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12話 犬派達の集い
04.欲しかったのは犬の方
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今日も今日とてギルドマスターに着いていくと、今回は彼一人ではなかった。先程、一緒にギルドまで来たブルーノが一緒だ。よぉ、と非常に気安い態度で手を振られる。何故だろうか。ブルーノはチャラついた態度を取っても、あまり軽薄な印象を受けない何かがある。
黒々としたサングラスのグラス部分を何の気なしに覗いていると、本日のご用事が耳朶を打った。
「それでだ、メヴィ! 今回の用事を話して良いだろうか!!」
「あっはい、聞きます」
「実はだな! 今年もミズアメタケが採れる季節がやって来た。普通の人間なら食べる事も出来ないし薬品の調合にも使えない毒性を持つキノコなのだが、錬金術師には入り用だと思ってな!」
「キノコ……?」
不穏そうな声音で呟いたのはブルーノだった。サングラスのせいで表情こそは伺えないが、露出している唇はへの字に曲げられている。
太い腕を組み直した彼は僅かに首を傾げながらギルドマスター且つ父親の言葉を待っているようだ。
「このミズアメタケというのが、人間に探すのは難しいキノコなのだよ。そこで! ブルーノの連れているアッシュを使って、採取作業でもどうかとお誘いしたい所存だ!」
「成る程。急に呼び出すから何事かと思いきや、俺じゃ無くてアッシュが目当てだった訳かよ」
「誰もお前に来て欲しいとは言っていないぞッ!」
「そういやそうだわ。これが固定概念の暴力ってやつなんだな」
多少なりとも父親に苦言を漏らすかと思われたブルーノだったが、呆れたように首を振っただけだった。見た目にそぐわぬ穏やかさに毒気を抜かれる。最悪、口汚い口論の応酬でも見せられるかと思っていた。お子さん、随分と不良気質が過ぎるし。
しかし、ここで呆然と父子の会話を聞いていても仕方が無い。メイヴィスは意を決して口を開いた。
「マスター、ミズアメタケについてもう少し詳しく聞きたいです」
「そうか! 君ならば興味を持ってくれると思っていたぞ! あれらは梅雨の時期にのみ生えるキノコでね、梅雨の終わりと同時に消滅するという特殊な構造をしている。つまり何が言いたいかと言うと、今の季節にしか採取の出来ない素材という事だ! ……とはいえ、あくまで私は情報の提供者でね。そのミズアメタケを、具体的に何に使うのかは全く知らないのであしからず」
「梅雨にしか採れない素材……」
ごにょごにょとオーガストが何か付け足していたが、あまり聞いていなかった。何であれ、とにかくその素材は回収する価値がある。世の中に存在する価値のない素材などそれこそ存在しない。
必ず採取した物は何かに使えはするはずだ。であれば、ローブの効果もあるし出来るだけ採取しておくに超したことは無いだろう。
「正直、その素材の採取は魅力的です。ただ……その、地中深くに埋まっているんですよね? だから、ワンコの力が必要だと」
「ああ、そうだとも!」
「私……動物を飼った事、無いんですよ。そのワンちゃんをレンタルしたとしても、扱いがよく分からないんですけど」
先程、犬派猫派論争を繰り広げていた友人達の様相を思い出す。彼女等ならば或いは、上手く動物を扱って目当ての物を探し出させる力があるのかもしれない。
そんなメイヴィスの思考に水を差したのはブルーノだった。
「いやいやいや! アッシュは俺の相棒だからな、アッシュだけを貸す訳にもいかねぇよ。お前が採取作業に行くってんなら、漏れなく俺も同行するから心配しなくていいぜ」
「ええ? でも、迷惑じゃないですか?」
「や、別に。時間なんざ腐る程あるし、手助けくらいはしてやるさ。まあだから、その採取作業? ってのに行く時には俺にも声を掛けてくれや」
「ありがとうございます」
――い、良い人……!!
凶悪な外見に似合わず、普通に良い人のブルーノ。人とは見かけによらないものである。
「で、だ。メヴィ、つったか? 早速出発するなら一緒に行くが……。どうする? 明日でも明後日でも別にいいぜ。ただ、早めに予定は教えてくれよ」
「あー、えっと、ちょっと仲間を集めたいので一緒に来て貰えますか。顔合わせしないと」
「おーおー、そういやギルドだったな。人間の共同体ってやつか、ま、見学させて貰うとするかな」
オーガストにもよくあるが、その息子である彼にもその気がある。
何というか――自分達を『人間』として勘定していないような。ただ、それに関してはヴァレンディアのフィリップ一行も自らを吸血鬼と称しているので、最近では違和感を覚えなくなってしまったが。
後ろを大人しく着いてくるブルーノを一瞥し、一先ずその考えを隅に追いやる。というか、人魚村で本物の人魚に遭遇したのだ。吸血鬼や何やらも恐らくは『いる』のだろう。
今日も今日とてギルドマスターに着いていくと、今回は彼一人ではなかった。先程、一緒にギルドまで来たブルーノが一緒だ。よぉ、と非常に気安い態度で手を振られる。何故だろうか。ブルーノはチャラついた態度を取っても、あまり軽薄な印象を受けない何かがある。
黒々としたサングラスのグラス部分を何の気なしに覗いていると、本日のご用事が耳朶を打った。
「それでだ、メヴィ! 今回の用事を話して良いだろうか!!」
「あっはい、聞きます」
「実はだな! 今年もミズアメタケが採れる季節がやって来た。普通の人間なら食べる事も出来ないし薬品の調合にも使えない毒性を持つキノコなのだが、錬金術師には入り用だと思ってな!」
「キノコ……?」
不穏そうな声音で呟いたのはブルーノだった。サングラスのせいで表情こそは伺えないが、露出している唇はへの字に曲げられている。
太い腕を組み直した彼は僅かに首を傾げながらギルドマスター且つ父親の言葉を待っているようだ。
「このミズアメタケというのが、人間に探すのは難しいキノコなのだよ。そこで! ブルーノの連れているアッシュを使って、採取作業でもどうかとお誘いしたい所存だ!」
「成る程。急に呼び出すから何事かと思いきや、俺じゃ無くてアッシュが目当てだった訳かよ」
「誰もお前に来て欲しいとは言っていないぞッ!」
「そういやそうだわ。これが固定概念の暴力ってやつなんだな」
多少なりとも父親に苦言を漏らすかと思われたブルーノだったが、呆れたように首を振っただけだった。見た目にそぐわぬ穏やかさに毒気を抜かれる。最悪、口汚い口論の応酬でも見せられるかと思っていた。お子さん、随分と不良気質が過ぎるし。
しかし、ここで呆然と父子の会話を聞いていても仕方が無い。メイヴィスは意を決して口を開いた。
「マスター、ミズアメタケについてもう少し詳しく聞きたいです」
「そうか! 君ならば興味を持ってくれると思っていたぞ! あれらは梅雨の時期にのみ生えるキノコでね、梅雨の終わりと同時に消滅するという特殊な構造をしている。つまり何が言いたいかと言うと、今の季節にしか採取の出来ない素材という事だ! ……とはいえ、あくまで私は情報の提供者でね。そのミズアメタケを、具体的に何に使うのかは全く知らないのであしからず」
「梅雨にしか採れない素材……」
ごにょごにょとオーガストが何か付け足していたが、あまり聞いていなかった。何であれ、とにかくその素材は回収する価値がある。世の中に存在する価値のない素材などそれこそ存在しない。
必ず採取した物は何かに使えはするはずだ。であれば、ローブの効果もあるし出来るだけ採取しておくに超したことは無いだろう。
「正直、その素材の採取は魅力的です。ただ……その、地中深くに埋まっているんですよね? だから、ワンコの力が必要だと」
「ああ、そうだとも!」
「私……動物を飼った事、無いんですよ。そのワンちゃんをレンタルしたとしても、扱いがよく分からないんですけど」
先程、犬派猫派論争を繰り広げていた友人達の様相を思い出す。彼女等ならば或いは、上手く動物を扱って目当ての物を探し出させる力があるのかもしれない。
そんなメイヴィスの思考に水を差したのはブルーノだった。
「いやいやいや! アッシュは俺の相棒だからな、アッシュだけを貸す訳にもいかねぇよ。お前が採取作業に行くってんなら、漏れなく俺も同行するから心配しなくていいぜ」
「ええ? でも、迷惑じゃないですか?」
「や、別に。時間なんざ腐る程あるし、手助けくらいはしてやるさ。まあだから、その採取作業? ってのに行く時には俺にも声を掛けてくれや」
「ありがとうございます」
――い、良い人……!!
凶悪な外見に似合わず、普通に良い人のブルーノ。人とは見かけによらないものである。
「で、だ。メヴィ、つったか? 早速出発するなら一緒に行くが……。どうする? 明日でも明後日でも別にいいぜ。ただ、早めに予定は教えてくれよ」
「あー、えっと、ちょっと仲間を集めたいので一緒に来て貰えますか。顔合わせしないと」
「おーおー、そういやギルドだったな。人間の共同体ってやつか、ま、見学させて貰うとするかな」
オーガストにもよくあるが、その息子である彼にもその気がある。
何というか――自分達を『人間』として勘定していないような。ただ、それに関してはヴァレンディアのフィリップ一行も自らを吸血鬼と称しているので、最近では違和感を覚えなくなってしまったが。
後ろを大人しく着いてくるブルーノを一瞥し、一先ずその考えを隅に追いやる。というか、人魚村で本物の人魚に遭遇したのだ。吸血鬼や何やらも恐らくは『いる』のだろう。
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