聖女である私を追放した王国は魔物に蹂躙されましたが、私は流刑地でイケメン暗黒騎士様に溺愛される日々を送っています。

ZERO ー叛逆のカリスマー

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第1章『厄災の前兆』

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 ビアンカとボブが乗る馬車はダメルアンを抜けてさらに西へ――――。
 肥沃な土壌と豊かな水資源で活気溢れるダメルアンとはうって変わって、荒廃した土地を馬車は闊歩する。バロンの神殿からの祈りがここまで充分に届いていないことに起因するのだが、ここニシナーリにも集落が存在し、不届き者や浮浪者が流れ着いて生活してるといわれる。

”こんな場所で私は生きていけるのだろうか―――?”

 神殿からほとんど出た事が無く聖女として生きて来たビアンカは不安で押しつぶされそうになった。

「聖女様、ご安心くだせえ!このボブはバロンから聖女様にお許しが出るまでずっとついていやす!」

「えっ…。」

「教主様のご命令なんですわ!きっと教主様が聖女様の潔白を証明してくださるはずですからそれまで頑張りましょう!」

「そうだったんですね…。なんとお礼を言っていいか…。」

「いえいえお礼だなんて!今までバロンを護って来たのは聖女様の方ですから!お返しには到底なりえませんがこの元王族直属の騎士であるボブが精一杯聖女様をお守り致しやす!」

 こういう人もいるのだ———――。魔窟への祈りの効果は可視化できないから実感もできない。それでもなお祈りによって魔窟の活性化が抑えられていると信じてくれている人が――――。自分がやってきた事が無駄ではなかったと知りビアンカは少し泣きそうになった。

    ×    ×

「この森を抜けると集落っすね!もうすぐですぜ!」

 もう何年も馬車など通っていないのだろう、草木が覆いかぶさり道と呼べるかどうか疑わしいほどの道が森の中にあった。ボブは怖じることなく馬車を進める。鬱蒼と茂った木々はカサカサと音を立て魔物のせせら笑いのようにも聞こえる。―――事実、ニシナーリへの祈りは充分に届いていない。つまり、ここに魔物が居たとしたらある程度活性化が進んだ状態を覚悟しなければならないという事になる。

「早速おいでなすったか」

 ビアンカが馬車の荷台から覗くとゴブリンの群れが居た。しかも1、2、3…数十匹の群れだ。バロン近辺のゴブリン同士はすぐに仲間割れを起こすから徒党を組む事はないというのに。

「聖女様!向うの道が手薄だ!ちょっと飛ばしますんでしっかり捕まっていてくだせえ!」

「分かりました!」

 強行突破―――。ボブは激しく鞭を振るい馬車は猛スピードで走りだした。徒党を組んだといえどそこは比較的小さい魔物であるゴブリン。馬2頭と巨漢のボブ、荷台の超重量を止める術はない。しかし一匹のゴブリンが木からターザンのようにつるを使い荷台の幌に着地した。その瞬間―――、

「おあがりよ!」

 巨大なバトルアックスがゴブリンを一撃のもとに叩き割った――――。

「聖女様はしっかり捕まる事に専念してくだせえ!」

 ボブさんは後ろに目がついているのか…。馬車を操りながら近づくゴブリンを蚊を潰すがごとく叩き割っていく。これが元王族直属騎士の力――――!どうか―――、このまま無事に森を抜けて!
 そのような効果をもたらす祈りなどないがビアンカは目を閉じ必死で祈った。





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