【完結済み】男装姫はお役御免になったので自由に生きるつもりがなぜか過保護なストーカーだらけになりました

ひよこ麺

文字の大きさ
3 / 68

02.殿下の偽物(ノクス視点)

「なんでこんなことを僕がしないといけないんだ」

そう言ってご自身の職務用の机をバンと叩いたルーファス殿下の表情は、不機嫌でどこか子供っぽく見えた。銀色の美しい髪と深いアメジスト色の瞳は間違いなく殿下なのに明らかにすべてが異なっている。

「殿下、これは王太子である貴方様の仕事でございます。今までも行っていらっしゃったではありませんか」

「今までは今までだ!!今日からはしたくない!!大体、アルバスは金髪に碧眼だからいいけど、お前はごついし黒髪に赤い目とか怖いんだよ!!」

あまりにも幼い発言に、驚きを隠せなかった。

この国では、黒髪に赤い瞳は畏怖の対象とされる部分があるのだが、いままでの殿下は一度だって容姿について酷い言葉を投げかけたことはないので違和感しかなかった。

(明らかに偽物だよな……どうして誰も気づかない??)

俺は、遠い昔に、この国の王族の祖とされる太陽の神と一緒にこの地を平和に導いたとされる、狼の神を始祖とするとされる一族だ。そのせいか幼い頃からが研ぎ澄まされていた。

今まで殿下は何よりいつも頑張って何事にも挑まれる方だった。それが、つい3日前から、見た目しか似ていない偽物と入れ替わってしまったのだ。そのことを、もうひとりの側近であるアルバスに話すと、なぜか軽蔑したような目で見られた気がするが、その後に、

『貴様のは、気持ち悪いがあてになるからな』

と失礼なことを言われた。

あいつも俺と同じで長く側近をしていたので偽物と気づいたのだろう。何かを調べると言っていた。そのせいで今、偽物の殿下とふたりっきりなのだが、ずっと偽物殿下はワガママばかり言ってまるで職務が進んでいない様子だった。

「ルーファス、どうかしたのか??」

そこへ現れたのは、王妃様だった。殿下の母君であるこの方は、なぜかいつも殿下に冷たく当たり散らして優しくするところなど一度も見た覚えがない。

「母上、僕はこんなことしたくありません。こんなことここにいる配下がやればいいと思うし、それができない無能な側近なんてクビにすればいい」

偽物のあまりの言葉に目を見開く。しかし、このようなことを王妃様に言えば、本物の殿下の心証が悪くなり、よりつらい立場になるかもしれない。自身の中の憤りを必死にこらえて偽物殿下をいさめようとした時だった。

「そうだな、役に立たぬのならクビにすべきだろう」

そう言い放った王妃様の顔は今まで殿下に向けられてきたあの冷たい表情ではなく、殿下のひとつ年下である姫君に向けられるような優しいものだった。

王妃様の表情を見た瞬間、なぜかはっきりとあることを理解した。

「妃殿下、ひとつ質問がございます」

最初、怪訝な顔をしたが、腐っても王国最大の騎士団を持つ我が家をないがしろにすることが良いことではないと知っている王妃様は、無言のまま続きを促した。

もしアルバスなら、ここでもっと上手に行動できただろうが俺は殿下を守る以外には能がないので今思ったことをそのまま口に出した。

「この殿下のフリをしている偽物は誰ですか??」

「気でも違ったのか??どう見ても今まで其方が仕えてきた王太子にして主君ではないか」

冷たく言い放つ、王妃様だが俺の特殊な感覚が告げている王妃様は嘘をついているのだと。

「妃殿下は嘘をつかれています。まず、殿下はをこなせないような無能ではないし、妃殿下はずっと殿下に冷たくされていたのに今更態度が変わるのもおかしい」

気になった点を口にすると王妃様の顔が赤くなるのが分かった。

「其方は王族を愚弄するのか??いくら建国の忠臣の一族の嫡男とはいえ許されることではない、そもそも根拠のないことばかりではないか」

「根拠ならあります」

その言葉に、王妃様の目が吊り上がる。

「なら、それを示してみよ」

その言葉に、俺は自身の感覚がずっと捉えていて、アルバスに気持ち悪いと言われた確信を口にする。

「……わかりました。端的に申します。今、殿下を名乗っているその偽物は臭いのです」

「「はっ??」」

「僕が臭いだって??そんなわけない!!」

真っ赤な顔で俺を睨む偽物だが、そんなことどうでもいい。事実は伝えないといけない。

「いや、臭い。めちゃくちゃ臭い。それに比べて以前の殿下は甘いミルクのような、それでいて夜の空気のような清涼さもあり、みずみずしいこの世のものとは思えないような、ずっと肌に鼻をつけて嗅いでいたくなるような、撫でまわしたり、嘗め回したりしたくなるような良い匂いがしていたのです」

やっと思っていたことを伝えたのだが、なぜか王妃様も偽物もこちらを気持ち悪いものでも見る目でみつめている。

「……こいつ狂ってる。やっぱり僕の側近にふさわしくない!!」

「そのようね、武の腕は立つが生理的に気持ち悪すぎる。いつ私の可愛いルーファスにもそういう眼差しを向けるかわからない獣は隔離すべきだろう」

「確かにそいつは気持ち悪いですが、妃殿下、この男の根拠は間違ってはいない」
感想 10

あなたにおすすめの小説

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

ハズレ嫁は最強の天才公爵様と再婚しました。

光子
恋愛
ーーー両親の愛情は、全て、可愛い妹の物だった。 昔から、私のモノは、妹が欲しがれば、全て妹のモノになった。お菓子も、玩具も、友人も、恋人も、何もかも。 逆らえば、頬を叩かれ、食事を取り上げられ、何日も部屋に閉じ込められる。 でも、私は不幸じゃなかった。 私には、幼馴染である、カインがいたから。同じ伯爵爵位を持つ、私の大好きな幼馴染、《カイン=マルクス》。彼だけは、いつも私の傍にいてくれた。 彼からのプロポーズを受けた時は、本当に嬉しかった。私を、あの家から救い出してくれたと思った。 私は貴方と結婚出来て、本当に幸せだったーーー 例え、私に子供が出来ず、義母からハズレ嫁と罵られようとも、義父から、マルクス伯爵家の事業全般を丸投げされようとも、私は、貴方さえいてくれれば、それで幸せだったのにーーー。 「《ルエル》お姉様、ごめんなさぁい。私、カイン様との子供を授かったんです」 「すまない、ルエル。君の事は愛しているんだ……でも、僕はマルクス伯爵家の跡取りとして、どうしても世継ぎが必要なんだ!だから、君と離婚し、僕の子供を宿してくれた《エレノア》と、再婚する!」 夫と妹から告げられたのは、地獄に叩き落とされるような、残酷な言葉だった。 カインも結局、私を裏切るのね。 エレノアは、結局、私から全てを奪うのね。 それなら、もういいわ。全部、要らない。 絶対に許さないわ。 私が味わった苦しみを、悲しみを、怒りを、全部返さないと気がすまないーー! 覚悟していてね? 私は、絶対に貴方達を許さないから。 「私、貴方と離婚出来て、幸せよ。 私、あんな男の子供を産まなくて、幸せよ。 ざまぁみろ」 不定期更新。 この世界は私の考えた世界の話です。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。

【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】 佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。 新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。 「せめて回復魔法とかが良かった……」 戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。 「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」 家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。 「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」 そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。 絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。 これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

【完結】確かにモブ…私モブのはずなんです!

水江 蓮
恋愛
前世の記憶を持つミュリエルは、自分の好きだった乙女ゲームに転生していることに気がついた。 しかもモブに! 自分は第三者から推しを愛でれると思っていたのに… あれ? 何か様子がおかしいな…?

【完結】家族に愛されなかった辺境伯の娘は、敵国の堅物公爵閣下に攫われ真実の愛を知る

水月音子
恋愛
辺境を守るティフマ城の城主の娘であるマリアーナは、戦の代償として隣国の敵将アルベルトにその身を差し出した。 婚約者である第四王子と、父親である城主が犯した国境侵犯という罪を、自分の命でもって償うためだ。 だが―― 「マリアーナ嬢を我が国に迎え入れ、現国王の甥である私、アルベルト・ルーベンソンの妻とする」 そう宣言されてマリアーナは隣国へと攫われる。 しかし、ルーベンソン公爵邸にて差し出された婚約契約書にある一文に疑念を覚える。 『婚約期間中あるいは婚姻後、子をもうけた場合、性別を問わず健康な子であれば、婚約もしくは結婚の継続の自由を委ねる』 さらには家庭教師から“精霊姫”の話を聞き、アルベルトの側近であるフランからも詳細を聞き出すと、自分の置かれた状況を理解する。 かつて自国が攫った“精霊姫”の血を継ぐマリアーナ。 そのマリアーナが子供を産めば、自分はもうこの国にとって必要ない存在のだ、と。 そうであれば、早く子を産んで身を引こう――。 そんなマリアーナの思いに気づかないアルベルトは、「婚約中に子を産み、自国へ戻りたい。結婚して公爵様の経歴に傷をつける必要はない」との彼女の言葉に激昂する。 アルベルトはアルベルトで、マリアーナの知らないところで実はずっと昔から、彼女を妻にすると決めていた。 ふたりは互いの立場からすれ違いつつも、少しずつ心を通わせていく。

偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~

甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」 「全力でお断りします」 主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。 だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。 …それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で… 一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。 令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……

5年経っても軽率に故郷に戻っては駄目!

158
恋愛
伯爵令嬢であるオリビアは、この世界が前世でやった乙女ゲームの世界であることに気づく。このまま学園に入学してしまうと、死亡エンドの可能性があるため学園に入学する前に家出することにした。婚約者もさらっとスルーして、早や5年。結局誰ルートを主人公は選んだのかしらと軽率にも故郷に舞い戻ってしまい・・・ 2話完結を目指してます!