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「普段から優しい方だが、君には特別甘いようだね」
王様はそう言って私に優しい微笑みを向ける。
「そうでしょうか」
「私にはそう見えたよ。彼は誰にでも平等に優しいけど、平等に興味のない方だから、誰かひとりをこんなふうに気遣うところは見た事がない」
「……あの方は私を好いてくれていますでしょうか」
「何をそんな当たり前な質問を。
血の色が目立たない服を好む彼が白い服を着て、普段ならあっさり断るパーティーに出席して、人混みは好きじゃないのに君のために会場の中心まで甘味を取りに行くなんて、想われている以外にあるかい?」
そんなふうに言われると、全く興味がないようにも思えない気がしてくる自分がいる。
……少しは期待してもいいのだろうか。
「サラ、お待たせ。いくつか取ってきたよ」
「ありがとうございます」
さっそくひと口。
おぉ、美味しい。見たことのない甘味だけど。
「魔法使い殿はもっと分かりやすい愛情表現をした方がいいな」
「何の話だ?」
「いいや?私とサラ様の秘密だ。ね?」
「はい」
つい目の前の美味しいものに集中してしまっていたら、急に話を振られて慌てて頷く。
「気をつけて。このおじさん、王子にああは言ったけど、昔は似たようなものだったから」
「確かに端正な顔立ちをされていますもんね。
ルイ様とはまた違った種類のカッコ良さがあります」
話し方や雰囲気に大人の余裕を感じられて、ついなんでも話しそうになる。きっと見た目の影響もあるんだろうけど。
「それは嬉しいな。けれどあまり褒めると、魔法使い殿が嫉妬してしまうんじゃないか」
ルイ様が嫉妬なんてそんなことするわけない。
「はぁ、君は相変わらずよく喋るな。
彼女は人を褒めるのが上手なんだ。素直に褒められておけばいいよ」
「君は相変わらず隠すのが上手いね。本当は嫉妬していても、その素振りさえ見せない」
「そういう言い方は止せ。彼女に誤解を与えるだろう」
「悪かったよ」
「あの、おふたりは随分親しいようですが、長いお付き合いなんですか?」
「君が王になった時からだから、もう100年近いか?」
「そうだな。それくらいかもしれない」
「ひゃくねん……」
ルイ様のことをよく知っているなと思っていたけれど、100年も関わっていればいやでも知ることになるよね。
「そうだ、今日は彼女の交友関係を広げたくてきたんだ。
彼女に害を与えない人間を紹介してくれ。
性格の悪い人物と彼女に惚れそうな人物は却下で」
「……彼女の好きなようにさせたらいいのに」
「もちろんそうするが、事前に危ない人間は知っておきたい。もう私が原因で嫌な思いをさせたくないからな」
「この前のことならルイ様のせいじゃないです」
「君はそう言うけど、私はそうは思えないんだ」
「ごめんねぇ、サラ様。彼、こういう性格だから、あまり気にしないであげて」
「それで?この会場にいる人間は全員安全なのか?」
「私が直接声をかけた人間はまともだよ。連れに関しては知らないが。
ひとまずうちの孫と仲良くなるのはどうだ?」
「……その孫は何番目の王子の子だ?サラに手を出さないだろうな?」
ここに来る前に、一番目と二番目の王子はちゃらちゃらしていて、三番目は真面目で仕事が出来、四番目は自由人だと聞いた。
娘さんもふたりいるらしいが、あまり関わったことがないらしく、詳しくは知らないらしい。
「安心しろ。父親は三番目の子だ。
それに母親は穏やかな人で、その子もふたりに似ていい子だよ」
「それならいい。今日も来ているのか?」
「あぁ。今呼ぼう」
多分魔法を使ったのだろう。
そこから特に動くことなく数秒後、綺麗な女性が現れた。
「この子はリーシア。今年で18だ」
「魔法使い様ですよね。
お初にお目にかかります、リーシアと申します。魔法使い様のお噂はかねがね伺っております」
「どんな噂か気になるな」
「この国を何度もお助け頂いているとか」
「助けるってほどでもないよ。君の祖父は優秀だからたいしてすることもない」
ルイ様が女性と話している……。初めての光景だ。
それにしてもリーシア様、お綺麗すぎる。ふたりが並ぶと絵になるなぁ。
「サラ。見惚れるのもいいけど、お話してみたら?」
「なんで見惚れていると分かったんですか?」
「君は綺麗な人を見るとき、分かりやすく目が輝いてるからね」
「嘘。全然知らなかったです……」
「彼女はサラ。君とそう変わらない歳だと思うよ」
「はじめまして、サラ様。仲良くしていただけると嬉しいです」
「もちろんです!私、同年代の女の子とお話してみたかったんです。だから私の方こそ、よろしくお願い致します。
それとリーシア様。私の方が歳下ですし、敬称も敬語も必要ありません」
「いえ、魔法使い様のパートナーの方にそんな失礼なことはできません」
「でも……」
本当はパートナーでもないし、それどころかただの居候の平民だし、そんな丁寧に扱われる理由なんてない。
一応パートナーとして参加している事になっているから、そんなこと口には出せないけど。
「君は真面目だね。私は君が彼女を傷つけさえしなければ、ふたりの関係に口は出さないよ」
「ルイ様もこう言ってますし、ダメですか?」
「……ルイ様?」
あぁ!ついうっかり!そういえばさっきも流れで言ってしまっていた。
もっと気をつけるべきなのに。
「気にしないで、サラ。君がそう呼んだらダメなんてことはない。
ルイは私の名だよ。彼女にはそう呼んでもらっている」
「……あぁ、そうなのですね。
ではサラもリーシアと」
「はいっ」
「サラ。私は少し彼と話すことがあるから、私から離れすぎないように彼女とおしゃべりでもしていて」
「わかりました」
そう言って私から少し離れ、王様と何やら話を始める。
できるだけを腕を~なんて言っていたのに、気を使ってくれたのかな。
王様はそう言って私に優しい微笑みを向ける。
「そうでしょうか」
「私にはそう見えたよ。彼は誰にでも平等に優しいけど、平等に興味のない方だから、誰かひとりをこんなふうに気遣うところは見た事がない」
「……あの方は私を好いてくれていますでしょうか」
「何をそんな当たり前な質問を。
血の色が目立たない服を好む彼が白い服を着て、普段ならあっさり断るパーティーに出席して、人混みは好きじゃないのに君のために会場の中心まで甘味を取りに行くなんて、想われている以外にあるかい?」
そんなふうに言われると、全く興味がないようにも思えない気がしてくる自分がいる。
……少しは期待してもいいのだろうか。
「サラ、お待たせ。いくつか取ってきたよ」
「ありがとうございます」
さっそくひと口。
おぉ、美味しい。見たことのない甘味だけど。
「魔法使い殿はもっと分かりやすい愛情表現をした方がいいな」
「何の話だ?」
「いいや?私とサラ様の秘密だ。ね?」
「はい」
つい目の前の美味しいものに集中してしまっていたら、急に話を振られて慌てて頷く。
「気をつけて。このおじさん、王子にああは言ったけど、昔は似たようなものだったから」
「確かに端正な顔立ちをされていますもんね。
ルイ様とはまた違った種類のカッコ良さがあります」
話し方や雰囲気に大人の余裕を感じられて、ついなんでも話しそうになる。きっと見た目の影響もあるんだろうけど。
「それは嬉しいな。けれどあまり褒めると、魔法使い殿が嫉妬してしまうんじゃないか」
ルイ様が嫉妬なんてそんなことするわけない。
「はぁ、君は相変わらずよく喋るな。
彼女は人を褒めるのが上手なんだ。素直に褒められておけばいいよ」
「君は相変わらず隠すのが上手いね。本当は嫉妬していても、その素振りさえ見せない」
「そういう言い方は止せ。彼女に誤解を与えるだろう」
「悪かったよ」
「あの、おふたりは随分親しいようですが、長いお付き合いなんですか?」
「君が王になった時からだから、もう100年近いか?」
「そうだな。それくらいかもしれない」
「ひゃくねん……」
ルイ様のことをよく知っているなと思っていたけれど、100年も関わっていればいやでも知ることになるよね。
「そうだ、今日は彼女の交友関係を広げたくてきたんだ。
彼女に害を与えない人間を紹介してくれ。
性格の悪い人物と彼女に惚れそうな人物は却下で」
「……彼女の好きなようにさせたらいいのに」
「もちろんそうするが、事前に危ない人間は知っておきたい。もう私が原因で嫌な思いをさせたくないからな」
「この前のことならルイ様のせいじゃないです」
「君はそう言うけど、私はそうは思えないんだ」
「ごめんねぇ、サラ様。彼、こういう性格だから、あまり気にしないであげて」
「それで?この会場にいる人間は全員安全なのか?」
「私が直接声をかけた人間はまともだよ。連れに関しては知らないが。
ひとまずうちの孫と仲良くなるのはどうだ?」
「……その孫は何番目の王子の子だ?サラに手を出さないだろうな?」
ここに来る前に、一番目と二番目の王子はちゃらちゃらしていて、三番目は真面目で仕事が出来、四番目は自由人だと聞いた。
娘さんもふたりいるらしいが、あまり関わったことがないらしく、詳しくは知らないらしい。
「安心しろ。父親は三番目の子だ。
それに母親は穏やかな人で、その子もふたりに似ていい子だよ」
「それならいい。今日も来ているのか?」
「あぁ。今呼ぼう」
多分魔法を使ったのだろう。
そこから特に動くことなく数秒後、綺麗な女性が現れた。
「この子はリーシア。今年で18だ」
「魔法使い様ですよね。
お初にお目にかかります、リーシアと申します。魔法使い様のお噂はかねがね伺っております」
「どんな噂か気になるな」
「この国を何度もお助け頂いているとか」
「助けるってほどでもないよ。君の祖父は優秀だからたいしてすることもない」
ルイ様が女性と話している……。初めての光景だ。
それにしてもリーシア様、お綺麗すぎる。ふたりが並ぶと絵になるなぁ。
「サラ。見惚れるのもいいけど、お話してみたら?」
「なんで見惚れていると分かったんですか?」
「君は綺麗な人を見るとき、分かりやすく目が輝いてるからね」
「嘘。全然知らなかったです……」
「彼女はサラ。君とそう変わらない歳だと思うよ」
「はじめまして、サラ様。仲良くしていただけると嬉しいです」
「もちろんです!私、同年代の女の子とお話してみたかったんです。だから私の方こそ、よろしくお願い致します。
それとリーシア様。私の方が歳下ですし、敬称も敬語も必要ありません」
「いえ、魔法使い様のパートナーの方にそんな失礼なことはできません」
「でも……」
本当はパートナーでもないし、それどころかただの居候の平民だし、そんな丁寧に扱われる理由なんてない。
一応パートナーとして参加している事になっているから、そんなこと口には出せないけど。
「君は真面目だね。私は君が彼女を傷つけさえしなければ、ふたりの関係に口は出さないよ」
「ルイ様もこう言ってますし、ダメですか?」
「……ルイ様?」
あぁ!ついうっかり!そういえばさっきも流れで言ってしまっていた。
もっと気をつけるべきなのに。
「気にしないで、サラ。君がそう呼んだらダメなんてことはない。
ルイは私の名だよ。彼女にはそう呼んでもらっている」
「……あぁ、そうなのですね。
ではサラもリーシアと」
「はいっ」
「サラ。私は少し彼と話すことがあるから、私から離れすぎないように彼女とおしゃべりでもしていて」
「わかりました」
そう言って私から少し離れ、王様と何やら話を始める。
できるだけを腕を~なんて言っていたのに、気を使ってくれたのかな。
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