8 / 8
第1章『厄災の前兆』
③
しおりを挟む
雲一つ無い抜けるような青空の下、ゴブリンと遭遇した森とはうってかわって乾いた大地に、屋根が朽ち果てた石造りの家がぽつぽつと建つ道を馬車は闊歩していた。漆黒の騎士は相変わらず不愛想に荷台のビアンカの方を振り向く事なく前方を向いたままで言った。
「もうすぐニシナーリの集落だ。」
「あっそうなんですね。もうエドさんには本当何とお礼を言っていいのか…。」
「俺は集落についてもお前の側にいるぞ。ニシナーリは危険だからな。」
「えっ…エドさんお忙しいのでは?私的にはありがたい…というか嬉しいというか…。」
「勘違いするなよ。お前が聖女だからだ。」
「そっ…そうですよね。アハハ。私が早く人々の為にバロンの神殿から祈りを捧げないとですよねっ!」
そんなにハッキリ”聖女だから”と言わないでも…。ビアンカはぷーっと膨れっ面をした。
「あっそう言えばエドさんはここにお住まいなんですか?」
「いや、俺は諸国を放浪している身だ。まあここには知り合いが居るのだが。……着いたぞ。」
”着いた?ここが集落?歩いてきた風景と大差ないような荒れ地に石造りの家がぽつぽつとあるだけ。そして何より人気が全く感じられない…。”エドワードが颯爽と御者席から降りて歩き出したのでビアンカも半信半疑でとりあえず着いていく。すると何を思ったかエドワードはすらりと白刃を抜いた。
「おいテリー居るんだろ!俺だ!エドワードだ!」
しかし辺りは静寂を保ったままだった。石造りの家をすきま風が吹きすさぶ音だけが聞こえる……。ビアンカがそう思った矢先だった。どこからともなく風切り音が聞こえ、次の瞬間にはカキィイイイン!と矢を弾くエドワードの姿があった。そして金のアクセサリーと露出度の高い服を身にまとった男が矢の飛んで来た逆の方向からダガーを握りエドワードに突進してくる。返す刀でエドワードは追撃の体制を取り、またカキィイイイン!とその男と鍔迫り合いになった。
「ずいぶん手荒い歓迎だなテリー。俺が誰だか忘れたのか?」
「忘れたっつーか分かるわけねーだろそんな兜かぶって来られたらな!」
”あっ…。”
うっかり失念していた、みたいな空気をエドワードから感じたのは気のせいだろうか?ビアンカがそう思った瞬間―――。
「ヒャッハー!こいつは良い女だぜぇえええ!」
男二人が卑猥な笑みを浮かべながらビアンカに突進してくる。エドワードは再び反転、ビアンカと男二人の間に立ち、剣の柄を使い電光石火のごとく男二人の顔面を殴打した。
「俺の女に触るな。」
男二人は苦闘の叫びをあげながらのたうちまわる。
「オーケーオーケー。皆!こいつは間違いなくエドワードだ!警戒を解いて良い!」
テリーと呼ばれる男がそう言うと、無人と思われた石造りの家の影からぞろぞろと人が出て来た。
「エドワードさん!」
「エドワード!元気にしてたか!」
殺伐とした空気は一転してエドワードを歓迎する和やかな雰囲気になり、エドワードとビアンカの回りには人だかりが出来ていた。
「3年ぶりか。全然顔見せに来なかったじゃねーかエド。どこをほっつき歩いてたんだ?」
「まあトルキアからジパング辺りをちょっとな。」
「最果てじゃねーか!積もる話もあるだろう。今日はゆっくりしてけよ!お嬢ちゃん悪かったなぁここは魔物も普通に出るし人間も荒くれものばかりが集まって来るもんでな!」
ビアンカはこくっと頷いた。そしてテリーは二人を空き家に案内した。エドワードの後ろをついていくビアンカは、ふと速度を早め、エドワードの隣に来て耳打ちをした。
「さっき、『俺の女に触るな』って。」
満面の笑みでエドワードを見つめるビアンカに対し、エドワードは答えた。
「ああいう手合いにはああ言った方が後々面倒な事にならないというかだな……経験則というか…まああまり気にするな。」
僅かに声が上擦っているのを感じたビアンカはさらに上機嫌になるのであった。
「もうすぐニシナーリの集落だ。」
「あっそうなんですね。もうエドさんには本当何とお礼を言っていいのか…。」
「俺は集落についてもお前の側にいるぞ。ニシナーリは危険だからな。」
「えっ…エドさんお忙しいのでは?私的にはありがたい…というか嬉しいというか…。」
「勘違いするなよ。お前が聖女だからだ。」
「そっ…そうですよね。アハハ。私が早く人々の為にバロンの神殿から祈りを捧げないとですよねっ!」
そんなにハッキリ”聖女だから”と言わないでも…。ビアンカはぷーっと膨れっ面をした。
「あっそう言えばエドさんはここにお住まいなんですか?」
「いや、俺は諸国を放浪している身だ。まあここには知り合いが居るのだが。……着いたぞ。」
”着いた?ここが集落?歩いてきた風景と大差ないような荒れ地に石造りの家がぽつぽつとあるだけ。そして何より人気が全く感じられない…。”エドワードが颯爽と御者席から降りて歩き出したのでビアンカも半信半疑でとりあえず着いていく。すると何を思ったかエドワードはすらりと白刃を抜いた。
「おいテリー居るんだろ!俺だ!エドワードだ!」
しかし辺りは静寂を保ったままだった。石造りの家をすきま風が吹きすさぶ音だけが聞こえる……。ビアンカがそう思った矢先だった。どこからともなく風切り音が聞こえ、次の瞬間にはカキィイイイン!と矢を弾くエドワードの姿があった。そして金のアクセサリーと露出度の高い服を身にまとった男が矢の飛んで来た逆の方向からダガーを握りエドワードに突進してくる。返す刀でエドワードは追撃の体制を取り、またカキィイイイン!とその男と鍔迫り合いになった。
「ずいぶん手荒い歓迎だなテリー。俺が誰だか忘れたのか?」
「忘れたっつーか分かるわけねーだろそんな兜かぶって来られたらな!」
”あっ…。”
うっかり失念していた、みたいな空気をエドワードから感じたのは気のせいだろうか?ビアンカがそう思った瞬間―――。
「ヒャッハー!こいつは良い女だぜぇえええ!」
男二人が卑猥な笑みを浮かべながらビアンカに突進してくる。エドワードは再び反転、ビアンカと男二人の間に立ち、剣の柄を使い電光石火のごとく男二人の顔面を殴打した。
「俺の女に触るな。」
男二人は苦闘の叫びをあげながらのたうちまわる。
「オーケーオーケー。皆!こいつは間違いなくエドワードだ!警戒を解いて良い!」
テリーと呼ばれる男がそう言うと、無人と思われた石造りの家の影からぞろぞろと人が出て来た。
「エドワードさん!」
「エドワード!元気にしてたか!」
殺伐とした空気は一転してエドワードを歓迎する和やかな雰囲気になり、エドワードとビアンカの回りには人だかりが出来ていた。
「3年ぶりか。全然顔見せに来なかったじゃねーかエド。どこをほっつき歩いてたんだ?」
「まあトルキアからジパング辺りをちょっとな。」
「最果てじゃねーか!積もる話もあるだろう。今日はゆっくりしてけよ!お嬢ちゃん悪かったなぁここは魔物も普通に出るし人間も荒くれものばかりが集まって来るもんでな!」
ビアンカはこくっと頷いた。そしてテリーは二人を空き家に案内した。エドワードの後ろをついていくビアンカは、ふと速度を早め、エドワードの隣に来て耳打ちをした。
「さっき、『俺の女に触るな』って。」
満面の笑みでエドワードを見つめるビアンカに対し、エドワードは答えた。
「ああいう手合いにはああ言った方が後々面倒な事にならないというかだな……経験則というか…まああまり気にするな。」
僅かに声が上擦っているのを感じたビアンカはさらに上機嫌になるのであった。
0
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
【完結】濡れ衣聖女はもう戻らない 〜ホワイトな宮廷ギルドで努力の成果が実りました
冬月光輝
恋愛
代々魔術師の名家であるローエルシュタイン侯爵家は二人の聖女を輩出した。
一人は幼き頃より神童と呼ばれた天才で、史上最年少で聖女の称号を得たエキドナ。
もう一人はエキドナの姉で、妹に遅れをとること五年目にしてようやく聖女になれた努力家、ルシリア。
ルシリアは魔力の量も生まれつき、妹のエキドナの十分の一以下でローエルシュタインの落ちこぼれだと蔑まれていた。
しかし彼女は努力を惜しまず、魔力不足を補う方法をいくつも生み出し、教会から聖女だと認められるに至ったのである。
エキドナは目立ちたがりで、国に一人しかいなかった聖女に姉がなることを良しとしなかった。
そこで、自らの家宝の杖を壊し、その罪を姉になすりつけ、彼女を実家から追放させた。
「無駄な努力」だと勝ち誇った顔のエキドナに嘲り笑われたルシリアは失意のまま隣国へと足を運ぶ。
エキドナは知らなかった。魔物が増えた昨今、彼女の働きだけでは不足だと教会にみなされて、姉が聖女になったことを。
ルシリアは隣国で偶然再会した王太子、アークハルトにその力を認められ、宮廷ギルド入りを勧められ、宮仕えとしての第二の人生を送ることとなる。
※旧タイトル『妹が神童だと呼ばれていた聖女、「無駄な努力」だと言われ追放される〜「努力は才能を凌駕する」と隣国の宮廷ギルドで証明したので、もう戻りません』
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
「お前みたいな卑しい闇属性の魔女など側室でもごめんだ」と言われましたが、私も殿下に嫁ぐ気はありません!
野生のイエネコ
恋愛
闇の精霊の加護を受けている私は、闇属性を差別する国で迫害されていた。いつか私を受け入れてくれる人を探そうと夢に見ていたデビュタントの舞踏会で、闇属性を差別する王太子に罵倒されて心が折れてしまう。
私が国を出奔すると、闇精霊の森という場所に住まう、不思議な男性と出会った。なぜかその男性が私の事情を聞くと、国に与えられた闇精霊の加護が消滅して、国は大混乱に。
そんな中、闇精霊の森での生活は穏やかに進んでいく。
現聖女ですが、王太子妃様が聖女になりたいというので、故郷に戻って結婚しようと思います。
和泉鷹央
恋愛
聖女は十年しか生きられない。
この悲しい運命を変えるため、ライラは聖女になるときに精霊王と二つの契約をした。
それは期間満了後に始まる約束だったけど――
一つ……一度、死んだあと蘇生し、王太子の側室として本来の寿命で死ぬまで尽くすこと。
二つ……王太子が国王となったとき、国民が苦しむ政治をしないように側で支えること。
ライラはこの契約を承諾する。
十年後。
あと半月でライラの寿命が尽きるという頃、王太子妃ハンナが聖女になりたいと言い出した。
そして、王太子は聖女が農民出身で王族に相応しくないから、婚約破棄をすると言う。
こんな王族の為に、死ぬのは嫌だな……王太子妃様にあとを任せて、村に戻り幼馴染の彼と結婚しよう。
そう思い、ライラは聖女をやめることにした。
他の投稿サイトでも掲載しています。
今更困りますわね、廃妃の私に戻ってきて欲しいだなんて
nanahi
恋愛
陰謀により廃妃となったカーラ。最愛の王と会えないまま、ランダム転送により異世界【日本国】へ流罪となる。ところがある日、元の世界から迎えの使者がやって来た。盾の神獣の加護を受けるカーラがいなくなったことで、王国の守りの力が弱まり、凶悪モンスターが大繁殖。王国を救うため、カーラに戻ってきてほしいと言うのだ。カーラは日本の便利グッズを手にチート能力でモンスターと戦うのだが…
逆行令嬢は聖女を辞退します
仲室日月奈
恋愛
――ああ、神様。もしも生まれ変わるなら、人並みの幸せを。
死ぬ間際に転生後の望みを心の中でつぶやき、倒れた後。目を開けると、三年前の自室にいました。しかも、今日は神殿から一行がやってきて「聖女としてお出迎え」する日ですって?
聖女なんてお断りです!
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
186 ZERO―叛逆のカリスマ― ◆BjBMvfKUPw[sage] 2020/06/05(金) 19:39:29.14 ID:ToS/ZSNa
朕の目的は人間を借金苦で自殺させる事と何度も言っておろうが…
つまり手段は選ばない
アドセンスがあればとっくに漫画動画や艦これ実況をやっている
その次に儲かるチョロイ商売を見つけたからそれをやるだけなの…
259 ZERO―叛逆のカリスマ― ◆BjBMvfKUPw[sage] 2020/06/07(日) 22:46:37.46 ID:k5J6aGl+
今流行ってるのは聖女らしいぞww
よく知らんけどどうせクソみたいな流行りに決まってるから風呂入ってからランキングにあるの見てみるはw2秒で理解できるはww
283 ZERO―叛逆のカリスマ― ◆BjBMvfKUPw[sage] 2020/06/08(月) 03:53:18.95 ID:ZC67hGHg
えっと要するに聖女に悪い事した奴が痛い目見ればええの?ww
ちょっと前にTVで流行ってた感じの?
643[sage] 2020/06/18(木) 19:23:13.23 ID:Pc1edVee
青葉がやった人数の数倍の自殺が見たいな僕チン