とても快適な生贄?ライフ

九 一

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そして隣国に行く日がやってきた。

私が白が好きと言ったからか、用意されていたドレスは白のものが多く悩んだけど、私はその中から比較的シンプルなものを選んだ。


「身支度は済んだ?」


「はい」


私の返事を聞いて部屋の扉が開く。


「……いつも綺麗だけど、今日は特別綺麗だね」


真剣な表情でそんなことを言われると、なんだか照れてしまう。


「……ありがとうございます。
ルイ様も綺麗です」


いつも黒色の服が多いルイ様が、私と同じ白を基調とした服を身にまとっている。


「君は白が良く似合う」


「ルイ様は黒も白もお似合いになりますね」


「君ほどではないよ。
でもこんなに綺麗だと、寄ってくる人が多くて困りそうだ」


「それはルイ様の方では?」


ルイ様は何かを思い出したようで、嫌そうな顔をする。
もしかして隣国の王子様のこと思い出したのかな?


「……行くのやめようか?」


「もう。今更何言ってるんですか」


「冗談冗談。君が行きたいというのにやめるわけがない。
でも、行く前にひとついいかな」


「なんでしょうか」


「この前のこともあるのと、あと純粋に君のことが心配だから、今日はできるだけ腕を組んでて貰えないかな。
握手くらいはすると思って保護魔法は以前と同じものに変えたから、また急に腕を引かれる可能性もあるし……」


そんな提案、私的には得しかないけど、ルイ様はいいんだろうか。


「私はその方が安心なので大丈夫ですが、ルイ様は嫌じゃないですか?ルイ様の知っている方もいらっしゃるでしょうし、誤解されても困るのでは……?」


「困らないよ。誤解されてもいいし、むしろその方が君に変な人が近づかなくて済むかもしれない。
あっ、でもそれだと、君の出会いも奪ってしまうかな……」


「それは大丈夫です。お友達が出来たらいいなとは思いますが、別にその、それ以上の方は特に必要ないと思っていますので」


「そっか。それなら、はい」


私の方に一歩近づいたルイ様の腕に、自分の腕を絡ませる。

……思ったより近い。この美貌をこの距離でなんて、心臓持つかな。


「急に会場に転移したら危ないから会場の入り口前に飛ぶんだけど、すぐに入ると思うからそのつもりでいてね。
それぞれ入る時間が決まっていて、早めに入らないと次転移してくる人と被って危ないんだ」


「……分かりました。
入ったら軽く頭を下げたらいいんですよね」


「うん。それだけできたら、もう大丈夫」


「……はい」


「じゃあ行こっか」


緊張しすぎて、もうよく分からないけど、とりあえず扉が開いたら頭を下げよう。うん。きっとどうにかなる!

なんて思っている間に、気づけば大きな扉の前。


「もう開くよ」


誰も触れてもいないのに大きな扉が開き始める。
これも魔法かな。

扉が開くと同時に、多くの視線が私たちに集まる。

ルイ様にエスコートされて一歩会場に踏み入れると、事前に言われていたとおりに軽く頭を下げた。

本当にそれだけでいいようで、あとは普通に会場の人混みにまざる。


「あそこの金髪で背が高く女に囲まれてるのが王子。その後ろでおじさんに囲まれてるのが王。
一応挨拶しに行こう」


「はい」


私たちはまず王のもとへ向かう。


「これはこれは魔法使い殿。久しいな。来てくれて嬉しいよ」


あれ。ルイ様って名前で呼ばれてないんだ。
私も呼ばない方が良かったりするのかな。


「こちらこそお招きありがとう。君のご子息は相変わらずなようだね」


王様相手にそんなフランクな感じとは……。さすがルイ様。


「あぁ、本当に。
君は変わったようだね。どの子とも深く関わろうとしなかったのに、パートナーを連れているなんて」


王様の視線がこちらにうつり、慌てて口を開く。


「お初にお目にかかります。サラと申します」


「はじめまして、可愛いお方。こんな老いぼれだが一応ここの王を務めている者だ」


「老いぼれだなんてそんな……」


「まあ君のパートナーに比べれば随分若いがな」


「何を言ってる。君も大概だろう」


「ははっ、違いない」


この国の王家は代々魔力を持って生まれるらしく、見た目はルイ様より少し歳上くらいに見えるが、実際のところはわからない。

ルイ様の年齢も知らないから、推測すら出来ないけど。

意外と穏やかな王様に少し安心していると、急に後ろから大きな声が聞こえる。


「あぁ!魔法使い!やっとまた会えましたね。次会った時には必ず僕のものにすると決め……、どちら様ですか?」


王子様の視線が、ルイ様から私にうつる。


「サラと申します」


「待ってください。パートナーができたなんて聞いてないですよ。それもこんなに綺麗な方だなんて!」


「やかましい、離れろ。君に言う必要などない」


「僕のパートナーになってください!」


「おい、触るな」


「少し肩に触れた程度でそんなに怒らなくても……」


「リオン、いい加減にしなさい。さっきから聞いていれば、パートナーのいる方にする発言ではない」


「……はい。でも父上!」


「彼は心の広い方だが、それがいつまでも続くと思ったら大間違いだ」


「申し訳ありません。

サラ様、第一王子のリオンと申します。先ほどの御無礼をお許しください」


「あっ、はい。大丈夫です」


「王がいると随分と素直だな」


「こいつは従順なフリが上手いんだよ。フリと分かっていながら可愛がってしまう」


親子の仲がいいんだろうな。いいな……。


「サラ?大丈夫?気分が優れない?」


「いえ、大丈夫です。少しお腹が空いただけで……」


「何がいい?取ってきてあげよう」


「では甘いものを」


「わかった。
サラに変な奴が寄ってこないよう見ていてくれ」


「過保護だな。わかったよ」
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