殺せないから手を貸して欲しいと。推しに懇願されたことにより老いた体を無理に引きずり、最期の力を振り絞り戦って、目的を果たして、推しを想いながら激しく死んだんだよ。今思い出しても辛い。かの人を僕は愛していた、だから僕は竜王が憎かった。それでちょっと竜王にやらかして不老不死になり世界が終わる日まで生きねばならなくなったんだよね」
さらりとヤバいことを言った気がした。
「しかし、その王と僕に何の関係がある??一応我が家はかの王の血筋とは伝わっているが……」
「グレッグはかの王の魂を受け継ぎしものだからね。かの王は何度も生まれ変わり続けてる。前に話したけど、その美しい魂の持ち主に出会うたびに僕は恋をして愛してしまうんだ。例え別れが来るとしても。何度も何度も遠くに行ってしまうけどずっとずっと愛してるんだ」
そう語るリーンハルトの目は、完全なる狂気に染まっている。僕は、狂気に対しては割と寛容な方である。ベルセルクの血がそうさせるのか、僕の周りには何かに熱狂する人間が多かった。特に父方の家系の親戚は何かに対して激しい狂気を見せることが多い。
僕がルーク殿下に対してそうであるように、父上はルーカス陛下に対してずっと熱狂しているし、父上の弟である僕からみたら叔父にあたる伯爵はその妻に執着して、実はずっと監禁している。
ベルダンディの血を引く男性に多く出る遺伝で、何でも父の今は亡き妹、僕の叔母が嫁いだ少し離れた公国の僕からみたら従兄弟にあたる現大公も、ベルダンディの血の影響で実は悪魔に対して熱狂的な信仰をしているという話を聞いたことがある。
しかし、狂気を身近に感じて生きている僕でも恐ろしいと思うくらいにリーンハルトのその感情が恐ろしいと思った。それほどにこの男が抱く何かは常軌を逸だつしていた。
「だとして、僕がその王の魂を継いでいてもその王自体ではない。僕は竜王になど興味はない。太陽のような偉大な神のようなルーク殿下にしかそれこそ関心もない。ほら、これだけでも別人で……」
「ルーク殿下、つまりプロキオン王国の元王太子。ならば、プロキオン王国の建国神話は君も知っているだろう??」
「当たり前だ。プロキオン王国は元々別の王国だった。その王国には美しい姫君が居たが、その姫君を気に入らない妃によって竜の生贄にされてしまう。しかし竜が姫君に恋をして、姫君を生贄にした王族を倒して結ばれてその子のひとりが竜の血を捨て人間となりプロキオン王国の初代王となったとされている。そしてルーク殿下こそその正当なる後継者であり、真紅眼の黒……」
「はいはい、よくできました。ちなみにそのプロキオン王国建国に関わっている竜とは竜王、ベーオウルフ王が生涯追い求めた推しであり、プロキオン王国の王族は竜王の血をもっとも色濃く引いた王族だからね。イガルク帝国も竜王の子の血筋だけどどちらかというと姫君の方の血が濃いからあんまりグレッグの気に召さなかったのだと僕は思っているよ。そうじゃなきゃ、ルーク殿下でなく、ガルシア公爵を追っかけていただろうからね。本当に一途な魂だよ。あんな変態の何が良いのか分からない。僕なら、誰よりも君を幸せにできるのに……」
0
あなたにおすすめの小説
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
ストーカーから逃げ切ったのも束の間、転移後はヤンデレ騎士団に殺されかけている現実!
由汰のらん
ファンタジー
ストーカーから逃げていたある日、ハルは異世界に召喚されてしまう。
しかし神官によれば、どうやらハルは間違って召喚された模様。さらに王子に盾ついてしまったことがきっかけで、ハルは国外追放されてしまう。
さらに連行されている道中、魔族に襲われ、ハルの荷馬車は置き去りに。
そのさなか、黒い閃光を放つ騎士が、ハルに取引を持ちかけてきた。
「貴様の血を差し出せ。さすれば助けてやろう。」
やたら態度のでかい騎士は、なんとダンピールだった!
しかしハルの血が特殊だと知った騎士はハルを連れ帰って?
いっそ美味しい血と癒しを与えるダンピール騎士団のセラピストを目指します!
塩対応の同室αが実は俺の番を狙っていた
雪兎
BL
あらすじ
全寮制の名門学園に入学したΩの俺は、入寮初日から最悪の同室相手に当たった。
相手は学年でも有名な優等生α。
成績優秀、運動もできる、顔もいい。なのに——
めちゃくちゃ塩対応。
挨拶しても「……ああ」。
話しかけても「別に」。
距離も近づけないし、なぜか妙に警戒されている気がする。
(俺、そんなに嫌われてる……?)
同室なのに会話は最低限。
むしろ避けられている気さえある。
けれどある日、発情期トラブルで倒れた俺を助けてくれたのは、
その塩対応αだった。
しかも普段とは違い、必死な顔で言われる。
「……他のαに近づくな」
「お前は俺の……」
そこで言葉を飲み込む彼。
それ以来、少しずつ態度が変わり始める。
距離は相変わらず近くない。
口数も少ない。
だけど――
他のαが近づくと、さりげなく間に入る。
発情期が近いと察すると、さりげなく世話を焼く。
そして時々、独占欲を隠しきれない視線。
実は彼はずっと前から知っていた。
俺が、
自分の運命の番かもしれないΩだということを。
だからこそ距離を取っていた。
触れたら、もう止まれなくなるから。
だけど同室生活の中で、
少しずつ、確実に距離は変わっていく。
塩対応の裏に隠されていたのは――
重すぎるほどの独占欲だった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】勇者パーティーハーレム!…の荷物番の俺の話
バナナ男さん
BL
突然異世界に召喚された普通の平凡アラサーおじさん<山野 石郎>改め【イシ】
世界を救う勇者とそれを支えし美少女戦士達の勇者パーティーの中……俺の能力、ゼロ!あるのは訳の分からない<覗く>という能力だけ。
これは、ちょっとしたおじさんイジメを受けながらもマイペースに旅に同行する荷物番のおじさんと、世界最強の力を持った勇者様のお話。
無気力、性格破綻勇者様 ✕ 平凡荷物番のおじさんのBLです。
不憫受けが書きたくて書いてみたのですが、少々意地悪な場面がありますので、どうかそういった表現が苦手なお方はご注意ください_○/|_ 土下座!
過保護な父の歪んだ愛着。旅立ちを控えた俺の身体は、夜ごとに父の形で塗り潰される
中山(ほ)
BL
「パックの中、僕の形になっちゃったね」
夢か現か。耳元で囁かれる甘い声と、内側を執拗に掻き回す熱。翌朝、自室で目覚めたパックに、昨夜の記憶はない。ただ、疼くような下腹部の熱だけが残っていた。
相談しようと向かった相手こそが、自分を侵食している張本人だとも知らずに、パックは父の部屋の扉を開く。
このお話はムーンライトでも投稿してます〜
モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた
マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。
主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。
しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。
平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。
タイトルを変えました。
前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。
急に変えてしまい、すみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる