俺の恋人はタルパ様

迷空哀路

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20〔愛したい〕

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「……らしくないなんて、分かってんだよ。だって俺、こういうのは相手にやってもらいたかったんだから。後ろから突然抱き締めてくるのは、攻めキャラの方っていうか。……なんでこうなってんだよ、似合わないだろ」
ジンだったらなんて言うかな。ジン……つまり俺は、どうしたいのか。
「ああ、そうか……」
愛されたかったから、俺はずっと受け手だったのか。寂しかったから、慰めて優しくしてほしかったから、それを享受するだけだった。そう思うとなんて……理想に忠実な妄想なんだろう。
俺はジンに好かれようとしていたけど、本当は分かっていた。彼が俺以外を好きになることはない。それ以前に、他の誰かを認識することすらない。だってジンの本当の主は俺なんだから。 

「そうかって何が? 一人で納得しないでくださいよ」
「……嫌だ。恥ずかしい」
守ってやりたくなったとか、愛してみたくなったとか……まだ分からない。でも似たような部分があるのは分かる。だから慰め合える仲にはなれるはずだ。
「恥ずかしいって、この状況で言うなんて……そういう意味って捉えますよ」
「そんな簡単に好きにならない」
「そうですか?」
「……そうだ」
「あれ、また言い淀んだ」
腕を緩めると、そこを掴んできた。引っ張られて、楽しげな目と合う。それを見ている間に、頭に手が回ってきた。
さっきは気にする余裕もなかったけど、こんな軽い触れ合いなのに暖かい。微かに震える、他の肉とは何もかも違う不思議な部位。どうして人体はこんなに柔らかで、繊細なものを造ったのだろうか。
「……不思議ですね。さっきから高められては中断されているのに、全然不快な気分にならない。なぜか、ずっと暖かいままなんですよ。どうしてだろう」
心の方を言ったんだろうけど、頬が赤く染まっていた。そこに触れると、実際に熱を感じる。

もう平気だ。俺も恐怖心なんて消えた。
手を引いて、ベッドまで誘導する。さっきの一件から、自分の中の攻めスイッチが入ったような気がする。まぁ理想とはいえジンを作ったのは自分であって、やろうと思えば、そういう振る舞いをすることも不可能ではないはずなんだ。だって常に彼を思い描いていたのだから。
「ちょっと待ってろ。先に自分で」
液体を指に絡ませて、膝をベッドに立てた状態で後ろに触れた。大丈夫、指一本なんて朝飯前だ。
二本入れたところで視線を戻すと、想像していたよりも近くで凝視されていた。
「ち、近いだろお前っ」
「だって貴方の表情が色っぽかったから」
「……っ何言ってんだよ。ほら、今度はお前も弄って」
枕を引き寄せて、ベッドに寝転ぶ。自分から足を開いて、後ろを広げた。
「……っ」
「ほらこれで濡らして。まず人差し指入れて。二本は全然平気だから気にしないで」
本当に立場が逆転したみたいだ。無理やり触ろうとしていたくせに、恐る恐る震えながら添えてきた。確かめるように周りの肉に触れた後、控えめに指先が入ってきた。
それだけなのに、粘着質のある音がぐちゅりと響く。
「奥まで入れて……そう。そしたら広げるように、横に。ん、回して」
時折いい場所を掠めてくる。それを我慢して、更に広げる為に足をもっと開いた。
「……っん、そう。そうやって二本で、もっと広げていいよ。あ、ゆっくり……っはぁ」
中が引っ張られているのが分かる。これだけ近いなら、自分で見たことのない奥まで見えているはずだ。開いた先の景色を想像して、高まってしまった。こういう辱めを受けるような、格好やシチュエーションには弱いんだから仕方ない。
「凄い……ぐにゅぐにゅ動いて、時々ぎゅって締めてくる。こうして中に入ると、反応が分かりやすいですね。あー……凄く熱くなってる」
「あっ、だめ……まだいきたくないんだって、ばっ……早くすんな、そこは触んなくていい、からっ」
「うん、分かる……だってここぐりぐりすると、腰が動いてるもん。ここが弱いんだなぁって」
「わかって、んなら、すんなっ」
快感から耐えようと、枕をぎゅっと掴む。勝手にびくびく震える体は自分では止められない。
「も、もう三本入ったなら、じゅうぶんだ……っ、ほら一回抜け」
起き上がって、相手のものを掴む。萎えてはいないけど、まだ準備段階だ。 

「今度はこっち、任せろ」
恐らく男は弱いであろう技を、ここぞとばかりに使う。俺がどれだけイメージトレーニングで鍛えてきたと思っているんだ。こいつが特別弱い可能性もあるけど、想像よりも簡単に硬くなってきた。
「ふぉふぉも、いいらろ? あんま、ふだん、なめられらい、とこっ……あ、ほらここも好きだろ。な? 手と一緒にやると、やばい」
「……っく、はぁ、なんでわかるんですか。っあ、やば……本当に、うまい」
こいつの弱っている顔はなかなかいいかもしれない。
「……は、もういいか。本当はこのまま口に受けたかったんだけど、お前が何回出せるか分かんないしな。とりあえず一発目は中で受けさせてもらうぞ。初めてのなまものだからなぁ! もう我慢できねぇっ」
ベッドに座らせて、萎える前に手早くゴムを被せた。上に跨って、指で場所を確かめる。
入り口に充てがうと、みちりと音が鳴った。自分の体重と滑る液体のせいで、勝手に中へ入ろうとしてくる。
「あ、待って……っん、まだ違う! 確かめてる、だけ、なのにっ、入ってきちゃ……っ」
息を吐いて刺激を逃す。でもそれだけで逃れられる訳がなく、どうにかしようとしている間に、どんどん奥へ進んでくる。
「あっ、あーっ……だめ、だっ……! んんっ、こんなに、も、う入って……っう、うぅ」
相手の首にしがみついて、ぎゅっと抱きつく。今更あっちの手が、背中と腰の辺りに触れていたことを知った。
みちみちとこじ開けられていくのを感じる前に、ぐぐぐと押し込まれる。もっと奥へと向かう本能が、細胞を辿って脳まで伝わってきた。溶かされそうな刺激にくらくらする。
「……っはぁ、あー……はいっ、た?」
隙間もないほど、中も体もぴったりくっついていた。どこもかしこも熱い。風呂なんかよりも、よっぽどのぼせそうだ。
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