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26:脱出大作戦01(レイモンド視点)
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「何故こんなことになったんだ??」
見慣れない古ぼけた装飾過多で楕円形の絵画のはめ込まれた天井を眺めながら、ミハイルのあの狂気に満ちた表情と言葉を思い出していた。
『だめだよ、レイモンド。お前は俺のお嫁さんになるんだ。あんなヌルの婿ではなく俺だけの……ああ、でも……』
(そう狂った表情で私の首を絞めながら……)
思い出しただけで気分が悪くなった。
何故、親友だと思っていた男にあんなことをされたのか、全く分からない。
ミハイルとは、幼なじみだった。イスカルオテ侯爵家は国にとって発言力のある貴族でありミハイルはその家の子であるため、上位貴族の子息の中でも中心的な存在であった。
我がカルナック公爵家は爵位こそ上だが、父が魔力量が少ないため王家の血を引きながら大公位を得れなかったという事実があり、あまり権力を持つ家門ではなかった。
けれど、何故かミハイルはその公爵家の嫡男の私に仕えるような形で親交は深められたのが、よく考えたら不思議だった。
(そう言えば彼と出会った時……)
回想するために目を閉じた。
ミハイルと初めてあったのは、確か父上について王城へ登城した日だったはずだ。
伯父上は終始笑顔で私に対して親し気に話しかけて気にかけてくれていたが、今思えば伯父上も魔力至上主義であったので魔力量が自身の親類で一番高かった私に対して優しかったのだと今更ながら理解する。
そして、そういう考え方の伯父上は実子であるルシオンを必要以上に毛嫌いした。
(ルシオンはあんなに素晴らしい子なのに……ああ、ルシオン。君に会いたい……)
ミハイルのことを思い出そうとしたのに、脳内にはルシオンのあの控え目な微笑みが浮かんきてしまう。そして、自分がどれだけルシオンだけを愛しているかを再確認すると共に、早くここから抜け出さないといけないと改めて決意を胸にしつつ、回想に思考を戻した。
そうして、伯父上からその日、ミハイルの父であり宰相のイスカルオテ侯爵と、ミハイルを紹介された。
はじめて会った時にミハイルの感じたのは、選民思想の強い子供だということだった。
父上とイスカルオテ侯爵との間で何やら話し合いがあったらしく、別室でミハイルとふたりきりになった時、ミハイルはキラキラとした瞳で私にこう言ったのだ。
「カルナック公爵家の嫡男で現在この国で一番魔力量が多いレイモンド様、お会いできて光栄です」
「……ああ、そうだ」
投げやりに答えたのは、そういう風に魔力量で判断して近づいてくる大人にも、その大人の影響で近づいてくる子息連中にもその時の僕はげんなりしていた。
ミハイルも最初はそういうヤツだと思ったので、私は冷たくそう言い放つ。そうするといままでの連中は愛想笑いを浮かべて立ち去ることが多かったからだ。
しかし、ここでミハイルだけ違う行動に出た。
「じゃあ、その、俺と友達になってくれませんか??側近とかでも構いません。俺は、将来この国のために自分の魔力で尽くしていきたいので……レイモンド様のような魔力量の高い方と切磋琢磨したいのです」
ハキハキと自身の夢を語る姿には、邪念があるようには思えなかった。
そして、なによりこの国のために自身が持つもので貢献したいという言葉は、他のただ私の側で甘い蜜を吸いたいと願う人間とは違う気がした。
「分かった。そういうことなら、よろしく」
そう言って握手するために差し出した手を嬉しそうに、握り返して微笑んだミハイルは無邪気な普通の少年に見えた。
それから、親交を深めていくうちに気心の知れた関係になったが、よく考えたらミハイルは終始、ルシオンについては悪いことしか言っていなかった気がした。
曰く、
『隣国の帝国の姫である王妃様の血筋があるから、国際的な軋轢を生まないために王城にいるが魔力もないあんなヌルより、魔力量もあるレイモンドこそ王に相応しいはずだ』
『どうして、レイモンドとあいつが婚約しないといけない、陛下のご命令でも酷すぎる』
などと言ったことがあった。これについては私が愛しいルシオンに対しての悪口は絶対に許さないと強く伝え、最悪絶縁も辞さないことも伝えるようになってからはなりを潜めた。だから、ルシオンは誤解されているだけだと分かってくれたのだと思っていた。
しかし、あくまで言わなくなっただけでミハイルはずっと、ルシオンに対して敬意を示すことはなく、ひたすらに見下していたのだろう。
そこまで考えた時、部屋の扉がノックされた。
「……はい」
答えると、今一番聞きたくない声がした。
「レイモンド、食事をしよう」
「……」
正直食欲など微塵もないので無言でいると、扉が開いて満面の笑みを浮かべたミハイルが立っていた。思わず嫌悪に表情が歪む。
そんな、私に構うこともなく、近づいてこようとしたので逃げようとしたが、魔法を唱えて動きを封じられた。
「レイモンド、ちゃんと食べないと体に毒だぞ」
とまるで友人同士の時のように心配そうに言われて思わず吐き捨てるように答えてしまった。
「うるさい。お前の手籠めになるくらいなら死んでや……っ!!」
言葉が終わる前に、この間と同じように節くれだった手が、私の首を絞めた。あまりの苦しさにキッとミハイルを睨むが、その目は私を映しながら嬉しそうに三日月型に歪んだ。
「はぁ。レイモンド。お前の命は今、俺が握っているんだよ。この手の下で脈打つ命も全て全て俺だけのものなんだ……はぁ、レイモンドをこのまま無理やりに奪うことだって俺にはできる。けれどそれをしないでいるんだ、どうしてか分かるか??」
(わかるわけないだろう!!そんな狂人の気持ちなど……)
心の中で罵っていたが、恍惚としたレイモンドには届いていない。代わりにおぞましい返事が返ってきた。
「レイモンド自身が、俺のお嫁さんになりたいって言葉にさせたいからだ。ああ、そう、俺だけのレイモンド、いやレイになりたい、俺を全て受け入れたいと言わせたいんだ。ははははは」
見慣れない古ぼけた装飾過多で楕円形の絵画のはめ込まれた天井を眺めながら、ミハイルのあの狂気に満ちた表情と言葉を思い出していた。
『だめだよ、レイモンド。お前は俺のお嫁さんになるんだ。あんなヌルの婿ではなく俺だけの……ああ、でも……』
(そう狂った表情で私の首を絞めながら……)
思い出しただけで気分が悪くなった。
何故、親友だと思っていた男にあんなことをされたのか、全く分からない。
ミハイルとは、幼なじみだった。イスカルオテ侯爵家は国にとって発言力のある貴族でありミハイルはその家の子であるため、上位貴族の子息の中でも中心的な存在であった。
我がカルナック公爵家は爵位こそ上だが、父が魔力量が少ないため王家の血を引きながら大公位を得れなかったという事実があり、あまり権力を持つ家門ではなかった。
けれど、何故かミハイルはその公爵家の嫡男の私に仕えるような形で親交は深められたのが、よく考えたら不思議だった。
(そう言えば彼と出会った時……)
回想するために目を閉じた。
ミハイルと初めてあったのは、確か父上について王城へ登城した日だったはずだ。
伯父上は終始笑顔で私に対して親し気に話しかけて気にかけてくれていたが、今思えば伯父上も魔力至上主義であったので魔力量が自身の親類で一番高かった私に対して優しかったのだと今更ながら理解する。
そして、そういう考え方の伯父上は実子であるルシオンを必要以上に毛嫌いした。
(ルシオンはあんなに素晴らしい子なのに……ああ、ルシオン。君に会いたい……)
ミハイルのことを思い出そうとしたのに、脳内にはルシオンのあの控え目な微笑みが浮かんきてしまう。そして、自分がどれだけルシオンだけを愛しているかを再確認すると共に、早くここから抜け出さないといけないと改めて決意を胸にしつつ、回想に思考を戻した。
そうして、伯父上からその日、ミハイルの父であり宰相のイスカルオテ侯爵と、ミハイルを紹介された。
はじめて会った時にミハイルの感じたのは、選民思想の強い子供だということだった。
父上とイスカルオテ侯爵との間で何やら話し合いがあったらしく、別室でミハイルとふたりきりになった時、ミハイルはキラキラとした瞳で私にこう言ったのだ。
「カルナック公爵家の嫡男で現在この国で一番魔力量が多いレイモンド様、お会いできて光栄です」
「……ああ、そうだ」
投げやりに答えたのは、そういう風に魔力量で判断して近づいてくる大人にも、その大人の影響で近づいてくる子息連中にもその時の僕はげんなりしていた。
ミハイルも最初はそういうヤツだと思ったので、私は冷たくそう言い放つ。そうするといままでの連中は愛想笑いを浮かべて立ち去ることが多かったからだ。
しかし、ここでミハイルだけ違う行動に出た。
「じゃあ、その、俺と友達になってくれませんか??側近とかでも構いません。俺は、将来この国のために自分の魔力で尽くしていきたいので……レイモンド様のような魔力量の高い方と切磋琢磨したいのです」
ハキハキと自身の夢を語る姿には、邪念があるようには思えなかった。
そして、なによりこの国のために自身が持つもので貢献したいという言葉は、他のただ私の側で甘い蜜を吸いたいと願う人間とは違う気がした。
「分かった。そういうことなら、よろしく」
そう言って握手するために差し出した手を嬉しそうに、握り返して微笑んだミハイルは無邪気な普通の少年に見えた。
それから、親交を深めていくうちに気心の知れた関係になったが、よく考えたらミハイルは終始、ルシオンについては悪いことしか言っていなかった気がした。
曰く、
『隣国の帝国の姫である王妃様の血筋があるから、国際的な軋轢を生まないために王城にいるが魔力もないあんなヌルより、魔力量もあるレイモンドこそ王に相応しいはずだ』
『どうして、レイモンドとあいつが婚約しないといけない、陛下のご命令でも酷すぎる』
などと言ったことがあった。これについては私が愛しいルシオンに対しての悪口は絶対に許さないと強く伝え、最悪絶縁も辞さないことも伝えるようになってからはなりを潜めた。だから、ルシオンは誤解されているだけだと分かってくれたのだと思っていた。
しかし、あくまで言わなくなっただけでミハイルはずっと、ルシオンに対して敬意を示すことはなく、ひたすらに見下していたのだろう。
そこまで考えた時、部屋の扉がノックされた。
「……はい」
答えると、今一番聞きたくない声がした。
「レイモンド、食事をしよう」
「……」
正直食欲など微塵もないので無言でいると、扉が開いて満面の笑みを浮かべたミハイルが立っていた。思わず嫌悪に表情が歪む。
そんな、私に構うこともなく、近づいてこようとしたので逃げようとしたが、魔法を唱えて動きを封じられた。
「レイモンド、ちゃんと食べないと体に毒だぞ」
とまるで友人同士の時のように心配そうに言われて思わず吐き捨てるように答えてしまった。
「うるさい。お前の手籠めになるくらいなら死んでや……っ!!」
言葉が終わる前に、この間と同じように節くれだった手が、私の首を絞めた。あまりの苦しさにキッとミハイルを睨むが、その目は私を映しながら嬉しそうに三日月型に歪んだ。
「はぁ。レイモンド。お前の命は今、俺が握っているんだよ。この手の下で脈打つ命も全て全て俺だけのものなんだ……はぁ、レイモンドをこのまま無理やりに奪うことだって俺にはできる。けれどそれをしないでいるんだ、どうしてか分かるか??」
(わかるわけないだろう!!そんな狂人の気持ちなど……)
心の中で罵っていたが、恍惚としたレイモンドには届いていない。代わりにおぞましい返事が返ってきた。
「レイモンド自身が、俺のお嫁さんになりたいって言葉にさせたいからだ。ああ、そう、俺だけのレイモンド、いやレイになりたい、俺を全て受け入れたいと言わせたいんだ。ははははは」
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