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12話 犬派達の集い
05.ギルドの愉快な仲間達
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先程、それなりの人数が集まっていた食堂へ戻る。正直、メイヴィス自身は雑魚も雑魚。ブルーノがどの程度戦えるタイプの人なのかが不明である以上、魔物の跋扈する採集地へ2人で行く訳にはいかない。
悪いなとは思いつつ、まだ食堂で白熱した議論を交わしている一行へと歩み寄る。気のせいか、他のメンバー達は彼女等を遠巻きにしているようだ。無理も無い。
「アロイスさーん」
「ああ、メヴィか。うん? ブルーノも一緒か、どうした?」
一番に聞く姿勢を取ってくれた護衛の騎士サマは女二人の口論からあっさり目をそらした。
「いや、それがですね――」
事情を説明したところ、いつもの通りアロイスはあっさりと理解の意を示してくれた。というか、彼が自分の言う事に対して苦言を呈した事など一度も無い。あまりにも何でもお話を聞いてくれるせいで、どうしても罪悪感にも似た感情が湧上がって来るのは何故だろう。
「キノコ狩りという訳か。それに犬も一緒……今回は久々の息抜きに相応しいクエストになりそうだな、メヴィ」
「着いてきてくれるんですね」
「そうだろうな。どこへ行くのかは知らないが、キノコ狩りが出来るような場所など、魔物で溢れている。野放しにはしないさ。ところで――そっちの2人はどうするんだ?」
呼ばれたと気付いたのか、ナターリアが顔を上げる。釣られてヒルデガルトもまた、こちらを見た。話を聞いていなかったと思ったのか、ブルーノが口を開く。
「よお、俺はブルーノ。正式なギルドのメンバーって訳じゃねえが、取り敢えず今からそっちのメヴィ? と、キノコ狩りに行くつもりだが。お前等はどうするんだ」
目を眇め、完全に猫を忘れていたナターリアが途端に剥げていた猫を被り直した。今見た顔のせいで、突然の豹変をしたようにしか見えず不気味だ。
「あっ、何かよく分からないけど、新しい人かなっ! あたしはナターリア。キノコ狩りに行くって? メヴィも行くんだよねっ! 勿論、あたしも行くよ!」
「あ、ズルイですよ! 当然、私も行きます。キノコ狩りと言ったら森ですよね? 危険でしょうし。何よりその、ワンコ……大型犬、実に素敵です」
どちらも行く気満々のようだ。ただし、一つだけ心配事がある。
あまり失礼になり過ぎないくらいにナターリアを見やり、そしてブルーノの連れているアッシュを見比べる。
大丈夫だろうか。ブルーノはともかく、ナターリアとアッシュは相性が非常に悪そうだ。彼女が犬の話題に欠片も触れなかった事も不安を煽る。
が、次の瞬間今までの思惑が全てフラグであったかのような発言がヒルデガルトの口から飛び出す。彼女は意外と空気が読めない。
「さあ、ナターリア。私が犬の良さを教えて差し上げます。今回のクエストにはワンちゃんも一緒ですからね」
「アッシュな、犬の名前」
「失礼致しました。アッシュちゃんも一緒ですから!」
折角被っていたナターリアの猫がピキッと引き攣るのがハッキリと見て取れた。クエストには行きたいが犬は知らん、の姿勢を貫いていたと言うのにわざわざ接触を促されたからだろう。
「ヒルデ、あんたあたしの話をちっとも聞いていないのね。あたしは! 猫派、もといネコ科だ、つってるでしょ」
「問題ありません。犬は全ての動物をわかり合える生き物。それは猫も例外では無いでしょう」
なおも啀み合い続ける2人を尻目に、アロイスがこの場にそぐわない穏やかさを以てブルーノに声を掛ける。目の前の喧噪などどこ吹く風、全く気に留めていないようだ。
「ブルーノ、お前はギルドマスターの息子だと言っていたが……。その、顔を隠すのには何か意味があるのか?」
「あー、そうだな。親父にも言える事だが、俺等って一度見たら忘れられない顔してんだよなあ。立場上、素の顔を覚えられんのはちょっと……。気を悪くしたなら謝るが、大目に見て欲しい」
「いや、そういう訳じゃ無いさ。ただの純粋な好奇心だ」
――いや、顔を覚えられるも何も、タイガーマスクなんて一度見たらそれこそ忘れられないわ……。
酷く矛盾した心持ちになったが、突っ込んだら負けだと思い、キュッと口を引き結んだ。深く考えてはいけない話題なのだろう。
それに真面目な話をすると、顔に火傷や傷などがあるのかもしれない。本人が遠回しに触るなと言った話題を、わざわざ触る事はないだろう。ここはギルド、個人のプライバシーは遵守すべきだ。
「メヴィ、それで今回は結局何のキノコを採取しに行くのですか?」
「あ、ああ。ヒルデさんは知っているかもしれないんですけど、ミズアメタケっていうキノコです」
「あ、全然知らないキノコですね。それ。というか、私は素材に関して深い知識を持っている訳では無いですから」
騎士と言うだけで自分より知識量が多いかもしれないと思っての言葉だったが、ヒルデガルトには苦笑されてしまった。
先程、自分もオーガストから聞きかじったばかりの知識をナターリアとヒルデガルトに説明する。
「うーん、よく分からないけどクエストに行く準備をしてくるねっ! あたし達はメヴィの護衛って事でしょ、つまりは」
「そうなるのかなあ……」
「護衛でしたらお任せ下さい。これでも、元は騎士ですので。さあ、ナタ! 我々も準備をしに行きましょう」
「ちょっと調子に乗り過ぎなんじゃないかなっ!」
目がちっとも笑っていないナターリアを引き摺るように、ヒルデガルトが離脱して行った。続いて、それに気付いたアロイスもまた荷解きと称して歩き去って行く。後には何故かこっちをじーっと見ているブルーノとその愛犬・アッシュだけが取り残された。
先程、それなりの人数が集まっていた食堂へ戻る。正直、メイヴィス自身は雑魚も雑魚。ブルーノがどの程度戦えるタイプの人なのかが不明である以上、魔物の跋扈する採集地へ2人で行く訳にはいかない。
悪いなとは思いつつ、まだ食堂で白熱した議論を交わしている一行へと歩み寄る。気のせいか、他のメンバー達は彼女等を遠巻きにしているようだ。無理も無い。
「アロイスさーん」
「ああ、メヴィか。うん? ブルーノも一緒か、どうした?」
一番に聞く姿勢を取ってくれた護衛の騎士サマは女二人の口論からあっさり目をそらした。
「いや、それがですね――」
事情を説明したところ、いつもの通りアロイスはあっさりと理解の意を示してくれた。というか、彼が自分の言う事に対して苦言を呈した事など一度も無い。あまりにも何でもお話を聞いてくれるせいで、どうしても罪悪感にも似た感情が湧上がって来るのは何故だろう。
「キノコ狩りという訳か。それに犬も一緒……今回は久々の息抜きに相応しいクエストになりそうだな、メヴィ」
「着いてきてくれるんですね」
「そうだろうな。どこへ行くのかは知らないが、キノコ狩りが出来るような場所など、魔物で溢れている。野放しにはしないさ。ところで――そっちの2人はどうするんだ?」
呼ばれたと気付いたのか、ナターリアが顔を上げる。釣られてヒルデガルトもまた、こちらを見た。話を聞いていなかったと思ったのか、ブルーノが口を開く。
「よお、俺はブルーノ。正式なギルドのメンバーって訳じゃねえが、取り敢えず今からそっちのメヴィ? と、キノコ狩りに行くつもりだが。お前等はどうするんだ」
目を眇め、完全に猫を忘れていたナターリアが途端に剥げていた猫を被り直した。今見た顔のせいで、突然の豹変をしたようにしか見えず不気味だ。
「あっ、何かよく分からないけど、新しい人かなっ! あたしはナターリア。キノコ狩りに行くって? メヴィも行くんだよねっ! 勿論、あたしも行くよ!」
「あ、ズルイですよ! 当然、私も行きます。キノコ狩りと言ったら森ですよね? 危険でしょうし。何よりその、ワンコ……大型犬、実に素敵です」
どちらも行く気満々のようだ。ただし、一つだけ心配事がある。
あまり失礼になり過ぎないくらいにナターリアを見やり、そしてブルーノの連れているアッシュを見比べる。
大丈夫だろうか。ブルーノはともかく、ナターリアとアッシュは相性が非常に悪そうだ。彼女が犬の話題に欠片も触れなかった事も不安を煽る。
が、次の瞬間今までの思惑が全てフラグであったかのような発言がヒルデガルトの口から飛び出す。彼女は意外と空気が読めない。
「さあ、ナターリア。私が犬の良さを教えて差し上げます。今回のクエストにはワンちゃんも一緒ですからね」
「アッシュな、犬の名前」
「失礼致しました。アッシュちゃんも一緒ですから!」
折角被っていたナターリアの猫がピキッと引き攣るのがハッキリと見て取れた。クエストには行きたいが犬は知らん、の姿勢を貫いていたと言うのにわざわざ接触を促されたからだろう。
「ヒルデ、あんたあたしの話をちっとも聞いていないのね。あたしは! 猫派、もといネコ科だ、つってるでしょ」
「問題ありません。犬は全ての動物をわかり合える生き物。それは猫も例外では無いでしょう」
なおも啀み合い続ける2人を尻目に、アロイスがこの場にそぐわない穏やかさを以てブルーノに声を掛ける。目の前の喧噪などどこ吹く風、全く気に留めていないようだ。
「ブルーノ、お前はギルドマスターの息子だと言っていたが……。その、顔を隠すのには何か意味があるのか?」
「あー、そうだな。親父にも言える事だが、俺等って一度見たら忘れられない顔してんだよなあ。立場上、素の顔を覚えられんのはちょっと……。気を悪くしたなら謝るが、大目に見て欲しい」
「いや、そういう訳じゃ無いさ。ただの純粋な好奇心だ」
――いや、顔を覚えられるも何も、タイガーマスクなんて一度見たらそれこそ忘れられないわ……。
酷く矛盾した心持ちになったが、突っ込んだら負けだと思い、キュッと口を引き結んだ。深く考えてはいけない話題なのだろう。
それに真面目な話をすると、顔に火傷や傷などがあるのかもしれない。本人が遠回しに触るなと言った話題を、わざわざ触る事はないだろう。ここはギルド、個人のプライバシーは遵守すべきだ。
「メヴィ、それで今回は結局何のキノコを採取しに行くのですか?」
「あ、ああ。ヒルデさんは知っているかもしれないんですけど、ミズアメタケっていうキノコです」
「あ、全然知らないキノコですね。それ。というか、私は素材に関して深い知識を持っている訳では無いですから」
騎士と言うだけで自分より知識量が多いかもしれないと思っての言葉だったが、ヒルデガルトには苦笑されてしまった。
先程、自分もオーガストから聞きかじったばかりの知識をナターリアとヒルデガルトに説明する。
「うーん、よく分からないけどクエストに行く準備をしてくるねっ! あたし達はメヴィの護衛って事でしょ、つまりは」
「そうなるのかなあ……」
「護衛でしたらお任せ下さい。これでも、元は騎士ですので。さあ、ナタ! 我々も準備をしに行きましょう」
「ちょっと調子に乗り過ぎなんじゃないかなっ!」
目がちっとも笑っていないナターリアを引き摺るように、ヒルデガルトが離脱して行った。続いて、それに気付いたアロイスもまた荷解きと称して歩き去って行く。後には何故かこっちをじーっと見ているブルーノとその愛犬・アッシュだけが取り残された。
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