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07.新しい住まいにものがなさすぎる

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目の前には何も中身のない部屋が広がっていた。

これは比喩でもなんでもなく文字通りなかった。

「うわぁ、がわしかないってベッドもないし、クローゼットもないだと!!」

文字通りギリギリ雨風をしのげるだけの小屋に、僕は辺境の地の騎士団、「 薔薇の穴ローズホール」の意図を汲み取る。

歓迎はされないとはわかっていたが、流石に酷いと思ったが、それならそれで仕方ない。

(今までだってその環境、環境で最善の生き方をしてきたし、今回もなんとかなるはず……)

生まれた時から伊達に嫌われ慣れてはいない、僕はとりあえず必要なものを買うために髪色を持ってきた粉でクロに変えて、一応顔を隠して家から出た。

一応、「 薔薇の穴ローズホール」の騎士団は辺境伯の邸宅内にあるので門番の前を通らないといけない。

(上手くいくと良いけど……)

門前にはタレ目の少し軽そうな茶髪に癖毛の男が立っていた。

その横を堂々と通る。

こそこそすると気にされるから割と強気にいくのがコツだ。

「とまれ」

そう言われて、仕方なく止まる。作戦1は失敗だがこれから作戦2にうつろう。

「はい」

「見ない顔だな、お前だぁれ??」

フランクだけど隙のない仕草で言われたが、これでたじろいだりしない。

「僕だよ、僕、覚えてない??」

題してぼくぼく詐欺もとい相手に似ているヤツっぽくして名前言わせる大作戦だ。

「ああ、ジョンか。うん、あのうだつの上がらない」

(かかったな!!)

内心でほくそ笑んでジョンっぽく答えた。

「うん、そうだよ、だから通して……」

しかし、男はニコニコしながら僕に組みついた。

「ざぁんねん。ジョンとかいそうでうちには居ないんだよ。怪しいヤツ捕まえたぁ」

「ひぃ、くっそ。ただ買い物に行くつもりが!!」

ポロリと漏れた本音に男は異様な物を見る様な顔になる。

「買い物ぉ??騎士団には配給が充分あるんだしいらなくない??」

その言葉に、もうこうなれば本当のこと言って謝るしかないので、買い物に行く経緯を話した。

「ああ、お前が噂の女たらしね。マイマイが嫌がりそうなタイプだよね」

「マイマイ??そうなんだよ、このままじゃ死んじゃうというか多分死ねってことなんだけどしにたくないじゃん??」

「わかる、実はオレもマイマイにきらわれてんの♪ それで前線から左遷されてここにきたんだよね」

その言葉にチャンスだと思った。彼ならば外に出してくれるかもしれない。

「なら、僕ら嫌われものフレンズだよね。だから、フレンズのお願い聞いてくれない??」

女の子には百発百中の上目遣いを披露して必死に懇願した。

「あ、それは無理。逃走手助けしたとか思われたら嫌だし。お前は団長のとこに連れてくけど」

あっさり言われて、悲しいけど上目遣いは男には効かないことを実感した。

そして、僕はドナドナをまた口ずさんだ。すると、捕まえてる門番も一緒に楽しげにハミングしながら団長の部屋まで連行された。
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