32 / 38
30
しおりを挟む
何を話せばいいんだろうか……。
こんな場面に出くわすことが無いため、何を話したらいいか全く分からない。
「サラは」
「はいっ」
「どうやって魔法使い様とお知り合いに?」
あの村と森のことは、この国の人は知っているのだろうか。
一応言わないでおくに越したことはないかな。
「家を追い出された私を、あの方が家に招いて下さったんです」
嘘ではない。
「そうだったのね……。
ごめんなさい、唐突に。こんなことを聞くのは失礼だったかもしれないわね」
「いえいえ!ルイ様はすごく優しくしてくれますし、今では追い出してくれてよかったとさえ思っています」
「サラはすごいわね。私なら家から追い出されてしまったら、そんなふうには考えられないと思うわ」
「私も、出会ったのがルイ様だったから、こうやって言えるんだと思います」
もしルイ様のお母様がご存命だったら、そもそも私は今存在すらできていないだろうし、ルイ様があの家の主じゃなければ、どうなっていたかわからない。
「この国のことも気にかけてくれているようだし、とても優しいお方なのでしょうね」
「はい!」
「サラはやはりあの方の優しいところに魅力を感じたのかしら」
「そうですね。あとあの綺麗なお顔と、ゆったりとした話し方に、ふんわりとした雰囲気なんかも素敵だと思います」
「ふふ、きっとそれはサラにだけね」
「……どういう意味ですか?」
「あなたが可愛いという意味よ」
「えっ、どこでそんな話に?」
「私はサラをひと目見た時から、可愛い方だなと思っていたの」
「それは私もです!
とてもお美しい方だなと思っていました。思わず見惚れてしまうほどに」
「それは嬉しいわね、ありがとう」
最初の微妙な雰囲気はどこへやら、リーシアが話し上手なのもあって、思ったより仲良くなれた気がする。
ふたりで話しているところに、ひとりの人が近づいてきた。
「リーシア。ここに居たのか」
「あら、お兄様。いらしたのね」
「あぁ。思ったより早く仕事が片付いたからな。
ところでこちらの方は?」
「魔法使い様のパートナーの方よ」
「それはそれは。
リーシアの兄、オスカーと申します」
「オスカー様。サラと申します」
「……サラ様」
「ダメよ、お兄様。いくら可愛くても、サラにはもう素敵なお相手がいるんだから」
「私は何も言ってないだろう?」
「目が物語っていたわ」
「綺麗な方だなと思っただけだ。魔法使い様のパートナーの方だと分かっていながら、それ以上があるわけないだろう?」
「まあそれもそうね」
「サラ」
「ルイ様。お話は終わったんですか?」
「うん。
ところでそちらの方は?」
「リーシアのお兄様です」
「オスカーと申します」
「君は父親に似てるな」
「よく言われます」
「……サラに惚れるのは勝手だが、サラを傷つけることは許さないからな」
「もう、ルイ様までそんなことを……。
私を好きになるなんてないですよ」
「いや、父親はどうやら綺麗な人が好きなようだから、父親似のこの子が君に惚れてもおかしくはないだろう。
特に今日はこんなにも綺麗なんだから」
「私は綺麗だなんて、全然そんなことないですから」
今日は綺麗、可愛い、って言われて勘違いしそうになる。
「そんなことない、君は綺麗だよ。
今朝も伝えたのにもう忘れたの?」
「だって、本当に私は」
「君は私をよく綺麗だと褒めてくれるけど、私は自分のことを綺麗だなんて思ってない」
「えっ、なんでですか?こんなにも綺麗なのに」
「そういうこと。私も君にそう思ってる。
だから素直に受け止めてくれると嬉しいな」
「……わかりました」
やり方が上手い……。思わず納得しちゃった。
「君にいい人が出来てよかった」
私たちのやり取りをみていた王様が、優しい笑みを浮かべてルイ様に言う。
「今なら君が王妃のことを自慢してきた気持ちがわかるな」
冗談だよね?
魔法使いのパートナーだと思われていたら安全だからと、パートナーのフリをしてそう言ってくれてるだけだよね。
私と違ってルイ様は嘘つくのが上手だな。
そう思うと、もう何が本当で何が嘘か分からなくなってきた……。
以前ルイ様が私との時間が好きって言ってくれたのは本当?
綺麗って言ってくれたのはさすがにお世辞かな?
公の場でルイ様と呼んでいいって言ったのは、うっかり言ってしまった私への気遣い?
実は内心怒ってたりする?
「サラ。聞いてる?」
「はいっ……いえ、考え事をしてて……。何でしょうか?」
「お嬢さんが、サラが望むなら令嬢たちを紹介してくれるって言ってるけど、どうする?
話してみてもいいし、疲れていたら今日は帰ってもいい」
「ぜひお願いしたいです!」
「じゃあ私は少し離れたところで待ってるから、何かあったらすぐ呼んで。
サラをよろしくね、お嬢さん」
「はい。お任せください」
こんな場面に出くわすことが無いため、何を話したらいいか全く分からない。
「サラは」
「はいっ」
「どうやって魔法使い様とお知り合いに?」
あの村と森のことは、この国の人は知っているのだろうか。
一応言わないでおくに越したことはないかな。
「家を追い出された私を、あの方が家に招いて下さったんです」
嘘ではない。
「そうだったのね……。
ごめんなさい、唐突に。こんなことを聞くのは失礼だったかもしれないわね」
「いえいえ!ルイ様はすごく優しくしてくれますし、今では追い出してくれてよかったとさえ思っています」
「サラはすごいわね。私なら家から追い出されてしまったら、そんなふうには考えられないと思うわ」
「私も、出会ったのがルイ様だったから、こうやって言えるんだと思います」
もしルイ様のお母様がご存命だったら、そもそも私は今存在すらできていないだろうし、ルイ様があの家の主じゃなければ、どうなっていたかわからない。
「この国のことも気にかけてくれているようだし、とても優しいお方なのでしょうね」
「はい!」
「サラはやはりあの方の優しいところに魅力を感じたのかしら」
「そうですね。あとあの綺麗なお顔と、ゆったりとした話し方に、ふんわりとした雰囲気なんかも素敵だと思います」
「ふふ、きっとそれはサラにだけね」
「……どういう意味ですか?」
「あなたが可愛いという意味よ」
「えっ、どこでそんな話に?」
「私はサラをひと目見た時から、可愛い方だなと思っていたの」
「それは私もです!
とてもお美しい方だなと思っていました。思わず見惚れてしまうほどに」
「それは嬉しいわね、ありがとう」
最初の微妙な雰囲気はどこへやら、リーシアが話し上手なのもあって、思ったより仲良くなれた気がする。
ふたりで話しているところに、ひとりの人が近づいてきた。
「リーシア。ここに居たのか」
「あら、お兄様。いらしたのね」
「あぁ。思ったより早く仕事が片付いたからな。
ところでこちらの方は?」
「魔法使い様のパートナーの方よ」
「それはそれは。
リーシアの兄、オスカーと申します」
「オスカー様。サラと申します」
「……サラ様」
「ダメよ、お兄様。いくら可愛くても、サラにはもう素敵なお相手がいるんだから」
「私は何も言ってないだろう?」
「目が物語っていたわ」
「綺麗な方だなと思っただけだ。魔法使い様のパートナーの方だと分かっていながら、それ以上があるわけないだろう?」
「まあそれもそうね」
「サラ」
「ルイ様。お話は終わったんですか?」
「うん。
ところでそちらの方は?」
「リーシアのお兄様です」
「オスカーと申します」
「君は父親に似てるな」
「よく言われます」
「……サラに惚れるのは勝手だが、サラを傷つけることは許さないからな」
「もう、ルイ様までそんなことを……。
私を好きになるなんてないですよ」
「いや、父親はどうやら綺麗な人が好きなようだから、父親似のこの子が君に惚れてもおかしくはないだろう。
特に今日はこんなにも綺麗なんだから」
「私は綺麗だなんて、全然そんなことないですから」
今日は綺麗、可愛い、って言われて勘違いしそうになる。
「そんなことない、君は綺麗だよ。
今朝も伝えたのにもう忘れたの?」
「だって、本当に私は」
「君は私をよく綺麗だと褒めてくれるけど、私は自分のことを綺麗だなんて思ってない」
「えっ、なんでですか?こんなにも綺麗なのに」
「そういうこと。私も君にそう思ってる。
だから素直に受け止めてくれると嬉しいな」
「……わかりました」
やり方が上手い……。思わず納得しちゃった。
「君にいい人が出来てよかった」
私たちのやり取りをみていた王様が、優しい笑みを浮かべてルイ様に言う。
「今なら君が王妃のことを自慢してきた気持ちがわかるな」
冗談だよね?
魔法使いのパートナーだと思われていたら安全だからと、パートナーのフリをしてそう言ってくれてるだけだよね。
私と違ってルイ様は嘘つくのが上手だな。
そう思うと、もう何が本当で何が嘘か分からなくなってきた……。
以前ルイ様が私との時間が好きって言ってくれたのは本当?
綺麗って言ってくれたのはさすがにお世辞かな?
公の場でルイ様と呼んでいいって言ったのは、うっかり言ってしまった私への気遣い?
実は内心怒ってたりする?
「サラ。聞いてる?」
「はいっ……いえ、考え事をしてて……。何でしょうか?」
「お嬢さんが、サラが望むなら令嬢たちを紹介してくれるって言ってるけど、どうする?
話してみてもいいし、疲れていたら今日は帰ってもいい」
「ぜひお願いしたいです!」
「じゃあ私は少し離れたところで待ってるから、何かあったらすぐ呼んで。
サラをよろしくね、お嬢さん」
「はい。お任せください」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
4
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる