【完結済み】男装姫はお役御免になったので自由に生きるつもりがなぜか過保護なストーカーだらけになりました

ひよこ麺

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33.皇帝陛下

「マルクス、ルーナ。来たか」

荘厳な皇帝の玉座は、王国の玉座より天井が高く、冷たい雰囲気をしていた。その玉座に座っている皇帝陛下の顔を見た時、背筋が冷たくなるような感覚がした。

皇帝陛下は母の双子の弟、その顔立ちは思った以上に母を想起させる造形だった。さらに、その眼差しもどこか冷たいものに思えて王城での兄の代わりだった日々がよみがえってしまった。

「ルーナどうした??」

叔父様が青ざめた私に手を差し伸べた。本当のことを言うにはあんまりだったので無言を貫いていると皇帝陛下が言葉をつづけた。

「ふたりとも楽にしてほしい。マルクスは知っていると思うが王国からルーナを返還しろというくだらない要求が来ている」

「実にくだらないですね、ルーナは私の娘なのになぜ返還する必要があるのだか」

ふたりの空気は絶対零度に冷えたもので思わず震えが止まらなくなった。しかし、それが日常なのかふたりは会話をつづけた。

「ああ。ルーナがマルクスの娘であるにも関わらず入国記録がないことを問題としているようだが、そんなのは王国が入国した際に手続きを誤っただけだろうと鼻で笑って突き返した」

淡々と告げた皇帝陛下は私の顔をまじまじと見ていることに気づいた。私はどうすればいいのか分からなかったが、視線を逸らすよりも勇気を振り絞ってその顔を真正面から見つめ返した。

「しかし、マルクスよ、ひとつ解せぬことがあるのだ」

「それはなんでしょうか??」

お互い、笑顔のひとつもないが話が進行していく様に圧倒されながらも、目に力を込めた皇帝陛下が私を見つめ返していった。

「なぜ、ルーナがお前の娘なのだ。むしろ余の娘にすべきだろう??」

「えっ??」

思わずすっとんきょな声が漏れてしまった。そうしてよくよく観察したところ、確かに母に似た面差しをしているがその瞳に確かに優しさがあるのが分かった。

「だめです。ルーナは私の娘であることはもう手続きもしましたから……」

「そんなの皇帝権限で無効にできる」

「はっ??誰のおかげで皇帝になれたと思ってるんですか??」

「皇帝になりたいなんていってない。お前が面倒だと押し付けただけだろうが」

表情は無表情なのにものすごくまくしたてるような子供のような喧嘩をするふたりに私は思わず吹き出してしまった。

「ふふふ」

「「あっ」」

大人げない態度だったことに気づいたらしいふたりは気まずげに私を見た。その姿が大きなワンコみたいで可愛いと思ったことは秘密だ。ちなみにバレてしまっているかもしれないが私は犬派である。

「まさかおふたりからそこまで思われていて、私は幸せですね」

「ルーナ、ああ、美しいし可愛い。やはり余の娘に……」

「皇帝陛下、ありがたい申し入れですが私は王家で王族の煩わしさを知りました。できればこのまま叔父様とのびのびと暮らしたいです」

私の望みを話すと、悲し気に皇帝陛下が項垂れる。

「そうか……ルーナが望むなら仕方ない。ルーナ、もしお前が皇女になりたいとおもったらいつでも言いなさい」

「ありがとうございます」
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