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そして2日後。
ルイ様が出発する日。
ルイ様を見送るために玄関で待っている私に、ルイ様が階段をおりながら声をかけてくれた。
「今回もお見送りしてくれるんだね」
「はい」
「ありがとう」
「いえ……」
「サラ様、あれをお渡ししないんですか?」
手紙を渡すかどうか迷っている私に、お世話係さんがそう言った。
「あれって?」
ルイ様にも聞こえたようで、不思議そうな顔で私のことをみる。
……これはもう渡すしかない。
「あの、手紙です……。文字を書くのは初めてだったので、本当に下手くそだし全然捨ててもらってもいいので……」
たった2行だけなのに全然上手く書けなくて、この2日間でできるだけ練習して何回も書き直した。
けど、最終的に出来上がったものもお世辞にも上手いとは言えない字。
何度か仕事をしているルイ様の手元を見たけれど、ルイ様はとても綺麗な字を書いていたから、余計に恥ずかしい。
こんなものを渡して失礼にならないだろうか……。
でもルイ様は封筒の文字を見ても笑うこともなく、本当に嬉しそうに受け取ってくれる。
「手紙を貰うのなんて初めてだよ。とても嬉しい。
大切にするね」
「……はい」
「読んだら返事書いて送るからね」
「はい、楽しみにしてます」
「あと、侵入者対策はいろいろしておいたけど、念の為できるだけ部屋に居るようにしてくれると嬉しい」
「分かりました」
「じゃあ行ってきます」
「行ってらっしゃいませ」
一瞬にして目の前から居なくなる。
行っちゃったな。
ルイ様がいないとただでさえ森の雰囲気が張り詰めてしまうのに、最近の侵入者騒動でもっと雰囲気悪そう。
ルイ様の言う通り大人しく部屋で過ごそう……。
その3日後。
夜中に森のざわつきで目が覚める。
昼間は多少賑やかでも夜になるととても静かな森なのに、足音や声がいくつも聞こえてくる。
どうかしたのかな。
窓から外を覗こうとしたタイミングで、部屋がノックされる。
返事をすると、見覚えのある服を着た骨が入ってきた。
「うわぁぁっ!」
「あ、すみません。慌てていたもので」
すぐにいつものお世話係さんに戻るけど、私の心臓はすぐには静まらない。
全然見たことないから忘れそうになっていたけど、そういえばあの骨の姿がお世話係さんの本来の姿なんだっけ……。
「ど、どうしたんですか?」
「ご主人様の魔法を解いて森に入ってきた人が居ます。」
「え?本当に?それって大丈夫なんですか?」
「基本的には大丈夫です。ご主人様が気づかれたはずなので、間もなく戻られて対応すると思います。
しかし念の為、事態が収まるまではサラ様のお傍に居させてください」
「分かりました。ありがとうございます」
外の状況もいまいちよく分からないし、なんとなく焦った気持ちだけがある。
1時間ほど経っただろうか。
ふいに扉がノックされた。
ルイ様の声が聞こえて扉を開ける。
「こんな夜中にごめんね、驚かせたよね。大丈夫だった?」
「はい、私は何も。
ルイ様は大丈夫でしたか?」
「うん。何ともなかったよ」
「良かった。安心しました」
「侵入者は処理したけど、森が落ち着くまで一旦仕事はお休みしてこの家にいるから、君も安心して寝ていいからね」
「はい」
「おやすみ」
「おやすみなさい」
ルイ様服に血がついてた……。
仕事の途中で抜け出してきただろうし、悪い魔物の血かな。
それとも人間……?
今までの話しぶりからして森に入ってきたのは人間だろうし、人の血がついてても不思議ではない。
あんな優しそうな、というか実際私にはとても優しいけど、私はそのいつものルイ様しか知らなくて、
外での仕事の時も森にひとりで出かけていく時のルイ様も、私は知らない。
ただ衣食住を十分に与えてもらっているだけの身の私が聞いてもいいものかわからない。
仕事に関しての話はほとんどしないから、あまり触れない方がいいのかと思ったりもする。
ルイ様が出発する日。
ルイ様を見送るために玄関で待っている私に、ルイ様が階段をおりながら声をかけてくれた。
「今回もお見送りしてくれるんだね」
「はい」
「ありがとう」
「いえ……」
「サラ様、あれをお渡ししないんですか?」
手紙を渡すかどうか迷っている私に、お世話係さんがそう言った。
「あれって?」
ルイ様にも聞こえたようで、不思議そうな顔で私のことをみる。
……これはもう渡すしかない。
「あの、手紙です……。文字を書くのは初めてだったので、本当に下手くそだし全然捨ててもらってもいいので……」
たった2行だけなのに全然上手く書けなくて、この2日間でできるだけ練習して何回も書き直した。
けど、最終的に出来上がったものもお世辞にも上手いとは言えない字。
何度か仕事をしているルイ様の手元を見たけれど、ルイ様はとても綺麗な字を書いていたから、余計に恥ずかしい。
こんなものを渡して失礼にならないだろうか……。
でもルイ様は封筒の文字を見ても笑うこともなく、本当に嬉しそうに受け取ってくれる。
「手紙を貰うのなんて初めてだよ。とても嬉しい。
大切にするね」
「……はい」
「読んだら返事書いて送るからね」
「はい、楽しみにしてます」
「あと、侵入者対策はいろいろしておいたけど、念の為できるだけ部屋に居るようにしてくれると嬉しい」
「分かりました」
「じゃあ行ってきます」
「行ってらっしゃいませ」
一瞬にして目の前から居なくなる。
行っちゃったな。
ルイ様がいないとただでさえ森の雰囲気が張り詰めてしまうのに、最近の侵入者騒動でもっと雰囲気悪そう。
ルイ様の言う通り大人しく部屋で過ごそう……。
その3日後。
夜中に森のざわつきで目が覚める。
昼間は多少賑やかでも夜になるととても静かな森なのに、足音や声がいくつも聞こえてくる。
どうかしたのかな。
窓から外を覗こうとしたタイミングで、部屋がノックされる。
返事をすると、見覚えのある服を着た骨が入ってきた。
「うわぁぁっ!」
「あ、すみません。慌てていたもので」
すぐにいつものお世話係さんに戻るけど、私の心臓はすぐには静まらない。
全然見たことないから忘れそうになっていたけど、そういえばあの骨の姿がお世話係さんの本来の姿なんだっけ……。
「ど、どうしたんですか?」
「ご主人様の魔法を解いて森に入ってきた人が居ます。」
「え?本当に?それって大丈夫なんですか?」
「基本的には大丈夫です。ご主人様が気づかれたはずなので、間もなく戻られて対応すると思います。
しかし念の為、事態が収まるまではサラ様のお傍に居させてください」
「分かりました。ありがとうございます」
外の状況もいまいちよく分からないし、なんとなく焦った気持ちだけがある。
1時間ほど経っただろうか。
ふいに扉がノックされた。
ルイ様の声が聞こえて扉を開ける。
「こんな夜中にごめんね、驚かせたよね。大丈夫だった?」
「はい、私は何も。
ルイ様は大丈夫でしたか?」
「うん。何ともなかったよ」
「良かった。安心しました」
「侵入者は処理したけど、森が落ち着くまで一旦仕事はお休みしてこの家にいるから、君も安心して寝ていいからね」
「はい」
「おやすみ」
「おやすみなさい」
ルイ様服に血がついてた……。
仕事の途中で抜け出してきただろうし、悪い魔物の血かな。
それとも人間……?
今までの話しぶりからして森に入ってきたのは人間だろうし、人の血がついてても不思議ではない。
あんな優しそうな、というか実際私にはとても優しいけど、私はそのいつものルイ様しか知らなくて、
外での仕事の時も森にひとりで出かけていく時のルイ様も、私は知らない。
ただ衣食住を十分に与えてもらっているだけの身の私が聞いてもいいものかわからない。
仕事に関しての話はほとんどしないから、あまり触れない方がいいのかと思ったりもする。
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