【完結済み】男装姫はお役御免になったので自由に生きるつもりがなぜか過保護なストーカーだらけになりました

ひよこ麺

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15.嫌な再会

色々カオスだったあの日から考えていた。私は今はどこの誰かわからないが私を助けてくれた人のおかげで生活できている。

けれど、それでは今までの兄の代わりであった時と変わらない気がした。ただ目の前の言われたことを必死にこなすだけではいけない気がしたのだ。

だから私はマーヤに決意も込めて告げた。

「私、ここでずっと刺繍をしながら暮らしたい」

刺繍は、好きなのもあるが実は私がした刺繍を雑貨屋さんに下ろしていたのだけれど評判が良いらしくすぐに売り切れてしまうそうだ。

さらには、私に刺繍をしてほしいという匿名の依頼もいくつか来ているらしい。匿名ということは、刺繡の苦手な貴族の令嬢からの依頼などなのかもしれない。

図案も依頼されたので私はそれを引き受けて今、雑貨屋に置くものと合わせて制作している。

「ルーナ様が、望まれるなら」

少し複雑そうにマーヤが答えた。マーヤは私を助けてくれた人を知っているからもしかしたら何らかの密命があるのかもしれない。

けれど、それでも私の意志を最大限尊重してくれる存在だと私は思っている。

刺繍をすることで自分が暮らせるくらいのお金を稼げるようになったら、ゆっくりためてマーヤが話してくれた海を見に行くのも良いかもしれない。

私はいつも通り、雑貨屋に刺繍を下ろしに向かった。家からすぐそばにあるこの街では一番大きなお店で王都にもある商会が運営しているお店だった。

「すいません、今回の分を……」

私が納品用の刺繍を番頭さんに渡そうとした時だった。

「番頭、この麗しい女性は誰だい??」

芝居かかった声色でそう言われて思わず振り返った私は、思わず呻きそうになった。紫色の髪に、タレ目がちで泣きぼくろのある優男的な顔立ちには見覚えがあった。

妹の同級生でさらには彼女の取り巻きのひとりだった青年、確かプルプラだっただろうか。


(……あまり良い記憶のある人物ではないな)

兄のふりをしていた私だったが、妹はなぜか私が兄でないと察していて嫌がらせをすることが何度かあった。その中に兄のために準備されていた服装を入れ替えられたことがあった。

予定していたものではなく、趣味の悪い滑稽な服に入れ替えらえていたのだが、その際に該当の服を手配しただろうと思われる男がこのプルプラだった。

「若旦那様、彼女はルーナと言いまして、今この店で一番人気がある刺繍をしているのです。今日も納品に来てくれました」

「そうなのか。まさかこんなに美しい女性がこの刺繍をしていたなんてね。ふふふ、ルーナ嬢、私はプルプラ・アフロディーテ。この店も含む多くの店を持つアフロディーテ子爵家の嫡男だ」

そう言って、私の手を取るとキザな仕草で手の甲にキスをした。


(うっうわぁあああ)

心の中で毛虫が手をはったくらいの嫌悪感が湧いたが必死に我慢する。ここで何かすると問題となることは分かっていたからだ。

「はじめまして、アフロディーテ子爵令息様」

「……美しい。ルーナ嬢は本当に平民なのかい??立ち姿まで完璧だ。ああ、僕が探していた月の女神は君なのかもしれないな」

「おほめ頂き光栄でございます。では私はこれで……」

これ以上いるとノクス仕込みの裏拳をきめてしまいそうだったので逃げようと思ったがなぜかプルプラは私の手を放してはくれない。

「あの……」

「ああ、ルーナ嬢。貴方に今日はお願いしたいことがあってね。私、自ら訪れたんだよ」
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