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13.おいしい紅茶+出会い(ルーファス(双子の兄)視点)
マーヤの怒号により、大人しくなったノクスとアルバスとフラビンさんはそのまま手際よく追い出された。
「……マーヤ、ごめんなさい」
「いいえ。ルーナ様が悪いところなんてひとつもありません。大体私の目が黒いうちはあんな不埒な連中に指一本ふれさせませんよ」
勇ましくそう告げた言葉に、思わず笑っていた。王城に居た頃、側近以外はすべて母上の忠臣だった。だから、双子を毛嫌いするものばかりで私をマーヤのように大切にしてくれた人はいなかった。
「ありがとう」
マーヤと出会って、私は自分を押し込めることが少しずつ少なくなってきていた。それほど、彼女を信用している。けれど、実は私は彼女が何者なのかを知らない。
そもそも、私が生きて今過ごせていることについても、誰のおかげなのかを知らない。
(……誰が私を救ってくれたんだろう)
ただ、ひとつ確かなのはその人は私を知っていて、自由を与えてくれたということだ。
ノクス、アルバスの様子からそれがこの国の貴族である可能性は低いし、ましてや妹であるはずもない。
そこまで考えた時、とても良い香りが鼻孔をくすぐるのがわかった。それは、私がここにきてはじめてマーヤが淹れてくれたことで存在を知った変わった飲み方をする紅茶だ。
今までの紅茶はミルク、砂糖で味を決めたけど、マーヤが出してくれる紅茶にはジャムをすくってそれを舐めながら濃く入れた紅茶と可愛らしいクッキーやチョコを食べる。
今まで、マナーがかなりあって常に緊張していたお茶の時間が穏やかな暮らしの一部になったのもここに来てからだった。
「ルーナ様、さぁ、どうぞ」
「マーヤの入れるお茶は本当においしい、ありがとう」
だからかもしれない、確かにノクスとアルバスに再会できた嬉しさもあったがそれ以上に、今は穏やかなままここで過ごしたい気持ちが大きくなっていっていた。
********************************************
(ルーファス(主人公の双子の兄視点)
「……全然わからない」
目の前に積み上げられた書類を、なにひとつ僕は理解できずにいた。元々生まれてこの方、ほとんど病気で療養地に居た僕には王太子としての教育はされていないに等しかった。
それでも、いままでは母上いらしたから僕はそのままでも問題ないと思っていた。けれど、母上が病として幽閉されてからは、自分で何もかも行わないといけなかった。
けれど、母上に仕えていて僕に尽くしてくれていた臣下はみんな解雇されて、代わりに新しくきた連中は誰も僕の話を聞いてくれない。
実際、今も全く書類が進まないがそれを聞いても教えてくれる人がいない。新しい側近として来た男は書類だけおいてどこかへ行ってしまった。
書類を終らせなければまた増える、けれどどうすればいいのかわからない。あまりのことに泣きたい気持ちになるが泣いても誰も手を貸してくれない。
思えば、僕の人生はすべて与えられたことで成り立っていた。母が、兄弟が、行ってくれたことで僕は素晴らしい王子のように思われていただけだった。
実際は、何もできずワガママで無能、それが僕の本来の姿、まさに今この瞬間の姿こそが僕自身だったのだ。
(……今更気づいても遅いな)
もし、僕をあきらめずにいてくれる人がひとりでもいたら今からでも勉強をしたい。年子の妹にも劣ると言われている現状じゃなにも変わらないかもしれない。けれど、自分で変えたい。
そして、僕の代わりをし続けてなにひとつ幸福になれないまま亡くなった弟の墓前に謝罪したい。
「……これは随分酷い有様ですね」
「誰だ??」
書類を見つめて項垂れた僕の頭の上から声がかけられたので顔を上げると見覚えのない男が立っていた。
方眼鏡に糸目の男、この国ではあまりみない顔立ちは蛇のようにも見える。男はその細い目をさらに細めて笑う。
「はじめまして、貴方の叔父上より雇われて参りました、ウェイと申します」
その男との出会いが僕の人生を変えることになった。
「……マーヤ、ごめんなさい」
「いいえ。ルーナ様が悪いところなんてひとつもありません。大体私の目が黒いうちはあんな不埒な連中に指一本ふれさせませんよ」
勇ましくそう告げた言葉に、思わず笑っていた。王城に居た頃、側近以外はすべて母上の忠臣だった。だから、双子を毛嫌いするものばかりで私をマーヤのように大切にしてくれた人はいなかった。
「ありがとう」
マーヤと出会って、私は自分を押し込めることが少しずつ少なくなってきていた。それほど、彼女を信用している。けれど、実は私は彼女が何者なのかを知らない。
そもそも、私が生きて今過ごせていることについても、誰のおかげなのかを知らない。
(……誰が私を救ってくれたんだろう)
ただ、ひとつ確かなのはその人は私を知っていて、自由を与えてくれたということだ。
ノクス、アルバスの様子からそれがこの国の貴族である可能性は低いし、ましてや妹であるはずもない。
そこまで考えた時、とても良い香りが鼻孔をくすぐるのがわかった。それは、私がここにきてはじめてマーヤが淹れてくれたことで存在を知った変わった飲み方をする紅茶だ。
今までの紅茶はミルク、砂糖で味を決めたけど、マーヤが出してくれる紅茶にはジャムをすくってそれを舐めながら濃く入れた紅茶と可愛らしいクッキーやチョコを食べる。
今まで、マナーがかなりあって常に緊張していたお茶の時間が穏やかな暮らしの一部になったのもここに来てからだった。
「ルーナ様、さぁ、どうぞ」
「マーヤの入れるお茶は本当においしい、ありがとう」
だからかもしれない、確かにノクスとアルバスに再会できた嬉しさもあったがそれ以上に、今は穏やかなままここで過ごしたい気持ちが大きくなっていっていた。
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(ルーファス(主人公の双子の兄視点)
「……全然わからない」
目の前に積み上げられた書類を、なにひとつ僕は理解できずにいた。元々生まれてこの方、ほとんど病気で療養地に居た僕には王太子としての教育はされていないに等しかった。
それでも、いままでは母上いらしたから僕はそのままでも問題ないと思っていた。けれど、母上が病として幽閉されてからは、自分で何もかも行わないといけなかった。
けれど、母上に仕えていて僕に尽くしてくれていた臣下はみんな解雇されて、代わりに新しくきた連中は誰も僕の話を聞いてくれない。
実際、今も全く書類が進まないがそれを聞いても教えてくれる人がいない。新しい側近として来た男は書類だけおいてどこかへ行ってしまった。
書類を終らせなければまた増える、けれどどうすればいいのかわからない。あまりのことに泣きたい気持ちになるが泣いても誰も手を貸してくれない。
思えば、僕の人生はすべて与えられたことで成り立っていた。母が、兄弟が、行ってくれたことで僕は素晴らしい王子のように思われていただけだった。
実際は、何もできずワガママで無能、それが僕の本来の姿、まさに今この瞬間の姿こそが僕自身だったのだ。
(……今更気づいても遅いな)
もし、僕をあきらめずにいてくれる人がひとりでもいたら今からでも勉強をしたい。年子の妹にも劣ると言われている現状じゃなにも変わらないかもしれない。けれど、自分で変えたい。
そして、僕の代わりをし続けてなにひとつ幸福になれないまま亡くなった弟の墓前に謝罪したい。
「……これは随分酷い有様ですね」
「誰だ??」
書類を見つめて項垂れた僕の頭の上から声がかけられたので顔を上げると見覚えのない男が立っていた。
方眼鏡に糸目の男、この国ではあまりみない顔立ちは蛇のようにも見える。男はその細い目をさらに細めて笑う。
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