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2010年作品
さぁ選挙だ、投票に行こう!
しおりを挟む今日はいよいよ参院選の投票日。
何かと問題が多い与党に投票するか?
何かをやってくれるなんて期待薄だけど、野党に入れるか?
それとも、投票になんて行かないで、家でゴロゴロしているか……
な~んて、俺は、もともと選挙になんて、関心はない。
何日か前に選挙の投票案内の郵便が来ていたけど、封も切らずに放り出したままだ。
与党が勝とうが、野党が勝利しようが、それがなんだっていうのだ!
俺には関係ない! クソくらえだ!
だから、俺は今日一日中部屋にこもって、ゴロゴロしてばかりいた。
グゥ~
日も傾き、サザエさんがカツオのいたずらでひどい目にあっているころ、俺の腹が盛大に鳴った。
仕方なく、台所へいって食べられそうなものを探してみたけど、あいにくとカップラーメンもスナック菓子も何もない。
そういえば、昨日、祐介が遊びに来て、夜中までワイワイ騒いでいるときに、全部食べちまったのだっけ……
俺は、舌打ちをひとつして、財布をつかみ、突っ掛けをひっかけながら外へでた。
近所のコンビニなら、なにか腹の虫を鎮めるモノが手に入るだろう。
夕涼みがてら、そぞろあるく俺。
できれば、隣を浴衣姿も涼しげなすらりとした美人が俺に笑いかけながら、歩いているなら、最高なのだが……
コンビニに入り、カップのインスタントラーメンや、おにぎりなんかを手にレジの前へ。
レジが一つしか開いておらず、お客が既に五人ほど並んでおり、中年おやじが一人でレジうちをしている。
グゥ~
顔を思わずしかめてしまう。絶対、今の腹の虫、前の客の耳にも入ったに違いない。
でも、知らん振り知らん振り。
と、閉まっている隣のレジに若い女の店員が現れた。
近所の大学の学生アルバイトだろうか?
その店員、レジから身を乗り出して、
「あっ、お客さん、こちらのレジもどうぞ」
なんとなく、俺に向かって言われたような気がした。
だから、さっそく俺はレジを移動したのだけど、他の四人のお客も一斉にそちらへ移動。全員が野郎ばかりだった。
いまさら、中年おやじのレジに行くのもなんかバカバカしい。
それに、どうせなら、おっさんにレジうちしてもらうより、やっぱり若いお姉ちゃんでしょう?
俺は前の男性客四人が買い物を済ませるのを辛抱強く待った。
その間、もちろん、腹の虫がグゥ~グゥ~鳴り続ける。
俺の隣のレジでは、俺よりもずっと後で店に入ってきた客が、さっさと支払いを済ませ、店の出口へ向かっていった。
やっと俺の番。
カウンターの上に並べた商品を、その若い女性店員が手馴れた様子でどんどんさばいていく。
真っ白な透き通るような綺麗な指がひらひらと舞う。思わず見とれていた。
グゥ~
まただ。
また、顔をしかめ、鼻の頭なんかを掻いた。ふっと見ると、目の前の女性店員が笑いをかみ殺したような表情をしている。そして、目が合って、たちまちバツの悪そうな表情になった。
俺の腹の虫、聞かれてしまったようだ。
でも、その途端、また、グゥ~
ん? またか!? あ、いや、今度は俺じゃない。今のは俺の腹の中で鳴いていなかった……
音の正体をキョロキョロと見回そうとして、気づいた。
目の前で、耳まで赤くなっている女が一人……
俺はニコリと微笑みかけ、こうつぶやいた。彼女にだけ聞こえる声で。
「仲間だね」
ますます真っ赤になり、頬を両手で押さえた様子が、とても可愛かった。
金を払い、商品を受け取って、店を出ようとしたとき、俺の背後で、向こうのレジの中年おやじがだれだかにしゃべりかけているのが聞こえてきた。
「佳織、選挙八時までだから、夕飯ついでに、行っといで」
「え? いいの、お父さん」
「ああ、今、お客さん少ないみたいだし、お父さんは昼にもう済ませてきたからさ」
「じゃ、私いってくるね」
「ああ、いっといで。佳織は今回が初めてだろ? 場所わかるな? 向こうの団地の公民館」
「うん!」
そういえば、俺の投票場所も同じだったはず。
俺は、全速力で走って家へ向かった。
手に提げたビニール袋がガサガサ音を立てていた。
さぁ選挙だ、投票へいこう!
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