俺の恋人はタルパ様

迷空哀路

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7〔姿〕

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それから数日、ジンと俺の仲は急激に進むことになる。
恐る恐る触っていたイケメンドールも、三日経てば尻を舐めていた。イケメンには勝てなかったよ……。

ウィッグがずれているのも気にせず、毛先で体を弄ぶ。もうこれは汚してもいいことにした。洗えばいいじゃない。また買えばいいじゃない。
つるつるサラサラの毛先は最高だ。俺のキャラデザ能力に感謝したい。

イケメンドールに初めてを捧げてから、一気に抵抗がなくなった。最初は二人に弄ばれるイメージだったけど、顔を見なければジンだと思えるようになっていた。首元に抱きつくのが好きで、そこなら顔を見なくていい。
ジンに似せる整形をさせようかと思ったけど、頭の中がふわふわしている時だと、ジンと被る瞬間があった。その感覚を大事にしていこう。
「はい、コーチ!」
ジンが前よりも俺に指示することが増えた。俺の知らないことを教えてくれるので、本当に別人が側に居るみたいだ。
前にネットか何かで流し読みした情報とかを、脳のどこかで覚えていて、それらがジンとなって現れているのかもしれない。

まだでかい方のジンは入らないけど、この人形に満足できなくなったら、こちらに入れ替えようと思ってる。こういうなんでもできるところが最高だ。妄想は無敵だ。職人の技術最強!
まだ、ただのイケメンドールでしかなかった彼に、前の方の初めても捧げさせてもらったが、そのことはジンには内緒である。まぁバレてるだろうけど。


「ジン、おはよう」
「ああ起きたか。おはよう」
「えっ!」
「なんだ騒々しい」
「だだだだって!」
なんで椅子に座ってるんだ。自然に。
「今までは俺の横にふわふわ飛んでるぐらいだったのに」
「俺の存在が濃くなってきたのだろう。俺の素体を動かしているのも、影響しているな」
ドールを動かして家中、色んなところで致している、そのおかげというわけだ。もちろん真面目に(?)座らせたりもしてたけど。
人形の身長は設定より低い。でも目の前のジンは、ちゃんと想定通りになっている。ちなみに壁のジン一号ダンボールは剥がした。

「コーヒー飲むなら、俺の分も用意しろ」
「はいはい。分かりましたよ」
ジンの着ている服は俺の手持ちではない。高そうな白シャツと黒いズボン。手触りが良く、汚れることのない素晴らしい服。この世に存在しないブランドのタグが付いている。自分の想像力に時々震えるよ。
でもまだジンは透けたままだ。コーヒーをちゃんと飲んでいるけど、本物のカップはまだ湯気を立てて机に置いてある。
今目の前には、机の上にある二つのカップと、ジンが持つ透けたカップが見える。
結局これは実際に飲まれることはないので、自分の分と合わせて、二杯飲まなきゃいけない。
ジンは都合のいい存在なので食べなくていいし、体も汚れない。でも俺がそうしてほしいと願った時には一緒に食べるし、風呂も入る。
ちょっと面倒だけど自分の分だけではなく、二人分用意しないと、上手く反映されなかった。用意していない事に拗ねたジンが、そうさせてくれなかったのかもしれないけど。
家の中だけだったのに、いつのまにか外にも出ていた。地に足は着けず浮いている状態で、そこから話しかけてくる。
つい返事をしそうになるけど、頭の中で会話ができるので、声に出さないように気をつけている。

こうして確実にジンに近づき、でろでろあまあま生活をゲットしたのだ。
第一部完。イケメンドールありがとう編。






「ただいま~我が家ぁ~」
帰ってきて、すぐベッドにダイブする。髪の毛をわしゃわしゃしながら、顔中にちゅっちゅする。
待ちきれなくて脱いだ服をぶん投げて、大きな体に抱きついた。もう一秒だって我慢できない。
「っはぁ、早く! 我慢できないよ……っ」
顔を掴んで懇願すると、余裕そうな顔で笑われた。
「お前は恥ずかしい奴だな。獣以下じゃないか」
低い声と、蔑むような視線。それだけで全身が震えてくる。
「っう……はぅ、く……っ」
びたんっびたんと尻を叩かれる。既にハイ状態なので、自ら人形の腕を動かして叩いてるんだという意識は消えている。
「好きなんだろう、こういうのが。変態め」
甘く透き通る、低糖コーヒーみたいな声で次々罵られる。もうあへあへ状態だ。
「はいい……しゅみましぇん」
人形を担ぎ上げて、体の上に乗せる。両腕を顔の横に置いて、逃げられないってシチュエーション風。こちらが支えないと倒れるので、そっと腰に手を添えた。
上から見下ろされるのを堪能した後、起こして体勢を変える。
本当は上からも後ろからもガツガツ攻めてほしいんだけど、それだけはどうしようもない。

人形が相手だと、やはり自分が上に乗るのが一番安定する。今度動く玩具も買ってみようかな。
「あー、かっこいぃ……っ、かっこい……っ」
とろけている間は無意識にジンを褒めていると、終わった後本人から教えられる。言っている自覚が無くなっているらしい。
「……す、きぃ……だ、め……っ」
達してからも、ずっとびくびくと痙攣していた。中のものをぎゅっと強く締めてしまい、それがまた刺激になる。
「あ、ま……っ、ら、も……む、り……っや、ぁ」
「何を言っているのか分からない」
「また、きちゃ……も、死んじゃっ……っ!」
どこに飛んだか分からない。最近激しくしているから、気づいたらあちこちが濡れていた。
前はお漏らしもしたし、その手の女優もびっくりな淫乱ぶりだ。もしかして俺は才能があるのだろうか。一人(だけど二人)でここまでのステージに来れるなんて。

「はぁぁ……」
脱力してぱたりと倒れこむ。腕枕してもらいながら、顔を見上げる。今まで見てきたどんなものよりも美しい。カッコいい。好き。
「えへへへへ……ジン」
「どうした」
「ずっと一緒に……いようねぇ」
美しく微笑んだ。儚さと愛しさと切なさと何かが詰まった、さりげなくもキラキラな笑顔。
指を絡めて、しばらく見つめ合っていた。
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