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第1章『厄災の前兆』
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雲一つ無い抜けるような青空の下、ゴブリンと遭遇した森とはうってかわって乾いた大地に、屋根が朽ち果てた石造りの家がぽつぽつと建つ道を馬車は闊歩していた。漆黒の騎士は相変わらず不愛想に荷台のビアンカの方を振り向く事なく前方を向いたままで言った。
「もうすぐニシナーリの集落だ。」
「あっそうなんですね。もうエドさんには本当何とお礼を言っていいのか…。」
「俺は集落についてもお前の側にいるぞ。ニシナーリは危険だからな。」
「えっ…エドさんお忙しいのでは?私的にはありがたい…というか嬉しいというか…。」
「勘違いするなよ。お前が聖女だからだ。」
「そっ…そうですよね。アハハ。私が早く人々の為にバロンの神殿から祈りを捧げないとですよねっ!」
そんなにハッキリ”聖女だから”と言わないでも…。ビアンカはぷーっと膨れっ面をした。
「あっそう言えばエドさんはここにお住まいなんですか?」
「いや、俺は諸国を放浪している身だ。まあここには知り合いが居るのだが。……着いたぞ。」
”着いた?ここが集落?歩いてきた風景と大差ないような荒れ地に石造りの家がぽつぽつとあるだけ。そして何より人気が全く感じられない…。”エドワードが颯爽と御者席から降りて歩き出したのでビアンカも半信半疑でとりあえず着いていく。すると何を思ったかエドワードはすらりと白刃を抜いた。
「おいテリー居るんだろ!俺だ!エドワードだ!」
しかし辺りは静寂を保ったままだった。石造りの家をすきま風が吹きすさぶ音だけが聞こえる……。ビアンカがそう思った矢先だった。どこからともなく風切り音が聞こえ、次の瞬間にはカキィイイイン!と矢を弾くエドワードの姿があった。そして金のアクセサリーと露出度の高い服を身にまとった男が矢の飛んで来た逆の方向からダガーを握りエドワードに突進してくる。返す刀でエドワードは追撃の体制を取り、またカキィイイイン!とその男と鍔迫り合いになった。
「ずいぶん手荒い歓迎だなテリー。俺が誰だか忘れたのか?」
「忘れたっつーか分かるわけねーだろそんな兜かぶって来られたらな!」
”あっ…。”
うっかり失念していた、みたいな空気をエドワードから感じたのは気のせいだろうか?ビアンカがそう思った瞬間―――。
「ヒャッハー!こいつは良い女だぜぇえええ!」
男二人が卑猥な笑みを浮かべながらビアンカに突進してくる。エドワードは再び反転、ビアンカと男二人の間に立ち、剣の柄を使い電光石火のごとく男二人の顔面を殴打した。
「俺の女に触るな。」
男二人は苦闘の叫びをあげながらのたうちまわる。
「オーケーオーケー。皆!こいつは間違いなくエドワードだ!警戒を解いて良い!」
テリーと呼ばれる男がそう言うと、無人と思われた石造りの家の影からぞろぞろと人が出て来た。
「エドワードさん!」
「エドワード!元気にしてたか!」
殺伐とした空気は一転してエドワードを歓迎する和やかな雰囲気になり、エドワードとビアンカの回りには人だかりが出来ていた。
「3年ぶりか。全然顔見せに来なかったじゃねーかエド。どこをほっつき歩いてたんだ?」
「まあトルキアからジパング辺りをちょっとな。」
「最果てじゃねーか!積もる話もあるだろう。今日はゆっくりしてけよ!お嬢ちゃん悪かったなぁここは魔物も普通に出るし人間も荒くれものばかりが集まって来るもんでな!」
ビアンカはこくっと頷いた。そしてテリーは二人を空き家に案内した。エドワードの後ろをついていくビアンカは、ふと速度を早め、エドワードの隣に来て耳打ちをした。
「さっき、『俺の女に触るな』って。」
満面の笑みでエドワードを見つめるビアンカに対し、エドワードは答えた。
「ああいう手合いにはああ言った方が後々面倒な事にならないというかだな……経験則というか…まああまり気にするな。」
僅かに声が上擦っているのを感じたビアンカはさらに上機嫌になるのであった。
「もうすぐニシナーリの集落だ。」
「あっそうなんですね。もうエドさんには本当何とお礼を言っていいのか…。」
「俺は集落についてもお前の側にいるぞ。ニシナーリは危険だからな。」
「えっ…エドさんお忙しいのでは?私的にはありがたい…というか嬉しいというか…。」
「勘違いするなよ。お前が聖女だからだ。」
「そっ…そうですよね。アハハ。私が早く人々の為にバロンの神殿から祈りを捧げないとですよねっ!」
そんなにハッキリ”聖女だから”と言わないでも…。ビアンカはぷーっと膨れっ面をした。
「あっそう言えばエドさんはここにお住まいなんですか?」
「いや、俺は諸国を放浪している身だ。まあここには知り合いが居るのだが。……着いたぞ。」
”着いた?ここが集落?歩いてきた風景と大差ないような荒れ地に石造りの家がぽつぽつとあるだけ。そして何より人気が全く感じられない…。”エドワードが颯爽と御者席から降りて歩き出したのでビアンカも半信半疑でとりあえず着いていく。すると何を思ったかエドワードはすらりと白刃を抜いた。
「おいテリー居るんだろ!俺だ!エドワードだ!」
しかし辺りは静寂を保ったままだった。石造りの家をすきま風が吹きすさぶ音だけが聞こえる……。ビアンカがそう思った矢先だった。どこからともなく風切り音が聞こえ、次の瞬間にはカキィイイイン!と矢を弾くエドワードの姿があった。そして金のアクセサリーと露出度の高い服を身にまとった男が矢の飛んで来た逆の方向からダガーを握りエドワードに突進してくる。返す刀でエドワードは追撃の体制を取り、またカキィイイイン!とその男と鍔迫り合いになった。
「ずいぶん手荒い歓迎だなテリー。俺が誰だか忘れたのか?」
「忘れたっつーか分かるわけねーだろそんな兜かぶって来られたらな!」
”あっ…。”
うっかり失念していた、みたいな空気をエドワードから感じたのは気のせいだろうか?ビアンカがそう思った瞬間―――。
「ヒャッハー!こいつは良い女だぜぇえええ!」
男二人が卑猥な笑みを浮かべながらビアンカに突進してくる。エドワードは再び反転、ビアンカと男二人の間に立ち、剣の柄を使い電光石火のごとく男二人の顔面を殴打した。
「俺の女に触るな。」
男二人は苦闘の叫びをあげながらのたうちまわる。
「オーケーオーケー。皆!こいつは間違いなくエドワードだ!警戒を解いて良い!」
テリーと呼ばれる男がそう言うと、無人と思われた石造りの家の影からぞろぞろと人が出て来た。
「エドワードさん!」
「エドワード!元気にしてたか!」
殺伐とした空気は一転してエドワードを歓迎する和やかな雰囲気になり、エドワードとビアンカの回りには人だかりが出来ていた。
「3年ぶりか。全然顔見せに来なかったじゃねーかエド。どこをほっつき歩いてたんだ?」
「まあトルキアからジパング辺りをちょっとな。」
「最果てじゃねーか!積もる話もあるだろう。今日はゆっくりしてけよ!お嬢ちゃん悪かったなぁここは魔物も普通に出るし人間も荒くれものばかりが集まって来るもんでな!」
ビアンカはこくっと頷いた。そしてテリーは二人を空き家に案内した。エドワードの後ろをついていくビアンカは、ふと速度を早め、エドワードの隣に来て耳打ちをした。
「さっき、『俺の女に触るな』って。」
満面の笑みでエドワードを見つめるビアンカに対し、エドワードは答えた。
「ああいう手合いにはああ言った方が後々面倒な事にならないというかだな……経験則というか…まああまり気にするな。」
僅かに声が上擦っているのを感じたビアンカはさらに上機嫌になるのであった。
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