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12話 犬派達の集い
07.出発前情報
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***
程なくして支度をすると言って散って行った、本日のクエストメンバーが集結した。基本的にマイペースな人間が多いからか、バラバラに来た。せめて打ち合わせくらいしておけと思わなくも無い。
事前にブルーノと共に打ち合わせ、もとい口裏合わせを行っていたメイヴィスは全員いる事を確認した上で、もう一度本日の目的を口にした。
「えーっと、今日なんですけど目的はミズアメタケの採取。たくさん採って帰るぞ!」
「メヴィ殿、場所はどこでしたか?」
ヒルデガルトの言葉に一瞬だけ応えに迷った。別にどこへ行くのか忘れていた訳では無い。後出しじゃんけんにしては厳しい地へ赴く事になるので、多少のクレームを覚悟する為の時間が必要だったのだ。
意を決し、しかし明後日の方向へ目を逸らしつつ問いに答える。
「それが、場所は……夜泣きの森なんですよね」
「ええっ?」
夜泣き森――人の泣いているような音がする、年中通して薄暗い森である。そういった音が聞こえる理由としては木々の立ち方と立地のせいらしいが、詳しい事実は解明されていない。
地元の人間でさえ、必要以上に立ち入らない場所。そこへギルドのメンバーを予告無しに連れて行くのは気が引けた。最悪、ここで数名抜けても――
いや待て。今回の面子を見てみろ。
騎士であるヒルデガルトとアロイス。人外疑惑の強いブルーノと頼もしいお供のアッシュ。怖いという言葉などとは縁遠そうな化け猫ナターリア――この面子で、まさか夜泣き森の迷信が怖いとでも言う人物がいるだろうか。いや、いない。
案の定、こちらの怯えきった反応を鼻で笑ったナターリアが頼もしげな笑みを浮かべる。今日はよく猫が剥げる日だ。
「あたしも行った事あるけど、別に普通の木々が擦れるような音だったよ。人間は耳がそんなに良くないから、あれが人の泣き声だの何だのに聞こえるんじゃない?」
「そ、そうなんだね……」
ところで、と夜泣き森について一切の言及をしなかったアロイスがさらっと話題を変える。このお話、結構重要だったのだが。
「ミズアメタケとはどんなキノコだろうか? 見た目が分からないのでは、俺達では探しようが無いな。とはいえ、護衛という意味合いは果たすが」
「あー、それなんですけど、私もちらっと写真を見ただけでよく分からないんですよね。ただ、地中深くに埋まっているそうなので、アッシュの鼻で探して、そこを私達で掘り返す感じではあります」
「そうか。見た目はどんな様子だった?」
「そうですね……。透明な傘を持っていて、ミズアメみたいな粘性のある液体に覆われているようでした。あ、あと、これはオーガストさんから聞いたんですけど触っただけで身体に害のある神経性の毒を持っているそうです!」
「案外重要な事を後から教えてくるな、メヴィ……」
神経性の毒だが、とここで黙って事の成り行きを見つめていたブルーノが口を開く。
「以前、人間が食べて死人が出ている。触るだけならまだどうにかなるが、間違っても口に入れるんじゃないぞ」
「それはそうだが、アッシュは良いのか? 誤飲したらどうする」
「おう。それについては対策済みだ。ちゃんとリードを着けている」
「杜撰過ぎじゃないだろうか」
アロイスは困惑していたが、何故かブルーノは腕の筋肉を見せ付けた。どういう意味だろうか。うっかりミズアメタケをアッシュが食べそうになったら力尽くで止めるという事だろうか。流石に脳筋思考が過ぎる。
「――取り敢えず、そろそろ出発しよっ! ここでお話してても、メヴィのクエストは終わらないよっ!」
いつの間にか可愛らしいお面を着け直したナターリアがそう言った。そうですね、とヒルデガルトが同意する。
「それでは、メヴィ殿。我々がしっかりと貴方をサポート致しますので、出発しましょう。夜泣きの森へ! 何、これだけの人材が揃っているのです。心配はありませんよ」
「ヒルデさん、最近かなり明るくなりましたね」
「はい。ギルドでの生活は私にとって良い刺激のあるものだと思っています」
何だか知らないが、満喫しているのであれば何より。ナターリアに後押しされる形で、一行はギルドを後にした。
程なくして支度をすると言って散って行った、本日のクエストメンバーが集結した。基本的にマイペースな人間が多いからか、バラバラに来た。せめて打ち合わせくらいしておけと思わなくも無い。
事前にブルーノと共に打ち合わせ、もとい口裏合わせを行っていたメイヴィスは全員いる事を確認した上で、もう一度本日の目的を口にした。
「えーっと、今日なんですけど目的はミズアメタケの採取。たくさん採って帰るぞ!」
「メヴィ殿、場所はどこでしたか?」
ヒルデガルトの言葉に一瞬だけ応えに迷った。別にどこへ行くのか忘れていた訳では無い。後出しじゃんけんにしては厳しい地へ赴く事になるので、多少のクレームを覚悟する為の時間が必要だったのだ。
意を決し、しかし明後日の方向へ目を逸らしつつ問いに答える。
「それが、場所は……夜泣きの森なんですよね」
「ええっ?」
夜泣き森――人の泣いているような音がする、年中通して薄暗い森である。そういった音が聞こえる理由としては木々の立ち方と立地のせいらしいが、詳しい事実は解明されていない。
地元の人間でさえ、必要以上に立ち入らない場所。そこへギルドのメンバーを予告無しに連れて行くのは気が引けた。最悪、ここで数名抜けても――
いや待て。今回の面子を見てみろ。
騎士であるヒルデガルトとアロイス。人外疑惑の強いブルーノと頼もしいお供のアッシュ。怖いという言葉などとは縁遠そうな化け猫ナターリア――この面子で、まさか夜泣き森の迷信が怖いとでも言う人物がいるだろうか。いや、いない。
案の定、こちらの怯えきった反応を鼻で笑ったナターリアが頼もしげな笑みを浮かべる。今日はよく猫が剥げる日だ。
「あたしも行った事あるけど、別に普通の木々が擦れるような音だったよ。人間は耳がそんなに良くないから、あれが人の泣き声だの何だのに聞こえるんじゃない?」
「そ、そうなんだね……」
ところで、と夜泣き森について一切の言及をしなかったアロイスがさらっと話題を変える。このお話、結構重要だったのだが。
「ミズアメタケとはどんなキノコだろうか? 見た目が分からないのでは、俺達では探しようが無いな。とはいえ、護衛という意味合いは果たすが」
「あー、それなんですけど、私もちらっと写真を見ただけでよく分からないんですよね。ただ、地中深くに埋まっているそうなので、アッシュの鼻で探して、そこを私達で掘り返す感じではあります」
「そうか。見た目はどんな様子だった?」
「そうですね……。透明な傘を持っていて、ミズアメみたいな粘性のある液体に覆われているようでした。あ、あと、これはオーガストさんから聞いたんですけど触っただけで身体に害のある神経性の毒を持っているそうです!」
「案外重要な事を後から教えてくるな、メヴィ……」
神経性の毒だが、とここで黙って事の成り行きを見つめていたブルーノが口を開く。
「以前、人間が食べて死人が出ている。触るだけならまだどうにかなるが、間違っても口に入れるんじゃないぞ」
「それはそうだが、アッシュは良いのか? 誤飲したらどうする」
「おう。それについては対策済みだ。ちゃんとリードを着けている」
「杜撰過ぎじゃないだろうか」
アロイスは困惑していたが、何故かブルーノは腕の筋肉を見せ付けた。どういう意味だろうか。うっかりミズアメタケをアッシュが食べそうになったら力尽くで止めるという事だろうか。流石に脳筋思考が過ぎる。
「――取り敢えず、そろそろ出発しよっ! ここでお話してても、メヴィのクエストは終わらないよっ!」
いつの間にか可愛らしいお面を着け直したナターリアがそう言った。そうですね、とヒルデガルトが同意する。
「それでは、メヴィ殿。我々がしっかりと貴方をサポート致しますので、出発しましょう。夜泣きの森へ! 何、これだけの人材が揃っているのです。心配はありませんよ」
「ヒルデさん、最近かなり明るくなりましたね」
「はい。ギルドでの生活は私にとって良い刺激のあるものだと思っています」
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