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10.断罪02(イクシオン(叔父くん)視点)

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私の言葉に、伯爵の体がビクリと震えたのが分かった。

「娘のことは申し訳ございません。私も親ですので娘の言葉を信じてしまい感情的になっておりました。ルクス殿下の子でないという事実が分かった今、娘は勘当いたしますのでどうか我が家への咎は取り消して頂きたい」

「パパ、何言ってるの??私はこの世界のヒロイン。みんなから愛されて当然の存在なのに、勘当なんてありえない!!」

「うるさい!!お前が嘘をつかなければこんなことにはならなかったのだぞ!!」

「黙れ」

あまりにもやかましいふたりに思わず戦場で会得した殺気を放ってしまった。ヒッと伯爵は声を上げて黙り、薄汚い女も押し黙った。

「伯爵、お前の罪は娘を使った王家簒奪未遂だけではない、私が何も知らないと思っているのか??」

私は、ある資料をその場で公開した。それは、先日まで戦争を行っていた隣国の王家への武器や金を提供したことが分かる書類だった。それを見るなり伯爵の顔が青を通りこして白くなるのがわかる。

それもそうだろう。この罪が確定すれば王家簒奪だけではなく国家反逆罪も適応されて一番軽い罰でも毒杯、一番重ければ公開処刑が確定してしまうのだから。

だから、それが無駄な足掻きと分かりながらも伯爵は声を上げる。

「そんなことでたらめだ!!」

「でたらめね……このサインと印章はライト伯爵のもので一致している」

先ほどの婚約破棄の際の書面と合わせて該当の契約書を比較するように見せる。パクパクと酸欠の魚のようになる伯爵へ私はトドメを刺す。

「国王陛下、ライト伯爵とその令嬢は第2王子の子を孕んだと偽り、王位継承権の簒奪をたくらみ、さらに敵対していた隣国へ武器の輸出ならびに金品を贈与していた。これは国家反逆罪にあたるかと」

今まで石像のように動かなかった兄上にそう切り出せば、一瞬眉間に皺が寄ったのが分かった。私は知っている、兄上がなぜ伯爵風情をルクスの婚約先に選んだのか。

兄上は、伯爵から賄賂を受け取っていた。

かの伯爵は元は商人であったが3代前に金で男爵位を買い、その莫大な資金で王家を援助することで爵位を伯爵まで上げたことは有名だった。

ただ、資金援助だけではルクスの血は渡せないと兄上は伯爵へ個人的な賄賂を要求し、受け取っていたのだ。

(定期的に受け取っていたその金が入らなくなるのは避けたいがここまで私がことを公にしてしまった以上、兄上は伯爵を切らざるえないだろう。しかし……)

「国王陛下、どうかお許しください」

そう叫んだ伯爵は当然自分は救われると思っている。しかし、その顔はすぐに絶望へと変わる。

「この重罪人達を地下牢へつなげ」

国王の言葉にすぐにふたりは騎士に連れていかれた。その後は式典は滞りなく行われたが、まだ私のやるべきことは終わっていない。

私は、式典後に兄上の部屋を訪れた。それは私が訪れたかったからではなく呼び出されたからであったがとても都合がよかった。

国王の私室に入る。そこはよく見慣れた絢爛豪華という言葉以外が浮かばない部屋だった。基本的に何事にもやる気のない兄上だが、唯一、骨董集めにだけは熱を注ぎ続けている。

部屋を飾る優美な調度品たちがまさにそうだった。

『それだけの資金がどこからでていたのか??』

その答えは部屋の中で不機嫌を隠さない兄上の口から語られるだろう。

「どういうつもりだ」

「どういうとは??私は重罪人の罪を公の場でつまびらかにしただけではありませんか」

その言葉に、兄上は目の前のテーブルを思い切り叩く。

ドン!!

という音が響いた。昔は自分より背の高い兄がそうすると怖かったが今は自分より貧相な体の中年男がそれをしているだけなので怖いとは微塵も思わなかった。

「確かにあの男は、身綺麗ではないし、あの令嬢も放蕩が過ぎた。しかし、婚約破棄を内内にしてその慰謝料さえ受け取れればそこまで大ごとにするつもりはなかった」

「国家簒奪と反逆罪を企てたのにですか??」

「……だからなんだ??むしろそれをゆすればもっと金をとれたはずだ」

その本音は、国王というよりゴロツキのそれを変わらなかった。私はわざとらしく大きなため息をついた。

「一国の王がおっしゃることとは思えない。国王陛下、いいえ兄上。私がこの場に来たのは貴方に呼び出されたからだけではないのです」

「……」

私の言葉に黙って睨みつける兄上の前に私の書類を置いた。それは兄上が貴族から賄賂を受け取って優遇していたことがわかる調査報告書だった。

それに目を通した兄上は何も言わない。そして焦った様子もない。

国王である以上は誰も自分を裁けないとでも思っているのだろう。しかし、その考えは甘いことを私が告げなければいけない。

「この調査書は貴族院ならびに裁判所へすでに手配済みです。つまり……」

「父上には、国王の座を降りて頂きます」

私の言葉を遮るように、部屋の中へドカドカとやってきた王太子のジェイドが言った。
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