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9話 アルケミストの武器
05.誰が仲間?
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その後、2戦、3戦とやってみたが、ほぼナターリアの的当てゲームよろしく勝負にはならなかった。具体的に言うと、身体を動かす側であるはずのメイヴィスが一歩も動かず決着する。そんな状態だ。
「これは何をやっているんだ?」
そんな折、ふらっと現れたのはヘルフリートだった。出掛ける予定は無いのか、騎士三人衆がいつも着ている野暮ったい鎧は未着用。涼しげな格好で、しかし腰のベルトに得物は差したまま突っ立っている。
そんな彼の問いに答えたのはずっと観戦していたウィルドレディアだった。
「見ての通りよ。メヴィを鍛える為に、ナターリアが手合わせしているの」
「そうだったのか。おれはてっきり、結界サンドバッグごっこでもしているのかと……」
「サンドバッグ!? ず、随分とヴァイオレンスな思考ですね。ヘルフリートさん」
何故か若い騎士は照れたようにはにかんだ。いや、何も誉めていないっていうか非難が混じっている事に気付かないのだろうか。
「メヴィ、別にアロイスさんが居るんだから、君が身体を鍛える事は無いんじゃないのか? 慣れない事をすると、勝手が変わって逆に変な事が起きたりするものさ」
「いえ、こっちにもこっちの事情があってですね」
「そうなのか? まあいい、面白そうだし俺も参加するよ。メヴィ側でね」
ふふっ、と今日はもう猫被る事を止めたナターリアが嗤って拳を合わせる。元々好戦的な気質だったが今日はそれに輪を掛けて凶暴だ。彼女は、自分にこそ手加減してくれているが戦闘職であるヘルフリートに重傷を負わせたりしないだろうか。心配だ。
――などという心配は杞憂に終わった。
「メヴィ! 援護を頼む!」
「えっ?」
腰の得物――双剣を装備したヘルフリートはすぐに地面を蹴り、ナターリアへと飛び掛かる。徒手空拳の彼女はひらりと降って来た一撃を回避した。
「……で、どの辺を私が援護すればいいんだ……」
息を吐かせぬ攻防。とてもじゃないが、大味、範囲攻撃が一番セオリーであるマジック・アイテムによる援護など出来ない。そんな事をすれば2対1ではなく、ただの三つ巴になってしまう。
どうにか2人が距離を取る事はないか、と目を見張ってみるも、ナターリアはぴったりとヘルフリートをマークしている。アイテムによる援護射撃を警戒しているのだろう。
もう何だか考えるのが面倒になってきた。攻撃魔法系統のアイテムではなく、サポート系の魔法が納められたアイテムを取り出す。
主にバフ・デバフ――味方を強化、敵を弱体化させるような魔法。
対象の動きを抑える為、3つ、4つとガラス球を放る。敵味方など関係無い。動きが全く目で追えないので、取り敢えずこちらの動体視力に合わせて貰おうか。
着弾と同時に身体に悪そうな色の煙がふわりと充満する。面食らった顔をしたヘルフリートとナターリアの視線を避けつつ、動きを観察。かなり動く速度は落ちたが、それでもメイヴィスが乱入出来る程に鈍くなった訳では無い。
というか、最早ヘルフリート達の争いは加速度的に加速し、第三者が割って入って良いような状況では無くなっていた。どちらも負けず嫌い過ぎる。
「どうしよっかなあ……」
「いっそ、皆敵という状況でどうだ? ヘルフリートはお前を味方として扱う気は無いようだ」
「うわっ!? あ、あああ、アロイスさん!? 何でここにって言うか、何でそんな事知って……」
真意の読めない笑みを浮かべたアロイスはヘルフリートとナターリアの攻防を眺めている。そのままの状態でメイヴィスの問いに答えた。
「シノとの打ち合わせが終わってな。何故かお前達が庭にいるのを見つけたので出て来たところ、ウィルドレディアに現状の説明をされた」
「ぜ、全然気付きませんでした」
「メヴィ、さっきのデバフアイテムをもう一つ放れ」
「え? ええ、分かりました」
言われるがまま、ガラス球を戦っている2人へとスローインする。その後を追うように、アロイスが駆け出した。
「ええっ!? ちょ、怪我人ッ!!」
言うまでもないが、アロイスは腕を負傷して三角巾で吊っている状態だ。見るからに怪我人の彼曰く「利き腕ではないから問題無い」、らしいが現状を鑑みるに問題しかない状況である。
シノに借りたであろう、どこにでも売っていそうな一般的な剣を携えたアロイスが、魔法の効果が切れかかっている地点へと到達する。
「えっ、アロイス殿!? 怪我はもう良いんですか?」
「模擬戦をするんだろう。俺も混ぜてくれないか」
ヘルフリートがぎょっとした声を上げる中、アロイスは呆気にとられて棒立ちしていたナターリアへと斬り掛かった。
――で、結局、私の仲間は誰なの?
混戦している上、状況が変わりすぎて自分がどの陣営だったのかすら定かではなくなってきた。
「これは何をやっているんだ?」
そんな折、ふらっと現れたのはヘルフリートだった。出掛ける予定は無いのか、騎士三人衆がいつも着ている野暮ったい鎧は未着用。涼しげな格好で、しかし腰のベルトに得物は差したまま突っ立っている。
そんな彼の問いに答えたのはずっと観戦していたウィルドレディアだった。
「見ての通りよ。メヴィを鍛える為に、ナターリアが手合わせしているの」
「そうだったのか。おれはてっきり、結界サンドバッグごっこでもしているのかと……」
「サンドバッグ!? ず、随分とヴァイオレンスな思考ですね。ヘルフリートさん」
何故か若い騎士は照れたようにはにかんだ。いや、何も誉めていないっていうか非難が混じっている事に気付かないのだろうか。
「メヴィ、別にアロイスさんが居るんだから、君が身体を鍛える事は無いんじゃないのか? 慣れない事をすると、勝手が変わって逆に変な事が起きたりするものさ」
「いえ、こっちにもこっちの事情があってですね」
「そうなのか? まあいい、面白そうだし俺も参加するよ。メヴィ側でね」
ふふっ、と今日はもう猫被る事を止めたナターリアが嗤って拳を合わせる。元々好戦的な気質だったが今日はそれに輪を掛けて凶暴だ。彼女は、自分にこそ手加減してくれているが戦闘職であるヘルフリートに重傷を負わせたりしないだろうか。心配だ。
――などという心配は杞憂に終わった。
「メヴィ! 援護を頼む!」
「えっ?」
腰の得物――双剣を装備したヘルフリートはすぐに地面を蹴り、ナターリアへと飛び掛かる。徒手空拳の彼女はひらりと降って来た一撃を回避した。
「……で、どの辺を私が援護すればいいんだ……」
息を吐かせぬ攻防。とてもじゃないが、大味、範囲攻撃が一番セオリーであるマジック・アイテムによる援護など出来ない。そんな事をすれば2対1ではなく、ただの三つ巴になってしまう。
どうにか2人が距離を取る事はないか、と目を見張ってみるも、ナターリアはぴったりとヘルフリートをマークしている。アイテムによる援護射撃を警戒しているのだろう。
もう何だか考えるのが面倒になってきた。攻撃魔法系統のアイテムではなく、サポート系の魔法が納められたアイテムを取り出す。
主にバフ・デバフ――味方を強化、敵を弱体化させるような魔法。
対象の動きを抑える為、3つ、4つとガラス球を放る。敵味方など関係無い。動きが全く目で追えないので、取り敢えずこちらの動体視力に合わせて貰おうか。
着弾と同時に身体に悪そうな色の煙がふわりと充満する。面食らった顔をしたヘルフリートとナターリアの視線を避けつつ、動きを観察。かなり動く速度は落ちたが、それでもメイヴィスが乱入出来る程に鈍くなった訳では無い。
というか、最早ヘルフリート達の争いは加速度的に加速し、第三者が割って入って良いような状況では無くなっていた。どちらも負けず嫌い過ぎる。
「どうしよっかなあ……」
「いっそ、皆敵という状況でどうだ? ヘルフリートはお前を味方として扱う気は無いようだ」
「うわっ!? あ、あああ、アロイスさん!? 何でここにって言うか、何でそんな事知って……」
真意の読めない笑みを浮かべたアロイスはヘルフリートとナターリアの攻防を眺めている。そのままの状態でメイヴィスの問いに答えた。
「シノとの打ち合わせが終わってな。何故かお前達が庭にいるのを見つけたので出て来たところ、ウィルドレディアに現状の説明をされた」
「ぜ、全然気付きませんでした」
「メヴィ、さっきのデバフアイテムをもう一つ放れ」
「え? ええ、分かりました」
言われるがまま、ガラス球を戦っている2人へとスローインする。その後を追うように、アロイスが駆け出した。
「ええっ!? ちょ、怪我人ッ!!」
言うまでもないが、アロイスは腕を負傷して三角巾で吊っている状態だ。見るからに怪我人の彼曰く「利き腕ではないから問題無い」、らしいが現状を鑑みるに問題しかない状況である。
シノに借りたであろう、どこにでも売っていそうな一般的な剣を携えたアロイスが、魔法の効果が切れかかっている地点へと到達する。
「えっ、アロイス殿!? 怪我はもう良いんですか?」
「模擬戦をするんだろう。俺も混ぜてくれないか」
ヘルフリートがぎょっとした声を上げる中、アロイスは呆気にとられて棒立ちしていたナターリアへと斬り掛かった。
――で、結局、私の仲間は誰なの?
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