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3話 鍛冶師と錬金術師とミスリル
05.ミスリル採掘
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貰っていた鍵で採掘場の柵を開け、中へ入る。空気が明らかに変わるのを肌で感じた。澄みすぎていて、逆に呼吸が出来なくなるような、ある種の閉塞感。神聖な気配と静謐が満ちる。
「これは……人間が吸っても平気な空気なのか? 有害物質を吸っているような気がするのだが」
「人体に害は無いって、学者の連中はそう言ってるよ。まあ、具合とか悪くなったら、一度出た方が良いかもしれないけど」
あっけらかんと答えたシノが周囲を見回す。
一体、この柵の内側と外側で何が違うと言うのだろうか。よくよく見てみると、人が上り下りし易いように削られた岩肌にキラキラと輝くミスリルが鎮座しているのが見える。
ただし、先にも述べた通り、ミスリルは硬い鉱物で破壊する事が出来ない。ならば、それが生成されている岩肌を削って岩肌ごと採掘しなければならないのだ。そのせいか、岩肌はボコボコと歪に凹んでいた。
更に、外から持ち出されたであろう角張った岩が無造作に放置されている。それにもまた、ミスリルの欠片が煌めいていた。
「そういえば、ミスリルを集めるのも今回の目的だったな。これはどうやって持ち帰るんだ? 道具の類は一切持っていないぞ?」
答えを求めるように、アロイスがメイヴィスの肩に手を置いた。ぎくり、と身体を強張らせながらも問いに答える。たっぷり数十秒を要して。
「いやあの、えーっと、その、女手ではどうしようもないので……爆破用マジック・アイテムを持参しました。爆発に、巻き込まれたくらいじゃ、ミスリルはどうこうならないので……えーっと、まあ、問題無いです」
「そ、そうか。結構乱暴な事をするんだな。しかし、確かにお前達がその細腕で岩を削り取るのは難しいかもしれない。俺も勝手がよく分からない事だしな」
話が決まったところで、大きなミスリルを探そうとしたのだが、不気味な咆吼がその行為を中断させた。物珍しそうに採掘場を観察していたアロイスの姿勢が伸び、途端に臨戦態勢へと入る。その切り替えたるや実に鮮やかなものだった。
「そこか! メヴィ、シノ。その場で持って居てくれ!」
そう言い残すや否や、メイヴィスには討伐すべき魔物がどこにいるのかすら定かではなかったのにアロイスは身を翻して茂みの中に突っ込んで行った。まるで野生の獣のようにしなやかに、そして躊躇い無く背負っていた大剣を叩き付ける。
「いやあ、本当に楽だわ。アイツ、上手い事言って毎回クエストにつれて行けない? 死ぬ程楽だわ」
「む、無理ですって! 今だってアロイスさんが事あるごとに私に声を掛けてくれるから、心臓が張り裂けそうなんですよ!」
「お前ちょっとそれは引くわ。どうしたよ、本当」
茂みに突進して行ったアロイスが返って来た。手に持っている大剣にはべっとりと血糊が付着している。
「この空気のせいだろうか、魔物は比較的湧きやすい環境のようだな」
「魔物って湧くとか何とか、およそ生き物じゃないみたいに言われるけどさ、実際どうやって発生してんの? コロニー系?」
「さあ、俺も詳しくは知らないな」
「それ、魔物学者に聞きましたよ……。コロニー系から卵、哺乳類系もいれば、分裂増殖系もいるそうです」
へえ、とシノがおかしそうに手を叩いた。
「何が凄いかって、それだけ千差万別に色々いるってのに、全部『魔物』で一括りにされてる事だよな! もっと真面目に考えてやれよ」
――尤もな意見である。
そうは思いながらも、魔物に大した思い入れも無ければ興味も特にない。自分にとって魔物とは素材の事だからだ。
なので、シノの話に相槌を打ちつつも、ミスリルを採掘する為のマジック・アイテムをポケットから取り出す。ふと考えたが、今の装備のまま王都にでも行こうものなら、テロを疑われかねないだろう。
自らの格好に苦笑しつつ、勝手が分かっているであろうシノにアイテムを渡す。
キラキラと輝く光を内包した、ガラス玉だ。以前、プロパガティオと対峙した際には、これに炎の魔法を詰め込んでいた。ガラス玉そのものも錬金術製である。
「シノさん、これをミスリルの近くに置いて来て下さい。私、こっちの『スイッチ』で起爆させるので」
爆発魔法は巻き込み事故件数ナンバー1の要注意魔法である。人の手で投げて起爆させるなど危険極まり無いし、外した場合が恐すぎるので設置型の方が良い。
この『スイッチ』という道具は遠くにある対の術式を起動させる為のアイテムだ。手で握るのに適した形をしていて、親指でボタンを押せるようになっている。
「分かった。じゃあ、置いて来るよ」
「俺も行こう。ミスリルの採掘には興味がある」
「あっ、でも、アロイスさんはずっと働いてますし……」
こちらの話は聞かず、手に持っていたマジック・アイテムを一片に攫われた。曖昧な笑みを浮かべたアロイスは興味深そうに嘆息する。
「ふふ、これはやった事が無いな。楽しみだ」
「えーっと、楽しい事はたぶん、何一つ無いと思いますけどね……」
「これは……人間が吸っても平気な空気なのか? 有害物質を吸っているような気がするのだが」
「人体に害は無いって、学者の連中はそう言ってるよ。まあ、具合とか悪くなったら、一度出た方が良いかもしれないけど」
あっけらかんと答えたシノが周囲を見回す。
一体、この柵の内側と外側で何が違うと言うのだろうか。よくよく見てみると、人が上り下りし易いように削られた岩肌にキラキラと輝くミスリルが鎮座しているのが見える。
ただし、先にも述べた通り、ミスリルは硬い鉱物で破壊する事が出来ない。ならば、それが生成されている岩肌を削って岩肌ごと採掘しなければならないのだ。そのせいか、岩肌はボコボコと歪に凹んでいた。
更に、外から持ち出されたであろう角張った岩が無造作に放置されている。それにもまた、ミスリルの欠片が煌めいていた。
「そういえば、ミスリルを集めるのも今回の目的だったな。これはどうやって持ち帰るんだ? 道具の類は一切持っていないぞ?」
答えを求めるように、アロイスがメイヴィスの肩に手を置いた。ぎくり、と身体を強張らせながらも問いに答える。たっぷり数十秒を要して。
「いやあの、えーっと、その、女手ではどうしようもないので……爆破用マジック・アイテムを持参しました。爆発に、巻き込まれたくらいじゃ、ミスリルはどうこうならないので……えーっと、まあ、問題無いです」
「そ、そうか。結構乱暴な事をするんだな。しかし、確かにお前達がその細腕で岩を削り取るのは難しいかもしれない。俺も勝手がよく分からない事だしな」
話が決まったところで、大きなミスリルを探そうとしたのだが、不気味な咆吼がその行為を中断させた。物珍しそうに採掘場を観察していたアロイスの姿勢が伸び、途端に臨戦態勢へと入る。その切り替えたるや実に鮮やかなものだった。
「そこか! メヴィ、シノ。その場で持って居てくれ!」
そう言い残すや否や、メイヴィスには討伐すべき魔物がどこにいるのかすら定かではなかったのにアロイスは身を翻して茂みの中に突っ込んで行った。まるで野生の獣のようにしなやかに、そして躊躇い無く背負っていた大剣を叩き付ける。
「いやあ、本当に楽だわ。アイツ、上手い事言って毎回クエストにつれて行けない? 死ぬ程楽だわ」
「む、無理ですって! 今だってアロイスさんが事あるごとに私に声を掛けてくれるから、心臓が張り裂けそうなんですよ!」
「お前ちょっとそれは引くわ。どうしたよ、本当」
茂みに突進して行ったアロイスが返って来た。手に持っている大剣にはべっとりと血糊が付着している。
「この空気のせいだろうか、魔物は比較的湧きやすい環境のようだな」
「魔物って湧くとか何とか、およそ生き物じゃないみたいに言われるけどさ、実際どうやって発生してんの? コロニー系?」
「さあ、俺も詳しくは知らないな」
「それ、魔物学者に聞きましたよ……。コロニー系から卵、哺乳類系もいれば、分裂増殖系もいるそうです」
へえ、とシノがおかしそうに手を叩いた。
「何が凄いかって、それだけ千差万別に色々いるってのに、全部『魔物』で一括りにされてる事だよな! もっと真面目に考えてやれよ」
――尤もな意見である。
そうは思いながらも、魔物に大した思い入れも無ければ興味も特にない。自分にとって魔物とは素材の事だからだ。
なので、シノの話に相槌を打ちつつも、ミスリルを採掘する為のマジック・アイテムをポケットから取り出す。ふと考えたが、今の装備のまま王都にでも行こうものなら、テロを疑われかねないだろう。
自らの格好に苦笑しつつ、勝手が分かっているであろうシノにアイテムを渡す。
キラキラと輝く光を内包した、ガラス玉だ。以前、プロパガティオと対峙した際には、これに炎の魔法を詰め込んでいた。ガラス玉そのものも錬金術製である。
「シノさん、これをミスリルの近くに置いて来て下さい。私、こっちの『スイッチ』で起爆させるので」
爆発魔法は巻き込み事故件数ナンバー1の要注意魔法である。人の手で投げて起爆させるなど危険極まり無いし、外した場合が恐すぎるので設置型の方が良い。
この『スイッチ』という道具は遠くにある対の術式を起動させる為のアイテムだ。手で握るのに適した形をしていて、親指でボタンを押せるようになっている。
「分かった。じゃあ、置いて来るよ」
「俺も行こう。ミスリルの採掘には興味がある」
「あっ、でも、アロイスさんはずっと働いてますし……」
こちらの話は聞かず、手に持っていたマジック・アイテムを一片に攫われた。曖昧な笑みを浮かべたアロイスは興味深そうに嘆息する。
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