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第一章 因縁の世界へ転生
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当主の血をひいているとはいえ不義の娘だ、社交の場でどういう扱いを受けていたか想像に難くない。何の後ろ盾もない普通の家庭の年頃の女など論外だ。妬み嫉みの的になることは間違いないだろう。王太子の婚約者という立場だったゆえ、敵意のある感情を向けられることは慣れている。胸が痛む経験がひとつ増えるだけだ。気にしないでください、とわたしがその話を受けようしたとき。一条さんが静かに口を開いた。
「――こいつの前世は公爵令嬢だ。ダンスや作法については下手に教育を受けているやつより完璧だろう」
そこで一条さんは言葉を切って、わたしの目をまっすぐに見つめ返した。
「お前は必ずオレが守る。この話を受けてくれないか」
宝石のように澄んだ黒い瞳にはわたしの困惑した顔が映っている。婚約者だったアレン様とはほとんど目が合ったことがなかった。守る、だなんてただの一度もない。彼が聖女セイラを愛していたことは知っていたし、自分が至らないから仕方ないとさえ思っていた。
誰からも尊重されなかった人生で、こんなに誠実な瞳でわたしを見つめてくれる人は初めてだ。彼の言葉には不思議な説得力があって、得意ではない社交会も大丈夫だと思えてくる。応えたい、とそう思うのに時間はかからなかった。
「ぜひ、よろしくお願いします」
「……助かる」
「……ちょ、ちょっと待ってください!こ、公爵令嬢?」
茜音さんが素っ頓狂な声をあげる。注がれる視線が痛い。実は前世の記憶がありますなんて幽霊以上に信じられないだろう。超能力が備わっていると豪語する人と同レベルに胡散臭い。彼女との友情もここまでか、と諦めかけたとき。一拍遅れて、茜音さんが腑に落ちたような表情で大きく頷いた。
「たしかに、最近の茉衣はやけに姿勢が良かったわね。お辞儀も綺麗だし、良いとこの令嬢だったら説明がつくわ」
一条さんと言っていることがほとんど同じだ。義兄妹とはいえ、思考回路が似ているらしい。
(……ん?)
前にも同じようなことを思った気がする。記憶を手繰りよせるが、小さな違和感は瞬く間に霧散してしまった。思い出せないということはそこまで重要なことではなかったのだろう。
「――こいつの前世は公爵令嬢だ。ダンスや作法については下手に教育を受けているやつより完璧だろう」
そこで一条さんは言葉を切って、わたしの目をまっすぐに見つめ返した。
「お前は必ずオレが守る。この話を受けてくれないか」
宝石のように澄んだ黒い瞳にはわたしの困惑した顔が映っている。婚約者だったアレン様とはほとんど目が合ったことがなかった。守る、だなんてただの一度もない。彼が聖女セイラを愛していたことは知っていたし、自分が至らないから仕方ないとさえ思っていた。
誰からも尊重されなかった人生で、こんなに誠実な瞳でわたしを見つめてくれる人は初めてだ。彼の言葉には不思議な説得力があって、得意ではない社交会も大丈夫だと思えてくる。応えたい、とそう思うのに時間はかからなかった。
「ぜひ、よろしくお願いします」
「……助かる」
「……ちょ、ちょっと待ってください!こ、公爵令嬢?」
茜音さんが素っ頓狂な声をあげる。注がれる視線が痛い。実は前世の記憶がありますなんて幽霊以上に信じられないだろう。超能力が備わっていると豪語する人と同レベルに胡散臭い。彼女との友情もここまでか、と諦めかけたとき。一拍遅れて、茜音さんが腑に落ちたような表情で大きく頷いた。
「たしかに、最近の茉衣はやけに姿勢が良かったわね。お辞儀も綺麗だし、良いとこの令嬢だったら説明がつくわ」
一条さんと言っていることがほとんど同じだ。義兄妹とはいえ、思考回路が似ているらしい。
(……ん?)
前にも同じようなことを思った気がする。記憶を手繰りよせるが、小さな違和感は瞬く間に霧散してしまった。思い出せないということはそこまで重要なことではなかったのだろう。
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