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プロローグ
04.幸せなご令嬢たちと不幸なご令嬢
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お茶会は王宮では良く開かれていた。一応王子妃候補であるレミリアも王妃様の願いで参加することが多かった。
正直レミリアにとってお茶会は美味しいお菓子とお茶という撒き餌があるけれど、腹の探り合いやゴシップをばらまく社交が行われるあまり良いものではない認識だった。
そういう場所に招待される令嬢というのは大半がレミリアと違う幸せなご令嬢ばかり。それなのに誰かを常に妬んでいる意地悪な彼女たちがレミリアは好きではなかった。
だからといって好きではないくらいならレミリアにはどうってことなかったし、変ないじめの標的にされなければいいとある社交術で乗り切っていた。
「レミリア公女様、ご機嫌麗しゅう。今日もとても美しいドレスですわね。うらやましいわ」
侯爵令嬢であり、忠臣の家系の令嬢マリアンヌが淑女の礼をとるが、その顔には明らかな侮蔑が含まれていた。
その証拠にレミリアではなくいつもマリアンヌはレミリアの装具を褒めた。内心ではレミリア等美しくないと思っているのが透けて見える。
マリアンヌは父母に溺愛されてわがままに育った幸せな高位令嬢で取り巻き達と気に入らない令嬢をいびったりしている。
「マリアンヌ様、ご機嫌麗しゅう。いつも『公爵家の捨て子』にも優しくしてくださって感謝しておりますのよ」
「公女様は本当に皮肉がお上手ですわね」
マリアンヌの顔が引きつる。それを見てしめたと思いながら大げさにレミリアは悲しい顔を作る。
「ああ、本当に皮肉ならよかったのですが、まぁ、今はどちらかといえば「王宮の居候」とかの方がしっくりきますけど。本当にマリアンヌ様のように立派で優しいご両親がいらっしゃるのがうらやましいですわ」
わざと面倒くさい人間のふりをする。そう、とても面倒くさい人間。不幸をひけらかすような人間というのはどこにいても面倒くさくてかかわりに必要以上になりたくないものだとレミリアは知っている。
だから敢えて悲劇のヒロイン気取りの公女様という実に質の悪いキャラクターで彼女らを煙に巻く。これが下級貴族の娘ならばさらなるいじめにつながるかもしれないが、レミリアは腐っても公女。この国で最上位に近い女性である故にそれが原因で嫌がらせをするような高位貴族は表向きはいない。
そう、表向きは。裏向きとしては例の侍女のような取り巻きの下位貴族を使い自分の手は汚さずに嫌がらせする者もいるのだが、そこは返り討ちにしているので問題ない。
つまらないとめんどくさいと感じたのかは分からないがレミリア以外と話し始めたマリアンヌの後に、ひとりの少女がレミリアに話しかける。
「そういえば公女様からとても良い香りがしますわ」
のんびりした調子で話しかけてきたのはこのお茶会で一番浮いているマイペースなリリア伯爵令嬢だ。彼女は位は伯爵だが、宰相の娘で賢い才女だが少し変わっている。
「ああ。これはお花の香りよ。香水とかではないの」
「まぁ。もしかして以前お話しに出たチンチョウゲですか?」
「いいえ。これはキンモクセイよ。丁度今が見頃なのよ」
リリアも裕福な伯爵家の令嬢であるが、なぜかレミリアとはウマが合った。彼女のおっとりしてぼんやりしたけれど優しい性格はレミリアにとって救いだった。
けれど、それでもリリアとのつながりもお茶会でしかなかった。手紙を書いて交換したりもしない。だから結局レミリアの気持ちとリリアの気持ちには剥離があるという証明だ。それを寂しいと思えるほどレミリアは人間関係を築いてこなかった。ただほんの少し胸がチクりと痛んだだけだ。
結局幸せなご令嬢たちと不幸なレミリアとの間には越えられない壁が常に立ちはだかっていたのだ。
正直レミリアにとってお茶会は美味しいお菓子とお茶という撒き餌があるけれど、腹の探り合いやゴシップをばらまく社交が行われるあまり良いものではない認識だった。
そういう場所に招待される令嬢というのは大半がレミリアと違う幸せなご令嬢ばかり。それなのに誰かを常に妬んでいる意地悪な彼女たちがレミリアは好きではなかった。
だからといって好きではないくらいならレミリアにはどうってことなかったし、変ないじめの標的にされなければいいとある社交術で乗り切っていた。
「レミリア公女様、ご機嫌麗しゅう。今日もとても美しいドレスですわね。うらやましいわ」
侯爵令嬢であり、忠臣の家系の令嬢マリアンヌが淑女の礼をとるが、その顔には明らかな侮蔑が含まれていた。
その証拠にレミリアではなくいつもマリアンヌはレミリアの装具を褒めた。内心ではレミリア等美しくないと思っているのが透けて見える。
マリアンヌは父母に溺愛されてわがままに育った幸せな高位令嬢で取り巻き達と気に入らない令嬢をいびったりしている。
「マリアンヌ様、ご機嫌麗しゅう。いつも『公爵家の捨て子』にも優しくしてくださって感謝しておりますのよ」
「公女様は本当に皮肉がお上手ですわね」
マリアンヌの顔が引きつる。それを見てしめたと思いながら大げさにレミリアは悲しい顔を作る。
「ああ、本当に皮肉ならよかったのですが、まぁ、今はどちらかといえば「王宮の居候」とかの方がしっくりきますけど。本当にマリアンヌ様のように立派で優しいご両親がいらっしゃるのがうらやましいですわ」
わざと面倒くさい人間のふりをする。そう、とても面倒くさい人間。不幸をひけらかすような人間というのはどこにいても面倒くさくてかかわりに必要以上になりたくないものだとレミリアは知っている。
だから敢えて悲劇のヒロイン気取りの公女様という実に質の悪いキャラクターで彼女らを煙に巻く。これが下級貴族の娘ならばさらなるいじめにつながるかもしれないが、レミリアは腐っても公女。この国で最上位に近い女性である故にそれが原因で嫌がらせをするような高位貴族は表向きはいない。
そう、表向きは。裏向きとしては例の侍女のような取り巻きの下位貴族を使い自分の手は汚さずに嫌がらせする者もいるのだが、そこは返り討ちにしているので問題ない。
つまらないとめんどくさいと感じたのかは分からないがレミリア以外と話し始めたマリアンヌの後に、ひとりの少女がレミリアに話しかける。
「そういえば公女様からとても良い香りがしますわ」
のんびりした調子で話しかけてきたのはこのお茶会で一番浮いているマイペースなリリア伯爵令嬢だ。彼女は位は伯爵だが、宰相の娘で賢い才女だが少し変わっている。
「ああ。これはお花の香りよ。香水とかではないの」
「まぁ。もしかして以前お話しに出たチンチョウゲですか?」
「いいえ。これはキンモクセイよ。丁度今が見頃なのよ」
リリアも裕福な伯爵家の令嬢であるが、なぜかレミリアとはウマが合った。彼女のおっとりしてぼんやりしたけれど優しい性格はレミリアにとって救いだった。
けれど、それでもリリアとのつながりもお茶会でしかなかった。手紙を書いて交換したりもしない。だから結局レミリアの気持ちとリリアの気持ちには剥離があるという証明だ。それを寂しいと思えるほどレミリアは人間関係を築いてこなかった。ただほんの少し胸がチクりと痛んだだけだ。
結局幸せなご令嬢たちと不幸なレミリアとの間には越えられない壁が常に立ちはだかっていたのだ。
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