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私が焦っているところに、部屋の扉が開いて数人が部屋に入ってくる。
「目が覚めたか」
「……誰?」
1番前にいる人はどこかで見た事があるような気も……。
「私のことを知らないとは珍しい娘もいたもんだ」
そんなに有名な人なの?
「……あっ、王子様……」
なんか見た事あると思ったらこの国の王子様か。
顔は確かに肖像画の通り綺麗だけど、スタイルがちょっとアレだな……。そう思うとルイ様はやっぱり完璧だ。
……というか、王子様が何故ここに?
「思い出してくれてよかったよ。
その通り私はこの国の王子だ。そして今日からお前は私の婚約者になる」
「……はい?」
「喜ぶがいい。この国の娘なら誰もが望む地位を手に入れることになるんだからな」
展開が急すぎて、いまいち状況がよくわからない。
すぐに殺されるわけではなさそうで、ひとまずは安心したけれど。
正直、地位なんてものは全く求めていない。
ルイ様の方が断然見目麗しいし、スタイルいいし、こんなバカそうな発言しないし、私の話を笑顔で聞いてくれて……、ルイ様。ルイ様がいい。
「なぜそんな顔をしている」
「帰りたいからです。元いたところに帰してください」
「なぜだ?次期王妃になれるんだぞ?」
「私なんかにそんなのつとまりません。もっと綺麗で賢い方の方がいいですよ。王子様なら選り取りみどりなのでは?」
「そんな中でも私はお前が気に入ったんだ。遠慮することは無い」
いやこればかりは全力で遠慮させて頂きたい。
けど下手したら何されるかわからないし、これ以上否定するのも良くないかと思うと、もうどうすればいいかわからなくなってくる。
「おい。こいつを綺麗にして来い」
王子はメイドらしき人達にそう告げると、何も言わない私を置いて部屋を出ていく。
まだ話は終わってないのに。
婚約に私の許可は要らないってこと?
私が複数人相手にかなうわけもなく、されるがまま。
メイドたちに部屋の端にあった扉の奥、浴室に連れてこられた。
待って、お風呂なんて入ったら……。
いや、さすがに考えすぎかな?
出会ってすぐの人を襲ったりはしないか。
……でも王子という生き物はよく分からない事がわかったから、それもどうかわからないな。
もう嫌だ。早く帰りたい。
幸いなことにメイドたちに乱暴されることはなく、それはそれは丁寧にお風呂に入れられた。
お風呂から上がると、何かいろいろ塗りたくられてうっすい部屋着を着せられ、またさっきの部屋に戻される。
この先の想像は、どうか私の勘違いでありますように。
もしくはこれは悪い夢。
もしくは今すぐにでもルイ様が来てくれたりしないだろうか。
なんて期待も虚しく、部屋には王子様と食事を持ったメイドが共にやって来る。
「腹が減ってるだろう?食べるといい」
朝食から何も口にしていないからお腹は空いているはずなのに、綺麗なお皿に盛られた美味しそうな料理を目の前にしても全く食欲がわかない。
でもここで餓死するのも御免だと思い、とりあえず料理を口に運んでみる。
不安と恐怖もあってか、全然美味しいとは思えない。
ルイ様との食事は楽しくて美味しいのに。
……帰りたい。
ひと通り食べて食事の手を止めると、王子が待ってましたと言わんばかりにそばに寄ってくる。
私は王子が近づいてくるのをそっと避けると、なんとか話をする方向に持っていく。
この後何をされるかを考えると、いまはこれで時間稼ぐしか思いつかない。
もしかしたら急に魔法が使えたりするようになるかもしれないし。
「あの……、なぜ私なんですか?」
「街で見かけて、一目惚れだったんだよ。
それに魔力も豊富だというから、これ以上の人はいないと思った」
綺麗なご令嬢も寄ってくるだろうに、私に一目惚れなんて余程視力が終わってるんだろうな。
「私は平民ですし、まともな教育も全然受けていませんよ」
「身分は気にするな。私が選んだ相手に文句を言う人間はいないからな。勉強も今からやっていけばいい。
ひとまずいまは私と……」
腕が伸ばされてきて一度は避けるものの、片腕を強く掴まれてそれももう難しくなる。
空いている手は私の腕をそろそろと撫でていく。
気持ち悪い。
ルイ様はふたりきりでも私に触れてくることは無いし、触れる必要がある時は必ず許可を取ってくれるのに。
「綺麗な肌だ」
王子の手は私の肩紐を解く。
触られるのも嫌だけど、殺されるかもしれないと考えると、下手に抵抗もできなくて、もう諦めるしか無かった。
その瞬間、すごい音がして窓ガラスが割れる。
「サラ!」
ガラスを割って入ってきたのはルイ様だった。
「ルイ様……」
「なぜお前がここに……」
「その子を返せ」
「はっ、言う通りにするやつがあるか。やっと連れてこられたというのに。
それにここでは魔法は使えないから、お前を怖がる理由もないしな」
やっぱり魔法が使えないような細工がされていたんだ。
ルイ様も試してみたのか、自分の手を見て驚いている様子。
「こいつを傷つけられたくなかったら大人しくしておくんだな」
「……ッ」
そしてあのルイ様が部屋に入ってきた騎士によってあっさり拘束される。
「まあそこで眺めているといい。特別に許してやろう」
「嫌だ!触らないで!」
ルイ様がいるなら話は変わってくる。
こんなとこ見られたくない。
殺されるのがなんだ。元々死ぬ予定だったんだ。
全力で抵抗するものの、ルイ様同様騎士たちの助けで手足を拘束される
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。
「……見ないでください」
半泣きでルイ様の方を見てそういうしかなかった。
「目が覚めたか」
「……誰?」
1番前にいる人はどこかで見た事があるような気も……。
「私のことを知らないとは珍しい娘もいたもんだ」
そんなに有名な人なの?
「……あっ、王子様……」
なんか見た事あると思ったらこの国の王子様か。
顔は確かに肖像画の通り綺麗だけど、スタイルがちょっとアレだな……。そう思うとルイ様はやっぱり完璧だ。
……というか、王子様が何故ここに?
「思い出してくれてよかったよ。
その通り私はこの国の王子だ。そして今日からお前は私の婚約者になる」
「……はい?」
「喜ぶがいい。この国の娘なら誰もが望む地位を手に入れることになるんだからな」
展開が急すぎて、いまいち状況がよくわからない。
すぐに殺されるわけではなさそうで、ひとまずは安心したけれど。
正直、地位なんてものは全く求めていない。
ルイ様の方が断然見目麗しいし、スタイルいいし、こんなバカそうな発言しないし、私の話を笑顔で聞いてくれて……、ルイ様。ルイ様がいい。
「なぜそんな顔をしている」
「帰りたいからです。元いたところに帰してください」
「なぜだ?次期王妃になれるんだぞ?」
「私なんかにそんなのつとまりません。もっと綺麗で賢い方の方がいいですよ。王子様なら選り取りみどりなのでは?」
「そんな中でも私はお前が気に入ったんだ。遠慮することは無い」
いやこればかりは全力で遠慮させて頂きたい。
けど下手したら何されるかわからないし、これ以上否定するのも良くないかと思うと、もうどうすればいいかわからなくなってくる。
「おい。こいつを綺麗にして来い」
王子はメイドらしき人達にそう告げると、何も言わない私を置いて部屋を出ていく。
まだ話は終わってないのに。
婚約に私の許可は要らないってこと?
私が複数人相手にかなうわけもなく、されるがまま。
メイドたちに部屋の端にあった扉の奥、浴室に連れてこられた。
待って、お風呂なんて入ったら……。
いや、さすがに考えすぎかな?
出会ってすぐの人を襲ったりはしないか。
……でも王子という生き物はよく分からない事がわかったから、それもどうかわからないな。
もう嫌だ。早く帰りたい。
幸いなことにメイドたちに乱暴されることはなく、それはそれは丁寧にお風呂に入れられた。
お風呂から上がると、何かいろいろ塗りたくられてうっすい部屋着を着せられ、またさっきの部屋に戻される。
この先の想像は、どうか私の勘違いでありますように。
もしくはこれは悪い夢。
もしくは今すぐにでもルイ様が来てくれたりしないだろうか。
なんて期待も虚しく、部屋には王子様と食事を持ったメイドが共にやって来る。
「腹が減ってるだろう?食べるといい」
朝食から何も口にしていないからお腹は空いているはずなのに、綺麗なお皿に盛られた美味しそうな料理を目の前にしても全く食欲がわかない。
でもここで餓死するのも御免だと思い、とりあえず料理を口に運んでみる。
不安と恐怖もあってか、全然美味しいとは思えない。
ルイ様との食事は楽しくて美味しいのに。
……帰りたい。
ひと通り食べて食事の手を止めると、王子が待ってましたと言わんばかりにそばに寄ってくる。
私は王子が近づいてくるのをそっと避けると、なんとか話をする方向に持っていく。
この後何をされるかを考えると、いまはこれで時間稼ぐしか思いつかない。
もしかしたら急に魔法が使えたりするようになるかもしれないし。
「あの……、なぜ私なんですか?」
「街で見かけて、一目惚れだったんだよ。
それに魔力も豊富だというから、これ以上の人はいないと思った」
綺麗なご令嬢も寄ってくるだろうに、私に一目惚れなんて余程視力が終わってるんだろうな。
「私は平民ですし、まともな教育も全然受けていませんよ」
「身分は気にするな。私が選んだ相手に文句を言う人間はいないからな。勉強も今からやっていけばいい。
ひとまずいまは私と……」
腕が伸ばされてきて一度は避けるものの、片腕を強く掴まれてそれももう難しくなる。
空いている手は私の腕をそろそろと撫でていく。
気持ち悪い。
ルイ様はふたりきりでも私に触れてくることは無いし、触れる必要がある時は必ず許可を取ってくれるのに。
「綺麗な肌だ」
王子の手は私の肩紐を解く。
触られるのも嫌だけど、殺されるかもしれないと考えると、下手に抵抗もできなくて、もう諦めるしか無かった。
その瞬間、すごい音がして窓ガラスが割れる。
「サラ!」
ガラスを割って入ってきたのはルイ様だった。
「ルイ様……」
「なぜお前がここに……」
「その子を返せ」
「はっ、言う通りにするやつがあるか。やっと連れてこられたというのに。
それにここでは魔法は使えないから、お前を怖がる理由もないしな」
やっぱり魔法が使えないような細工がされていたんだ。
ルイ様も試してみたのか、自分の手を見て驚いている様子。
「こいつを傷つけられたくなかったら大人しくしておくんだな」
「……ッ」
そしてあのルイ様が部屋に入ってきた騎士によってあっさり拘束される。
「まあそこで眺めているといい。特別に許してやろう」
「嫌だ!触らないで!」
ルイ様がいるなら話は変わってくる。
こんなとこ見られたくない。
殺されるのがなんだ。元々死ぬ予定だったんだ。
全力で抵抗するものの、ルイ様同様騎士たちの助けで手足を拘束される
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。
「……見ないでください」
半泣きでルイ様の方を見てそういうしかなかった。
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