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2話:悪意蔓延る町
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ところでさ、と見知らぬ神使を連れている青山12が首を傾げた。
「烏羽、ってどんな色かな? 烏って言うくらいだし、紺色に近い色してんのかな?」
やはり主の言葉に反応するよう設計されているのだろうか。彼女が連れていた見知らぬ神使が即座に応じる。
「吃驚する程、黒い色してますよ。というか、不用意に近付かない方が良いんじゃ……」
「そんな事言ったら失礼だよ、薄群青!」
神使の方は薄群青という色らしい。色の名前を付けられているせいで、時折酷くシステム感が出るのはご愛敬だ。
青山12の方は赤尾12とは正反対で、ゲームのデータと言うより友人にするような気安さで神使に接しているらしい。自分の友人と同じタイプのゲーマーと見た。
「そういえば、あんまり黒色の神使って聞かないよね。ねね、他のみんなも黒系とか引いてないの? ちなみに、うちにはいないよ! 真っ青社だもん」
「うちにもいないわー。つか、オレ、ゲーム下手クソだしなあ。今もほぼ薄桜に介護されながら進んでるようなもんだし」
そう言って豪快に笑うのは赤尾12。この場で唯一の男性プレイヤーなのだが、確かに彼は細々としたソシャゲの操作が苦手そうなイメージがある。そんな彼の相棒である薄桜は小さく溜息を吐いた。とはいえ、悪意はない。手の掛かる可愛い子に対するようなそれだ。
自分の知る薄桜は終始、烏羽に警戒していて少しだけ新鮮さを覚えたのはここだけの話である。
「大丈夫よ、主様。私が付いてるから! ふふっ、私が最初の神使で良かったわね。薄色シリーズの中でも、一等面倒見が良いって自負しているんだから! そういう訳だから、黒は喚ばないで……ホント……」
「マージで助かるわ、あざーっす」
話は変わるんだけど、と思考の海から生還した赤尾12が話題を変えた。
「ぶっちゃけた話、ストーリー中に出て来る神使と、召喚で来た神使って同じ神使でも別人になるの? 1話クリアした後からずっと思ってたんだけど。少なくとも、今私がクリアしたストーリーに烏羽は出て来てないし、正直な話どうなの? 君って、この先のストーリー展開を知っているの?」
結構な核心を突く、有り体に言えばメタ的な発言に対し、こちらも酷くメタ的な事を暴露するタイプの神使である烏羽は目を細めて低く嗤った。
「おや、それはいけない問いですねえ、ええ。私の口からはとてもとても……ふふ、ははは。ご自身で答え合わせをされては? ええ、いつか私に出会った時にでも」
彼は真実楽しそうだった。そこに嘘は無い。烏羽にとって、赤尾12の質問は『面白い事』に分類されたのだろう。
そこで終わるかに思えた話だったが、赤元12の薄桜が別の回答を提示した為、話題が続行と相成る。
「同一人物なんじゃない? 阿久根村にいた私は主様の事を、自分の主だって認識してたわよ。わざわざ村から迎えに行ったもの」
はしゃいだような声音の薄桜に対し、他社の薄藍が僅かに目元を綻ばせた。アカウントは違っても対神であるという事実は変わらないのだろう。当然の話だが。
「僕は2話から主殿の社に参加したので……。召喚初手は謝罪でしたね。阿久根村の件ではご迷惑をお掛けした、と。ただまあ、僕の社にいる薄桜は主殿にそこまで懐いては――失礼、失言でした」
アカウントの傾向によって神使の、召喚士への接し方が異なるのだろうか。赤元12はゲーム内でも現実と同じように振舞っている様子だ。対して赤尾12はゲームと現実を割り切るタイプ。
薄桜的には手は掛かるものの、交流の取りやすい赤元12の方が馴染みやすいのかもしれない。そうだとしたら、随分と細かく設定が成されているとは思うけれど。
最後、取り残された薄群青がその場を取り纏めるようにぼそりと呟く。彼は他と比べて声が小さい。
「同一人物ね……。要は滞りなく物事を終えられるなら、何でもいいんじゃないすか。現地にいる俺等と社の俺等が同じ存在ってパターンもあれば、違うってパターンがあるのは分かり切った話だし。そんなん気にしてたら、埒あかないっすわ」
ふはは、と烏羽が堪らず笑い声を漏らす。
「ええ、召喚士の皆様! 同一人物だと良いですねぇ、はい。ははははは……」
ようやく烏羽の異様さに気付き始めたのだろうか。青山12が眉根を寄せる。困惑した雰囲気を放っていた。
「あれ、もしかしてお宅の烏羽くんって割とヤバい系?」
「見ての通り、としか……」
ふん、と赤尾12宅の薄桜が鼻を鳴らす。
「烏羽、あんた、うちには来ないでよね。面白半分で社壊滅! とかされたら、迷惑だし!」
「えっ、薄桜ちゃん、そんな事あんの!? オレ、ゲーム苦手なんだって」
「大丈夫よ、主様。ある程度、神使の数が揃ったら召喚しなきゃいいから! 本当、神使の中にこんなのが混ざってるって詐欺……」
――いや待って待って待って。こんなの、とか言われてるけど、こんなのが初期神使の私、詰みでは?
薄桜の発言に戦慄する。そもそも、ソーシャルゲームなのに『ガチャを回さない方が良い事もある』とはこれ如何に。どうやって集金する気なんだ。
チラ、と件の烏羽を見やる。ニッコリと微笑んだ彼はこちらの承諾も得ずそっと耳打ちした。
「ふふ、大丈夫ですよぅ、召喚士殿。私は非常に善良な神使ですので、あらゆる災禍から貴方様を守って見せましょう。ふふふふ」
――凄い、全部嘘! 真実が何一つ無い!!
嘘であってはいけない部分が軒並み嘘だった。内心で頭を抱える。薄桜の発言に嘘は無かったので、彼女の言うことは真実なのだろう、大変困った事に。
なおこの後、散々イベント予想の話で盛り上がった後、お開きとなった。やはり同じゲームをやっているプレイヤーとの会話は学ぶ事が多い。膨大な新しい知識に溺れてしまいそうだ。
「烏羽、ってどんな色かな? 烏って言うくらいだし、紺色に近い色してんのかな?」
やはり主の言葉に反応するよう設計されているのだろうか。彼女が連れていた見知らぬ神使が即座に応じる。
「吃驚する程、黒い色してますよ。というか、不用意に近付かない方が良いんじゃ……」
「そんな事言ったら失礼だよ、薄群青!」
神使の方は薄群青という色らしい。色の名前を付けられているせいで、時折酷くシステム感が出るのはご愛敬だ。
青山12の方は赤尾12とは正反対で、ゲームのデータと言うより友人にするような気安さで神使に接しているらしい。自分の友人と同じタイプのゲーマーと見た。
「そういえば、あんまり黒色の神使って聞かないよね。ねね、他のみんなも黒系とか引いてないの? ちなみに、うちにはいないよ! 真っ青社だもん」
「うちにもいないわー。つか、オレ、ゲーム下手クソだしなあ。今もほぼ薄桜に介護されながら進んでるようなもんだし」
そう言って豪快に笑うのは赤尾12。この場で唯一の男性プレイヤーなのだが、確かに彼は細々としたソシャゲの操作が苦手そうなイメージがある。そんな彼の相棒である薄桜は小さく溜息を吐いた。とはいえ、悪意はない。手の掛かる可愛い子に対するようなそれだ。
自分の知る薄桜は終始、烏羽に警戒していて少しだけ新鮮さを覚えたのはここだけの話である。
「大丈夫よ、主様。私が付いてるから! ふふっ、私が最初の神使で良かったわね。薄色シリーズの中でも、一等面倒見が良いって自負しているんだから! そういう訳だから、黒は喚ばないで……ホント……」
「マージで助かるわ、あざーっす」
話は変わるんだけど、と思考の海から生還した赤尾12が話題を変えた。
「ぶっちゃけた話、ストーリー中に出て来る神使と、召喚で来た神使って同じ神使でも別人になるの? 1話クリアした後からずっと思ってたんだけど。少なくとも、今私がクリアしたストーリーに烏羽は出て来てないし、正直な話どうなの? 君って、この先のストーリー展開を知っているの?」
結構な核心を突く、有り体に言えばメタ的な発言に対し、こちらも酷くメタ的な事を暴露するタイプの神使である烏羽は目を細めて低く嗤った。
「おや、それはいけない問いですねえ、ええ。私の口からはとてもとても……ふふ、ははは。ご自身で答え合わせをされては? ええ、いつか私に出会った時にでも」
彼は真実楽しそうだった。そこに嘘は無い。烏羽にとって、赤尾12の質問は『面白い事』に分類されたのだろう。
そこで終わるかに思えた話だったが、赤元12の薄桜が別の回答を提示した為、話題が続行と相成る。
「同一人物なんじゃない? 阿久根村にいた私は主様の事を、自分の主だって認識してたわよ。わざわざ村から迎えに行ったもの」
はしゃいだような声音の薄桜に対し、他社の薄藍が僅かに目元を綻ばせた。アカウントは違っても対神であるという事実は変わらないのだろう。当然の話だが。
「僕は2話から主殿の社に参加したので……。召喚初手は謝罪でしたね。阿久根村の件ではご迷惑をお掛けした、と。ただまあ、僕の社にいる薄桜は主殿にそこまで懐いては――失礼、失言でした」
アカウントの傾向によって神使の、召喚士への接し方が異なるのだろうか。赤元12はゲーム内でも現実と同じように振舞っている様子だ。対して赤尾12はゲームと現実を割り切るタイプ。
薄桜的には手は掛かるものの、交流の取りやすい赤元12の方が馴染みやすいのかもしれない。そうだとしたら、随分と細かく設定が成されているとは思うけれど。
最後、取り残された薄群青がその場を取り纏めるようにぼそりと呟く。彼は他と比べて声が小さい。
「同一人物ね……。要は滞りなく物事を終えられるなら、何でもいいんじゃないすか。現地にいる俺等と社の俺等が同じ存在ってパターンもあれば、違うってパターンがあるのは分かり切った話だし。そんなん気にしてたら、埒あかないっすわ」
ふはは、と烏羽が堪らず笑い声を漏らす。
「ええ、召喚士の皆様! 同一人物だと良いですねぇ、はい。ははははは……」
ようやく烏羽の異様さに気付き始めたのだろうか。青山12が眉根を寄せる。困惑した雰囲気を放っていた。
「あれ、もしかしてお宅の烏羽くんって割とヤバい系?」
「見ての通り、としか……」
ふん、と赤尾12宅の薄桜が鼻を鳴らす。
「烏羽、あんた、うちには来ないでよね。面白半分で社壊滅! とかされたら、迷惑だし!」
「えっ、薄桜ちゃん、そんな事あんの!? オレ、ゲーム苦手なんだって」
「大丈夫よ、主様。ある程度、神使の数が揃ったら召喚しなきゃいいから! 本当、神使の中にこんなのが混ざってるって詐欺……」
――いや待って待って待って。こんなの、とか言われてるけど、こんなのが初期神使の私、詰みでは?
薄桜の発言に戦慄する。そもそも、ソーシャルゲームなのに『ガチャを回さない方が良い事もある』とはこれ如何に。どうやって集金する気なんだ。
チラ、と件の烏羽を見やる。ニッコリと微笑んだ彼はこちらの承諾も得ずそっと耳打ちした。
「ふふ、大丈夫ですよぅ、召喚士殿。私は非常に善良な神使ですので、あらゆる災禍から貴方様を守って見せましょう。ふふふふ」
――凄い、全部嘘! 真実が何一つ無い!!
嘘であってはいけない部分が軒並み嘘だった。内心で頭を抱える。薄桜の発言に嘘は無かったので、彼女の言うことは真実なのだろう、大変困った事に。
なおこの後、散々イベント予想の話で盛り上がった後、お開きとなった。やはり同じゲームをやっているプレイヤーとの会話は学ぶ事が多い。膨大な新しい知識に溺れてしまいそうだ。
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