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11話 アルケミストの長い1日
13.錬金術の用途と未来の大魔道士
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一先ず、自分が昔使っていた教材で錬金術の基本を教え込む。一番の難関に思われたが、そもそもが出来の良い未来の大魔道士。魔道に関係するお話をすればすんなり呑込んだ。成る程、これはまさに天性の才能。もっと錬金術に興味を持ってくれれば、偉大なアルケミストとなるかもしれないのに。
「凄いね、イアンちゃん。呑込みが早くで吃驚だよ」
「マニュアル通りにこなしておいて、呑込みも何も無いでしょう」
――これが天才ってやつか……。
ただし、友達は少なそう。天才とは孤独な生き物である。
しみじみと感心していると、次の指示を待っているイアンと目が合う。かなりストイック。とにかくシンプルな子供だ。寄り道を絶対に許さないあたり、将来がやや心配である。何を楽しみに生きているのだろうか。
心配ついでに、素直に彼女の人となりを聞いてみる事にした。ギルド生活を送っていると、お節介さが身に付いてしまって抜け切らない。
「イアンちゃんは、何か趣味とかあるのかな?」
「唐突ですね、お見合いか何かのような話題ですし。趣味……趣味は特段ありません」
「そっかー、何か楽しみとかあるの?」
「え、何ですか本当。だけど、そうですね……。他人の欲望、それらが垣間見える瞬間は、好きです」
――えっ、そんな話題だったっけ?
予想の数倍はヘヴィな話になってしまい、目を剥く。大丈夫かなこの子、非常に教育に悪い生活でも送っていなければあんな返事出来ないぞ。
「えーっと、それは何で……」
場合によっては教育相談所に届け出を提出するつもりで訊ねる。ここで初めてイアンは表情らしい表情を浮かべた。自嘲めいた、自身を鼻で笑うような顔。とても子供のそれとは思えない。
「《ラストリゾート》の関係でしょうね。私達の種は、あれに引き摺られた性格に育つと言います。分かっている私でさえ、例に漏れずという事ですね」
「あーっと、そうなんだ……」
何の話だがさっぱりである。
が、フィリップの吸血鬼ネタぐらいに触ってはいけないようなので受け流す事とした。他でもない、彼女の父(仮)が「知らない方が良い事もある」と言っていた訳だし。
「そろそろ本題に戻りませんか。うっかり吹聴してしまいましたが、今の話はご内密にお願い致します」
「心配しなくても何の話か分からなかったよ」
まるっと全てを無視し、本題である錬金術のレクチャーへ戻る。と言っても、基本をすんなり理解してくれたので、後は実演するだけだ。
「どこまでやったっけな……」
「小さな箱にガラス玉を入れる所までです」
「あそっか。えーと、それじゃあ、こっちの指示液を――」
今回、小さな女の子に錬金術を教えるに当たって気付いた事がある。
基本的に自分がいつもほとんど無意識でやっている事を言葉にし、順列し、説明するのは難しい。何故なら無意識でやっているから。思いも寄らぬ事を聞かれただけで一瞬にして何をしようとしていたのかを忘れる。
そうだった、あまりにも天才肌を相手にしていたから失念していたが、自分自身は凡人だった。
「――そうだ、イアンちゃん。何の魔法を入れ込もうか。好きなのを選んでね。でも、効果が分かりやすい攻撃系が良いかもしれない」
「そうですか、では――」
氷の魔法を内包したガラス玉となった。それをイアンに持たせてやる。彼女は興味深そうにそれを眺めていたが、明らかに戦闘中使用するには不便な内ポケットにしまったところを見るに、戦闘中に使う事は無いと思っているらしい。
「どう? 錬金術、もっと極めてみたいと思う?」
正直なところ、とイアンは淡々とそれを口にする。紛れもない事実を。
「興味云々以前に、私にとってこの技術はかなり苦手な部類と言えます」
「え? 上手だったけどな」
「まず、恐らくこの作ったアイテムを私自身が使う事は無いでしょう。自分で術式を編んだ方が強力且つ簡単だからです」
「身も蓋もないよなあ……」
「よって、余程足手纏いの仲間なり何なりが出来ない限りは、私自身が作ったアイテムを使う事はほとんどありません。生き物と言うのは必要に駆られないと行動出来ないものですから、必然的に私の錬金術の腕が上がる事は無いと言えます」
理論的、加えて正論だ。彼女の言う事は至極正しい。
「そっか、じゃあ、将来的に君に仲の良いお友達が出来たりすればワンチャンって事か」
「……あまり、期待は出来ませんね。私はこの性格ですし」
うっかり黙り込んでしまった。彼女の言う事は正しい。如何なる場合においても。
「凄いね、イアンちゃん。呑込みが早くで吃驚だよ」
「マニュアル通りにこなしておいて、呑込みも何も無いでしょう」
――これが天才ってやつか……。
ただし、友達は少なそう。天才とは孤独な生き物である。
しみじみと感心していると、次の指示を待っているイアンと目が合う。かなりストイック。とにかくシンプルな子供だ。寄り道を絶対に許さないあたり、将来がやや心配である。何を楽しみに生きているのだろうか。
心配ついでに、素直に彼女の人となりを聞いてみる事にした。ギルド生活を送っていると、お節介さが身に付いてしまって抜け切らない。
「イアンちゃんは、何か趣味とかあるのかな?」
「唐突ですね、お見合いか何かのような話題ですし。趣味……趣味は特段ありません」
「そっかー、何か楽しみとかあるの?」
「え、何ですか本当。だけど、そうですね……。他人の欲望、それらが垣間見える瞬間は、好きです」
――えっ、そんな話題だったっけ?
予想の数倍はヘヴィな話になってしまい、目を剥く。大丈夫かなこの子、非常に教育に悪い生活でも送っていなければあんな返事出来ないぞ。
「えーっと、それは何で……」
場合によっては教育相談所に届け出を提出するつもりで訊ねる。ここで初めてイアンは表情らしい表情を浮かべた。自嘲めいた、自身を鼻で笑うような顔。とても子供のそれとは思えない。
「《ラストリゾート》の関係でしょうね。私達の種は、あれに引き摺られた性格に育つと言います。分かっている私でさえ、例に漏れずという事ですね」
「あーっと、そうなんだ……」
何の話だがさっぱりである。
が、フィリップの吸血鬼ネタぐらいに触ってはいけないようなので受け流す事とした。他でもない、彼女の父(仮)が「知らない方が良い事もある」と言っていた訳だし。
「そろそろ本題に戻りませんか。うっかり吹聴してしまいましたが、今の話はご内密にお願い致します」
「心配しなくても何の話か分からなかったよ」
まるっと全てを無視し、本題である錬金術のレクチャーへ戻る。と言っても、基本をすんなり理解してくれたので、後は実演するだけだ。
「どこまでやったっけな……」
「小さな箱にガラス玉を入れる所までです」
「あそっか。えーと、それじゃあ、こっちの指示液を――」
今回、小さな女の子に錬金術を教えるに当たって気付いた事がある。
基本的に自分がいつもほとんど無意識でやっている事を言葉にし、順列し、説明するのは難しい。何故なら無意識でやっているから。思いも寄らぬ事を聞かれただけで一瞬にして何をしようとしていたのかを忘れる。
そうだった、あまりにも天才肌を相手にしていたから失念していたが、自分自身は凡人だった。
「――そうだ、イアンちゃん。何の魔法を入れ込もうか。好きなのを選んでね。でも、効果が分かりやすい攻撃系が良いかもしれない」
「そうですか、では――」
氷の魔法を内包したガラス玉となった。それをイアンに持たせてやる。彼女は興味深そうにそれを眺めていたが、明らかに戦闘中使用するには不便な内ポケットにしまったところを見るに、戦闘中に使う事は無いと思っているらしい。
「どう? 錬金術、もっと極めてみたいと思う?」
正直なところ、とイアンは淡々とそれを口にする。紛れもない事実を。
「興味云々以前に、私にとってこの技術はかなり苦手な部類と言えます」
「え? 上手だったけどな」
「まず、恐らくこの作ったアイテムを私自身が使う事は無いでしょう。自分で術式を編んだ方が強力且つ簡単だからです」
「身も蓋もないよなあ……」
「よって、余程足手纏いの仲間なり何なりが出来ない限りは、私自身が作ったアイテムを使う事はほとんどありません。生き物と言うのは必要に駆られないと行動出来ないものですから、必然的に私の錬金術の腕が上がる事は無いと言えます」
理論的、加えて正論だ。彼女の言う事は至極正しい。
「そっか、じゃあ、将来的に君に仲の良いお友達が出来たりすればワンチャンって事か」
「……あまり、期待は出来ませんね。私はこの性格ですし」
うっかり黙り込んでしまった。彼女の言う事は正しい。如何なる場合においても。
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