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01.男装姫は見知らぬ場所で目を覚ます
「……ここは??」
目を覚まして最初に目に入ったのは見覚えのない天井だった。普段は兄の代わりをしていなければ大体は石造りの息が詰まりそうな天井を最初にみることになるのに、今目の前にあるのは古ぼけているが明るい木製の天井だった。
急いで起き上がり周りを見渡すと、そこには古ぼけているが元々良いものであったことが分かるサイドテーブルと、自身が寝ていたベッドと、小さな書き物机が置かれていた。
「私は、確かに殺されたはず……お腹……ない??」
刺されたはずであることをいまさら思い出して触れてみるが、そこには傷などない。あまりのことに自身がどうなっているのか分からず途方に暮れそうになるが、もしかしたら最近市民の間で流行っていた転生もののように、誰かに生まれ変わった可能性があるかもしれない。
そう思って、手鏡のようなものがないか探そうとした時だった。
書き物机の上に、貴族が使うだろう上質な紙で作られた赤い封筒が置かれていることに気づいて、それを手に取る。押されていた封蝋は見覚えのない家紋だった。
兄の代わりをしていたのでこの国の家紋はすべて覚えさせられたが、それでも見覚えのないないものだった。未知のことに不安もあったが、それをみなければ今の状況が変わることがないと思い、丁寧に封蝋を外した。
中には飾り気のない白い便箋と金貨数枚が入っており、ひどく読みにくい字で以下のことが書かれていた。
『親愛なる姫君へ
貴方を殺すように、王妃より依頼を受けた者だ。貴方を守るために王妃の前で演技をさせてもらったが、罪のない貴方に死に近い感覚を味わわせてしまったことをまず謝罪させてほしい。
貴方が生きていると知ったならば王妃は貴方を必ず殺しにくるだろうから、分からないように念入りに偽装したので安心してほしい。
そして、これからはしがらみに縛られず君の望むままに生きてほしい。そのために、この家とわずかながらだが金貨を受け取ってほしい。これで当面の生活は行えるだろう。
もし、困ることがあれば王都の貸金庫のメモの番号を開けておくれ。君が一生困らない金額を準備してある。
いきなり放り出されて不安だと思う、私の過ちで君を苦しめることになってしまい本当に申し訳ない。けれど、だからこそ君が幸せに生きていけるように心から祈っています。
愛をこめて S
追伸:もし最初にやることが浮かばないなら、君自身の名前を決めるのはどうだろう。月の女神のように美しい君にふさわしい名を……』
手紙を読み終えた時、私は泣いていた。
それは悲しいからではなく、嬉しさからだった。胸の中にたまっていた淀みが流れていくような、その代わりに綺麗な水が流れてきたようなそんなすっきりした感覚だった。
しかし、それと同時に『S』という人物が誰なのかも気になった。私の身の回りには沢山の人物がいたし、『S』と名の付く人物も沢山いたが、私の正体を知っている存在などほぼ存在しないはずだ。
なにせ、私には兄の代わりである以外名前すら与えられていなかったのだから。
「そういえば、この手紙にまずは名前を付けてみてはどうだと書いてあったな……、けれどなんてつければいい??」
今まで自分で名前を付けようと思ったことがなかった。そもそも、私に名前が必要とされていなかったから。そのせいでいざつけようとしても良い名前が何かわからなかった。
そんな時、脳内にアルバスの言葉が思い出された。
『殿下、名前とはこの世に生まれ落ちたその時に送られる最初のプレゼントなんだ。だからそれがどんなものでも誰かが自分を想ってつけてくれた大切なものなんだ』
アルバスからそういわれた時は、複雑だった。名前のない自分がこの世界で誰からも想われていないことを突きつけられた気がしたから。
そこまで考えて、手紙の1節が目に入った。
『月の女神のように美しい君』
今までは兄のふりをしているときは『小さな太陽』と呼ばれてきた。妹が『小さな月』と姫のための呼び方をされていたのが実はずっと羨ましかったことを思い出した時、すんなりとひとつの名前が浮かんだ。
ルーナ
この国の古の神話に登場する、月の女神。太陽の神と双子の兄妹とされて夜の闇を照らすほどの美しさを持つ神様の名前だった。
「今日から、私の名前はルーナにしよう」
目を覚まして最初に目に入ったのは見覚えのない天井だった。普段は兄の代わりをしていなければ大体は石造りの息が詰まりそうな天井を最初にみることになるのに、今目の前にあるのは古ぼけているが明るい木製の天井だった。
急いで起き上がり周りを見渡すと、そこには古ぼけているが元々良いものであったことが分かるサイドテーブルと、自身が寝ていたベッドと、小さな書き物机が置かれていた。
「私は、確かに殺されたはず……お腹……ない??」
刺されたはずであることをいまさら思い出して触れてみるが、そこには傷などない。あまりのことに自身がどうなっているのか分からず途方に暮れそうになるが、もしかしたら最近市民の間で流行っていた転生もののように、誰かに生まれ変わった可能性があるかもしれない。
そう思って、手鏡のようなものがないか探そうとした時だった。
書き物机の上に、貴族が使うだろう上質な紙で作られた赤い封筒が置かれていることに気づいて、それを手に取る。押されていた封蝋は見覚えのない家紋だった。
兄の代わりをしていたのでこの国の家紋はすべて覚えさせられたが、それでも見覚えのないないものだった。未知のことに不安もあったが、それをみなければ今の状況が変わることがないと思い、丁寧に封蝋を外した。
中には飾り気のない白い便箋と金貨数枚が入っており、ひどく読みにくい字で以下のことが書かれていた。
『親愛なる姫君へ
貴方を殺すように、王妃より依頼を受けた者だ。貴方を守るために王妃の前で演技をさせてもらったが、罪のない貴方に死に近い感覚を味わわせてしまったことをまず謝罪させてほしい。
貴方が生きていると知ったならば王妃は貴方を必ず殺しにくるだろうから、分からないように念入りに偽装したので安心してほしい。
そして、これからはしがらみに縛られず君の望むままに生きてほしい。そのために、この家とわずかながらだが金貨を受け取ってほしい。これで当面の生活は行えるだろう。
もし、困ることがあれば王都の貸金庫のメモの番号を開けておくれ。君が一生困らない金額を準備してある。
いきなり放り出されて不安だと思う、私の過ちで君を苦しめることになってしまい本当に申し訳ない。けれど、だからこそ君が幸せに生きていけるように心から祈っています。
愛をこめて S
追伸:もし最初にやることが浮かばないなら、君自身の名前を決めるのはどうだろう。月の女神のように美しい君にふさわしい名を……』
手紙を読み終えた時、私は泣いていた。
それは悲しいからではなく、嬉しさからだった。胸の中にたまっていた淀みが流れていくような、その代わりに綺麗な水が流れてきたようなそんなすっきりした感覚だった。
しかし、それと同時に『S』という人物が誰なのかも気になった。私の身の回りには沢山の人物がいたし、『S』と名の付く人物も沢山いたが、私の正体を知っている存在などほぼ存在しないはずだ。
なにせ、私には兄の代わりである以外名前すら与えられていなかったのだから。
「そういえば、この手紙にまずは名前を付けてみてはどうだと書いてあったな……、けれどなんてつければいい??」
今まで自分で名前を付けようと思ったことがなかった。そもそも、私に名前が必要とされていなかったから。そのせいでいざつけようとしても良い名前が何かわからなかった。
そんな時、脳内にアルバスの言葉が思い出された。
『殿下、名前とはこの世に生まれ落ちたその時に送られる最初のプレゼントなんだ。だからそれがどんなものでも誰かが自分を想ってつけてくれた大切なものなんだ』
アルバスからそういわれた時は、複雑だった。名前のない自分がこの世界で誰からも想われていないことを突きつけられた気がしたから。
そこまで考えて、手紙の1節が目に入った。
『月の女神のように美しい君』
今までは兄のふりをしているときは『小さな太陽』と呼ばれてきた。妹が『小さな月』と姫のための呼び方をされていたのが実はずっと羨ましかったことを思い出した時、すんなりとひとつの名前が浮かんだ。
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「今日から、私の名前はルーナにしよう」
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