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08.新しい楽しみと……
母上に手紙を送ってからはなるべくそのことを考えないように過ごした。
「ルーナ様、とてもお上手です」
「ありがとう、マーヤ」
最近は、マーヤに習いながら刺繍を始めた。元々要領はよくないが、コツコツと続けて何かを完成させることが好きだったので自身の性に合ったのだ。
暖炉の前で揺り椅子に座りながら、今は狼の刺繍をしていた。
(……そういえば妹は刺繍が苦手だったな)
思い出したのは、王子として振る舞っている時に母上に愛されて甘やかされていた妹の姿だった。頭は悪くないが高慢でワガママでいつだって自分が中心にいないと嫌だという性格だった。
その妹は、私と逆で自頭が良い分、サボり癖があったので刺繍は苦手だった。その当時の婚約者であった公爵令息への贈り物のハンカチはすべて侍女の中で刺繍が得意なものが行っていたのを思い出した。
「こんなめんどくさいこと王女の私がすべきではないわ!!」
ヒステリックにそう声を上げては、周りの臣下に手を挙げる妹を何度か諫めようとしたことがある。けれど、妹が私の忠告を聞くことは一度もなかった。
王女として好きなように生きられる妹が、母上に、父上にあるがままで愛される妹が羨ましかった。私は兄として接いていることもあり王となる者であると認識していた父上からは厳しくされていたから……。
そんなある日、妹が自身より美しい伯爵令嬢を平手打ちにする事件が起きた。咄嗟に妹をいさめて、その場から引き離してふたりっきりになった瞬間、妹が私の手を振り払った。
いつもと違う態度に驚きその顔を見ると、その顔は美しいが残酷な表情だった。
「お兄様、いいえ、私、貴方の正体を知っているのよ。汚らわしい存在の癖に私に指図しないでくださる」
母上にそっくりな顔でそう言われた時、背筋がゾッとしたのを覚えている。母上は確かに妹を溺愛していたが自身の汚点である私の話は、父である国王陛下にバレることを恐れて出産に関わった者たち以外にはひた隠しにしていた。
それなのに、妹は私が誰か知っていると言い放ったのだ。それ以降、妹は何かあるたびに影で私に嫌がらせをしたが、母上はそれを目にとめても諫めることはなかった。
その行動が妹を冗長されたが、最早それすらも遠い昔のような気がした。
「……もう私には関係ない。今の私は幸せだから……」
手元のハンカチの狼を見つめながら、本当はノクスとアルバスに会いたいと思っている気持ちを押し殺すように何も考えないように手を進めていると、
トントン
家の扉がノックされたのがわかった。
「はーい、どちらさまですか??」
マーヤが答えると、明るい声が返ってきた。
「マーヤさん、俺です。フラビンです!!」
その言葉にマーヤが扉を開くと、タンポポのような明るい黄色くふわふわした毛をした、緑のタレ目の青年が立っていた。
彼はフラビンさんと言って、私達の家に食べ物や色々な物を届けてくださっている人で優しい好青年だ。
「いつもありがとうございます」
「ああ、ルーナちゃん。相変わらず綺麗だね」
そう言って投げキッスをされる。マーヤさん曰く、人は悪くないが軽薄とのこと。けれど、今まで褒められたことがなかったので素直にうれしく感じてしまう。
「当たり前だろう。ルーナ様は月の女神のような方なんだから。フラビン、用が済んだならさっさとお帰り」
「そんなもう少しくらい……」
フラビンさんがそう言った頬の横に突然光るもの、それが剣の刃だと気付いて思わずヒッと声がでてしまった。
「……殿下に、気安く触れるな!!」
「ルーナ様、とてもお上手です」
「ありがとう、マーヤ」
最近は、マーヤに習いながら刺繍を始めた。元々要領はよくないが、コツコツと続けて何かを完成させることが好きだったので自身の性に合ったのだ。
暖炉の前で揺り椅子に座りながら、今は狼の刺繍をしていた。
(……そういえば妹は刺繍が苦手だったな)
思い出したのは、王子として振る舞っている時に母上に愛されて甘やかされていた妹の姿だった。頭は悪くないが高慢でワガママでいつだって自分が中心にいないと嫌だという性格だった。
その妹は、私と逆で自頭が良い分、サボり癖があったので刺繍は苦手だった。その当時の婚約者であった公爵令息への贈り物のハンカチはすべて侍女の中で刺繍が得意なものが行っていたのを思い出した。
「こんなめんどくさいこと王女の私がすべきではないわ!!」
ヒステリックにそう声を上げては、周りの臣下に手を挙げる妹を何度か諫めようとしたことがある。けれど、妹が私の忠告を聞くことは一度もなかった。
王女として好きなように生きられる妹が、母上に、父上にあるがままで愛される妹が羨ましかった。私は兄として接いていることもあり王となる者であると認識していた父上からは厳しくされていたから……。
そんなある日、妹が自身より美しい伯爵令嬢を平手打ちにする事件が起きた。咄嗟に妹をいさめて、その場から引き離してふたりっきりになった瞬間、妹が私の手を振り払った。
いつもと違う態度に驚きその顔を見ると、その顔は美しいが残酷な表情だった。
「お兄様、いいえ、私、貴方の正体を知っているのよ。汚らわしい存在の癖に私に指図しないでくださる」
母上にそっくりな顔でそう言われた時、背筋がゾッとしたのを覚えている。母上は確かに妹を溺愛していたが自身の汚点である私の話は、父である国王陛下にバレることを恐れて出産に関わった者たち以外にはひた隠しにしていた。
それなのに、妹は私が誰か知っていると言い放ったのだ。それ以降、妹は何かあるたびに影で私に嫌がらせをしたが、母上はそれを目にとめても諫めることはなかった。
その行動が妹を冗長されたが、最早それすらも遠い昔のような気がした。
「……もう私には関係ない。今の私は幸せだから……」
手元のハンカチの狼を見つめながら、本当はノクスとアルバスに会いたいと思っている気持ちを押し殺すように何も考えないように手を進めていると、
トントン
家の扉がノックされたのがわかった。
「はーい、どちらさまですか??」
マーヤが答えると、明るい声が返ってきた。
「マーヤさん、俺です。フラビンです!!」
その言葉にマーヤが扉を開くと、タンポポのような明るい黄色くふわふわした毛をした、緑のタレ目の青年が立っていた。
彼はフラビンさんと言って、私達の家に食べ物や色々な物を届けてくださっている人で優しい好青年だ。
「いつもありがとうございます」
「ああ、ルーナちゃん。相変わらず綺麗だね」
そう言って投げキッスをされる。マーヤさん曰く、人は悪くないが軽薄とのこと。けれど、今まで褒められたことがなかったので素直にうれしく感じてしまう。
「当たり前だろう。ルーナ様は月の女神のような方なんだから。フラビン、用が済んだならさっさとお帰り」
「そんなもう少しくらい……」
フラビンさんがそう言った頬の横に突然光るもの、それが剣の刃だと気付いて思わずヒッと声がでてしまった。
「……殿下に、気安く触れるな!!」
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