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18.ネモフィラの計略02(視点:ウィリアム)
しおりを挟むちなみに、ベラトリクスに直接嫌がらせをした中にクレアがいた。正直彼女には計画のために甘い顔をしていたが、それのせいでベラトリクスに嫌がらせを必要に繰り返し、例の指輪も盗んだり、教科書をボロボロにしたりベラトリクスの学園生活を脅かした罪は重い。
僕はクレアを休日呼び出した。デートとでも思ったクレアは嬉しそうにやってきた。僕自身デートのふりをしてクレアをエスコートした。内心では反吐がでそうだったけれど。
「ところでクレア、君に聞きたいことがあるんだ」
「なんですか、ウィリアム様」
そう頬を赤らめた顔に嫌な気持ちになりながら僕は笑う。そして、
「君はベラトリクスの私物を盗んだりしているようだがどうしてそんなことをしたんだ?」
「……だって、彼女の持ち物は本来私の物なのに、あんな平民の女が持っているのが許せなくて」
想像通りの酷いセリフだった。思った通りこの女は腐っていた。なら、たとえ半分血のつながった妹でも僕は容赦することをやめた。そうしなければベラトリクスの脅威になりかねないから。
「そうか。でもクレア、ベラトリクスは「魔女」かもしれない。だから彼女を傷つけたりすると呪われるかもしれない」
「そんなわけありませんわ」
そう笑った顔がこの後歪むことになる。僕と別れたあと、クレアは賊に襲われた。命は助かったがその顔は……。それ以来クレアは屋敷に閉じこもり学園へ通わなくなった。
正直僕はクレアは後ほどのために生きていれば良い駒でしかない。だから自殺させない程度に監視していたそんな矢先に、あの事件が起きた。
クレアが学園を訪れたのだ。全身黒ずくめのあまりに異常な姿に学園内は騒然とした。
「私は呪われた。恐ろしい魔女、ベラトリクス様に呪われた。そう、ベラトリクス様に悪意をぶつけたものは私のように呪われる。呪われるんだ!!!!」
気がふれたのは知っていたがまさかこんな形で現れるなんて。真っ赤な長い髪を振り乱したその姿はまるで悪鬼のようで温室で育った貴族の子たちには刺激が強すぎたらしい。
「ははははは、私だけじゃない。みんなみーんな呪われるんだ呪われろ呪われろ!!!!!!」
そう叫んで取り押さえられたクレアに思わず笑ってしまった。それは憎しみというよりは感謝だった。この件以来ベラトリクスに絡んでいた生徒は一切その手を引いた。自分も呪われるのではとでも思ったのだろう。本当に救いのない連中だ。
しかし、ベラトリクスはいじめが無くなっても学園へほぼ来なくなっていた。僕はこっそり密偵を使いベラトリクスを監視した。すると「聖女」である崇高なベラトリクスは市井の者たちに無償で癒しを行っていた。
その姿をこっそり見守る中で、はじめてベラトリクスが柔らかく微笑んだ。
ベラトリクスは生粋の「聖女」。自身がどんなに悲しい境遇にいても弱い者に優しく施しを行える美しい魂の持ち主。ベラトリクスよりも美しいものなどやはりこの世界には存在しない。
彼女がずっと笑っていられるように「聖女」の活動を守ってあげたいそう願った。だからこっそり護衛もつけていた。少しでも僕が幸せにできない分彼女が幸せであるようにしてあげたかった、それなのに……
護衛が少し目を離した時、ベラトリクスが柄の悪い男たちに絡まれたのだ。
「こないで……」
「おいおい逃げても無駄……っ!!!」
ベラトリクスに会いに偶然それを見つけて、血が沸き立った。僕はその男を剣で切り捨てた。きっと残酷な笑みを浮かべていただろう。そのせいか、ベラトリクスは可哀そうに腰を抜かしていた。
早く手を差し伸べてやりたかったが、その前に愚か者どもに裁きを与える必要があった。裁きを終えた僕の血まみれ顔を見るベラトリクスが震えている。ああ、いつでも僕は君に嫌われることしかできない。
「何故、お兄様が?」
「何故はこちらのセリフだ。何故このような場所にうら若いお前が入り込んでいる」
「それは、癒しを行いに……」
「癒しにとはこういう男達をその体で慰めてでもやるつもりだったのか?」
どうしてもっと優しい言葉をかけられないのだろうか。これではまるでベラトリクスを責めているようだ。自身でも制御できない言葉にベラトリクスの目が吊り上がる。ああ、やってしまった。
「だとしたらどうするおつもりですか」
「お前は、私が……」
大切だから危険な目に遭わせたくないんだ。
そう続けたかった言葉。けれど口にすることができなかった。僕はベラトリクスの腕を掴む。ベラトリクスがこれ以上傷つくのが怖くて馬車へ押し込めた。
「いたい、なにするんですか?」
「……」
華奢な腕を強く握りすぎてしまった。ベラトリクスの非難の声が反響した。
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