45 / 139
5話 上位魔物の素材収拾
08.魔物の王
しおりを挟む
***
「ひぇっ……!? あれ、私達って確か毒トカゲの討伐クエで来たんですよね? 減って無くない……?」
メイヴィスはぽつりとそう呟いた。
というのも、湿地帯の出口へと走っていたのだが気付けば毒トカゲに取り囲まれどうしようもない状況に。幸い、毒トカゲは討伐対象であると同時に解毒剤の原材料でもあるので毒で苦しい思いをする事は無いが、そうでなくともこの数だ。今日の晩御飯にされかねない。
しかも、とメイヴィスはチラっとエサイアスに視線を移した。彼は遠近両用、物理を嗜む魔道職である。彼は良い。居てくれて本当に助かっている。
しかし自分は技術職。
戦闘は専門外であり、今回は身を護る為のアイテムしか持っていない。せめて氷魔法をベースにしたマジック・アイテムでも持参していれば話は違ったのだが、ローブを漁ってみても結界用の魔石しか見つからなかった。
――ごめんなさい、エサイアスさん!
心中で合掌し、どうすべきか思案する。もういっそ、自分は置いて行ってくれて構わない。足を引っ張ってギルドメンバーに死亡者を出すくらいならば、役に立たない自分がその役目を買って出てもいいくらいだ。
術式を展開したエサイアスが辺り一帯を氷付けにする。結界のお陰で術式を作る時間を稼げているにあたり、自分と彼の相性は悪くは無いのかもしれない。
雑魚処理に長けたエサイアスは地道にトカゲの数を減らしている。魔法を1つ撃てばごっそりトカゲの波が消えるので、魔力さえ底を突かなければ抜けられるか?
「メヴィ」
「はい!?」
「魔力を回復するようナ、アイテムはあるのカ?」
「す、すいません、今日は持ってないんです……!」
そうか、と事も無げにエサイアスは頷いたが、もしかしなくてもガス欠だろうか。
「エサイアスさん、ここに結界用の魔石ならあります!」
「それが無くナルと、術式ガ編めなくナル」
「た、確かに……!!」
魔道職は基本的に後衛。エサイアスは剣技を織り交ぜた魔剣士系の立ち振る舞いをするので遠近両用だが、大抵の場合魔法を撃とうと思ったら発動まで如何に時間を稼ぐのかが問題になってくる。
こう魔物の数が多くては、得手という程では無いエサイアスの剣技では魔物の処理が追い付かない。結界はどう足掻いても必須だ。
「ロード以前の問題ダナ。撤退路はナイか!?」
「え、えーっと、見渡す限りトカゲで埋まってますね。何か気持ち悪……」
しかし、これらはどこから湧いて出て来たのだろうか。こんなに密集して生活する魔物だった? いや、縄張り争いをする生き物だったはずだ。寄り集まり過ぎている。まるで、脅威から揃って逃げ出し、その過程で別の縄張りにいた同種達が混在してしまったかのような――
雷に打たれたような閃き。それを伝えるべく、顔を上げたメイヴィスは、結界内で術式を紡ぐエサイアスへと仮説を口走った。なお、そんな彼は大分憔悴していて、もうそう多くの魔法は撃てないであろう事が伺える。
「あの、エサイアスさん! この魔物達、逃げて来てるんじゃないですか?」
「……逃げて来て、イル? 何かカラ?」
「はい。私達は逃げている毒トカゲの群れに、突っ込んでしまったのではないでしょうか? だってほら、ここには――上位の魔物が棲み着いているわけだし」
「……あっ」
急に思い付いたただの単なる閃きだった。しかし、それは結果的に言えば当たっていたのかもしれない。
先程まで障害物でも排除するかのように毒を撒き散らし、警戒していたトカゲ達がまるで波でも引くかのようにサーッと流れて行く。人間共に執着していた魔物にしては呆気なく、そしていやに性急にだ。
人間や魚人の足よりずっと速い足で、蜘蛛の子を散らすようにやがては毒トカゲ達の姿は嘘のように見えなくなった。
最初に対峙した時には分からなかった、膨大で確かな魔力の流れに身震いする。
「こっちダ!」
「うぐっ……!」
振り返れずにいるとエサイアスから思い切りローブを引っ張られた。首が一瞬だけ絞まり、潰れた蛙のような声が押し出される。
クエストを受けていたメンバーと離れ離れになってしまった元凶。王たる証しの冠を煌めかせた、スケルトンの王様がゆらりと立っていたのを見る。それは足音も気配も無く近付き、魔力の強烈な圧だけを放っていた。
「マズイぞ、コッチを見てイル……!」
「な、何だか逃がしてくれそうにないですね」
瞬間、全く予備動作も無しに肉のない骨だけの手の平が向けられた。身構える暇すらない。紫電を放つボールのようなものが飛来した。それはメイヴィスが常日頃から発動させている魔石結界を完膚無きまでに破壊し、結界の核である魔石をも粉々に分解する。
「こ、壊れた……!? あんなの、私達が食らったら一瞬で黒焦げですよ!」
隣に立つエサイアスは渋い顔をしているのみだ。当然である。こんなの、ソロで相手をするような魔物ではない。
「ひぇっ……!? あれ、私達って確か毒トカゲの討伐クエで来たんですよね? 減って無くない……?」
メイヴィスはぽつりとそう呟いた。
というのも、湿地帯の出口へと走っていたのだが気付けば毒トカゲに取り囲まれどうしようもない状況に。幸い、毒トカゲは討伐対象であると同時に解毒剤の原材料でもあるので毒で苦しい思いをする事は無いが、そうでなくともこの数だ。今日の晩御飯にされかねない。
しかも、とメイヴィスはチラっとエサイアスに視線を移した。彼は遠近両用、物理を嗜む魔道職である。彼は良い。居てくれて本当に助かっている。
しかし自分は技術職。
戦闘は専門外であり、今回は身を護る為のアイテムしか持っていない。せめて氷魔法をベースにしたマジック・アイテムでも持参していれば話は違ったのだが、ローブを漁ってみても結界用の魔石しか見つからなかった。
――ごめんなさい、エサイアスさん!
心中で合掌し、どうすべきか思案する。もういっそ、自分は置いて行ってくれて構わない。足を引っ張ってギルドメンバーに死亡者を出すくらいならば、役に立たない自分がその役目を買って出てもいいくらいだ。
術式を展開したエサイアスが辺り一帯を氷付けにする。結界のお陰で術式を作る時間を稼げているにあたり、自分と彼の相性は悪くは無いのかもしれない。
雑魚処理に長けたエサイアスは地道にトカゲの数を減らしている。魔法を1つ撃てばごっそりトカゲの波が消えるので、魔力さえ底を突かなければ抜けられるか?
「メヴィ」
「はい!?」
「魔力を回復するようナ、アイテムはあるのカ?」
「す、すいません、今日は持ってないんです……!」
そうか、と事も無げにエサイアスは頷いたが、もしかしなくてもガス欠だろうか。
「エサイアスさん、ここに結界用の魔石ならあります!」
「それが無くナルと、術式ガ編めなくナル」
「た、確かに……!!」
魔道職は基本的に後衛。エサイアスは剣技を織り交ぜた魔剣士系の立ち振る舞いをするので遠近両用だが、大抵の場合魔法を撃とうと思ったら発動まで如何に時間を稼ぐのかが問題になってくる。
こう魔物の数が多くては、得手という程では無いエサイアスの剣技では魔物の処理が追い付かない。結界はどう足掻いても必須だ。
「ロード以前の問題ダナ。撤退路はナイか!?」
「え、えーっと、見渡す限りトカゲで埋まってますね。何か気持ち悪……」
しかし、これらはどこから湧いて出て来たのだろうか。こんなに密集して生活する魔物だった? いや、縄張り争いをする生き物だったはずだ。寄り集まり過ぎている。まるで、脅威から揃って逃げ出し、その過程で別の縄張りにいた同種達が混在してしまったかのような――
雷に打たれたような閃き。それを伝えるべく、顔を上げたメイヴィスは、結界内で術式を紡ぐエサイアスへと仮説を口走った。なお、そんな彼は大分憔悴していて、もうそう多くの魔法は撃てないであろう事が伺える。
「あの、エサイアスさん! この魔物達、逃げて来てるんじゃないですか?」
「……逃げて来て、イル? 何かカラ?」
「はい。私達は逃げている毒トカゲの群れに、突っ込んでしまったのではないでしょうか? だってほら、ここには――上位の魔物が棲み着いているわけだし」
「……あっ」
急に思い付いたただの単なる閃きだった。しかし、それは結果的に言えば当たっていたのかもしれない。
先程まで障害物でも排除するかのように毒を撒き散らし、警戒していたトカゲ達がまるで波でも引くかのようにサーッと流れて行く。人間共に執着していた魔物にしては呆気なく、そしていやに性急にだ。
人間や魚人の足よりずっと速い足で、蜘蛛の子を散らすようにやがては毒トカゲ達の姿は嘘のように見えなくなった。
最初に対峙した時には分からなかった、膨大で確かな魔力の流れに身震いする。
「こっちダ!」
「うぐっ……!」
振り返れずにいるとエサイアスから思い切りローブを引っ張られた。首が一瞬だけ絞まり、潰れた蛙のような声が押し出される。
クエストを受けていたメンバーと離れ離れになってしまった元凶。王たる証しの冠を煌めかせた、スケルトンの王様がゆらりと立っていたのを見る。それは足音も気配も無く近付き、魔力の強烈な圧だけを放っていた。
「マズイぞ、コッチを見てイル……!」
「な、何だか逃がしてくれそうにないですね」
瞬間、全く予備動作も無しに肉のない骨だけの手の平が向けられた。身構える暇すらない。紫電を放つボールのようなものが飛来した。それはメイヴィスが常日頃から発動させている魔石結界を完膚無きまでに破壊し、結界の核である魔石をも粉々に分解する。
「こ、壊れた……!? あんなの、私達が食らったら一瞬で黒焦げですよ!」
隣に立つエサイアスは渋い顔をしているのみだ。当然である。こんなの、ソロで相手をするような魔物ではない。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身
にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。
姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。
義務ですもの。
あんど もあ
ファンタジー
貴族令嬢の義務として親の決めた相手に嫁いだが、夫には愛する人がいた。夫にないがしろにされても、妻として母として嫁としての義務を果たして誠実に生きたヒロインの掴んだ、ちょっと歪んだ幸せとは。
拾われ子のスイ
蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】
記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。
幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。
老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。
――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。
スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。
出会いと別れを繰り返し、生命を懸けて鬩ぎ合い、幾度も涙を流す旅路の中で自分の在り方を探す。
清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。
これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。
※基本週2回(木・日)更新。
※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。
※カクヨム様にて先行公開中(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載)
※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく
タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。
最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。
私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシェリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
無能妃候補は辞退したい
水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。
しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。
帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。
誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。
果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか?
誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる